東大、スタンフォード(MS)卒業後、大手コンサルタント会社に勤め、現在はコンサル会社代表取締役として活躍する著者が、コンサルタントの仕事について述べた本。別のコンサルタントの著書内で薦められていたので読んだのだが、考え方が面白く、共感できる部分が多い。GAFAM創業者たちと考え方も通ずるものがあり、参考になった。偉大な経営者の仕事の進め方は、ノウハウ本では説明できるものではなく、それでいて共通するものがある。そのあたりを、うまく表現できていると思う。面白い。
「(著者のライフスタイル)自分の時間を三分割し、「仕事」、「投資」、「遊び」で1/3ずつ、バランスを取って過ごすライフスタイルです」p5
「世の中には、ハタから見ると、さして苦労もしていないのに仕事がうまくいっている人と、苦労してなんとか回している人、それから仕事ができない人がいる」p9
「仕事なんか誰も教えてくれないのが現実なのだ」p23
「新入社員たちは2年、3年の現場経験を経て、ようやく「一人前」と呼ばれるようになる。ほんとうのことが見えてくるのは、一人前の先の「一流」になってからだ。一流には、一人前になってからさらに5~7年は必要なんじゃないだろうか。一流になってみないと、仕事の楽しさもほんとうにはわからない」p24
「(プレゼンの極意は「声を大きく」)プレゼン上達法で教えるのは、次の3つだけでいい。①声を大きく、②スライドを見ない、③テンポを変える。これは私の経験上から導いたごく私的なコツだ。もちろん本邦初公開」p42
「(プレゼン直前の練習法)①前日に1回だけザっとパッケージ全体を通しておく、②当日にもう一度、サラッとパッケージ全体を流す、③直前に出だしの言い回しを改めて反復する。それよりも逆に、やってはいけない訓練がある。本番の何日も前からイレ込んで、時間が許す限り何回も何回も繰り返ししゃべり続けて準備すると、むしろ結果がよくないのだ。なぜなら、練習したとおりに喋ることが自分にとっての一番大事なことになってしまうからだ。そうなると、本番でちょっとペースが狂ったり、ちょっとしたワンフレーズを忘れただけで、シドロモドロになったりしかねない。それくらいなら、②のように全体感だけを頭に入れておいて、あとはそのときの感じで喋った方がかえって自然で、聞いている方も聞きやすくスムースにいくものだ。(とことん練習しろというような)周りのアドバイスなど聞いてはいけない、「ひたすら真面目に努力しても伸びない」ということが見えてくる。これらは通常のビジネス常識とは逆の結論だが、私は考えれば考えるほどこれが世の中の真実だと思うようになった」p61
「(ブルース・ヘンダーソン(戦略コンサルティングの大家))成功の一番のカギは運である。そして2番目が戦略だ」p99
「ビジネスは「売上」ではなく、ほんとうは「利益」が大事だということ。そのためには「商品の質」ではなく、あくまで「差別化要素」が必要だということ」p103
「(戦略の本質)「戦略からは発明は生まれてこない」「戦略というのは、いま社会が持っているものをどう組み合わせるか、でしかない」」p104
「偏った資源配分をするのが戦略」p106
「(V字カーブグラフ(縦軸:利益率、横軸:売上高))どんな業界を分析してみてもほとんど間違いなくこういう形のグラフになる」p110
「(平均コストの罠)(A社)お客さんの利益率グラフを作り、左から順番に並べる。どんな会社でも、お客さん別に利益率を出すと、みんなほぼ例外なくこのグラフのようになる。新興B社なら、左側にいるお客さんに、同じ商品を値引きして売れば誰でも必ず勝てる。A社は、なぜ同じことができないのか。A社は儲からないお客さんも抱えているので値引きできない。値引きをするとトータルで赤字になり、それでは困るのである。「業界ナンバーワンたるA社としては、儲けを優先するのも大事だが、広く全体に対して製品を供給しなくてはならない使命がある」ということになる。これが「平均コストの罠」と呼ぶ所以である」p128
「平均コストの思考の盲点を突かれたら、確実に負けることになる」p131
「ただし、である。これはあくまで、「短期でなら」の条件付きのノウハウなのだ」p133
(人間に特徴的な思考パターン:「メーカー思考」と「金融思考」)メーカー思考:何もないところからモノを作り上げていく、事業を創造していこうという方向になる。金融思考:賭け事のマネージ。ポートフォリオを作らないといけない、「損切り」をするんだ、ここは「さや抜き」だと、何かをつくりあげて育てる発想ではなく、何かいろいろ動いている中から儲けを抜いて結果的に利益を出す」p144
「ある会社は、ポートフォリオや損切り感覚がすごく弱かったり(メーカー思考偏重)、ある会社は見切りが早すぎてなかなか商品を育てられなかったり(金融思考偏重)、ということが起こりがちになる」p147
「中で働いている人に限って、ほんとうに解決すべき課題が見えていない」p155
「コンサルタントは、経営者の視点で現場を見ることができるし、逆に現場の視点で経営の問題を考えることもできる。ところが、実は組織内にいる人たちは、これができそうでなかなかできないのだ」p165
「オレは現場を回っているぞという経営者がいるが、誰もが知るように、そういうのはまったくのインチキである。経営者が現場を視察に行くときには、一週間も前から準備万端整えて待ち受けている。そこで経営者が見るのは、非の打ちどころがない理想の現場でしかないのだ」p165
「プロジェクトのスタート時に大切なのは、お客さんと自分たちのチームレベルを、ともにしっかり把握しておくことである(敵を知り己を知る)(これができていないと出戻りになるリスクが高まる)」p186
「人から好かれたり可愛がられる人のほうが、より早く、より大きく、仕事の実践力を身につけることになる」p198
「程度の差こそあれ、日本の8割から9割までの業界が、すでに他社との差別化には限界がきていて、いずれも似たような商品を売っている。では大多数のビジネスマンは、どこで勝負しているのか?「お客さんとの人間関係をうまくやれるか否か、彼らはここで勝負している」ということになる」p200
「お客さんの前で自分のことをあれこれ喋る訓練なんかするよりも、聞き上手になる方がだんぜんいい」p203
「仕事はできなくちゃいけないが、むしろそれ以上に、お客さんから好かれなくてはダメだ」p205
「トップは、会った瞬間で人を判断する」p210
「(トップの心理学)社外の人から「社長が我慢しているのがよくわかります」といわれると、すぐに「そうだろ、わかるだろう」となる」p212
「中身が理解できないときには、トップはそれを持ち込んだ人間の本気度や信用度で成否を判断する。これは彼らがいい加減だという話ではなく、トップの決断の難しさ、あるいは実態である」p217