あらすじ
作品中の家電製品の描かれ方を軸に文学を語る、新しくて深い書評エッセイ。小川洋子『博士の愛した数式』のアイロン、吉田修一『日曜日たち』のリモコン、花輪和一『刑務所の中』の電気カミソリなど、作家が作品世界をどう構築するのか、その秘密が明かされる。書き下ろし短編小説、「導線」収録。『電化製品列伝』を改題。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
帯の惹句がとても的確。曰く「家電製品を軸に、作品世界を解き明かす斬新かつ珍妙な書評エッセイ」。
長嶋有については『猛スピードで母は』を読んだもののピンとくるものがなかったので以来手にとることなかったのだが、Twitterでこの『電化文学列伝』の好評を見かけて目を通してみたら何これイイと目を白黒させてしまった。
あとがきで豊崎由美がこれまた的確に紹介しているけど、背景小物にすぎない電化製品をレンズにするという縛りのなかで、決して牽強付会にならず、今まで誰も指摘していない作者の魅力を浮かび上がらせ、それでいて、言われてみると確かに納得の作品評になっているという奇跡のような技。
どれもよかったけど、私の印象に残ったのは、小川洋子の『博士の愛した数式』のアイロン。作家が言葉を紡いで作品を丁寧に作り上げていく過程と、最低限の衣食住の少し先にあって、家電製品のなかでは操作する人の能動的な関わりが比較的多いという特性をぴたりと小川洋子とその作品に見立ててみせる。
こういう視点を持つと、同じ小説を読んでもその味わいが何倍にも深くなる。作品世界の奥行きが幾重にも広がる。そういう意味でもいいブックガイドというか読書ガイドになっている。オススメ。
Posted by ブクログ
これは長嶋さんをまだ女性だと思ってた頃に読んだ本で、おもしろいと思ったのに文庫を買ってなかったとは!
改めて読んでもおもしろい。物語の中でも「家電」に目をつけて、それを語る。だけど書評。非凡な人だなあと思う。
家電にも新たな目を向けられそう。
確かに、うるさい家電(掃除機など)と静かな家電(ホットカーペット)って、あるなあとか。
これを読んで、読みたくなった作家さんが数人現れました。
Posted by ブクログ
電化製品が登場する小説、まんが、映画等々についてのエッセイ。
川上弘美の「センセイの鞄」とか、吉田修一の「日曜日たち」とか。
既読のものもあったが、まだ未読のものも、もちろんあって。
好きになった作家さんのエッセイを読むと、自分の読書界の視野が広がって、うれしい。特にこういう、本についてのエッセイだったりすると。
Posted by ブクログ
現代文学の中で、家電が登場するシーンを取り上げて評した異色の本。
コンセプトにひかれて手に取った。
家電というピンポイントから、その作品全体が見える...というようなところを期待したのだが、それはちょっと虫が良過ぎたか。
川上弘美「センセイの鞄」の電池は、電池の固執するセンセイのたたずまいを象徴的に表現したものだという長嶋さんの説に納得できたが、他のはどうなんだろうなあ。
100年くらいして、ここに取り上げられた家電がいずれも姿を消したとき、資料的に参照される本になるのかも。
Posted by ブクログ
こういう目で小説読んだことなかったなーと目からうろこ。『34歳無職ちゃん』は家電がよく出てくるから長嶋さんは読んだほうがいいと思う。というか、たぶん読んでるだろう。