あらすじ
「ちゃんと愛せていたんだろうか……?」「そうだった そういうとこが好きだった 傷つけ合って別れた人の」――男にとって別れはいつも「寝耳に水」。家の鍵は取り換えられ、妻の雇った弁護士から身に覚えのない非難の文書が……。親権をめぐる裁判所での話し合いは、想像を絶する冷酷な展開に……。子どもたちに会いたい! 男女の温度差が激しいとされる「離婚」を、男の視点で描き、賛否両論を呼んだ、あまりに率直で赤裸々な、衝撃の実録小説!
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Posted by ブクログ
意外に面白かった。
もっと嫌になるかと思ったからだ。
私は主人公よりもその妻に近いところにいる。
2人にとっての真実がどこにあるかはわからないから、ここでその是非を問うても意味はないだろう。
そもそも、人と人との関係において正しさは無力で、正しくても正しくなくても暮らせないものは暮らせない。そして、自分がどうしても子供を失いたくないと思えば、正しくないことだって私ならするなと思った。
ただ、著者はおそらくとても正直な人で、ここに書かれたことは彼の世界の真実なのだということは信じられる気がした。
書評という体裁を取っていることは、私には功を奏しているように思えた。ことの顛末についてそのままのエッセイにされるよりも読みやすかったと思う。
生活や自分の頭の中というものは、実際に本書のようにその時に読んだものや見たものと分かちがたく結びついていて、生活と本は互いに確かに影響を与えるものだと思うからだ。
著者はこの日々に思ったことを書き出しておく必要があったと思うし、残したものがいつか子供に届くこともあるかもしれない。いつか届いて欲しいなと思った。
追記:主人公の職業をAV監督としたことは、私に取っては無駄に不快だった。
Posted by ブクログ
離婚協議中の私が、離婚エッセイを読んでみました。
枡野さんは昔から好きだし。
離婚はつくづく十人十色。
結婚よりずっとバリエーションが豊富だよね。「豊富」と言うと、自分でもなんだか悲しく響くけど、でも実際子ども有無からバリエーションは無数にあって、私と誰かの離婚が同じなんてあり得ないんだろうなー。
お子さんと会えなくなった枡野さんは本当にかわいそうで、読んでいる私もその場にうずくまりそうになったくらいだったけど、こうして公の場に晒される元奥様やお子さん達にもやはり同情してしまう。
そして、解説の映画評論家の町山さんが厳しい。鋭い。
町山さんもおもしろい方だな。町山さんの著作もちゃんと読みたいと思いました。
Posted by ブクログ
妻に離婚を迫られているAV監督速水の物語だが、中に挟まれる書評は実在の本について。
どこまでホント?とか思いつつ読み進めると、後ろ三分の一は「あとがき」として枡野浩一の実際の状況と、枡野に加え、穂村弘と長嶋有の特別寄稿。そして枡野の短歌30首。最後に映画評論家、町山智浩の解説、という変わった本。
最後の解説で、一気に読者のひっかかりがクリアになる感じ。穂村弘の指摘もするどい。
枡野浩一について、本人が一番わかっていないっぽい。
一言で言ってしまえば、だから奥さんがあのような形を取ってでも離婚したんだね、ってこと。
この人の短歌は嫌いじゃないけど、人としてはね~。
むしろ、発達障害系空気読めないサンプルの参考にはなるかも。
気になる存在ではあり続けそう。
Posted by ブクログ
本当に率直で赤裸々。枡野さんは純粋だが、相手の気持ちを想像するのは下手なんだろう。
解説は納得できる部分もあった(速水の送ったメールはありえない。あれは離婚もしたくなるだろう。)が、それでも香もかなりひどいように思った。あとフィクションみたいだけど、女性弁護士が腹立つ。
収録された短歌は心の透明さが伝わるようで、とてもよかった。
Posted by ブクログ
「あるきかたがただしくない」と違って、離婚後のことが著者の心情も含め、小説という形を取ってはいるが詳細に書いてある。書評がとってつけた感があって白々しいが案外読んでみたくなった。裁判所によって身に覚えのないDV夫と見なされ、月一回という裁定が決められるところは詳細でよい。
Posted by ブクログ
書評と言いながら書評をあまりしていない。
離婚という場面に遭遇した男の苦痛の姿がリアルに描かれている。
不条理さにもがく姿は、解説で、幼稚だと痛烈に批判されるてるけど、そういう風に考えてもがいてしまう時期はすごくあると思う。
法律家たちの冷たい姿もおもしろい。
たしかに法律家の対応って理不尽なところあるよなー
そうなっちゃうのは、仕方ないとこもあるんだけど。
「とにかくだれかに好かれるのは幸せなことだ、それだけはたしかだ」
「そのことを忘れるために今はただ小さいことにくよくよしたい」
Posted by ブクログ
一冊を通して、様々な視点から著者の人柄を見つけることの出来る本。
そのことが本人は意図してなさそうに見えるのも面白い。
辛辣な解説も見もの。個人的には全面的に感情移入して読んでいたので、なんだか覆されてしまったような読後感。著者を見る目が、ひいては自分自身を見る目が変わることにもなるような印象を受けた。
それを踏まえてどちら側に立つか、これがこの本を味わうのに必要なことかも知れない。
Posted by ブクログ
町山智浩の解説を読んで、ようやく腑に落ちた。この解説を含めてひとつの作品だと思う。印象に残ったのは、解説内で「人間の通過儀礼が弱体化したなか、失恋は例外」という言葉。「思想地図β」での菊池成孔の「無条件に素直に従えるものが、この国には恋愛以外残っていない」という指摘と重なった。
Posted by ブクログ
町山さんの解説が読みたくて購入。小説部分を読みながらうっかり主人公に共感してしまい、町山&穂村両氏の解説を読んで、その指摘のもっともさにうなだれた。正しさを振りかざしてしがみつく感じ、自分にもあるなー。主人公が内田春菊を例に出し、そういったタイプの女性を非難するくだりが印象的。私も似たようなことよく考えます。器のちっちゃいやつです。
Posted by ブクログ
まず、カテゴライズに悩んだ一冊でした。「書評」としてもよかったのだろうけど、それは何だか違うだろうと。書評という軸を持った私小説だろうと判断したので、私小説としました。
AV監督である主人公が離婚調停中の妻への気持ちと我が子への想いを、調停などの過程に沿って綴ったものです。ひとつひとつのチャプタごとに一冊の本を取り上げて進んでいきます。あくまでフィクションとして。
町山智浩の解説までぜひ読んでほしいです。
ふと思ったことは、穂村弘はモテ、枡野浩一は非モテだということ。
暗い気持ちになるし、離婚のごたごたばっかり文章にしやがって、という気持ちもあって、評価に悩みました。でも、それだと読まなきゃいいだけの話ですし、歌人が自分の心情を文章にせずにどうすんだと思ったので、評価は読んで面白かった分だけつけました。
Posted by ブクログ
ああ、もう、どうしようもない、とここまで思わされたのも久し振りである。主人公速水の正しさのベクトルが常に自分に向いているのだ。方向を変えるチャンスは幾度か訪れているというのに。正しさは諸刃の剣であるかもしれない。振りかざすと相手を傷つけ自分をも傷つける。
特別寄稿や解説の素晴らしさもさることながら、速水のすっとんきょうな律儀さに無理やり泣かせられるような一冊。
また、収録されている短歌「夢について」に少し救われる。やっぱりこうでなくっちゃ。
Posted by ブクログ
今まで読んだことの無い分野の本だったので、新鮮だった。著者のことはこの本で初めて知ったが、実にウダウダしていて自分を見るようであり、複雑な思いの読後感だった。
Posted by ブクログ
町山さんとの対談USTを見て購入。「あるきかたが正しくない」も読んでいたので情報が補完された感じ。
町山さんの解説は素晴らしいし、穂村弘の毒エッセイも素敵だが、本編あればこそ。
結婚というより、人とうまくやっていく事の根本的な困難さに思いをはせる。そんな本。
Posted by ブクログ
ひどくバランスが悪いようでいて、絶妙にバランスがとれていると思った。
やばい、こういう人好きだなぁ。と思ってしまった。
この本を読んで、主人公のことを好きだと思っていられるうちは、自分は自分と向き合えている気がする。
解説が素晴らしい。それで、この解説を載せたってことがすべてだと思う。
Posted by ブクログ
とっても面白く読ませていただいたんだけど・・・
自分のすべてをさらけ出して、ネガティブな部分も、他人にどう思われようが自分は正しい・・・というところまですべてをさらけ出して、そうまでして拘るものってなんだろう?
一方的過ぎて感想も書けないさ。みたいな感想。
Posted by ブクログ
突然別れを切り出される方って、とかく「自分は何も変わってないのに・・・」とか「自分は悪くないのに・・・」って思いがちだよね。
それをしつこく相手に詰め寄ると、うっとうしがられる・・・。
そういうことを久しぶりに思い出させてくれた本でした。
枡野さんの現在を知りたいなぁ。
Posted by ブクログ
自伝的小説、短歌、エッセイ。
不思議な形態の本。
漫画家の妻との離婚が男性の目線で生々しく書かれている。
あとがきが説明口調でちょっと冗長的かなと感じたが町山智浩の解説が的確で面白い。
Posted by ブクログ
あとがきこそ本編の、リアル離婚調停自伝小説。
もともと南Q太が好きで、元旦那の視点を読んでみたくなり
手に取ったのだが、本書は思った以上に主観だらけで根っこの部分がよくわからなかった
他人がわかる必要がないのか?とも思うが読む限りはもう少し、わかりたかった。
著者の枡野さんは、よくもわるくも自分に正直なんですね。
離婚は、だれが悪いとか、明確にする必要はないんだと思う。
ただ、お互い全く違う人間なので
わかりあえなくなったら
わかりあえていたことが夢か幻のようになってしまうんだなあ
その原因は すくなくとも 片方ではない。
町山さんの解説は、ほんとうに「解説」です。
Posted by ブクログ
南Q太さんの元夫である枡野さんの本を読んだのは書評の中に銀色夏生さんの元夫であるイカちんが登場するからです。2人の離婚に至る経緯が似ていて面白い。妻もタイプ的に似ているのだろうな。
Posted by ブクログ
枡野さんの描く小説が好きで、
短歌は、買って読もうと思う自分ではないので読まないだけで、
何かの拍子に目にするものはおもしろいな、と思っていて、
そういうわけで枡野さんの本を漁っていたときにこの本の存在を知った。
うわ、そんなこと書いちゃうんだーと、読んでみたくなったのは、興味本位というか、噂好きのおばちゃんの域を出ない感じだった。
短歌はもともと感情をストレートに表すものだけれど、
書評部分と言い、解説といい、興味本位で覗いちゃいかん世界だった。濃いいです。
いや読んでみて良かったよ、でも。
そこに人が居る、という感じがした。
男の人と、女の人では、感想が違いそう。