長嶋有のレビュー一覧
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妻に浮気され離婚したゲームデザイナーの七郎は、9月のはじめに津田の同僚の大輔の結婚式に呼ばれる。結婚式後にキャバクラで津田のお気に入りのサオリと同僚のゲームマニアの娘に気に入られる。ゲーム制作から離れた七郎は、気に入っていた過去の会社と妻への愛着から離れられないが…。
長嶋有のぼんやりした話で、9月からの日々と津田と妻との思い出とを交錯しつつ語る長編。津田のパラレルで平行に進む女性関係を描きつつ、七郎の妻や津田、サオリとの交わりかけては交わらない人間関係など、ダブル、トリプルミーニングのタイトルに繋がっていく。
数年前なら「掴みどころがないぼんやりした作品」とレビューしていただろうが、さすがに慣れてきたな。むしろ平行にどこにも収束しない話は、リアリティを感じる不思議な感覚である。
ぼんやりした七郎、ドライで全くこだわりのない女性陣、ボケというか全方向に全力で誰の意見も聞いていない津田など、取り立ててものすごいでもないキャラクターもうまく使い分けられているため、混乱も少ない。
ストーリーの起伏の弱さは素人向けではない部分も多い作品ではある。芥川賞的な作品なので、流れをそのまま素直に読むべき作品である。 -
Posted by ブクログ
好きな作家・長嶋有さんの作品、久々に読んだことのない作品を…と手に取った本作。
いやぁぁぁーーー、この作品めっちゃ素敵ですねーーー( ̄∇ ̄)
長嶋有さんは何作か読みましたけど、一番最初に読んだ「猛スピードで母は」を読んだときの衝動を思い出させてもらった気がしました…
そうそう、長嶋有さんの良さはコレだよなぁ…と。
一言で表すと「もう空気感最高過ぎ」なのかなと…(´∀`)
個人的には「エモ写実主義」ってワードが浮かびました、けっこう気に入ったんだけどどうだろう…(笑)
潔い装飾しすぎない文章、密度が濃すぎず作品全体に漂う程良いヌケ感、けっして現実を美化し過ぎない(自分はそこがとても写実的だなと感じる、現実っちゃこんなもんよねのラインを逸脱しない)、でもそれでいて希望を忘れない前向きな物語…言葉にするとそんなところが好きなのかなぁと。
上記の良さがあるので、短編とはとても相性が良いんではないかな…とも思ったりもしました。
猛スピード…に続く代表作にして良いんじゃないかなと。
最近アウトドア本ばっかりでサボっていたので、読書熱を復活させてくれた長嶋有さんに感謝( ´ ▽ ` )笑
<印象に残った言葉>
・こういうシチュエーションの映画があるな。孤独な男と女の子が旅するような。比べれば現実はいつも垢抜けない。(P29)
・トレイから瀬奈の忘れていったCDが出てきた。ビールを飲みながら改めて聴いてみた。夢は信じるだけじゃ駄目、とかなんとか、聞いたふうなことを歌っていた。(P38)
・あぐらをかく姉をみるのは初めてのように思う。忍び込む姉も金庫やぶりをする姉も初めてなのに、私が感じ入ったのはあぐらだった。(P45)
・弟は階段の途中で立ち止まった。振り向くと今度はジャンパーのポケットから蜜柑を取り出した。弟はその場で皮を剥き、三つに分けると、姉に二つ手渡した。姉は振り向いて私に一つくれた。(P104)
・「そうか」とあっさり納得した。僕に軽く微笑みかけるとまたすぐに目を閉じた。僕は二つ並んだ横顔を横目に、成田までをついに眠らずに過ごした。(P144)
・それから、自分でも信じられないほどの大きな声で叫んだ。声が出尽くすと、また息を吸った、金切り声をだした。声を振り絞ると体がびりびりと震えるのが分かった。手をにぎられて、目と耳が熱くなった瞬間に似ていると思った。はずみで目から涙がぽろぽろと出てきたが、気にせずに叫んだ。悲しいのだから、涙は出てもいいのだ、と秋子は思った。(P216)
<内容(「BOOK」データベースより)>
人が一日に八時間働くというのが信じられない。八という数字はどこからきたのだろうか。なんだか、三時間でいいんじゃないかもう……(「夜のあぐら」より)。なぜか隣室の小学生の娘を預かることになった失業中の俺のちぐはぐな一夜を描く表題作。真夜中に実家の金庫を盗むはめになった三姉妹を描く「夜のあぐら」。ロードムービーの味わいの「バルセロナの印象」。そして20代終わりの恋をめぐる「三十歳」。リアルでクールな、芥川賞受賞後初の短篇集。 -
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文庫本を買ったので再読。単行本を2回読んでいたので3回目。
現実やフィクションの、さまざまな死と訃報を通じて、、通じて、何を描きたいのかな。
ひとまず文庫の裏にあるような「死を見つめることで、生の大切さを描いた感動作」ではないことは確か。でも、色々な距離感がとても良いです。
全体的には感動しないけど、ちょっとした一つ一つの文に感動、というかしみじみします。
ジョン・レノン、スティーブ・ジョブズから、X JapanのTaiji、声優さん、登場人物の持ってるマックまでいろんな人が亡くなる。
新年早々読む本でもないな、と思いつつも読んでて、で、この本を読んでる1月15日に、高橋幸宏の訃報があって、でも軽々しくRIPなんてとてもツイートできなくなる本だった。
登場人物が妙にオタクというか、アニメとゲームに詳しいのが、少し引っかかったのは、前に読んだ時と変わらず。
そういえば、長嶋有の作品は「愛のようだ」にしろ「佐渡の三人」にしろ今作にしろ、結構死が重要なテーマの作品があります。
なんだか謎めいた存在感でフキンシンちゃんのキャラが出てきます。 -
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他の方の感想でも述べられている通り、この一冊で入門できるかというと、できない。ただ俳句をちょっと新しい形でやり始めた一例としては、とても面白かった。
お勧めする人
・句会に参加したことがある(軽い気持ちでやってるとなおよし)とエンジョイしている感じを共有できて楽しいと思う
お勧めしない人
・俳句初心者には得るものはあまりないかも
・俳句こうあるべき派にもお勧めしない
初めて著者の文章を読んだが、さすがのセンスを感じた。視点や語りが私には目新しく、また気持ちよい。個人的には、できれば、そうだな、「ひとり同人」とか、そんなテーマで続きを読みたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ元々、制作する楽曲の多くが、過去の文学作品を礎にしている人間椅子、彼らの作品が今度は小説のモチーフになったということで、いわば音楽界から文芸界への逆輸入、という発想がまず面白い。
そして、そのような出自であるからして、彼らの楽曲がノヴェライズのベースとして馴染まない訳がない。
まず選ばれた5曲を見てみると、1つは筋肉少女帯との共作だが、残り4作はすべて和嶋慎治氏の手による詞、ということに少し驚いた。
また、著名な代表曲ばかりということはまったくなく、むしろコアなファン以外にはすぐにピンとこないであろう作品も。
口火を切る大槻ケンヂ氏の「地獄のアロハ」、イカ天をリアルタイムで観ていた世代にとっては、その時代の空気感が生々しく甦ってくるかのような描写の数々が妙に懐かしく、史実ないまぜのふわふわとした感覚がまた心地良い。
どこまでが実体験ベースで、どこからが完全なフィクションなのであろうか。
「なまはげ」という題材にふさわしく? 教訓めいた民話のような雰囲気をまとう伊東潤氏の噺は、まるでテレビドラマ「世にも奇妙な物語」の小話のような結末を迎える。
歴史小説家という印象が強い著者なので、こうした展開もあるのか、とやや意外だった。
空木春宵氏のチョイスはまさかの「超自然現象」、中身を読んで思ったのは、「大予言」でもハマったかも? なんて。
ちょうど旧統一教会を巡る問題が論じられている昨今、偶然か必然か、タイムリー性も抜群だった。
巻末の一言解説で、和嶋慎治氏が「『新青年』収録の作品」と書いているが、正しくは「異次元からの咆哮」なので、この勘違いを誰も正さなかったのは一体どういう了見なのだろうか。
芥川賞作家である長嶋有氏の「遺言状放送」は和嶋氏が述べている通り、まさに青春こじらせ小説と呼ぶべき、シリアスと見せかけて実は軽やかなタッチの一作。
受賞作の「猛スピードで母は」も、純文学というカテゴリーにしては読み易かった印象があるが、さらにエンタメ性がトッピングされた感じか。
主人公の少年は恐らく私と同い年であるはずなので、作中へのシンクロ感は個人的に大きく増した。
また、これも和嶋氏が触れているが、長嶋氏は実は筋金入りの人間椅子フリーク? と思うぐらいに小ネタがこれでもかと散りばめられていて、古いファンとしては嬉しくなる。
プラクティカル・ジョークという言葉をここで目にするとは!
思わずベスト盤「ペテン師と空気男」のライナーノーツを読み返した。
掉尾を飾るのは和嶋慎治氏による「暗い日曜日」。
雑誌「怪と幽」で一足先に読んでいたが、自分で書いた詞を下敷きにして小説にまで膨らませる、という行為はさぞかし難しかっただろうと想像する。
結果、産み出されたのは、曲中の各世界とはまったく異なるものであった。
恒川光太郎氏が書く世界に通じる匂いが感じられたり、あるいは藤子・F・不二夫のSF作品を彷彿とさせたり。
まさしく最後は、暗い、憂鬱な幕引きであった。
もちろんミュージシャンの両氏が綴る文章も商業作品として充分に足るクオリティではあるが、その他の3名が職業作家たる地力をしかと見せつけてくれたな、というのが全体を通して得た印象。
あと、鈴木研一氏の一言があっさり過ぎて、思わず苦笑、で本を閉じたのであった。