あらすじ
メモリ16KBの青春がよみがえる。サブカル満載、大人のロードノベル
語り手“ゲンさん”「胃袋だけは十年前と同じで老けてないのかな」
年上の友人・武上さん「クラウドってのは、なんなの。なんか、たまに聞くけど」
その引きこもりの甥シンスケ「昭和のオタクは、足だけは丈夫なんです」
人気漫画家の亀谷さん「すごくいい話ですね」
――新幹線、自転車、バス、テスラに乗って、おかしな一行は旅に出る。
震災被害者の形見のMSXパソコンが過去と現在をつなぎ、思いもよらぬ光が未来を照らす。
イーロン・マスクやホリエモンにはならなかった、あのとき無数にいた「僕たち」の物語。
千葉雅也氏推薦!
「何かが残る。残らないものもある。忘れられたものが回帰する。歴史とは、「どのように保存するかの歴史」だとも言えるし、文学もそのメディアのひとつだ。長嶋有の新作は、情報とモノの置き場が劇的に変わっていったこの約半世紀、すなわち「パソコン以後の世界」の本質を、静かに描き出そうとする。」
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
アナログ世代にはわかりずらいかも知れない内容だけれど、長嶋有先生の芯は私もやっぱり同じなのかも!と思わずにいられない。
あらゆる場面での言葉の選び方、感情表現の仕方が丁寧でこちらも丁寧に読み込んでしまう。連作短編集なのかも、という形を取ってはいるけれど全て繋がっていることに意味があり、登場人物たちも笑っちゃうほどイキイキしている。うっかりそこいらへんですれ違ったらわからないけど、彼らの会話を聞いたりしたら十年来の友人を装って声かけてしまいそう。
専門用語わからないにしても、雰囲気だけはわかったつもりになって相槌打つ自分が見える気がする。笑われそうだけど。
毎回、新刊のたびにベクトルの向き方が一緒と考えているけれどおこがましいにも程がありますが、楽しみにしていた新刊、またじっくり眺め回してます。
Posted by ブクログ
読み始めはサクサク読めるライトノベルのような印象だったが、「パソコンをやる」のくだりから、俄然面白みが増してきたように思われた。中心人物の中年男性のモノローグは、著者の鋭敏な知覚と観察眼を感じさせ、彼の表現のユニークさとユーモラスな側面を際立たせる。変哲のない日常の流れの中に、ところどころに突然挿入される現代社会の断片も強い印象を残す。平成から令和にわたる男性達のそれぞれの心象風景を、クリシェに陥らず巧みに描き出した作品だなと思う。
Posted by ブクログ
パソコン黎明期にパソコンオタクしてた人たちの話。ファミコン派、パソコン派がいたっていうのがなんか不思議。私の分かる50歳は神谷浩史くらいであの世代の若い頃って確かに全然想像できないから、なんか良かった。
Posted by ブクログ
ニッチすぎて読んでみて、と他の人にオススメはできないけど、とても好きな本。相変わらず固有名詞がたくさん出てきて、私信を読んでいるような気分になる。私、何を読んでいるんだろうなーとぼんやり見失いそうになりそうなとこに後半ハッとするような展開があって静かに感動したりと、メリハリのある作品。
Posted by ブクログ
長嶋有が、またまた特定の世代にしか響かない間口の狭い小説を書いたなー、と同世代としては嬉しくなってしまう。MSXパソコンなんて、何十年ぶりかに思い出したぞ。
でも、決してそれだけでなく、新幹線の切符を忘れてギリギリ間に合う件りや、狛江のコミュニティバスの描写や、刀剣を担いでチャリで都庁に向かう場面など、躍動感と臨場感にも溢れている。
クラウド、EPレコード、カセットテープ…新旧入り乱れる媒体への「保存」というモチーフが貫かれているのは何とも慧眼。
Posted by ブクログ
爽やかな読後感だった、の様に表す事が少し憚られるが…、私がその様に(爽やかだったと)感じるのは、自分が概ね主人公と同世代で、就いた職種こそ違えど時代ごとの同じ様なモノ、コト、に興味を持ち、同好の士と集い、語らい、…という経験を経て来ているからであろう…
私が「憚られる」と書いたのは、主人公とその周りの人物がいずれも「オタク」的な視点、生きがい、興味の対象、を持っている事が生き生きと描かれているからかもしれない。その生き生きとしたさまに多いに頷かされるのだが、果たしてこの楽しさを自分の身の回りの人(非オタクが多い)にすべからく上手く伝えられるか?、と言うと疑問ですらあったからである。
ただ、作者が創作した登場人物は全て愛すべき、「オタク」達である。また、同世代ばかりで無く、少し上の世代、はたまた今どきの若者世代までの広く、友好的な反応を楽しめる事も作品としての優しさを感じる。
…実は装丁を見た時からわくわくしていた。だいたい知っているもの達のコラージュであったので。ただ、1、2枚だけ「オタク」とは場違いなスポーツカーの画像が挿し込まれており、疑問を感じていたのだが…、最終章まで読み終えて納得した。
Posted by ブクログ
面白かった~。
語られる”モノ”が世代的にツボなのは間違いないのだが、いちいち、納得感あるセンテンスが沢山ありました。(長嶋さんはボクより8歳下なのですが、まるで同じ世代を生きてきたかのような錯覚。。)
あいにくMSXパソコンは使ってなかったけど、最初に買ったマックはLC630だったし。。。
還暦を迎えていろいろなものが家の中やネット上に「保存」されちゃってる。整理、整頓、断捨離せねば。。。もはや終活か。。
Posted by ブクログ
非日常な出来事がいくつもでてくるのに、なぜか淡々とお話は進む。
新旧織り交ぜたブルボン小林寄りの話も興味深く、テスラまで網羅しているとは、なかなかに勉強になった(笑)
著者らしい作品、なんだか心が和み、休まったのでした。
Posted by ブクログ
著者の長嶋有さんは同年代だ。
みゆきやレコードプレーヤーがカバーにプリントされているのでそんな予感がした。
共感できたのは、[メモリの容量が不足しています]のところかな。なんか、うわってなるよなぁって。無料で使わせていただいているのに。
目に見えないもの。その実体はどこに存在するのか?
昔はファクス、今はクラウド、、、?
便利だから仕組みをわかったふりして利用してますが、何か?
実体が無いようなものでも保存には限度がある。人の記憶も保存容量が関係しているのかな。最近保存先がなかなか見つからないことが増えてきたかも。
Posted by ブクログ
マガジンハウス系の雑誌のコラムっぽい。オシャレと泥臭さのセンス。距離感も東京っぽいなぁ。
パソコン黎明期をやった時代。ノスタルジーと一言で片付けるのには生々しく軽い記憶の断片。人とも記憶とも絶妙な距離の取り方が心地よかった。空気感がすごい。
Posted by ブクログ
今作も作者ならではの、言葉にできないちょっとした気持ちの機微を見事に表現してくれる文がいくつもあって楽しめた。
話はMSXという昔のパソコンをキーワードにそれを昔もっていたり持っていなかったりした人が少しづつ関わっていって、「ロードムービー」というより、ちょっと少ないロバートアルトマンの群像劇的的。
世代的にはギリ当てはまるのだけど、MSXは見たこともないので、そのを熱く語られてもよく分からず。いつも作品よりより今回はいろんなことが「起こる」のだけど、だからと言って印象がドラマチックにならないところがさすが。今のところすぐに2回目を読もうとは思わなかったから3点。でもまた読みたい。