長嶋有のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
表題作を含む4つの短編集。
長嶋有の小説は好きなのだが、どこがどういう風に、とレビューとして書くのは、いつも難しい。
何か大きな事件が起きる訳でもなく、何かを暗示するような象徴的な出来事がある訳でもなく、その登場人物たちの日常に起きたちょっとした事(このちょっとした事というのが重要なのだが)が丹念に描かれているように思う。
私が一番好きなのは、『三十歳』という話。
上司との不倫で、勤めていたピアノ教室を辞めた秋子は、せまい部屋にグランドピアノを置いている。そして働き始めたのはパチンコ屋の景品係。そこで年下の安藤という男と親しくなっていく。
この秋子の激昂するでもない、淡々とした感情が、不思議とリアリティがあるように思う。 -
Posted by ブクログ
表題作/夜のあぐら/バルセロナの印象/三十歳、の四篇。
路傍に潜む心の引っ掛かりは、あるものとして、在り続ける。「どこか」を、目を開いたまま無意識に渇望する常態。
かすめるのは、漫画について思わず判を押したように反応してしまう世代感だったり、聞きなれない電化製品のネーミングとの距離感だったり、何かを発する人や土地と居場所へ腑に落ちるまでの時間だったり、人の少しだけずれた行動に気がついた時のひそやかさが逆に安定させる高揚だったり。
やっぱり好きだなぁ、長嶋さんの文章。描かれた佇まいがふんわり浮かぶ。それはきっと人それぞれで。さらりとしてるのに切実。零れ落ちるものたちの、容赦なさと優しさ。呆然と泰然と、どこか持て余している生理。その生々しさに驚かされます。 -
Posted by ブクログ
「泣かない女はいない」と「センスなし」という中篇がふたつ。「泣かない〜」が景気悪そうな小さい会社の事務職に就職したOLの話、「センスなし」が夫に愛人ができて離婚しそうな主婦の話。どちらにも、雪の日が出てくる。長嶋有の小説はやっぱり好きだなと思った。なんだかすごく淡々としている感じとか。なのに、妙なところですごく細かい部分にこだわるようなところとか。(「センスなし」で主人公がデーモン小暮のファンってことで、やけに詳しい話がおもしろかったり。)主人公がいろんなところでわかっているようなわかっていないようなあやふやな感じとか、結論らしいものがないところとか。でも、なんとなくさわやかなようなところとか。うまく説明はできないけれど。わたしは長嶋有の小説の主人公を嫌いと思うことはないような気がする。
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Posted by ブクログ
夏を感じるのは、マンションにある子供用プールでの話だからだろうか…。
このプールだけではなく市民プールを利用する人の話もあるのだが、ひと夏を描いた物語はちょっとだけ暑さを軽減できた気がした。
今日も茹だるような暑さ…
お盆も過ぎたのにいつまで続くのだろうか…
そんな日にこの表紙のプールを見ていると、さて私はいったい、いつからプールに入っていないのだろうかと。
小学生の頃は、夏休みでも学校のプールが開放されていて、地域ごとに決められた日に通っていた。
そんなことを思いだしながら、こうも暑ければ日中に炎天下でのプールなど禁止しているところもあるだろうと思う。
この物語のように労朽化し利用者も減り、プール廃止の危機が迫る中、監視員のバイトをしている女子高生二人が、ナイトプールを考えつくのだが…
未来のことを考えると何が良いのか、どうすれば良くなるのか、課題はまだまだあるかもと思った。
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Posted by ブクログ
夏に読んで正解だった。何かが劇的に変わるわけではないけど、小さな一歩を踏み出すことが希望になる、そんなプールにまつわるままならないそれぞれの日常の物語。小学生の頃に通ったスイミングスクールの帰りに食べるアイスボックスの美味しさとか、夏休みにチャリで学校の開放されたプールに行って友達と遊んだことだとか、プールの後の授業の心地の良い気怠さと塩素の匂いだとか、あのかつての夏を懐かしく思い出しながら読み進めた。「皆が知らない幻想的なほどの景色を知っていることの優越は、たとえば勉強ができるとかインフルエンサーになるとかよりも、はるかに人を強くするものなのではないか。」日常に溢れるうつくしい瞬間を切り取って大切にできる人になりたい。