【感想・ネタバレ】三の隣は五号室のレビュー

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Posted by ブクログ

とある古アパートの一室の、歴代住人たちの日常を切り取った短編集。

って書くとめちゃくちゃありきたりなんだけど、同じ章の中でも時代が目まぐるしく前後して、歴代住人たちのエピソードが入り組みながら、パズルのピースのように少しずつ展開されていく。
読み味は軽いのに、全体像は緻密に組み立てられているというアンバランスさ。
実はめちゃくちゃテクニカルなことをしてるんじゃないだろうか。長嶋有恐るべし。

大きな謎や事件が起こるわけではないので、そのあたりに話の推進力を求める人には退屈に感じるのも分かる。

ふと他人の家の中が見えてしまった瞬間に、「こんな生活してんのかな〜」なんて、つい考えてしまう自分にはめちゃくちゃ面白く読めた。

たぶん今後も読み返すお気に入りの一冊になりました。

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2023年01月23日

Posted by ブクログ

谷崎賞受賞作ってことで。そこまで文学文学してなくて、マルチ目線形式ってのも自分好み。しかも、同時代的横の繋がりじゃなく、時代を超越した縦の繋がりで描かれるのも、ちょっと斬新で良い感じ。マンションの同居人を色んな目線で書いた物語とか、家族三代にわたる物語とか、そういうのはちょくちょく目にするけど、本作のようなのはなかなかない気がする。知らんだけかも、だけど。何の気なしに過ごしてきたけど、賃貸物件って、確かに色んな謎の痕跡があるかも。そんなことをボヤっと考えながら楽しませてもらいました。

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2020年01月07日

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『三の隣は五号室』長嶋 有
こういう小説もアリなのか。純文学って本当に面白い。
ある人の何気ない暮らしが全く知らない別の人の暮らしに少しのドラマを与える。これを読んでいると、自分のマンションの『前の人』はここでどんなことを考えたんだろうとか、どこにベットを置いてどんなテレビを見てたんだろうとか分かるはずもないことを色々と想像してしまった。
解説で村田さやかさんが書いてたけど、自分もいつかはこの部屋において誰かの『前の人』になるだろうし、自分はその誰かのことなんてどうでもいいんだろうな。

 何にもしていない時間でも人は思った以上に「生きて」いて、自分とは別の誰かに何かしらの影響を与えている。すごくドラマチックだなぁと思いました。

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2021年08月01日

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ネタバレ

★星4.4
初めての作家さん。
第一藤岡荘五号室に、1966年~2016年の間に入居した13人(世帯)の住人の、それぞれの物語。
物語は、時系列ではなくランダムにそれぞれの住人にスポットが当たるってのがテンポ良くて好き。
最終章は、何かあるんじゃないか!って思わせるようなフラグがありちょっとハラハラ…でも結局、日常に戻るのが、この物語の良さなのかなって思いました。
何気ない日常を描く、とっても好きなタイプのお話でした。

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2021年05月07日

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第一藤岡荘の5号室を舞台に、同室に居住した合計13代の住人が織りなす物語。方法論としては「問いのない答え」と同様、多くの人々・出来事が連想ゲームのようにつながっていくというところなのだろうが、「問いのない答え」よりもさらに研ぎ澄まされているように感じる。何しろ、場所は同じ五号室でも、時間を前後していったり来たりしながらなんの違和感もなく、しかしなんでもないのにちょっとひっかかる言葉が、結構ページ数を離れてもしっかりと想起されるようにできている、というのは物凄いことではないだろうか。そこで描かれていることは他愛のないことかもしれないが、しかし時を超え人々が共有するものがある、ということが、何か意味があるような気がしてくる。それが大事なのではないか。なお本作は住人達の名前が第1代から13代までどこかにその代の数字を含んでいるということで、アパートものの傑作である「めぞん一刻」へのオマージュを捧げていると思われるが、アパートものの傑作としても数えられるであろう。
「人生にはしばしば、そういう時間がある。誰も自ら語らないし誰から語られることもないが、あるはずだ。側溝や、自動販売機の下に転がっていった小銭に手を伸ばしたり、瓶になにげなく差し込んだ指が抜け亡くなったり、タイルとタイルの間のもう落ちない黒ずみをこすったり、洗面台の排水溝に落としてしまった母親の指輪を拾い上げようとしたり。そういうときのあらゆる苦闘を『人生の時間』と誰も思っていない。だけど、仕事や恋愛や、なにか大事な時間を経たのと『同じ』人生の時間上にそれらのこともあるはずだ。」

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2021年01月04日

Posted by ブクログ

無理だ。仕組みは出だしで理解したけど、章が変わってもしっくりこんのよ。多数出るしバトン渡す感覚もいいと思うけど入って来ん。猛スピードと佐渡の3人は気に入ったけどその後が感想見ると今回も含めて思ったのと違うってこと

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2023年12月25日

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 古いだけで一見なんの変哲もない2Kの木造アパート。だが住み始めると、その間取りが少し変わっていることに気づく。
 そんなおかしなアパートの一室、5号室を舞台に、そこに暮らした代々の住人たちを描く群像劇。
 第52回谷崎潤一郎賞受賞作品。
         ◇
 「変な間取りだ」
1982年、第1藤岡荘5号室に入居したばかりの三輪密人はそう思った。

 内見することも間取り図を見ることもなく適当に決めた部屋である。6畳4畳半とキッチン3畳だが、ドアを入ったところに「玄関の間」とでも言うべきスペースもある。
 けれど、玄関の間の先にはキッチンに入るドアと4畳半に入る障子が並んでいる。それらの奥に6畳間が控えていてキッチンからも4畳半からも障子1枚で仕切られていた。

 煙草を吸いながらそんなことを考えているうちに、引っ越し業者が大量のダンボール箱を搬入していく。どんどん積み上げられる荷物で部屋のほとんどが埋まっていくのを、三輪はただ眺めていた。
   (第1話「変な間取り」) 全10話。

     * * * * *

 なんと風変わりな小説だろう。そう思いました。少し変わった間取りを持つ2Kのアパートの一室に入居した、歴代の住人の生活記録です。

 ただし、50 年間に渡る 13 代の住人の全記録を順に述べるのではなく、第8話まではテーマごとに各住人の言動や思考を列挙していくという手法で書かれています。
 そして第9話は住人たちの退去のいきさつが紹介され、最終話で後日談が明かされます。

 この観察日記とも言える記録集は、試みとしてはおもしろいしそれなりに楽しめたのだけれど、語られる人物が次々と入れ替わるため、プロフィールを思い出すのに苦労します。
 また、誰にも何にも主眼が置かれておらず、ひたすら淡々と書き綴られていっている印象で、読み通すためのモチベーションの維持も大変でした。

 でも第9話「メドレー」から最終話「簡単に懐かしい」での三輪密人に絡む話はサスペンスミステリーのにおいがして、少しばかりドキドキします。
 ここまで読んだ人へのご褒美のようなものかなと思って、ひとりでニンマリしました。

 エンタメ性はまったくありませんが、一風変わった小説が好きな人にはオススメです。

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2023年11月30日

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定点観測な連作集。
こういうのって「ひとり1話」みたいな
構成になっているものが多いと思うのですが
これは少し変わっている。
第一藤岡荘というアパートの一室に住んだ
歴代の住人たちの人生を書き留めるのに
「場所」や「もの」で章わけされているのです。

たとえば『雨と風邪』の章なら
部屋に響く雨音を風邪ひきの布団で聴く十畑保
乗り物の中にいるようだと感じる二瓶環太
天ぷらを揚げる音のように思う七瀬奈々。

『ザ・テレビジョン!』の章なら
白黒テレビだった藤岡一平から
父・野球、母・ワイドショー、子はアニメと
昭和そのものな視聴風景の二瓶一家。

1966年から2016年までの物語。
その時代、時代の暮らしぶりが
郷愁を誘う一冊でした。

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2022年08月01日

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「文化住宅」というような、昔よくあった建物の1つの部屋の様々な移り変わりを、その部屋の中にある物や雰囲気をテーマにして優しく語り続けられていく。よくあるような手法に思えて、そういえば真新しい表現方法で楽しく読むことができました。
それにしても密人さんの部屋の中にあった箱の中身は何だったんだろうか…?

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2020年10月20日

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NHKの72時間というドキュメンタリーを思い出した。ある場所を3日間定点観測する番組だが、この小説の場合はあるアパートの一室を数十年にわたって観察している。
この部屋にやってきて、数年住み、去っていった、年齢も性別も経歴も異なる人たち。後から住む人たちは、前の住人たちとは全く関係はないのだけれど、なんとなくその痕跡を引き継いだり、同じようなことを思ったり、全然異なる生活を営んだりして暮らしていく。ある場所に積み重なる、様々な人生・時代の地層のような感じ。すごく面白い観点だなと思った。

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2020年05月05日

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