長嶋有のレビュー一覧
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本気が感じられるアンソロジーだ。全編、妥協がない。絶対に楽しい。
「地獄のアロハ」には、池田貴族など、早逝した友人たちをモデルにした人物が出てくる。オーケンの昔のエッセイをよく読んでその時代の空気感に憧れていた90年代生まれのわたしは、ホロリときた。そして後半のカオスにオーケンやっぱり天才か…と。
「なまはげ」には東北の寒さと閉塞した雰囲気にちょっぴりの優しさ(情けかも)を加えた味わいが。
「超自然現象」には圧倒される。人間椅子と文芸を好きでいたおかげで、今日もまた新たな興奮と刺激と出逢うことができました。物語は様式美的なカタストロフィ。
「遺言状放送」を読む前に、作者の長嶋さんが芥川賞を取った『猛スピードで母は』を予習して、この作家の文章に溢れる不思議な多幸感とともに、「この人は確実にロックを信じている」という確信があったので、期待大でした。そして期待はもちろん裏切られなかった。
そしてワジーの「暗い日曜日」。彼のDNAには乱歩や太宰のみが受け継がれているわけではなくラヴクラフトだって含まれていて、その世界観を日本の風土に出現させることなど、彼の才をもってすればわけないのだ。 -
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とある古アパートの一室の、歴代住人たちの日常を切り取った短編集。
って書くとめちゃくちゃありきたりなんだけど、同じ章の中でも時代が目まぐるしく前後して、歴代住人たちのエピソードが入り組みながら、パズルのピースのように少しずつ展開されていく。
読み味は軽いのに、全体像は緻密に組み立てられているというアンバランスさ。
実はめちゃくちゃテクニカルなことをしてるんじゃないだろうか。長嶋有恐るべし。
大きな謎や事件が起こるわけではないので、そのあたりに話の推進力を求める人には退屈に感じるのも分かる。
ふと他人の家の中が見えてしまった瞬間に、「こんな生活してんのかな〜」なんて、つい考えてしまう自分にはめちゃくちゃ面白く読めた。
たぶん今後も読み返すお気に入りの一冊になりました。 -
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長嶋有▶佐渡の三人(講談社文庫)2015
自分はエッセイスト、おばあちゃんの指示で隣のおばちゃんのお骨を佐渡の墓に納骨する珍道中。弟とお父さんの三人旅。弟は引きこもりで祖父母の家に住み、祖父母はL 字形に寝たきりになっている。
納骨の話が短編で4話で一冊。テーマというか、納骨があるから読者は登場人物を順次知ることができる。納骨には葬式もつきものだから焼香する日常の人、非日常に突如登場する人。人々の人柄や行動、セリフがおかしい。全くのナンセンスでもない。
そもそも最初から喋り続ける「自分」が男か女かさえわからなかった。僕が知ったのは、…思い出せない。今更、いつ女と知ったか、調べるためにだけ読み返せない。男女をこだわらない風潮が世を支配している(様に見えるのは僕だけ?)が、こんなことにこだわる自分を古いと感じ、公の場で口にするのは無知としなければならないのかと、思った自分がまたあほらしい。
わけのわからない話が続く。いつもなら、すぐにきっぱり読むのをやめるのだけど、やめられない。このままわけもなく浸かっていたい温泉に入ってしまったような。と思う頃、もう薄い文庫本は終わってしまっていた。
長嶋有という作者はけったいな温泉の露天風呂でいつの間にか一緒に浸かっており、視線を合わすこともなく過ごしたような男。聞いてみるとこの温泉は彼の幻想であるらしい。ならば会釈ぐらいしたものを。 -
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111108さん、ようやく長嶋有さん読みました!
良い小説でした…。
・サイドカーに犬
母が家出し、小学生女子の薫が、父と、一風変わった父の愛人の洋子さんと、弟と、父の仕事仲間たちと過ごした一夏の物語。
淡々と綴られていく気だるい夏のエピソード、父の不祥事によって意外に派手にバタバタと幕を閉じるラスト、偽造硬貨で鳴り響く「夏休みの終わりを告げるベル」に、大切なものがなくなる前の最後のきらめきとノスタルジーを感じた。
何より、大人になった薫が、洋子さんを思い出して「そろそろなんじゃないか」と、人生が劇的に変わる何かを予感するような最終ページが、すごく良かった。
子供の目から描いているからこそ、洋子さんのかっこよさが際立っている。
また夏に読み返したいような中編で、個人的には表題作より好き。
・猛スピードで母は
とにかく、母が団地の梯子を登って、ベランダ伝いに自室まで渡っていくシーンからラストにかけてが心に残った。
私としては、「猛スピード」な母の型破りな愛情が、遠回りして慎に届く場面のように思った。
こちらの小説も、何度か読み返したらいろいろ発見がありそう。 -
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読書開始日:2022年1月13日
読書終了日:2022年1月15日
所感
【泣かない女はいない】
とても好き。
最後のシーンがなんともいい。
まさに樋川さんがいう「泣かない女はいない」だ。
睦美が四郎に、樋川さんへの気持ちを伝えた部分は潔癖なんかではなく甘え。本当の潔癖なら自分にも相手にも綺麗さっぱりな状態をもたらすべき。
樋川さんはたくさん女の子を知らない間に泣かせてきたのだろう。いい意味で。
同じ女どもと、睦美を区別していた部分も、睦美には大きく響いていたはず。
なんだかとても良かった。
ここ最近で1番好きだ。
【センスなし】
保子は感情の発現が遅い。
自ら遅くしているのではないか。
その場で感情的になっても、自分に自信が無く相手に飲まれるから。
保子はプライドが高い。
だから良一への本当の気持ちも言えない。
精神病棟がもう使われていないことを急に了解したように、良一への気持ちもふいに了解した。
保子は良一のことが大好きなんだと思う。
表裏。
人間はいつでも表裏を彷徨い続ける。
ピサの斜塔は運がいい、救われる気がする
牧歌的
われわれは連帯しながら断絶している
理由も無く佇むということの説明がうまくできない
説明のいらない人
職場の制服の上にコートを羽織ると文字通り公私が入り混じる
恩着せがましいニュアンス
薄暗いカラオケボックスのソファではしゃいでいる人の顔をみて、なぜ寂しいと感じるのだろう
こぼれそうな水を手にすくったまま、からおけぼっあからここまで歩いてきた気がした
汚れた皿を洗うよりもはやく家に帰りたい
ああいう、使い道がないのに消えない記憶や知識は、使えるときに使ったほうがいいんだ。もったいないしそのほうがおもしろいだろう
睦美は樋川さんの靴底を書いていた
自分がへこたれている瞬間に愛すべき人間がなんの悲しみもなく過ごしているというのは、すごく安心することなんだと思った(四郎、あなたもそう思ってくれる)
潔癖がすぎただろうか。甘えだろうか。
潔癖と甘えは紙一重
ウェルカム、というようなひびに
そういう樋川さんは晴々とした表情で、睦美はなぜか少し怯んだ
【センスなし】
馬鹿にされても本当は構わないのだが、良さを説明するのは面倒だった
良一が稼いでくる額面ほどの愛情を自分が相手に注いでいたかというと、保子は自信が持てない
いつでも怒りは遅れてやってくる
蝶番
隠したからといって、自分の好きな物を自ら貶めたことには、ならないんだよ
打ち明け話ができない。傲慢だから。自分の苦悩が他人になんとかできないと思っているから
いい選択肢などあるはずがない。どのカードも切りたくない
だけど、私はタレが好き
秘密の気配
事後と進行中。みどりには全て事後報告を淡々と、自信満々に話して欲しい。デーモン小暮のように、それでしか生きられないと言わんばかりに -
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一言でいえば、「死を扱った小説」ということになろう。
そのうえで長嶋有らしいなと思ったのは、物語の中で特にクローズアップされているのが「著名人の訃報に触れた(知った)瞬間」「大規模な災害で亡くなった人(とそれを知った瞬間)」というところ。
私たち一般人は、著名人の訃報を、それも、名前だけ知っているといったような人のそれを最初に知った時、何を思うのか。時代を象徴したような人、有名な出来事の渦中だった人、または同じ一般人だけれど、突然の事故でその命を奪われてしまった人など。
簡単に「R.I.P」と「発信」出来るようになったところも時代の大きな変化だし、それを少し皮肉な視点で描いているのもとても共感できた。
もちろん、死は新聞やテレビやスマホなどの「四角い枠」の中だけの出来事ではなくて、私たちにも死は地続きであり、大抵「唐突に」やってくる。
「死」という、もはや唯一とも思える、生物に平等に訪れる出来事をこういう形で描くのは新鮮だと思ったし、自分が様々な年齢になった時に何度も読み返したいと思った。 -
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「サイドカーに犬」5…小4女子と父の愛人・洋子さんとの交流。著者と同世代だから余計そう感じるのかもしれないが、完全に精神がタイムスリップした。
「猛スピードで母は」4…母子家庭の小6男子の淡々とした日常。子供の思考描写がすっと納得してしまうような生々しさがある。
どちらの作品も「破天荒なオトナ」により閉鎖空間に楔を打ち込まれたときの子供たちの衝撃が描かれていた。
自分は幸か不幸か周囲が真っ当な(?)大人ばかりだったので、このパラダイムシフトがめちゃくちゃ遅かった。それがコンプレックスでもあり、20代の放蕩生活の遠因になったと思っている。 -
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初めての文体。
軽快だ!トカ、リズム感がイイ!トカいうのではない。
優しく働きかけてくる感じ。
"働きかけ"だから、頭も使わないと。
そこがお気に入りかも。
家族の在りかたは、その渦中にいる人でないとわからない。
多かれ少なかれ、どの一家にも抱えているものはある。
ただ、そこに共感できたりできなかったりはある。
佐渡の三人を取り巻く一族にも"何か"は確実にある。
でも、この一族の在り方には共感できるところもある。ある意味羨ましい部分も。
人は前を向いて歩いて行かなければならない。
苦境だろうが、逆境だろうが、間違っていようが、不安でたまらなかろうが…
すごくほっこりさせてもらえる作品。