19世紀英国の思想家であるミルの代表作になります。本書は題名の通り「自由」について論じている本ですが、冒頭にも書かれているように、各人の市民的、社会的自由はどのように定義されるのか、を論じています。端的にいってしまえば、最終章に書かれている2つの格率が結論になります。第1に「個人は彼の行為が彼自身以
...続きを読む外の何びとの利害とも無関係である限りは、社会に対して責任を負っていない」こと、第2に「他人の利益を害する行為については、個人は責任があり、また、社会が、その防衛のためには社会的刑罰または法律的刑罰を必要とする場合には、個人はそのいずれかに服さなければならない」ということです。そしてそれを説明するために、本書では思想及び言論の自由について、幸福の諸要素の一つとしての個性について、さらに個人を支配する社会の権威の限界について述べられています。
本書を読んで感じたのは、特に宗教と政府による強制への反発(あるいは警告)でしょうか。そもそも本書は訳注に書かれていているように、「自由」と「強制」の境界線を議論している本で、干渉と不干渉の境界線の議論ではありません。つまりミルからすれば、たとえば宗教団体がある人(信者ではない人)に対して「これこれこういうことはしない方が良いよ」という忠告を与えること、つまり干渉すること自体は道徳的に全く問題がないけれども、自分の宗教で禁止されていることを信者以外にも「強制」することは極めて問題があるということになります。その禁止したいと思っている行為自体が格率1に抵触していないことが条件です。本書は訳注もとても充実しており、自由とはなにか、ということを考えるに当たってとても勉強になりました。