長嶋有のレビュー一覧

  • 問いのない答え

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    著者作品はすべて読んでるが、この本が発表したときは、Twitterの話ということでなぜか敬遠してしまい、今頃読んでみる。

    年数経って読んでみても、通信・デバイス関係の違い・古さは明らかでなんだけど、それでも今読んでみると、その時代にちゃんと人は考えていたなと分かる。
    しかし、今はどうなんだろう・・・とも思うけど。

    同じ時間軸の中に、多くの人が登場して混乱しながらも、それを巧みにつなげる著者のすごさに脱帽するのである。

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    2021年03月30日
  • 夕子ちゃんの近道

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    骨董品屋、フラココ屋の2階に居候する主人公の周りで繰り広げられる日常が描かれる。それぞれが思い悩みながらも、今ある自分の人生を生きる、ゆったりとした時間が流れるフラココ屋の空気を感じられて心地よい。登場人物がみな個性的で温かく、特にタイトルになっている夕子ちゃんは次女らしい自由さと、一生懸命なのに抜けているところが可愛らしい。

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    2021年02月27日
  • 猛スピードで母は

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    大人の事情に巻き込まれながら淡々と暮らす2組の子どもの視点から描かれた物語。色々感じながらも大人に全てを聞くことはできず、恨むこともなく受け入れようとする複雑な心理描写が素晴らしい。1話目の洋子さん、2話目の母、どちらも子どもを大人のように扱い、自らも意思を持って人生を歩む姿がかっこいい。

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    2021年02月11日
  • 三の隣は五号室

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    「文化住宅」というような、昔よくあった建物の1つの部屋の様々な移り変わりを、その部屋の中にある物や雰囲気をテーマにして優しく語り続けられていく。よくあるような手法に思えて、そういえば真新しい表現方法で楽しく読むことができました。
    それにしても密人さんの部屋の中にあった箱の中身は何だったんだろうか…?

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    2020年10月20日
  • 問いのない答え

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    好きな作家、西加奈子さんが推薦していたので読んでみた。群像っていうの?とにかく登場人物が多くて、そして違う人物のシーンへ変わる時の「一息」みたいなものが全く無くてすぐ変わる。だからところどころ「え?今は誰の話?」「また人変わった?」と混乱もしてしまう。登場人物をきちんと(?)把握するためにも片手間に読むのではなく、腰を据えて集中して読むのがおすすめです。

    「(○○だったら)なんと言いますか?」「(○○のとき)何をしたい?」などの質問の前半である(○○〜)部分を抜かして、「なんと言いますか?」「何をしたい?」と漠然とした質問をTwitterで投げかける。フォロアーたちは思い思いの答えを出してい

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    2020年09月25日
  • 問いのない答え

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    長嶋さんは言葉の感覚が敏感なのだろうなと思う。"積み重なる"SNSと"地続き"の自分たち、アイコンと自分の姿。
    半分世界観に浸かったくらいで読んだ、もっとのめり込めると思ってた。視点がくるくる変わり、(この人どんなひとだ?どのエピソードだっけ)と思ってたらおわっていた。笑
    私はSNSのアカウントをあまりリアルと連携させすぎたくない。いろんな使い方があるよね。端末上の自分とリアルの自分は別にしておきたい。「5つ星つけてよ」に続いてネット関連の本

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    2020年06月23日
  • 三の隣は五号室

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    NHKの72時間というドキュメンタリーを思い出した。ある場所を3日間定点観測する番組だが、この小説の場合はあるアパートの一室を数十年にわたって観察している。
    この部屋にやってきて、数年住み、去っていった、年齢も性別も経歴も異なる人たち。後から住む人たちは、前の住人たちとは全く関係はないのだけれど、なんとなくその痕跡を引き継いだり、同じようなことを思ったり、全然異なる生活を営んだりして暮らしていく。ある場所に積み重なる、様々な人生・時代の地層のような感じ。すごく面白い観点だなと思った。

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    2020年05月05日
  • 愛のようだ

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     ある場所から目的地に向かう車中の描写がほとんどを占める"車中小説"。

     若くても年をとっても人は誰かを好きになったり、その逆に好きでなくなったりする。上手くいくことばかりではないし後悔することもある。その普遍性と絶妙なニュアンスを描くのが長嶋さんは上手だと思う。

    "「本当に好きな人が出来られたら仕方ないよね」できられたら、と水谷さんは誤った実感のある言い方をした。"
    とか、上手く言えないけど、でもすごく分かる気がする。

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    2020年04月26日
  • 猛スピードで母は

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    ネタバレ

    サイドカーに犬
     母親が家出した小四の夏休みに薫ちゃんちに来た,ちょっとガサツなところが魅力的な洋子さんと父親(+父親の変な仲間)についての薫ちゃんの思い出話.洋子さんとの別れは意外であっけない.
     飼われている想像が心地よいものだったのは,カッコイイ洋子さんとごっこ遊びをしている感じだったのかな.父を思い出すととても愉快な気持ちになるっていうのがいい.洋子さんの年齢を追い越した薫さんが感じた「そろそろ」は何なのだろう.

    猛スピードで母は
     小学6年生の真面目でいい子の慎くん.いつも祖父母から再婚をせっつかれているちょっとカッコいいお母さんと二人で暮らしている.お母さんから結婚するかもと告げ

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    2020年04月09日
  • パラレル

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    初めて読んだ長嶋有さんの長編。
    感想難しいなぁ…というのが読後最初に思ったこと。面白さを楽しむ系統ではないし、ハラハラドキドキもしないし、ときめく系統でもないし、謎解きもないし。
    言葉や登場人物の台詞が印象に残る系統、とでも言えばいいのか。

    主人公の失職と妻の浮気がきっかけで(どちらが先か?という問いもあり)離婚した主人公夫婦。だけど離婚後も元妻から毎日連絡が来て、2人は頻繁に会っている。
    昔からの友人の津田はプレイボーイで、日々女の子を取っ替え引っ替えしているところが逆に厭世的に見える。主人公はプレイボーイではないものの、時々若い女の子と一夜を共にしたりする。
    主人公と津田の会話が俗っぽく

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    2020年03月31日
  • 佐渡の三人

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    祖父と祖母、その隣に住む大叔父と大叔母が相次いで亡くなり、孫の道子と家族、親族たちが、それぞれの遺骨をお墓のある佐渡まで納骨に行くというだけの話。
    たったそれだけ、3度の納骨という出来事だけでこれだけの作品が描けるのが本当にすごい。

    「焦らずたゆまずな」が口癖の祖母・みつこも、ヒネている時期が長かったから友達と会話する自分を「よかったよかった」みたいな目で見られるのが鬱陶しくて平坦を装うひきこもりの弟も、通夜の席で道子たちに「ドストエフスキーは・・・」と文学論をさんざん説諭したあと「・・・なんつって」と締めくくり皆を脱力させるブンガク老人の大叔父も、みんな可愛くて、優しくて、愛おしい。

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    2020年02月11日
  • パラレル

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    ネタバレ

    「結婚は文化であります。
    夫婦のようになった、と感じる時、その二人の間には確かに文化が芽生えているのです。(それ、がなにかわかる、建具を開ける力の入れ具合を二人だけが会得している)そういう些細なものの集合体は全て文化で、外側の人には得られないものなのです。
    籍を入れずに同棲することを選カップルもいます。恋人のままでいいじゃないか、と。だけれども、これは断言しても良いですが、文化のない場所に人間は長くいられません。
    お二人は夫婦という文化に守られるのではなく、結婚によって自分たちを守る文化を築いていってください。」

    「物語が終わるのは「悲しい」だけど、文化がなくなるのは「怖い」なんだ」

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    2019年11月29日
  • タンノイのエジンバラ

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    長嶋有の短編集。淡々と何が起こってどうしたということが流れるように書かれており、伏線や表現など何も考えなくていい作品。

    公園で突然1万円を渡され、隣家の娘を世話するように依頼される。ステーキを焼き、家で一緒に食べ、娘の持ってきたCDを聴いてみる。聴くのは、祖父の遺品のオーディオシステムだ。

    短編が4篇。全編にに特徴的なのは表題作のとおり、固有名詞やそれぞれの特徴がこれでもかと描かれていること。小川洋子「原稿零枚日記」のときに感じた、今の小説に不足している点が、固有名詞が少なすぎる問題だが、この作品群に感じることはない。

    それぞれの作品で、情景はサラッとではあるがかなり細かく描かれる。逆に

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    2019年11月27日
  • 掌篇歳時記 春夏

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    季節の生江を表す二十四節気七十二候のうち春から夏の十二の候を題にして、十二人の作家の掌編集。
    七十二候のとらえかたが様々で、面白い。

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    2019年10月02日
  • 掌篇歳時記 春夏

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    村田沙耶香さんがやっぱ面白かった。どうやったらこんな不思議で面白いこと思いつくんだろう。
    私は野生に返るといって家を出た姉と、女3人で暮らし人工授精で子どもを持とうとしている妹の話。ぽうという声。
    村田さんの作品が読めたので大満足です。

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    2019年05月29日
  • 掌篇歳時記 春夏

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    二十四節気、七十二候テーマの12作。
    日々の変化や季節の移ろいを表す、その言葉の意味の楽しさにはっとする瞬間。
    流されるままの同じ日々だと見誤っているわたしへの気づきになればいいな。

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    2019年05月21日
  • 掌篇歳時記 春夏

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    12人の作家さんが旧暦の七十二候をテーマに執筆した小説集。春夏編。
    気になる作家さんが書いているので読んでみたかったのです。それに12人! 豪華執筆陣。装丁も綺麗ね。季節を表す言葉、日々の生活で変化を感じたこと、素敵で、自分の生活も日々に流されるだけでなく、自然の声に目を向けたくなりました。それぞれ短いですが、作家さんの色が出ていて楽しめました…際立っていたのは村田沙耶香さん、好み的には前半の方。

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    2019年05月17日
  • 佐渡の三人

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    これは割とつまらんぞな。次元大介の言葉を借りるなら、つまらんものを読んでしまった、ってやつだ。五衛門先生か。
    まぁ何がつまらんって、盛り上がりにかけるというか、なんかこう、もっとあるあろう、と。なんもないところにも煙を立たせる、みたいなみのもんた的な煽りが欲しかったわけですよ。
    とは言えこの話の中のいろんな人の生き方は共感できるというか、こんな風に生きたい、というか死に様というか、だいたい墓に骨を埋める話ばっかりなんで、ゆるゆると死後の雑事をこなしていくのが、イイネ!つける感じだけど、それを語られてもつまらんのよ。
    まぁそれとこれとは別って話なわけね。

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    2019年04月02日
  • 泣かない女はいない

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    控えめな日常。
    でもそんな日常から少しだけはみ出る様な感覚が心地よい。

    泣かない女はいない
    なんて美しいタイトルなんだろう。

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    2018年10月21日
  • 問いのない答え

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    ネタバレ

    何よりも加藤のことに思いを巡らせる。

    人物・場面の切り替え、人の交換可能性、については、してやられたり。

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    2018年01月29日