「呪術」をテーマにした物語
呪術の仕組みとは?それを踏まえた上で、本当に呪術は存在するのか?
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アフリカにおける呪術医の研究でみごとな業績を示す民族学学者・大生部多一郎はテレビの人気タレント教授。彼の著書「呪術パワー・念で殺す」は超能力ブームにのってベストセラーになった。8年前に調査地の東アフリカで長女の志織が気球から落ちて死んで以来、大生部はアル中に。妻の逸美は神経を病み、奇跡が売りの新興宗教にのめり込む。大生部は奇術師のミラクルと共に逸美の奪還を企てるが…。超能力・占い・宗教。現代の闇を抉る物語。まじりけなしの大エンターテイメント。日本推理作家協会賞受賞作。
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アフリカの呪術を専門とする文化人類学者 大生部
2児の父親だったが、以前調査で行ったアフリカで娘を気球の事故で失い、現在は深い知識をもったアル中
追加研究の資金集めのためにマスコミに顔を売る日々
妻の逸美は娘を失った喪失感から、新興宗教に嵌ってしまう
しかし、その新興宗教の教祖が起こす奇跡は仕掛けがあり
逸美を取り戻すため、超能力をマジックで再現するマジシャン ミラクルと共に乗り込む
そして、テレビ局の意向で、家族共々再びアフリカに調査に行くことになる
宗教のエセ奇跡なぁ
熱した鉄棒を握るのはライデンフロスト現象だし
刃渡りは、押し付けるだけでは切れないというあたりまえの事
作中でも語られていると降り、それを実際に勇気を持ってやれるかという問題なだけで
2巻で語られる呪術師の役目の一つ
正義の裁きを行う機関という側面
当人同士の争いを防ぐ役目がある
西洋医学としての薬効がないと知りつつも、呪術としては効くと、断言されていて
呪術が効く仕組みも納得が行く説明がされている
呪術は「仕組み」
この辺は京極夏彦の小説を読んでいるとよくわかる
呪いの正体は無知からくる被害
プラシーボであったり、科学的に説明可能な背景があったりする
ただ、サブリミナルは現代では効果が否定されている
でもまぁ当時は公的機関が禁止するとか、信憑性のあるものとして取り扱われていたから、まぁ仕方がない
「ガダラの豚」は聖書の一節から
とある人に取り憑いていた悪霊たちを、イエスが豚に取り憑かせる
すると、悪霊に取り憑かれた豚たちは自ら崖から飛び降り死んでしまうという逸話
執筆された当時はテレビを主としたメディアに踊らされる大衆という構造であったし
現代でもネットで流行るデマや陰謀論を信じて踊らされてる人がいるのは変わらないなぁ
我々はいつまで悪霊に取り憑かれて崖から飛び降り続けるのでしょうね
ちなみに「大生部多」という人物の記録は実在するようだ
そんな歴史まで知らべて書いてたのね
バキリに本当に呪術の能力があるのかという疑問
まぁ、ある程度は合理的な説明がつくものもあれば、そうでないものもあれば
素直に読めば、実際に能力はあったと見えるけど……
清川も同じく力があったような描写が多いけれども
確実にそんな力を持っている描写はない
本人がそう思っていただけの可能性もあるかな
道満に関しては、常人が得た武術というレベルで描かれている
精神性に関してはどうなんだろうな?
人間、何か道具を手に入れたらそれを使いたくなるものだし
そして使ってみて実用的であればさらに使いたくなるものですしね
残念なのが、隆心大阿闍梨
冒頭から登場して、最後にも出てくるけど、その扱いがちょっと残念
長年の修行で得た法力を今まで使ってこなかったのに
いざ使わざるを得なくなっても結局は大ボスの前座と相打ちですか
せめてバキリといい勝負するくらいの展開は欲しかったかな
それにしても、20年来の積読を消化したわけだけれども
もっと早く読めばよかったな
特に、京極夏彦を知る前だともっと楽しめたと思う
あと、ドラマのTRICKとかね
いい加減読もうと思ったきっかけとしては特にないのだけれど
「理想的本箱」や、マンガ「本なら売るほど」に出てきてたのも要因の一つではある
やはり、面白い本はいつ読んでも面白いのだなぁ