東山彰良のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ著者の作風としては珍しい、ダークファンタジー。
日経新聞で取材記事を読んで興味を持った。
「新型コロナウイルス禍に続き、ロシアによるウクライナ軍事侵攻。現実が想像を超えたような状況に、僕自身、エンターテインメントに没頭できなかった。しかし、そんな時期だからこそ、いつか真正面から向き合いたいと思っていた戦争を取り上げ、ちゃんとしたエンタメ小説を書きたいと考えました」
邪行師という死者をよみがえらせる呪術を使う主人公の一族。
架空の国家ベラシア連邦と、その共和国のルガレとの間の独立戦争。どことなく、著者が言う、“現実が想像を超えた”とある事象を想起させる。
その点でも興味深く読むことができた。
独裁者の支配に抵抗を示す反乱軍、暗躍する殺戮集団、三つ巴とも言える複雑な対立構造の中に、ビビウたち邪行師たちも、否が応でも巻き込まれていく。
主人公ビビウと、ベラシアの軍人ケーリン・バイが戦場で出会い交わす会話に以下の言葉ある。
「正しい戦争なんてない」ビビウは言った。「でも間違っていることを正すためには、自分も同じくらい間違わなくては太刀打ちできないこともあると思います」
「人の業ってやつか。だとしたら、ベラシアが戦争に明け暮れてきたのも理解してもらえるはずだ。むかしの戦争に勝ったやつらが決めたルールに納得がいなかいなら、おれたちだって声をあげるしかない。さもなければ、世界はおれたちの頭を踏んずけている臭い足をどけてくれない」
前段のビビウの言葉は、中盤でも再度繰り返される。著者の思いの籠った一文のようだ。
一見、ロシア・ウクライナ戦争を題材にフィクションとして物語を構築してはいるが、根本のところで、現状の、このキナクサイ世の中を作っているのは、ケーリン・バイの言うところの、「むかしの戦争に勝ったやつらが決めたルール」の存在であり、それを作っているのは、80年近く前の戦争に勝利を収めた一部の列国による陰に日向にの支配に他ならない。
そんなことにも思いを馳せながら読むことができる。
それを、邪行術といった、死体を蘇らせて動かすチープなギミックと、日本のアニメ好きのビビウの伯父ワンダ・ニエのユーモラスな言動を交え、重くなり過ぎないように描く。
ライトノベルを書いていたこともあるという著者。その頃の経験も生きているのだろう。 -
Posted by ブクログ
独裁者が治めるベラシア連邦という架空の国を舞台にして、死者を歩かせる能力を持ついわゆるネクロマンサー的な邪行師のお話。
こういうサイエンスでないフィクション話はかなり好み・・と思って読み始めたんですが。んー・・・もちろん話の核には邪行師がいるんですけど、全体的な印象としてはベラシア連邦の反乱軍と政府軍の戦いみたいな感じが強くて。あくまでその内戦のお話に邪行師がエッセンス的な役割になってしまっているだけに感じてしまった。魅力的な題材なだけになんかちょっともったいないというか残念というか。
一番物語が大きく動くテロ行為について邪行師の能力が深くかかわっているとはいえその部分が代替できれば普通の戦記物でしかなくなっちゃう? -
Posted by ブクログ
こ、これは!東山彰良が描くアンドロイドのエクソシストとその相棒の悪魔の本の物語、って聞くともう胸熱でしかないんだけど、なんでだろうちっとも面白くなかった。マニュピレイテッドって設定も面白いけど、まず主人公のユマに感情がない時点で感情移入ができない。相棒でもありマスコットでもあるアグリはめちゃくちゃいい味出してるんだけどな。それとストーリーの展開がそんなに面白くなく盛り上がらないし、悪魔とのバトルの描写がなんか面白くないの。スタイリッシュな設定でかっこいいスポーツカーも出てくるし、テクノロジーもちゃんと考察されててディープラーニングとかも出てくるし、ロボット三原則の第一原則とかもバッチリ出てくるし、面白い要素しかなさそうなのにな?機械に魂は宿るのか、って言うテーマもいいのにね。なんだかとても残念な内容だった。東山彰良はこういうのには向いていないのでは?
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Posted by ブクログ
映画「朽ちない桜」つながりで、この作品に。
短編集の中で、気に入ったのはふたつ。
・泣く猫 柚月裕子
17年音信不通であった母が死んで、真紀は母の住処に訪れる。母の同僚サオリが弔問に訪れる。
母が大切にしていた猫・マキは母のために泣いたという。
P.76
(中略) あっけらかんとした人生じゃなかったと思うよい サオリは俯いたまま、自分のことのように語る。
「男に夢中になると、ほかが見えなくなっちゃう。男と別れたあと、自分がしでかしたことを後悔する。そんときは、もう男なんかいらないって思うけど、好きなやつができ ると、また突っ走る。そして別れて悔いての繰り返し、心底、自分で自分がいやになる。 だから、悪い酒を呑む。そりゃあ身体もダメになるよね」 サオリは顔をあげると、真紀を見た。
「別にあんたに、母親を許せ、なんて 言ってるんじゃないよ。ただ、猫が泣くんだから、あんたが泣いてもおかしくないって言いたいだけ」 じゃあ、そう言って、サオリは部屋を出て行った。
真紀はしばらく、その場から動けずにいた。 やり場のない怒りと、悔しさが胸に渦巻いている。それはサオリに向けられたものではない。自分に対してだった。
テーブルの下で泣く猫を怒鳴った理由は、自分でもわかっていた。あんな母親のため に、泣きたい自分がいることに、気づきたくなかったからだ。 耳の奥で、忘れかけていた母の声がした。ひとつの布団に一緒に入り、後ろから抱き しめられたときの声だ。
「お前は優しいね。ほんとにいい子。」
その声を吹っ切るように頭を振ると、部屋に戻って窓を開けた。忍っぱい風が、頬にあたる。
下を見ると、空き地にマキがいた。前で顔を洗っている。真紀の視線に気づくと、 二階の窓を見上げながら、ひと声ないた。 マキが、ビルの隙間に姿を消す。
真紀は猫が消えた先を、見つめた。 マキが本当に泣いたのかはわからない。だが、真記の頬は濡れていた。
(後略)
猫は人の感情がわかるという。犬もそうだと思うが( 私は今は、とりあえず 犬派)。
・「黒い白猫」 東山彰良
異世界の話のようだ。強烈。