【感想・ネタバレ】タンノイのエジンバラのレビュー

あらすじ

人が一日に八時間働くというのが信じられない。八という数字はどこからきたのだろうか。なんだか、三時間でいいんじゃないかもう……(「夜のあぐら」より)。なぜか隣室の小学生の娘を預かることになった失業中の俺のちぐはぐな一夜を描く表題作。真夜中に実家の金庫を盗むはめになった三姉妹を描く「夜のあぐら」。ロードムービーの味わいの「バルセロナの印象」。そして20代終わりの恋をめぐる「三十歳」。リアルでクールな、芥川賞受賞後初の短篇集。

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Posted by ブクログ

短編集、どれもたいへんよろしく、読んでるうちはそれが一番おもしろいと思ってたのに、最終的にはぜんぶおもしろい。
自由気ままに生きているような人をたくさんかいておいて、「なんでもかんでも自分の意志で選んで生きてこられたわけがないでしょう」って言うの、お前がゆうなやって怒りたくなるくらい大事な一冊になった。

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2015年12月15日

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タイトル、ぐっときます。長嶋有の小説に出てくる女の子は、ぼんやりしてるようで、しゅっとしてて、かわいい。

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2012年01月15日

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随所に、ああ、とか、そうそう、っていう場面が現れてどんどん読めます。そういう何気ないことを書くのが極めて上手いですよね~
大好きな作家さんです。

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2011年12月03日

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うまいしおもしろい。

長嶋有という作者は強烈なインパクトのある話を書くわけではないけれど、なんかあの作家すきなんだよね、と私の頭に必ず浮かぶ。
この短篇集はそんな作者の長所が盛り込まれている。
まず、説明が少ないところが好き。
情景描写だったり登場人物たちの輪郭からじわじわと話の核を攻めてくる。
そして最終的に読者に不明瞭な点を残さない。
2人の姉と引きこもりの弟の奇妙な話を描いた『夜のあぐら』では特に、そう思った。話の組み立て方のうまさが際立っている。

また、人間の描き方がとてもリアルで、急に気が変わったりする。このキャラクターはこういう人だから、とかそういうセセコマシサがない。キャラクタではなく、まぎれもなく人間。

あとは単純に言葉の選び方が好き。
タンノイのエジンバラを題名にもってくるあたり、相当いい。何度も声にだしたし、現物もネットで調べた。誉めすぎか?

幼少時の些細な記憶とか
思い出した。とくに姉、というキーワードが私にはよかったのかな。

長嶋有をみんなに知ってもらいたいと思う反面
だれも知らなくていいとも思う。

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2011年03月05日

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『三十歳』がいちばん好き。トランスワールドは実在するのかどうか気になってしまった。著者とは年代が近いので、様々な固有名詞がツボに入る。「今の若い人達はSMAPの森くんとか知らないだろうなぁ」などと考えては悦に入ってみたりする。

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2009年10月04日

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好きな作家・長嶋有さんの作品、久々に読んだことのない作品を…と手に取った本作。

いやぁぁぁーーー、この作品めっちゃ素敵ですねーーー( ̄∇ ̄)

長嶋有さんは何作か読みましたけど、一番最初に読んだ「猛スピードで母は」を読んだときの衝動を思い出させてもらった気がしました…
そうそう、長嶋有さんの良さはコレだよなぁ…と。

一言で表すと「もう空気感最高過ぎ」なのかなと…(´∀`)
個人的には「エモ写実主義」ってワードが浮かびました、けっこう気に入ったんだけどどうだろう…(笑)

潔い装飾しすぎない文章、密度が濃すぎず作品全体に漂う程良いヌケ感、けっして現実を美化し過ぎない(自分はそこがとても写実的だなと感じる、現実っちゃこんなもんよねのラインを逸脱しない)、でもそれでいて希望を忘れない前向きな物語…言葉にするとそんなところが好きなのかなぁと。

上記の良さがあるので、短編とはとても相性が良いんではないかな…とも思ったりもしました。
猛スピード…に続く代表作にして良いんじゃないかなと。

最近アウトドア本ばっかりでサボっていたので、読書熱を復活させてくれた長嶋有さんに感謝( ´ ▽ ` )笑


<印象に残った言葉>
・こういうシチュエーションの映画があるな。孤独な男と女の子が旅するような。比べれば現実はいつも垢抜けない。(P29)

・トレイから瀬奈の忘れていったCDが出てきた。ビールを飲みながら改めて聴いてみた。夢は信じるだけじゃ駄目、とかなんとか、聞いたふうなことを歌っていた。(P38)

・あぐらをかく姉をみるのは初めてのように思う。忍び込む姉も金庫やぶりをする姉も初めてなのに、私が感じ入ったのはあぐらだった。(P45)

・弟は階段の途中で立ち止まった。振り向くと今度はジャンパーのポケットから蜜柑を取り出した。弟はその場で皮を剥き、三つに分けると、姉に二つ手渡した。姉は振り向いて私に一つくれた。(P104)

・「そうか」とあっさり納得した。僕に軽く微笑みかけるとまたすぐに目を閉じた。僕は二つ並んだ横顔を横目に、成田までをついに眠らずに過ごした。(P144)

・それから、自分でも信じられないほどの大きな声で叫んだ。声が出尽くすと、また息を吸った、金切り声をだした。声を振り絞ると体がびりびりと震えるのが分かった。手をにぎられて、目と耳が熱くなった瞬間に似ていると思った。はずみで目から涙がぽろぽろと出てきたが、気にせずに叫んだ。悲しいのだから、涙は出てもいいのだ、と秋子は思った。(P216)


<内容(「BOOK」データベースより)>
人が一日に八時間働くというのが信じられない。八という数字はどこからきたのだろうか。なんだか、三時間でいいんじゃないかもう……(「夜のあぐら」より)。なぜか隣室の小学生の娘を預かることになった失業中の俺のちぐはぐな一夜を描く表題作。真夜中に実家の金庫を盗むはめになった三姉妹を描く「夜のあぐら」。ロードムービーの味わいの「バルセロナの印象」。そして20代終わりの恋をめぐる「三十歳」。リアルでクールな、芥川賞受賞後初の短篇集。

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2023年08月20日

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エリザベス女王が亡くなって頻繁にエジンバラというフレーズを聞いてたタイミングで、あ そうやと思って読んだ。タンノイのエジンバラってそういうこと〜?って表題作読んでなった。四作とも題名が出てくるタイミングが絶妙〜と思った。と同時にそこを題名にするんやおもしろいという感覚にも。

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2022年09月29日

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ネタバレ

短編集。表題作は、隣家の母親から娘を預かる男も、男に預けられた女の子も、どこか緩い。山も谷もないが、一期一会の思い出には十分な一夜の話。「夜のあぐら」愛人、ニート等々、複雑な家庭環境ながら陰湿な感じはなく、三姉弟や父娘の淡泊で不器用なコミュニケーションが目立つ。姉妹が、実家の金庫を盗もうとする様子もどこか笑いを誘う。「バルセロナの印象」弟夫婦と姉のスペイン旅行。「三十歳」哀愁が残る読後感。

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2022年07月26日

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長嶋有さんの作品、久々に読んだ。
一番印象的だったのは夜のあぐら。
大人になってからのほどほど距離感のある兄弟関係。父の体調悪化で、実家に来て初めて知る新たな父の愛人など、場面に入り込んでしまう描き方が素敵だ。
最後の三十歳も面白い。ピアノと関係のない仕事がいいと選んだパチンコ屋。そこでの出会い。
ひとつ一つの判断、エピソードが、そう考えることあるなあと思う。淡々としたかきぶりだけど、心地よく読み終わった。

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2022年06月29日

Posted by ブクログ

「タンノイのエジンバラ」「夜のあぐら」「バルセロナの印象」「三十歳」の4編収録した短編集。
大傑作、とはいかないまでもいずれも秀作揃い。
個人的には「三十歳」が一番好き。

長嶋有の小説は、情景が在り在りと目に浮かぶところがいい。
しかもその情景は何の変哲もない平凡な街だったり建物だったり部屋だったりする。
風景が人の生活や人生と結びつき、情景となる。

「三十歳」に、パチンコ屋の屋上のシーンがあります。
これがいい。
「パラレル」にも屋上の場面があったけど、ビルの屋上という場所は、世間から疎外されているようで離れきれない、むしろ世間を俯瞰して眺めてしまったりする、独特の雰囲気をもった空間で、それが小説の雰囲気とばっちり合っています。

もう一つの特徴は、「家族」が描かれていること。
家族、中でも親子や兄弟姉妹といった、子供のころからひとつ屋根の下暮らしてきて、大人になるにつれ何時の間にか「ずれ」が生じてしまったような、微妙な心理的距離を描くのがとても巧いと思います。

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2019年01月06日

Posted by ブクログ

「夜のあぐら」の中に”定見が無い”という言葉が出てきます。なるほど、どの作品の主人公も定見が無く、周りに流されていく人々です。同じように”定見が無い”人を良く描く作家として川上弘美さんが居ます。
しかし、この二人の雰囲気は随分違います。川上さんの主人公達は行く先不明のボートに乗っているものの、周りはゆったりとした流れで、波に揺られて暖かくて居心地はなかなか良さそうです。一方、長嶋さんの主人公は、周りの岩にゴツゴツぶつかりながら流されています。なんだか迷惑そうなのですが、かといって必死に抵抗をすることも無く流されているようです。
どうも、川上さんの世界の方が好きですね。
ただ、この長嶋さんも悪くない。もう少し読んで見ましょうかね。

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2017年10月30日

Posted by ブクログ

ちょっとダメでうまく世の中に居場所を見つけられない人たちがゆらゆらたゆたう日常物語。なんでもない、何も起こらない日々だというのになんでこうも惹きつけられてしまうのか。
言葉運びと感情の切り取り方に不思議と引き込まれます。ちぐはぐでいびつでだからこそおかしみがこみ上げるような日々。

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2017年01月04日

Posted by ブクログ

出来事が地味なわけではないのに、静かな印象を与えてくる。
夜のあぐらと三十歳が特に好き。主人公たちが一見淡々としているような語りに読めたせいもあり、ラストの秋子が叫び、泣くシーンはとても胸を突いた。夜のあぐらだと弟が格好良かったのと、姉が金庫を盗めず泣くところにグッときた。
鈍感な主人公、ミネラルウォーターくらいしか入っていない冷蔵庫、など共通している部分がままあったがわざとだろうか。

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2014年11月18日

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【本の内容】
隣家の女の子を押しつけられたり、実家の金庫を盗みに行くはめになったり。

人生には、そんな日がめぐってくるのだ。

話題の芥川賞作家、待望の最新短篇集。

[ 目次 ]


[ POP ]
長嶋有さんと川上弘美さんは似ている(もちろん作風がですよ。外見は似ていない)。

と、思う。

ご賛同いただけるでしょうか。

以前川上さんの小説が「俳味がある」と表現されているのを目にした覚えがあるのだが、言い得て妙だわと膝を打った覚えがある(長嶋さんも川上さんも俳句を詠まれるとのことだし)。

解説に「長嶋本のなかでもっともいい」と書かれた本書だが、私もすごく主人公たちに共感した。

彼らの“いろんなことが割とどうでもいい”性格というのが、他人事と思えなかったからだ。

今でこそ、結婚して3人の子の母となり、普段そんな気持ちは無意識に押さえ込まれているわけだが、もしも自分ひとりだったら楽な方へ楽な方へ流れていってしまいたいという誘惑に勝てないような気がする(それが結局はのっぴきならない状況へ追い込まれる結果になったとしても)。

実際にはそうはしません。

しませんが、小説で読むのはオッケーですよね。

[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2014年08月29日

Posted by ブクログ

身近な人とのやり取りが坦々と描かれる同じテンションの短編集。長嶋有は本当に場面描写において会話、しぐさ、気になる固有名詞のミックスが上手すぎる。

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2011年11月21日

Posted by ブクログ

何を考えているのか分からないと人から言われる、
周りの人の空気を読んだ発言が苦手である、
深い理由はないが物事が長く続かない、etc
この作家は、そんなちょっとダメな人間を書くのが上手い。
異常に上手いので、ちょっと気持ち悪い。

この短編集の登場人物たちの考え方・心の動きを追っていると、
これは自分のことを書いている?
いや寧ろ自分が書いたのではないか?ぐらい、
皮膚感覚と一致した表現がされる。
オエッ

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2011年05月22日

Posted by ブクログ

カバーデザインが素晴らしく、思わずジャケ買いした一冊。本当にこれ素敵。「タンノイのエジンバラ」という、聞き慣れない(音楽好きな人は知っているのだろうけど)奇妙なタイトルにもよく合っていて惚れ惚れする。
長嶋さんの書くお話、私が読んだものは今のところ全て「離婚」というキーワードが入っているのだけど、これは長嶋さんが好んで書くテーマなのだろうか。解説にもあったけど、著者の性を感じさせない長嶋さんの文章が好きだ。

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2010年10月12日

Posted by ブクログ

何がどう面白いか、とても説明が難しいのですが、何かとっても腑に落ちるというか、満足な読後感がある。これは何だ。

私は表題作よりも、「夜のあぐら」と「三十歳」が好きなのだけれど、共感までいかないけど、登場人物が微妙に生きる速度がゆっくり、なのがいいのかも知れない。自分はとてもセカセカしてしまっているので、なんか落ち着く。

純文学系はパワーを持ってかれるので、忙しい最近は意図的に読むのを回避していましたが、この人のは面白いかも知れない。ちょっと他も読んでみよう。

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2010年03月21日

Posted by ブクログ

表題作を含む4つの短編集。
長嶋有の小説は好きなのだが、どこがどういう風に、とレビューとして書くのは、いつも難しい。
何か大きな事件が起きる訳でもなく、何かを暗示するような象徴的な出来事がある訳でもなく、その登場人物たちの日常に起きたちょっとした事(このちょっとした事というのが重要なのだが)が丹念に描かれているように思う。
私が一番好きなのは、『三十歳』という話。
上司との不倫で、勤めていたピアノ教室を辞めた秋子は、せまい部屋にグランドピアノを置いている。そして働き始めたのはパチンコ屋の景品係。そこで年下の安藤という男と親しくなっていく。
この秋子の激昂するでもない、淡々とした感情が、不思議とリアリティがあるように思う。

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2010年01月12日

Posted by ブクログ

表題作/夜のあぐら/バルセロナの印象/三十歳、の四篇。
路傍に潜む心の引っ掛かりは、あるものとして、在り続ける。「どこか」を、目を開いたまま無意識に渇望する常態。
かすめるのは、漫画について思わず判を押したように反応してしまう世代感だったり、聞きなれない電化製品のネーミングとの距離感だったり、何かを発する人や土地と居場所へ腑に落ちるまでの時間だったり、人の少しだけずれた行動に気がついた時のひそやかさが逆に安定させる高揚だったり。
やっぱり好きだなぁ、長嶋さんの文章。描かれた佇まいがふんわり浮かぶ。それはきっと人それぞれで。さらりとしてるのに切実。零れ落ちるものたちの、容赦なさと優しさ。呆然と泰然と、どこか持て余している生理。その生々しさに驚かされます。

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2009年12月23日

Posted by ブクログ

性別も年齢も超えて、何にだってなれる作家、長嶋有。静かなんだけど、静かだからこそ、ガーッて心が大きく揺れるときの表現は、もう読んでてヒリヒリ響いてくる。

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2009年10月12日

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隣家の女の子を押しつけられたり、実家の金庫を盗みに行くはめになったり。人生には、そんな日がめぐってくるのだ。話題の芥川賞作家、待望の最新短篇集。

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2010年05月24日

Posted by ブクログ

長嶋有の短編集。淡々と何が起こってどうしたということが流れるように書かれており、伏線や表現など何も考えなくていい作品。

公園で突然1万円を渡され、隣家の娘を世話するように依頼される。ステーキを焼き、家で一緒に食べ、娘の持ってきたCDを聴いてみる。聴くのは、祖父の遺品のオーディオシステムだ。

短編が4篇。全編にに特徴的なのは表題作のとおり、固有名詞やそれぞれの特徴がこれでもかと描かれていること。小川洋子「原稿零枚日記」のときに感じた、今の小説に不足している点が、固有名詞が少なすぎる問題だが、この作品群に感じることはない。

それぞれの作品で、情景はサラッとではあるがかなり細かく描かれる。逆にそれらが多すぎて、内容が頭に入ってこないという人も多いだろうが、そもそも全部読む必要など無いのだ。

それはそうと、中間の二作(金庫とバルセロナ)は、ちょっと長すぎるんじゃないかと感じる。特に金庫の話は、過去に戻ったんだか現在なんだかがフワフワと不明瞭で、弟の立場がよくわからないのはよろしくない。女なら女の話、男なら男の話にしないとダメなのかなこの人。バルセロナも自分の話なのか、自分を見ている妻の話なのかという不鮮明感がいただけない。その点、表題作はそこまでのものはないので非常に好感。

最後の「三十歳」はこれらの中で、やはり頭一つ分以上飛び抜けた感じを受けた。固有名詞にこだわらず、淡々とした日常と不安と逃避がうまく描かれていたと思える。これだけだと☆4。

オチを求める人には向かない。こういう小説書きたいな。ブログで始めてみようかな。

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2019年11月27日

Posted by ブクログ

同じ団地の隣家に住む風変わりな女の子の世話を押しつけられた男と彼女との、ひと晩の交感を描いた「タンノイのエジンバラ」。3人姉弟と義理の母親との確執を描いた「夜のあぐら」。半年前に結婚した主人公と妻、半年前に離婚した主人公の姉の3人組によるバルセロナ観光の物語「バルセロナの印象」。そして、パチンコ屋の景品係としてアルバイトをする主人公女性のバイト仲間との日常にスポットを当てた「三十歳」。現代家族と個人の関係のありようが、長嶋有ならではの独特の視点と状況設定によって描かれる。

作者の筆が描き出すのは、失業中の男と少女の束の間の疑似家族的な関係であり、普段は疎遠の姉弟が目的を達成するためにいっとき結束することから始まるドラマであり、海外という逃げ場のない空間での肉親者同士の緊張関係であり、著者自身の年齢にも重なる30歳という微妙な年齢に達した女性の内面の物語である。

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2017年10月29日

Posted by ブクログ

個人的長嶋さんブーム再来の三冊目。
表題作は読んだことあるようなきがしたんだけど、他のはたぶん読んだことない……。

タイトルのつけ方が本当にすごいと思う。
「タンノイのエジンバラ」なんて、私にはまったくなんのことかわからなかったもん。
「そこ? それをタイトルにしてしまうの?」と思った。
他の話もすべて、タイトルから話が全然想像出来ないし。

話としてはどれも、特に何か大きな事件が起こるわけでもなく、淡々としているんだけど。
でも淡々とした話をおもしろく書ける才能ってすごい。

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2017年01月08日

Posted by ブクログ

4篇とも30歳前後の、人生というマラソンで集団から遅れていて、尚且つその状況を諦めの境地で受け入れている様子の人物が主人公になっている。とても共感できた。この作家は子どもから大人、女から男まで年齢性別を問わず「生身の人間」を描き出すのが本当に上手くて感心してしまう。文字を読んでいるだけで、人物像が確かな肉体を持って浮かび上がるような感じがする。特にその人の歩んできた歴史がありありと感じられるのがすごいと思う。
どの話も面白くて順位をつけるのは難しい。似たような主人公を設定しながら、それぞれ違う味わいがある。けれど強いて言えば『三十歳』が一番好きだろうか。人生における一歩を踏み出す物語がなんだかんだでとても好きなのだが、最も明確に前に一歩進んだのはこの話ではないだろうか。どこか自分のことも他人事のようだった彼女が、最後に思いっきり泣くことができてよかった。

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2016年11月23日

Posted by ブクログ

拘りがあるのかないのか良く分からない主人公が淡々と生きている様子を描いているだけのようで、妙に気になる不思議な作品です。この微妙な感覚が長嶋氏の持ち味と思っていますが、それだけに共感度も作品ごとにムラが大きい印象です。特に表題作は???でした。

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2012年02月04日

Posted by ブクログ

一定のテンションで話が進むイメージ。登場人物のテンションも(特に主人公)なんとなく一定。
でも行動の方は結構アクティブで、文章はつらつらしてるけどきっとこのときのテンションはやばかったんだろうな、とか想像しながら読んだら面白かった。

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2011年11月12日

Posted by ブクログ

これまだ2冊目の短編集なんだ、すでに、たとえば固有名詞の使い方が絶妙。「バルセロナの印象」の主人公は、ガウディの死後も建設の続いているサグラダ・ファミリア教会について「山田康夫の死後も物まね芸人を使って放映を続けるルパン三世のようなものかと思う」なんて言ったりする。主人公の興味やいい加減さなんてのがこれ一発で伝わってしまう。表題作、SPEEDとかアムロとか固有名詞先に振っておいて、みごとなラストにつながっていく。

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2009年10月07日

Posted by ブクログ

長嶋さんの本を読むのはこれで4冊目。はじめて読んだ短編集。
どのお話も、日常のささやかな出来事を切り取り、静かに淡々と描いている。
今まで読んだ長嶋さんの小説はあまり好みじゃなかったのだけど、この短編はどれもわりと好み。
どこか浮世離れしているような登場人物たちの、力の抜け具合が心地いい。

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2009年10月07日

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