あらすじ
「私、結婚するかもしれないから」「すごいね」。小6の慎は、結婚をほのめかす母をクールに見つめ、母の恋人らしき男ともうまくやっていく。現実に立ち向う母を子どもの皮膚感覚であざやかに描いた芥川賞受賞作に加え、大胆でかっこいい父の愛人・洋子さんと小4の薫の奇妙な夏の日々を爽やかに綴った文學界新人賞受賞作「サイドカーに犬」を収録。子どもの視点がうつしだすあっけらかんとした現実に、読み手までも小学生の日々に引き戻される傑作短篇2篇。
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▪️サイドカーに犬
洋子さんが薫に「私の脚さわってみる?」と聞くシーンが好きだ。寂しさや怖さを紛らわせるために抱きつく場合を除いて、子供が大人に触れることは何かタブーのような気が当時はしていた。少なくとも大人の脚に触れた記憶は自分にはない。(忘れているだけかも知れないが)
脚に触れるとき、きっと薫はドキドキしたであろう。大人ってこうなんだと。大人ってかたいんだと。脳内にある大人という存在に感触が加わることは薫の世界を広げてくれたであろう。
ヤマシタトモコさんの『違国日記』(漫画)を読んだ際にも感じたが、ルールは大人から与えられるものではなく自分で決めていいものなのだ。大人なんて実は大したことないのだ。と気づかせてくれる存在は本当に貴重だと思う。
自分が初めてそれに気づいた時、おい、だったら人生ってめちゃくちゃ楽しいじゃねぇかと、まだ自分は人生のスタートラインに立っていなかったのかと、瞳孔を開いてこれまで見ていた景色を再度見渡したことを思い出した。
修羅場から逃亡するお父さん、ダサくて最高だったな。
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『サイドカーに犬』と『猛スピードで母は』の2編
個人的には前者の方が好みなのでそちらについて感想を書きたい。
ドイツ製のライトは洋子さんの芯の通った1人の女性を体現するアイテムだったと思う。
洋子さんと私の一夏の関係を描いた作品だったが洋子さんの存在が現在の私にどう影響し最後の「そろそろ」とは何を指すのか。
恐らくこの期を逃せば、私は独り立ちのできない理想をいえば洋子さんのような女性にはなれないのだろう。母のハンドバックを借りたと言う描写から未だに親離れしていと考える。
偽装硬貨が夏休みの終わりを知らせるベルというのは粋で最高のオチであった。
この作品は夏休みという限られた期間、無駄のない文といくつかのアイテム(チェーホフの銃)という必要最小限に洗練された話だった。
後者について一言書くとすれば
憂鬱でどんよりとした話であったが心が沈むほどには重く感じない。慎の成長とラストの爽快な絵がそうさせているのか救いようのないバッドエンドの手前であったからなのか。
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小説2本立て。どちらも貧困一歩手前で家庭に問題を抱えていて...というような設定であるが、一般的にいう毒親みたいな大人は出てこず、大人たちは子供に彼等なりの庇護を与え子供たちも自然にそれを受けているように見えた。常識的にそれは如何なの?という点はさておき、愛情の形は様々でそれぞれに逞しく美しいと感じた。
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「サイドカーに犬」の洋子さんは強かで恰好良い人だと思った。音もなくひとりで泣く所、すぐに泣き止んで散歩に行く所、私と接する時も無邪気でいる所が魅力的に感じた。
粛々と物語は進んでいくけれど、軽さはなく、きちんと心に入ってくる感覚。
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111108さん、ようやく長嶋有さん読みました!
良い小説でした…。
・サイドカーに犬
母が家出し、小学生女子の薫が、父と、一風変わった父の愛人の洋子さんと、弟と、父の仕事仲間たちと過ごした一夏の物語。
淡々と綴られていく気だるい夏のエピソード、父の不祥事によって意外に派手にバタバタと幕を閉じるラスト、偽造硬貨で鳴り響く「夏休みの終わりを告げるベル」に、大切なものがなくなる前の最後のきらめきとノスタルジーを感じた。
何より、大人になった薫が、洋子さんを思い出して「そろそろなんじゃないか」と、人生が劇的に変わる何かを予感するような最終ページが、すごく良かった。
子供の目から描いているからこそ、洋子さんのかっこよさが際立っている。
また夏に読み返したいような中編で、個人的には表題作より好き。
・猛スピードで母は
とにかく、母が団地の梯子を登って、ベランダ伝いに自室まで渡っていくシーンからラストにかけてが心に残った。
私としては、「猛スピード」な母の型破りな愛情が、遠回りして慎に届く場面のように思った。
こちらの小説も、何度か読み返したらいろいろ発見がありそう。
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麦チョコ食べたい、ボーリング場の跡のスーパー楽しそう、コーヒーカップで我が家も緑茶飲んでるわ、洋子さんのチャリ、洋子さんが薫の年齢聞くタイミング、トド見たいなぁ、慎の心情の移ろい、須藤くんが「トド鳴かなくなったね」と言ったところ、慎の新担任に対する慎の向き合い方、祖母の棺桶に宝石のチラシ、薫の別の何かが「そろそろなんじゃないか」の最後の一文、色々な感情スクラップアンドビルドの連続。うまく感想を言語化できず印象に残ってるところを羅列しただけ。一気に読んだ。
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「サイドカーに犬」5…小4女子と父の愛人・洋子さんとの交流。著者と同世代だから余計そう感じるのかもしれないが、完全に精神がタイムスリップした。
「猛スピードで母は」4…母子家庭の小6男子の淡々とした日常。子供の思考描写がすっと納得してしまうような生々しさがある。
どちらの作品も「破天荒なオトナ」により閉鎖空間に楔を打ち込まれたときの子供たちの衝撃が描かれていた。
自分は幸か不幸か周囲が真っ当な(?)大人ばかりだったので、このパラダイムシフトがめちゃくちゃ遅かった。それがコンプレックスでもあり、20代の放蕩生活の遠因になったと思っている。
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語られる内容は決して軽いものではないはずなのに、その重さを感じさせない爽やかな描写がよかった。懐かしさすら覚える文体が好き。ムーギチョコ/ムギーチョコうける。
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懐かしの昭和後期。芥川賞候補作と受賞作。どちらも読みやすい。昨今の芥川賞、設定が凝りすぎているものも多くて読むのがしんどいなってときはこの年代の作品を読み返すのもありかな。
サイドカーに犬
芥川賞候補作。母が家を出て知らない女が家に来た。
猛スピードで母は
芥川賞受賞作。ハードボイルドな母は強し。
サイドカーの主人公は小四女子、猛スピードの主人公は小六男子、この二作品は一冊の本として纏められてしかるべき作品だ。バラバラだと魅力は半減するかもしれない。母と子の関係を通した昭和の空気感がとても懐かしい。タイパ、コスパというものがまだ存在しない時間の流れに身を浸すことができた。
長嶋さん1972年生まれ、同級生じゃないですか!道理で書かれているのが昭和の(私にとって)懐かしい風景なわけだ…。
この年代、なかなかに文学界で著名な方が多いなぁ、嬉しい。
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⚫︎感想
離婚しそうな、またはシングルの親を持つ設定の2篇。どちらもタイトルにインパクトがあり、同じく大人との距離と自立がテーマだと思った。
「サイドカーに犬」母の家出後、洋子さんという父の愛人と暮らすことになる。母とは全く違うタイプで自由な女性。「猛スピードで母は」は彼氏はできるが長続きせず、そんな母を見ながら育つ少年。
どちらも、スカッとしたカッコいい女性像でありながら、100%そういうわけでもない一面を見て、少年少女は彼らの生活を通しながら、少しずつ少しずつ精神的に大人になる。母に大きな出来事が起こっても、冷静な自分を発見し、驚くという場面が二作ともあった。そこがまた、現実味がある気がした。なんにせよ、日常は否応なしに続いていくから。
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
「私、結婚するかもしれないから」「すごいね」。小6の慎は、結婚をほのめかす母をクールに見つめ、母の恋人らしき男ともうまくやっていく。現実に立ち向う母を子どもの皮膚感覚であざやかに描いた芥川賞受賞作に加え、大胆でかっこいい父の愛人・洋子さんと小4の薫の奇妙な夏の日々を爽やかに綴った文學界新人賞受賞作「サイドカーに犬」を収録。子どもの視点がうつしだすあっけらかんとした現実に、読み手までも小学生の日々に引き戻される傑作短篇2篇。
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芥川賞受賞の表題作+文學界新人賞受賞のサイドカーに犬 の2作品が収録されている。
いずれの作品も、主人公の目線で、自由で強くてでもちょっと悲しい女性が丁寧に描かれて、なんとなくブルーな世界に落ちていく感じ。
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借り物。
コインロッカー・ベイビーズが途中だったけれど、そちらがかなり重く、心身が疲れきっていたので、こちらを読んでみた。
短編が2つ。軽くて穏やかな文章。こういう大人でいいんだよと思った。
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登場人物の少なさが気に入った。無駄がない。中編二つ。デビュー作の「サイドカーに犬」と、芥川賞受賞作の表題作。どちらもタイトルがすごくいい。センスの良さを感じる。ブルボン小林名義のコラムはよく読んでいたが、長嶋有の本は初めて。
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「サイドカーに犬」「猛スピードで母は」
どちらも子供と、親(またはその愛人)の話。
「ぼくは落ち着きがない」を読んでから、この作品を読んだが、
主人公はたいてい考えるのが好きで、集団だと少し浮いてしまうところがあって、近くに"カッコ良い人"がいる。
この作品だと"カッコ良い人"は、父の愛人・洋子さんと、主人公(慎)の母。
たぶんそういう癖。
私は洋子さんもお母さんもナス先輩も好き。
ワーゲンを猛スピードで追い越すくらい、突き抜けてるのがカッコ良い。
カッコ良さが突き抜けてないと、慎をいじめた中学生みたいになる。
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「サイドカーに犬」と「猛スピードで母は」の2話編成。
サイドカーに犬:小学校四年生の女の子と母親が家出中に急に転がり込んできた父親の愛人との友情物語。設定とは裏腹に二人の関係がとても爽快に描かれていて、物語に吸い込まれるような感じ。周りを巻き込んでく強さを持っていてどこか憧れる愛人の人物像が印象的。映画では竹内結子が演じてるそうですね。
猛スピードで母は:シングルマザーの母親と小学5年生の息子との、依存から自立への過程をを描いた物語。この作品も母親の人物像が印象的。一見強引で自分中心に物事を進めるものの行動の裏にどこか表には出ない愛情が潜んでることが感じられます。だからこそ息子が異様になついてる。結末が明確に描かれていなくてフェイドアウトしてく感じがとても心地いいです。
さすが芥川賞受賞作。なんか勝手に両作の主事項の人柄に憧れさせられます。とてもお勧めです。
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目次
・サイドカーに犬
・猛スピードで母は
「サイドカーに犬」「猛スピードで母は」のどちらも、子どもの日常が子どもの目線で書かれているのだが、そのどちらもが親との精神的距離がある。
親を嫌いなわけではない。
親も、子どもを嫌いなわけではない。
ただ、子どもの他にいろいろとあるのだ。好きなこと、やらなきゃならないこと。
子どもはそれを知っているから、いつか、親に捨てられるかもしれないことを心のどこかで知っている。
それは特に寂しいことではない、とも思っている。
結局捨てられることはないのだけれど。
どちらの作品も主人公の心は終始フラットで、時々不安に駆られることはあっても、大笑いしたり激怒したり泣きわめいたりはしない。
無口ではあるけれど、心の中ではいろんなことを考えている彼らは、自分の感情くらい理屈で納得させることができるのだ。
ああ、それはまさに、子ども時代の私のようで。
無口でぼうっとしていた私は、子どもらしくないと言われ、しっかりしろと言われたけれど、心の中では自分の考えをはっきりと表明できる人に憧れた。
それは「サイドカーに犬」の洋子さんであり、「猛スピードで母は」の母だ。
それにしても母たちよ、子どもを簡単に捨てるな。
捨てるなら、その後の生活の保証をしてからにしろ。
捨てられたと思わせるな。
と、読みながら思う。
私は物理的に母に捨てられたことはないけれど、母がもう少しアクティブな性格だったら、きっと捨てられていただろうな。
そして私は、それを淋しく思わなかっただろう。
厄介なことになった、とは思うだろうけれど。
そんなことを考えながら読んだので、読後切なくなってしまったのだ。
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◯サイドカーに犬
子供ながらに親の入れ替わりを不思議と思うことなくなんとなく受け入れてそれなりに親しんでいく。不器用ながらもしっかりと私に愛情を注いでいる洋子さん。感受性豊かで雑なところがある分、子供としてみられがちなだけど、今でも私はある意味尊敬していて、逆に自分に情けなさを感じる。キレイに生きるのではなく、がむしゃらに大切な人のことを大切と言える人、何事にも全力でぶつかれる人を「大人」と感じている私。ラストの私もそろそろかなぁのところは、そういう意味だと感じた。
夜な夜な読みました。
優しくて切ない物語。文章の表現がその時の状況をよく想像させるので、夜中の静かな時間に読むのにぴったりな雰囲気の本でした。
子供は親を選べない、どんな親だろうとその人の子供に生まれたからには、一緒にいるしか生活できない子供たち。
親も子供は選べないはずだけど、この親たちは本に登場する子供たちが自分の子でいてくれて良かったなと思います。
女性にとって子供を宿し産み育てるということは、一生の人生がかかったことなのだと感じます。
男性にとって一生愛せないかもしれない女性が自分の子供を宿し産むということが、自身の一生において、どれほどのことなのか。
今愛していると感じている相手の男性や女性を、一生愛し続けることを想像する以上に、自分の人生の中で子供を一生愛し続けるということがどんなことなのか、男女共に深く想像できるきっかけが増える社会になるように願うばかりです。
子供への虐待や無関心が生み出す現代の悲しい事件を色々と感じてしまう一冊でした。
Posted by ブクログ
学生が夏休みに読むのにピッタリかなと思うものの自分としては、何となく読み終わった感じ。
2作掲載されていて、いずれも思春期の子供が少し特有な家庭環境での日常の出来事やそれに対する心情描写の作品でスッキリしたオチがある訳ではなく、この後どうなるの?で終わる感じだった。
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当たり前のことだけど、子供目線で親に育てられてきた。これからは、親目線で子供を育てる側になるから、そのときはこの本で描かれているような、強いお母さんになりたい。
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「サイドカーに犬」は面白かったけど、「猛スピードで母は」は、微妙だったかな。
「サイドカーに犬」は、サバサバした洋子さんや犬が座るサイドカーへの主人公の少女の憧れが丁寧な描写で描かれていて、ひとつひとつのエピソードが電球を灯したように脳裏で再生されて読んでいて面白かった。
「猛スピードで母は」は、曇り空のようにくすんだ内容の割に暗い気持ちに沈まない作品。
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どこか懐かしくて、切ないお話しでした
子供の視点で親の不在や不安定な家庭環境が描かれ、いまの仲良し親子ではない、どこかドライな関係性が印象的でした
親が自分なりに生きる姿を見せれば、子供はちゃんと育つのかもしれません
そんなことを考えさせられました
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外から、状況だけを箇条書き程度で聞いたら、勝手に憐れんでしまうような話。
でも、中にいる当人の目線で語られる話しは、どことなく軽やかで悲壮感がない。
自分の狭い価値観で勝手に断じるのはよくないよね、ということを感じさせてくれた。多様性は大事だね。
ちょっとしたエッセイくらいの感じで軽く読めて良かった。
Posted by ブクログ
芥川賞としては、あっさり読みやすく所謂モヤモヤする感じは無く軽め。
文章構成は上手いし平易な文体で手に届く小さい世界を上手く描いてる。
難解さはなく不快感もほぼない。作者自身の人柄が前向きなんだろうと思う。
ただ、人の奥に潜んでる闇や美のようなものは描かれていないのが、芥川賞にしては物足りないと思われ、選評もやや割れていた笑。
選評委員では宮本輝氏、池澤夏樹氏、河野多恵子氏が◎
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2001年第92回文學界新人賞受賞作の「サイドカーに犬」と2002年第126回芥川賞受賞作の表題作「猛スピードで母は」の2作品収録の短編集。
2作品とも子どもの視点から大人を捉えている。「サイドカーに犬」は父の愛人、「猛スピードで母は」は母親だが、どちらもやっていることはどうなんだろうと思うが、格好よく見えてしまう。ここまで振り切れてしまっている人というのは、案外そういう風に見えるものなのかもしれない。話題も話題なので明るい話ではないが、読後感は想像以上にスッキリする不思議な魅力のある作品。
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文學界新人賞受賞作「サイドカーに犬」と芥川賞受賞作の「猛スピードで母は」の2作を収録した贅沢な本書。
どちらも、同じ世界を幼い頃の物事をあまり理解していない目と、大人の現実感をもった目で描かれている感じが読んでいて裏表紙にあった"皮膚感覚で描いた"とはこの空気感かと思った。
とんでもない大事件が起こるわけでもなく、それぞれがもつ人生の一部分をフォーカスしただけの話なんだけど、知らずに岐路になっていた部分って感じがして良かったな。
長嶋有さんの本はこれが初めてだったんだけど、色々読んでみたくなった。
Posted by ブクログ
大人の事情に巻き込まれながら淡々と暮らす2組の子どもの視点から描かれた物語。色々感じながらも大人に全てを聞くことはできず、恨むこともなく受け入れようとする複雑な心理描写が素晴らしい。1話目の洋子さん、2話目の母、どちらも子どもを大人のように扱い、自らも意思を持って人生を歩む姿がかっこいい。
Posted by ブクログ
サイドカーに犬
母親が家出した小四の夏休みに薫ちゃんちに来た,ちょっとガサツなところが魅力的な洋子さんと父親(+父親の変な仲間)についての薫ちゃんの思い出話.洋子さんとの別れは意外であっけない.
飼われている想像が心地よいものだったのは,カッコイイ洋子さんとごっこ遊びをしている感じだったのかな.父を思い出すととても愉快な気持ちになるっていうのがいい.洋子さんの年齢を追い越した薫さんが感じた「そろそろ」は何なのだろう.
猛スピードで母は
小学6年生の真面目でいい子の慎くん.いつも祖父母から再婚をせっつかれているちょっとカッコいいお母さんと二人で暮らしている.お母さんから結婚するかもと告げられて,慎一さんを紹介される.その後,お祖母さんが亡くなって,お母さんの結婚話も立ち消えになって,さらに慎くんはいじめられるようにもなってしまう.
読みやすい文章ながら慎くんの行為の描写がリアル.特に,デートに出かけた母親がなかなか帰ってこない所(「安心な気持ちになった」なんてすごいね)とか,霧の朝,ベランダ伝いに飛び移ってアパートの4Fの自宅に入ろうとする母親を見上げている場面の前後が印象的.