あらすじ
風呂の攪拌(かくはん)棒を人にあげたがる女、鋸(のこぎり)を上手に使う娘、北の湖を下の名前で呼ぶフランス人、そして空気の抜けるような相槌をうつ主人公……。自覚のない(少しだけの)変人たちがうろうろと、しかし優しく動き、語りあう不思議なユートピア。柔らかな題名とは裏腹の実験作でもある、第1回大江健三郎賞受賞作。(講談社文庫)
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
長嶋先生の書く女の子の淡々とした魅力、朝子さん、夕子さんの描写で改めて上手いなぁ!って思う。ちょっと年上の女性たち、瑞枝さん、フランソワーズさんも。
さりげなく自分をこのフラココ屋のアルバイトに据えながらそして尚且つ正体不明の男にしておきながらも皆から嫌われずかといって愛されもせず確固たる位置を占める人物にしているところ、相変わらず、長嶋先生の人生の楽しみ方を振り返り振り返り見てしまう。
この本を読むのは多分三度目。
Posted by ブクログ
「夕子ちゃんの近道」(長嶋有)[電子書籍版]を読んだ。このムニャムニャした?ちょっと違う、モサモサ?違う!う〜、とにかく一粒一粒がしっかり立っていてそれでいて全体としてはもっちり感のある独特なテイストがとても良いです。長嶋有さんの作品は初めてだな。これはもっと読まねばなるまい。
Posted by ブクログ
ほんわか
・川上 弘美さんの古道具屋中野商店と設定が似ていると
感じましたがそれよりも、ずっと安心して読める作品でした。
・世の中、無理して、頑張りすぎる人ばかりではなくて
穏やかな生活も肯定されていいと思える内容でした。
・主人公たちの深い恋愛はなくても、ちょっといい関係、
距離感がほんわかして好きでした。
Posted by ブクログ
とてつもなくここちよく、ぼくにとっては、とてつもなくスリリングな作品。だって、この作品を読んでいて、何度か電車を乗り過ごした、乗り過ごしそうになった。
でも、このここちよさは、きっちり、ていねいに物語ることを意識した、作者の力量だと思う。
Posted by ブクログ
フラココ屋で店番をする主人公と、
そこにあつまる色々な人たちとの関わりを描いたお話です。
つかみどころがなくて、ふわふわ~っとしている空気感の中で
妙にしっかりとした人物描写だったり
色鮮やかに浮かぶ風景だったり音だったり
なんかほんとに、一緒にフラココ屋で過ごした気分
ところどころクスッと笑えるとことか好き。
Posted by ブクログ
アンティークというよりも古道具屋然としたフラココ屋。その2階の倉庫に居候する主人公の"僕"は、ほとんど売れない店番をしながら、どのような客が訪れたかをメモしている。のほほんとして商売気のない店長、毎日訪れてはお気に入りの長椅子に座っていく瑞枝さん、裏に住む大家の孫で、いつもノコギリで木を切っている美大生の朝子さん、時々フラココ屋の掃除などを手伝ってくれる、定時制高校生で朝子さんの妹の夕子さんとのちょっとした日常を綴るアンソロジー作品。
作中の登場人物にも直接指摘される「透明な」主人公は、何の欲もなくとにかく流されていく。元金持ちだという瑞枝さんには風呂の道具を押し付けられ、ちゃぶ台を持って電車に乗る。安い給料の代わりに、家賃無しで倉庫に寝泊まりしているだけだが、店長をはじめとしたいろいろな人に気に入られていく。
一方で、他の登場人物は軒並みクセが強く、様々な小さな事件を巻き起こすが、みんな楽しそうなのだ。
この手の芥川賞的な(これは大江健三郎賞だが)、純文学を志向する作品は、どことなく破滅的で退廃的な雰囲気の登場人物が多いが、本当にこの作品の良いところは、スクーターでコケても、大きな絵が偽物であっても(かどうかはわからないが)、高校生なのに妊娠しても、どこかみんな、あっけらかんと明るく過ごしているところが、この作品の醍醐味であろう。
長嶋有の他の作品にもあった、ライトノベル的にト書き分で会話や会話の返答を示したりするため、ところどころ読みにくいと感じるかもしれないが、この人はこういう作風なのである。だからといって高尚とか小難しいとか考えなくて良い。単純にエンターテインメントとして楽しんだら良い作品であろう。
Posted by ブクログ
『猛スピードで母は』を読み、同じ作者の作品を手に取った。
「働くのが嫌になってしまっただけだ。働くのだけではない、たとえば広くて暮らしやすい新居を探すことや、部屋を暖めるものを買いに行くことすら。」という語り手の心境に共感した。
Posted by ブクログ
インパクトのある事件が起こるわけでもなく、どんな話?って聞かれたら困る…けどなぜか、たまに読みたくなるお話。この世界の住人になりたくて。登場人物たちが周りにいてくれたら、少し優しく生きられる気がする。
Posted by ブクログ
遠回りが、案外一番の近道なんじゃないかと思える。立ち止まって考える時間。ちょっと空っぽになってみる自分。でも、やっぱり「今まで」は残っている私。
人生、織り込まれて生きているね、私たち。色合いはどんな仕上がりになるだろう。
Posted by ブクログ
なんだかぼやぼやした主人公と、個性的な周りの人びと。古道具屋を中心に淡々と話が進みます。
長嶋さんの、主人公を通したぼやきともつぶやきとも言える描写が大好きで、普段生活で感じるくだらない発見やモヤモヤが物語のあちこちで出て来る度ニヤニヤしてしまいます。
巻末に大江健三郎賞受賞時の大江氏の選評が載ってます。凄く的を得て魅力が分析されていて、あぁやっぱり良いなと再確認できました。
Posted by ブクログ
よろず扱う骨董屋「フラココ屋」に集うふつうの人たちの、ふつうの日々。
それが小説家の手に掛かれば、こんなに面白くて、こんなに愛おしいものになってしまう。
それぞれ中心となる人物を入れ替えた6(+1)編からなる連作短編集。骨董屋の2階から定点観測された彼らはふつうのようで、でもどこか変わっているところもあって、それがとても魅力的に目に映る。
本を読みながら私は実際に彼らに出逢い、フラココ屋の店先でお茶を飲み、夕子ちゃんに連れられて近道を辿り、朝子さんの卒業制作を眺めた。瑞枝さんの原付の音を聞いた。
まるで彼らのことが「前から分かっていた」みたいに、身近に感じた。幸福な読書体験だった。
Posted by ブクログ
こういうゆるゆるな大人同士の会話、好きだな。
たまに話し方が女っぽくなる店長とか。
「コンシーラー」「アイシャドー」とか、ついつい笑ってしまった。
Posted by ブクログ
もしかして、夕子ちゃんはこの世のいろんなことがもどかしいなあと思っているのかもしれないけど、本当は最初からできているんだよ。君は、この僕が恐れ敬う数少ない人なんだから、どんな時も泣いたりしないでよ。
夕子ちゃんは作中でほとんど主人公と会話をしない。強いて言うなら知り合いの知り合い、という感じ。なのになぜ上記のようなセリフが出てくるのか。そこが正直分からなかった。
けど、勝手に人を尊敬して憧れを持って、だからこそ泣いてほしくない、負けてほしくないという自分勝手な感情をこんなに綺麗にすっきりと表現した文章は見たことがなかったし、
本当は最初からできているんだよ、というところにこめられた優しさがすごく好き。
あと、上記の文章こそが作者が伝えたかったことなのかなと思う。
だとしたらそれまでの淡々とした日常とかも生きてくる?のかな?
表現とかはすごい好きな作者さんでした。
Posted by ブクログ
本作のように特に大きなハプニングが起こるわけではなく、淡々とした日常を描いていながらもどこか温かい作品が何故か好き。
興奮はないものの、読んでいてゆったりした気持ちになれます。
長嶋氏の他には吉田修一氏の作品にもたまにこんなのがありますよね。
Posted by ブクログ
なんといったらいいのでしょうか?
平凡な日常を、さらりと味わい深くかかれています。読み始めに掴みはないけれど、徐徐に長嶋ワールドにはまってしまいます。
少しだけ現実逃避をして得たものは、人との繋がりで、旅をしているという表現は的をえている、と思った
Posted by ブクログ
最近エッセー率が高かったからってのもあるけど、
最初ぜーんぜん読んでも入って来なくて(;^_^A
今回はダメかも。。。って思ってるうちに、
あの切ない感じがジワジワときました。
長嶋有さんの文章って、
そのときの体調とか心境にも左右されるなぁ。
べた凪の海って感じ?
今回も起こりそうで起こらない。
と思ったら意外なところで起こったり。
セリフとか間と状況とか・・・そのまぜこぜ具合が
ちょっとしたことをドラマチックに感じさせるというか。
私の何でもなさ過ぎる生活さえも物語に出来ちゃうような?!
そんな感じ。
Posted by ブクログ
いつまでもいつまでも話の続きを読んでいたい、と思った。この物語のなかに入っちゃって、登場人物たちと知り合いになりたい、とかさえ思うような。感動するような、ぐっとくるような、まして泣けるようなセリフがないところがまたよくて。物語中でも、「ここは会話のハイライトだぞ」と主人公が思いつつ、気のきいたことが言えないって場面があるんだけれど、いいなーと思った。普通の小説だったら、いいセリフがきそうなところにこないのがいい。で、なんとなく流れてすぎていくんだけれど、なんとなくなんとかなっていくという。こんな日常にあこがれるような。
Posted by ブクログ
古道具屋「フラココ屋」の二階に住み込みで働くことになった「僕」を語り手とする連作短編集。
店長や大家さんの孫姉妹、常連客など、少し変わった個性的な面々との、ささやかな日常の触れ合いが淡々と描かれる。第1回大江健三郎賞受賞作。
・・・
何だか淡々とした作品だった。或いはほのぼの系とでも言おうか。
骨董屋のバイトが主人公であり語り手。彼の周りを取り巻く人達の日常が穏やかに描かれる。
そこに(小さいのはあるが)大きな事件は起きず、バイトの主人公の心象風景や他の登場人物との会話が緩やかに展開する。
・・・
本作の作風、例えて言うならば、小川糸さんの作品や、中島京子さんの作品に似ているかもしれません。こんな感じだと伝わりますかね?ほのぼのした感じ。
そう言えば、「例える」という行為、なかなか難しい作業だなあと突然思い立つ。
世に広く膾炙する事例でもって共通理解を促す、といのが例えるという行為でありましょう。
私、小川糸さんだとか中島京子さんだとかに似ているだとか書きましたが、彼らの本を知らない人にはあまり(全然!)通じないかもなあ、と反省。というより、伝えるってのが難しいなあと改めて感じた次第。
・・・
さて、本作は第1回大江健三郎賞受賞作とのことで、大江健三郎氏本人が3章構成の大掛かりな解説を展開されていました。
内容は、言われてみればそうかもなあと思うこともあり、何だか簡単な事を小難しく捉えているかなあと思うこともあり。
偉い賞を背負うのも楽ではないかもなあ、とちょっと感じました。
・・・
といことで長嶋氏の作品、これで4作目でした。
長嶋氏の作品ではじめて読んだ『パラレル』がかなり男性目線の作品で、うーむちょっと馴染めんかも、と思いましたが、4作も読むとそれぞれ作風が異なり、色々書けるんだなあ、と改めて感嘆。
ほのぼの系だけどみょうちきりんな倫理観の押しつけみたいなのが一切なく、気持ちよく読めました。
結局「僕」は誰だかわからず、語り手不詳なまま終わる点もミステリアスでもありました。
Posted by ブクログ
「猛スピードで母は」にハマり、超速で買った長嶋有さん二作品目。
相変わらずのこのゆるり感。
良いですねぇ…( ´ ▽ ` )
修飾し過ぎない、伸びやかで透明感のある文体。
自然体を地で行く、さわやか純文学という感じでしょうか。
村上春樹さんとかとは真逆を行くイメージです。
そして、まあ何というかエモいですよねぇ…
お風呂のかき混ぜ棒とか、なんかそんなもん昔あったなぁ…とか(笑)
登場人物の名前とかも…朝子とか夕子とか…何か具合が絶妙ですよね。
あと、個人的にはもう瑞枝さんにひたすらにメロメロにされました…( ̄▽ ̄)
天真爛漫さとミステリアスさ、そしてときおり見せる弱さという、このバランスがもう絶妙で絶妙で…
今まで読んだ小説の中でも一番ハマった女性かも(笑)
「私の子供をつくってくれる?」のくだりとか…もう東京ラブストーリーを彷彿とさせる勢いでしたね…
こんな女性だったら、もはや騙されても良いからお付き合いしてみたいなぁ…
あと、全体的にはちょっと長過ぎたかなという気もしました。
けっこうな読み疲れ感あり…
こういう系の小説は、さらりと短く美しくで終わった方が良いのかなと。
まぁでも、それにしても長嶋さんの描く女性は素敵ですねぇ…(´∀`)
さあ、さらなる出会いを求めて次の一冊を…( ̄▽ ̄)
<印象に残った言葉>
・そんなことしてどうするのって問いかけてくる世界から、はみ出したいんだよ(P70)
・じゃあ君、私の子供つくってくれる(P110、瑞枝)
・「弱っている人は、人前に出ない方がいいんだ」こないだ昼間にガメラも海底で一人で傷を治していたよ。(P110)
<内容(「BOOK」データベースより)>
風呂の攪拌(かくはん)棒を人にあげたがる女、鋸(のこぎり)を上手に使う娘、北の湖を下の名前で呼ぶフランス人、そして空気の抜けるような相槌をうつ主人公……。自覚のない(少しだけの)変人たちがうろうろと、しかし優しく動き、語りあう不思議なユートピア。柔らかな題名とは裏腹の実験作でもある、第1回大江健三郎賞受賞作。(講談社文庫)
第1回大江健三郎賞受賞作、ついに文庫化。フラココ屋というアンティーク屋の2階に居候暮らしを始めた「僕」。店長、常連さん、店長の孫たちなど彼を取り巻く人々と時間の流れを丹念に描く。連作短編集。
Posted by ブクログ
骨董品屋、フラココ屋の2階に居候する主人公の周りで繰り広げられる日常が描かれる。それぞれが思い悩みながらも、今ある自分の人生を生きる、ゆったりとした時間が流れるフラココ屋の空気を感じられて心地よい。登場人物がみな個性的で温かく、特にタイトルになっている夕子ちゃんは次女らしい自由さと、一生懸命なのに抜けているところが可愛らしい。
Posted by ブクログ
骨董屋フラココ屋を舞台とした短編集。
非常に淡々としている。
人間模様はだんだん変化していくけれど、大きな事件やハラハラするようなことがあるわけではない。
こういう普通さが楽しめるときは味わい深い作品になるだろう、良くも悪くも人とタイミングを選ぶ作品だと思う。
Posted by ブクログ
アンティークショップを舞台とした連作短編集。
「透明で背景みたいなひと」と評される主人公は、最後まで、名前はおろか、生い立ちや年齢といったプロフィールの一切を明かされない。自分が何者かである必要がない、人生の中でぽっかり空いた「夏休み」のような時間をきりとった作品なのだとおもう。
ユーモアを交えた会話や描写、作品全体を包むゆるやかな空気感を楽しみつつ。それでもやはり、人は、ここにずっと留まり続けることはできないのだと感じた。此処から「ぼく」はどこに旅だっていくのだろう。
Posted by ブクログ
長嶋有さんの書くお話・文章は、かなり好みなんですが……。
これは、時折おもしろくて、時折つまらない、という印象でした。
すべてにおいて「なんなのだ?」と思ってしまいました。