【感想・ネタバレ】「科学的に正しい」の罠のレビュー

あらすじ

“物語られる”科学を切開し、縫合する一冊!!
神話後の世界では、愛も憎も科学を装う。
歴史を剔抉した時、真と善と美が分裂する…!
…さて我々は、いかにして違うまま、再び融合できるのか?
――魚豊氏(漫画家)

“真の科学”は研鑽と謙虚さの泉にきらめく。
“正しさのありか”がわからなくなったあなたのための一冊。
――磯野真穂氏(人類学者)

事実と真実の間で揺らぐ科学の落とし穴を赤裸々に解説した、驚くべき世界の現実。
――山極壽一氏(霊長類学者/京大元総長/総合地球環境学研究所 所長)

科学的な正しさをめぐる論争を歴史から緻密にひも解く。
一気に読ませる文章だが、得られる教訓は実に深い。
――出口治明氏(立命館アジア太平洋大学 学長特命補佐/名誉教授)

疑うだけでは足りない。「正しさ」の諸相を理解し、乗りこなすための刺激的な案内書。
――吉川浩満氏(文筆家)

本書は、科学的で一見正しいが、実は信用できない説明、誤った説明、有害な説明、さらには科学でない説明まで、現在や歴史的な事例から、権力、メディア、偏見やイデオロギー、ナショナリズム、客観性の過信と偽装、そして科学者自身が、いかに科学を棄損し社会に不利益をもたらしたかを示す。そのうえでどのような手を打てば科学の信頼性を守れるのか、「正しさ」なき虚無の到来を防ぐためにとれる手段を考えてみたい。(「まえがき」より)

『歌うカタツムリ』(第71回毎日出版文化賞)、『ダーウィンの呪い』(2024年新書大賞10位)で注目される進化学者が描き出す、科学の過ちと今に生きる教訓。

※カバー画像が異なる場合があります。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

間違いなく良書であった。科学的というのが絶対に正しいということはない、というのがよく分かった。
科学者自身の価値判断とどうしても無関係ではいられないし、無関係を決め込んで科学絶対主義のようになると優生学のような倫理観を破壊する方向にも傾きうる。
社会学など文系の話と科学って相反する部分もあると思っていたが、結局科学も社会的活動の一つであり、社会の中で科学者が価値観を表明しつつ、常にフィードバックをうけて変わっていくのが良いあり方なのだと理解した。
人間だからどうしても物語で分かろうとしてしまう、というのもとても共感。客観性は難しく、たぶん個人では本当に客観的になれていることなどないのだな、、と思った。

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2025年11月04日

Posted by ブクログ

科学的な「正しさ」は価値観からは切り離せず、科学と正義を混同してはならない。科学的な根拠や説明を聞く場合は疑うことが重要だ。ということが本書の趣旨だろうと思う。

確かに実験や分析の考察と価値観は切り離せないし、主観と客観は完全に分けることはできない。科学的なもっともらしさを盾に論破なんて言うのは危険極まりないし、そもそも科学に絶対的な正しさはなく現段階で最も確からしいことがあるだけだ。

さてでは価値観によるバイアスや価値観の違いによる対立をどう解消するのか?本書ではそれは開かれた対話だとする。理想的にはそうだが実際にはかなり難しそうだ。コアの理論がある純粋科学でもそうなら社会科学なんてはるかに難しそうだ。例えば、フェミニストが女性政治家を我々と中身が違うと批判したり、多様性が必要だという人が反対意見の人を受け入れなかったりするのをみると絶望的に難しく思う。知的な謙虚さや内省が必要だと思うが価値観が強固であればあるほど自らの価値観に固執して対話なんてできなさそうにも思う。この本を読みながら科学的な正しさについて考えを巡らせ、価値観による分断を乗り越えることの難しさに気づかされる。

「知性の罠」も併せて読むと思考の幅が広がりそうだ。

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2025年10月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

難しいところもあり、全てを把握したわけでもないが、一旦咀嚼すると……

正しい科学と呼ばれている、その科学結果は果たして、
・背景にイデオロギーや政治的価値はあるか。
・研究結果の水増しや捏造はされていないか。
・追試結果はあるか。
・わかりやすいアイコンを大衆に提示し、ポピュリズムやナショナリズム等に共感される形で、社会を分断するような偏った考えを無駄に煽っていないか、もしくはこれらの系統に属する派閥が、確証性バイアスによって使われていないか。
・注意書きは書いてあるか。(この論文は何のために? 差別を助長するものではない等、今後のリスクに対してのスタンスが書かれている)
・科学者自身の価値観が明確に説明されているか、加えて言葉の定義も説明しているか。
・発信元はどこか? 宗教関連者または団体、科学者においても批判派もしくは賛成派か。etc…

では基本、科学者の情報を受け取る側(一般ぴーぽーの私たち)の心構えとして、
・分からんかったら、とりあえず最初は疑っておく。
・一次ソースを見る。
・同じ人だけではなく、別の人の論文も読んでおく。
・科学者には責任説明があることを念頭におく。
・受け取り側もどのような価値観を持っているのか、メタ認知を鍛えておく。
・二元論はとりあえず危ない。
・地域に関連する研究では、科学者や行政、住民等も交えて検討する。

二者択一は危なそう(こなみかん)

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2025年10月29日

Posted by ブクログ

第9章が白眉。一人称で書かれた立場表明は潔いです。
科学的に正しいを、これでもかと詳しく、くどく説明しています。理科系の学生や教員に読んで欲しいです。

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2025年10月22日

Posted by ブクログ

自分の価値観を認識して、科学の持つ価値と向き合うことが大事。
価値観と科学はつながっていることを忘れてはいけない。

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2025年11月01日

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