長嶋有のレビュー一覧
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表紙がとても綺麗で手に取りました。
二十四節気は知っていても、それをさらに三等分した七十二候は知らない人が多いのでは?
わたしも今回初めて知りました。
雉始雊(きじはじめてなく)というように、動詞で示されているのが、分かりやすい。
どれも現代人にも理解できるもので、時代が変わっても季節の移ろいは変わらないものだなと思います。
この本では、二十四節気の春夏部分を抜き出し、また、各節気の真ん中の七十二候をタイトルに各自が短編をお書きになっています。
思えば、短い作品は触れてこなかったので、どれも不思議な余韻を残す終わり方で、こちらの想像力や読解力を掻き立てるなぁと短編の面白みを初めて知りま -
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星子、娘・拠(より)、恋人・称(かなう)、友人・志保、大人だってたくさん楽しみがあり、恋もする。そんなことを思い出させてくれる一冊。登場人物たちの名前がとってもタイプ。
p.106
「人って、なにかに失敗してからずっと、失敗したままの状態で過ごすことって、なかなかないじゃないですか。たとえば、花瓶が割れたらーそれは失敗だけどーでもすぐに片付けるでしょう。花瓶の破片を」
「たしかに、ずっと割れたままの部屋で暮らし続けないですね」
「そうしないと、少しずつ荒みますよね。部屋に死体があるみたいにすごく悲惨なことではないけど、いちいち破片を意識して暮らすのって」言いながら、ダーツを持つ手の肘から先 -
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東日本大震災の爪痕も生々しい2011年7月~2014年4月までの出来事を春菜、美里、神子の三人を中心に綴られている
実際にあったことをベースに書かれているので、誰かのゴシップや亡くなったことなど…ああ、こういうことあったなと当時を思い返すことが多かった
辛い出来事がどれだけたくさんあっても、それでも日々は続いていくという予感で終わっている所が良い
そこにただ生きる人々を真摯に描いている
読み終わったあと、トムラウシ山遭難事故を調べたけど、中々凄惨な内容だった…
こんな大規模な遭難事故なのに、全く知らなかった自分にちょっとショックを受けた -
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2003年〜2010年に各誌で発表された短編を集めた一冊。それぞれに共通のテーマや関連はないが、どれをとっても長嶋節という感じ。
穏やかならぬ展開を見せる作品も中にはあるものの、日常の他愛ない場面を切り取って、誰しもが心にちょっとだけ引っかかっている感情を呼び起こすテイストが通底している。
PHS、オザケンの『LIFE』を録音したMD、木村カエラの『sakusaku』、「四角いニカクがまあるくおさめる」やつ、などスマホ前時代の風物がちょっと懐かしい。
さらには、浅香唯の『セシル』や夕方の『特捜最前線』再放送など、作者と同い年の自分からするとノスタルジーも甚だ。
高校時代の不良との甘塩っぱい -
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事故、自殺、早逝…誰かの不慮の死の報せに触れたとき、人は全く関わりがなく関心もなかったはずの他人の人生に思いを馳せたくなる。
誰もが思い当たるこの心情に踏み込むニッチな語り口。
この小説は、2011年の大震災で多くの生命が失われたことを契機にしている。2024年の元旦、能登でまた大きな地震があり予期せず失われた生命が多くあったことを報じる様子を聴きながら、このレビューを書いている。
巻末に「本作に登場する主な死者と死因」のリストが掲載されている。殆んどは現実に起きた(2014年以前のものだが)有名・無名の人の死ではあるが、明確に憶えているものもあれば、すっかり忘れかけていたものもある。
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古いだけで一見なんの変哲もない2Kの木造アパート。だが住み始めると、その間取りが少し変わっていることに気づく。
そんなおかしなアパートの一室、5号室を舞台に、そこに暮らした代々の住人たちを描く群像劇。
第52回谷崎潤一郎賞受賞作品。
◇
「変な間取りだ」
1982年、第1藤岡荘5号室に入居したばかりの三輪密人はそう思った。
内見することも間取り図を見ることもなく適当に決めた部屋である。6畳4畳半とキッチン3畳だが、ドアを入ったところに「玄関の間」とでも言うべきスペースもある。
けれど、玄関の間の先にはキッチンに入るドアと4畳半に入る障子が並んでいる。それら -
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子どもがいっぱしの一人の人間になっていく過程に驚いたり、近所の事件に後ろめたさを感じながらも興味津々だったり、他人事とは思えない夫婦の生活を描く表題作と、塾と矯正歯科を往復する日々を過ごす高校生の話『舟』。
どちらも取り止めのない思考の流れがリアルで、面白かった。
きっと普段の思考を全部文章に書き表したら、こんな感じが、もっと支離滅裂な(始点と終点で全然関係ないことになりそうな)感じになるんだろうな、と思う。
長嶋さんの作品は『ジャージの二人』のあの淡々とした、何も起きない日の描写が好きなのだが、本作もあの時と変わらない素朴さが良かった。 -
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ネタバレ不思議な読み口の作家さんでした。
ちょっと癖のある文章ですが、それが逆に癖になる書きぶり。また、30代位のアホでエロな男たちの挽歌とでも言いましょうか。主人公七郎やキャバ狂い!?の津田の行動に身に覚えがある男性諸氏も居るのではないでしょうか。
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本作『パラレル』、タイトルの意味は何でしょうか?
作品では『パラで付き合う』という表現がありました。複数の相手とへらへらと付き合うことを『パラで付き合う』と表現しており、それなのかなあ。
時間軸が「大学時代」「ちょっと前」「現在」と三つに飛び飛びに展開しましたが、それはジャンプであってパラレルでもないしなあ、と独りごち。
2004年という、