あらすじ
激動の中国大陸。
捨て子・佟雨龍の数奇な運命が拓かれる――。
一度死んだ佟雨龍がふたたびこの現世へ舞い戻ってきたのは、甲辰の年(一九六四年)の十月十八日のことであった――。
舞台は、毛沢東率いる中国共産党が全権を握る中国山東省の吹牛村。捨て子の佟雨龍は、養父の佟継漢と養母の李秀媚の庇護のもと、姉の李平や犬の皮蛋(ピータン)とともに平和な少年時代を送る。そんなある日、共産党の青年幹部・田冲が村に赴任し、一家の暮らしにささやかな変化が訪れる。じつは、田冲は、養父の佟継漢と浅からぬ因縁があり、復讐の機会を虎視眈々と狙っていた。
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Posted by ブクログ
第13回山中賞の作品ということで、読んでみました。
拾い子の佟雨龍が養父によって愛情深く育てられ成長します。上巻では村幹部を殺した罪で銃殺されるまでが描かれていますが、下巻では佟雨龍がこの世に舞い戻って三毒を討伐する物語になるとのことです。三毒の象徴みたいな悪役の田冲は殺されたので、どんな冒険になるのでしょうか。
上巻では佟継漢の生い立ちから、家族の貧しくも明るい暮らしを「革命的再生産」などのエピソードを交えてコミカルに描いています。犬の皮蛋や、養母や姉、ライバルの大宝・小宝など生き生きとしたキャラクターたちが登場し、テンポよく楽しく読み進められました。たくましい李平は特に印象に残った登場人物です。
舞台は中国共産党が全権を握る中国。理不尽が蔓延っている時代に「怒りに体を明け渡すな」と息子に教育した養父の佟継漢が素晴らしい。しかし田冲がその父を殺し、姉を弄んだことで佟雨龍は怒りに支配されてしまいます。
どんなに努力しても、悪意に押しつぶされてしまうやるせなさを感じるラストでしたが、佟雨龍が復活するという希望が前提が救いであり、下巻が楽しみです。
Posted by ブクログ
一旦処刑され地獄に落ちた青年が生き返り三毒(貪瞋痴)を狩りに行く話。という紹介文をどこかで見、少し幻想小説風の楽しいエンタテインメントかなと思って読んでみたが、上巻は違う。これは、共産党政権下に生きた地方の庶民、義の漢佟継漢と拾われた息子雨龍の、そして佟家の大河ドラマ。肩すかしだったものの、とても面白い。継漢と、血の繋がりがないながらも、魂で固結びで繋がった息子雨龍の真っ直ぐな人柄が好ましい。そして、同じく魂で結びついた犬皮蚤!(最期哀れ。涙) さて、姉の為に人を殺し処刑された雨龍、下巻ではどうなる?