長嶋有のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
長嶋有▶佐渡の三人(講談社文庫)2015
自分はエッセイスト、おばあちゃんの指示で隣のおばちゃんのお骨を佐渡の墓に納骨する珍道中。弟とお父さんの三人旅。弟は引きこもりで祖父母の家に住み、祖父母はL 字形に寝たきりになっている。
納骨の話が短編で4話で一冊。テーマというか、納骨があるから読者は登場人物を順次知ることができる。納骨には葬式もつきものだから焼香する日常の人、非日常に突如登場する人。人々の人柄や行動、セリフがおかしい。全くのナンセンスでもない。
そもそも最初から喋り続ける「自分」が男か女かさえわからなかった。僕が知ったのは、…思い出せない。今更、いつ女と知ったか、調べるためにだ -
Posted by ブクログ
111108さん、ようやく長嶋有さん読みました!
良い小説でした…。
・サイドカーに犬
母が家出し、小学生女子の薫が、父と、一風変わった父の愛人の洋子さんと、弟と、父の仕事仲間たちと過ごした一夏の物語。
淡々と綴られていく気だるい夏のエピソード、父の不祥事によって意外に派手にバタバタと幕を閉じるラスト、偽造硬貨で鳴り響く「夏休みの終わりを告げるベル」に、大切なものがなくなる前の最後のきらめきとノスタルジーを感じた。
何より、大人になった薫が、洋子さんを思い出して「そろそろなんじゃないか」と、人生が劇的に変わる何かを予感するような最終ページが、すごく良かった。
子供の目から描いているからこそ -
Posted by ブクログ
読書開始日:2022年1月13日
読書終了日:2022年1月15日
所感
【泣かない女はいない】
とても好き。
最後のシーンがなんともいい。
まさに樋川さんがいう「泣かない女はいない」だ。
睦美が四郎に、樋川さんへの気持ちを伝えた部分は潔癖なんかではなく甘え。本当の潔癖なら自分にも相手にも綺麗さっぱりな状態をもたらすべき。
樋川さんはたくさん女の子を知らない間に泣かせてきたのだろう。いい意味で。
同じ女どもと、睦美を区別していた部分も、睦美には大きく響いていたはず。
なんだかとても良かった。
ここ最近で1番好きだ。
【センスなし】
保子は感情の発現が遅い。
自ら遅くしているのではないか。
その -
Posted by ブクログ
一言でいえば、「死を扱った小説」ということになろう。
そのうえで長嶋有らしいなと思ったのは、物語の中で特にクローズアップされているのが「著名人の訃報に触れた(知った)瞬間」「大規模な災害で亡くなった人(とそれを知った瞬間)」というところ。
私たち一般人は、著名人の訃報を、それも、名前だけ知っているといったような人のそれを最初に知った時、何を思うのか。時代を象徴したような人、有名な出来事の渦中だった人、または同じ一般人だけれど、突然の事故でその命を奪われてしまった人など。
簡単に「R.I.P」と「発信」出来るようになったところも時代の大きな変化だし、それを少し皮肉な視点で描いているのもとても共 -
Posted by ブクログ
「サイドカーに犬」5…小4女子と父の愛人・洋子さんとの交流。著者と同世代だから余計そう感じるのかもしれないが、完全に精神がタイムスリップした。
「猛スピードで母は」4…母子家庭の小6男子の淡々とした日常。子供の思考描写がすっと納得してしまうような生々しさがある。
どちらの作品も「破天荒なオトナ」により閉鎖空間に楔を打ち込まれたときの子供たちの衝撃が描かれていた。
自分は幸か不幸か周囲が真っ当な(?)大人ばかりだったので、このパラダイムシフトがめちゃくちゃ遅かった。それがコンプレックスでもあり、20代の放蕩生活の遠因になったと思っている。 -
Posted by ブクログ
初めての文体。
軽快だ!トカ、リズム感がイイ!トカいうのではない。
優しく働きかけてくる感じ。
"働きかけ"だから、頭も使わないと。
そこがお気に入りかも。
家族の在りかたは、その渦中にいる人でないとわからない。
多かれ少なかれ、どの一家にも抱えているものはある。
ただ、そこに共感できたりできなかったりはある。
佐渡の三人を取り巻く一族にも"何か"は確実にある。
でも、この一族の在り方には共感できるところもある。ある意味羨ましい部分も。
人は前を向いて歩いて行かなければならない。
苦境だろうが、逆境だろうが、間違っていようが、不安でたまらなかろうが…