長嶋有のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
よろず扱う骨董屋「フラココ屋」に集うふつうの人たちの、ふつうの日々。
それが小説家の手に掛かれば、こんなに面白くて、こんなに愛おしいものになってしまう。
それぞれ中心となる人物を入れ替えた6(+1)編からなる連作短編集。骨董屋の2階から定点観測された彼らはふつうのようで、でもどこか変わっているところもあって、それがとても魅力的に目に映る。
本を読みながら私は実際に彼らに出逢い、フラココ屋の店先でお茶を飲み、夕子ちゃんに連れられて近道を辿り、朝子さんの卒業制作を眺めた。瑞枝さんの原付の音を聞いた。
まるで彼らのことが「前から分かっていた」みたいに、身近に感じた。幸福な読書体験だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレもしかして、夕子ちゃんはこの世のいろんなことがもどかしいなあと思っているのかもしれないけど、本当は最初からできているんだよ。君は、この僕が恐れ敬う数少ない人なんだから、どんな時も泣いたりしないでよ。
夕子ちゃんは作中でほとんど主人公と会話をしない。強いて言うなら知り合いの知り合い、という感じ。なのになぜ上記のようなセリフが出てくるのか。そこが正直分からなかった。
けど、勝手に人を尊敬して憧れを持って、だからこそ泣いてほしくない、負けてほしくないという自分勝手な感情をこんなに綺麗にすっきりと表現した文章は見たことがなかったし、
本当は最初からできているんだよ、というところにこめられた優しさがす -
Posted by ブクログ
時系列をぐちゃぐちゃにして、「パラで走る」2人の男の友情物語。
長嶋さんの小説はスルメのようで、だらだらくちゃくちゃいつまでも噛んでいられる。
でも一気に全部食べよう(読もう)とすると、アゴがつかれるし、お腹も痛くなる。
なので、ちょっとずつ、読んだ。
いつでも、どこにいても、本をひらけばスッと世界に入っていけるのは
まちがいなく「世界」のある小説の証だろう。
「世界」を構成するのに重要な登場人物たちのセリフがすごく上手。
いかにも「この人なら言いそう!」って言葉がバシバシきまる。
そのセリフの中に金言になりそうなのもあったりして、油断ならない(笑)
登場人物だれひとり、さほど好きな人間