長嶋有のレビュー一覧

  • 三の隣は五号室

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    『三の隣は五号室』長嶋 有
    こういう小説もアリなのか。純文学って本当に面白い。
    ある人の何気ない暮らしが全く知らない別の人の暮らしに少しのドラマを与える。これを読んでいると、自分のマンションの『前の人』はここでどんなことを考えたんだろうとか、どこにベットを置いてどんなテレビを見てたんだろうとか分かるはずもないことを色々と想像してしまった。
    解説で村田さやかさんが書いてたけど、自分もいつかはこの部屋において誰かの『前の人』になるだろうし、自分はその誰かのことなんてどうでもいいんだろうな。

     何にもしていない時間でも人は思った以上に「生きて」いて、自分とは別の誰かに何かしらの影響を与えている。すごくドラマチックだなぁと思いました。

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    2021年08月01日
  • 三の隣は五号室

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    ネタバレ

    ★星4.4
    初めての作家さん。
    第一藤岡荘五号室に、1966年~2016年の間に入居した13人(世帯)の住人の、それぞれの物語。
    物語は、時系列ではなくランダムにそれぞれの住人にスポットが当たるってのがテンポ良くて好き。
    最終章は、何かあるんじゃないか!って思わせるようなフラグがありちょっとハラハラ…でも結局、日常に戻るのが、この物語の良さなのかなって思いました。
    何気ない日常を描く、とっても好きなタイプのお話でした。

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    2021年05月07日
  • 泣かない女はいない

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    表題作は都心ではない、かと言って地方でもない、どこか間の抜けた郊外の風景を時にしょうもなく、また時には愛すべき空間として切り取る描写が上手いと感じた。

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    2021年02月07日
  • 三の隣は五号室

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    第一藤岡荘の5号室を舞台に、同室に居住した合計13代の住人が織りなす物語。方法論としては「問いのない答え」と同様、多くの人々・出来事が連想ゲームのようにつながっていくというところなのだろうが、「問いのない答え」よりもさらに研ぎ澄まされているように感じる。何しろ、場所は同じ五号室でも、時間を前後していったり来たりしながらなんの違和感もなく、しかしなんでもないのにちょっとひっかかる言葉が、結構ページ数を離れてもしっかりと想起されるようにできている、というのは物凄いことではないだろうか。そこで描かれていることは他愛のないことかもしれないが、しかし時を超え人々が共有するものがある、ということが、何か意味があるような気がしてくる。それが大事なのではないか。なお本作は住人達の名前が第1代から13代までどこかにその代の数字を含んでいるということで、アパートものの傑作である「めぞん一刻」へのオマージュを捧げていると思われるが、アパートものの傑作としても数えられるであろう。
    「人生にはしばしば、そういう時間がある。誰も自ら語らないし誰から語られることもないが、あるはずだ。側溝や、自動販売機の下に転がっていった小銭に手を伸ばしたり、瓶になにげなく差し込んだ指が抜け亡くなったり、タイルとタイルの間のもう落ちない黒ずみをこすったり、洗面台の排水溝に落としてしまった母親の指輪を拾い上げようとしたり。そういうときのあらゆる苦闘を『人生の時間』と誰も思っていない。だけど、仕事や恋愛や、なにか大事な時間を経たのと『同じ』人生の時間上にそれらのこともあるはずだ。」

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    2021年01月04日
  • 泣かない女はいない

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    長嶋さんの作品、既読のものはどちらも群青劇っぽかった。こっちの作風の方が好きだなあ。「泣かない女はいない」の睦美も「センスなし」の保子も、鈍感なんだけど淡々と生きていてよかった。隠したからといって自分の好きなものを自ら貶したことにはならないんだよ、そうかなあ。

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    2020年08月27日
  • 大江健三郎賞8年の軌跡 「文学の言葉」を恢復させる

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    少し前の新聞に中村文則の「掏摸」が紹介されていた。中村さんは今や海外でも名を知られた作家だが、そのきっかけになったのが大江健三郎賞を受賞した本作が、賞の特典として翻訳されたからだ、という内容だった。
    大江健三郎賞は聞いたことがあったが、選考委員は大江健三郎さんひとりで、賞金の代わりに海外に翻訳されて紹介される、賞は八年続いて既に終了しているということも知らなかった。
    で、その賞の始めから終わりまでの受賞作の紹介とそれぞれの著者との対談を収録されているのが本作。
    なかなか手ごわい本だったがおもしろかった。
    受賞作のどれも読んだことが無いが、長島有の本は読んでみたいと思った。対談も一番楽しかった。
    大江さんも最後の方で言及されている。
    大江健三郎もよく知らなかったが、ご自身のことに触れられている部分も多く、知ることができた。
    大江さんの文学に対する誠実さで成り立っていた賞だった。それを支えていた優秀な編集者も。

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    2020年07月24日
  • いろんな気持ちが本当の気持ち

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    最初の「ぽんぽん」の話が一番面白かった(*´ω`*)
    あと髭の話とかも...あ、だんだん記憶が薄れていってるからまた今度読もう。

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    2020年03月09日
  • 俳句は入門できる

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    Web連載「俳句ホニャララ」がもとになっているので、軽く読みやすい。(ちょっと古い)他の入門書には書いてないことが多々あって納得。

    "五七五の間に空白を入れないでほしくて、" 110頁

    なんですが、何と私は施設の月間通信を作る時に、空白どころか、分かち書きしています。他の本にも、短歌や俳句は空白を入れず分かち書きもしないとあります。でもね、改行しないと新聞の段におさまらないんですよ。

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    2020年02月02日
  • 猛スピードで母は

    ネタバレ 購入済み

    夜な夜な読みました。

    優しくて切ない物語。文章の表現がその時の状況をよく想像させるので、夜中の静かな時間に読むのにぴったりな雰囲気の本でした。

    子供は親を選べない、どんな親だろうとその人の子供に生まれたからには、一緒にいるしか生活できない子供たち。

    親も子供は選べないはずだけど、この親たちは本に登場する子供たちが自分の子でいてくれて良かったなと思います。

    女性にとって子供を宿し産み育てるということは、一生の人生がかかったことなのだと感じます。

    男性にとって一生愛せないかもしれない女性が自分の子供を宿し産むということが、自身の一生において、どれほどのことなのか。

    今愛していると感じている相手の男性や女性を、一生愛し続けることを想像する以上に、自分の人生の中で子供を一生愛し続けるということがどんなことなのか、男女共に深く想像できるきっかけが増える社会になるように願うばかりです。

    子供への虐待や無関心が生み出す現代の悲しい事件を色々と感じてしまう一冊でした。


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    2019年12月28日
  • 掌篇歳時記 春夏

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    24節気を3等分した72候があることを知って、日本には季節を細かく愛でる文化があったのだと再認識した.その季節感を念頭に置いて、著名な作家が短編を綴るという贅沢な本だが今回は春夏を読んだ.村田喜代子の雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)が面白かった.戦前の裕福な家庭に育った姉妹だが、それぞれにねえやがいて、様々な世話をするという、今では考えられない家庭内のやり取りが出てくる.あんな時代があったことは、映画や小説の中でしか接することはできないが、この姉妹の会話からその情景が想像できることが新しい発見をしたような感じだった.

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    2019年11月06日
  • 掌篇歳時記 春夏

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    トップバッターの 瀬戸内先生のが 一番俗っぽかったな と思うほど 瀬戸内先生 相変わらず かわいらしい人を書くんですね ほぼほぼ 幻想的で不思議な短編 ちょっと読むには 分かりにくいものもある 芥川賞作家が多いからでしょうか

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    2019年08月22日
  • 結婚失格

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    ネタバレ

    離婚協議中の私が、離婚エッセイを読んでみました。
    枡野さんは昔から好きだし。

    離婚はつくづく十人十色。
    結婚よりずっとバリエーションが豊富だよね。「豊富」と言うと、自分でもなんだか悲しく響くけど、でも実際子ども有無からバリエーションは無数にあって、私と誰かの離婚が同じなんてあり得ないんだろうなー。

    お子さんと会えなくなった枡野さんは本当にかわいそうで、読んでいる私もその場にうずくまりそうになったくらいだったけど、こうして公の場に晒される元奥様やお子さん達にもやはり同情してしまう。

    そして、解説の映画評論家の町山さんが厳しい。鋭い。
    町山さんもおもしろい方だな。町山さんの著作もちゃんと読みたいと思いました。

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    2019年03月03日
  • 泣かない女はいない

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    読みながら何回か「えっ」と声が出たほど、上品で小さな驚きがいくつか。あとは特に壮大なことが起きるでもない、平熱といった感じの2編でしたが、ストーリーがどうでもよくなるくらい、都会的な文章に惚れ惚れします。おしゃれで美しい。

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    2019年02月09日
  • 結婚失格

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    ネタバレ

    妻に離婚を迫られているAV監督速水の物語だが、中に挟まれる書評は実在の本について。
    どこまでホント?とか思いつつ読み進めると、後ろ三分の一は「あとがき」として枡野浩一の実際の状況と、枡野に加え、穂村弘と長嶋有の特別寄稿。そして枡野の短歌30首。最後に映画評論家、町山智浩の解説、という変わった本。
    最後の解説で、一気に読者のひっかかりがクリアになる感じ。穂村弘の指摘もするどい。
    枡野浩一について、本人が一番わかっていないっぽい。
    一言で言ってしまえば、だから奥さんがあのような形を取ってでも離婚したんだね、ってこと。
    この人の短歌は嫌いじゃないけど、人としてはね~。
    むしろ、発達障害系空気読めないサンプルの参考にはなるかも。
    気になる存在ではあり続けそう。

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    2019年02月05日
  • タンノイのエジンバラ

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    「タンノイのエジンバラ」「夜のあぐら」「バルセロナの印象」「三十歳」の4編収録した短編集。
    大傑作、とはいかないまでもいずれも秀作揃い。
    個人的には「三十歳」が一番好き。

    長嶋有の小説は、情景が在り在りと目に浮かぶところがいい。
    しかもその情景は何の変哲もない平凡な街だったり建物だったり部屋だったりする。
    風景が人の生活や人生と結びつき、情景となる。

    「三十歳」に、パチンコ屋の屋上のシーンがあります。
    これがいい。
    「パラレル」にも屋上の場面があったけど、ビルの屋上という場所は、世間から疎外されているようで離れきれない、むしろ世間を俯瞰して眺めてしまったりする、独特の雰囲気をもった空間で、それが小説の雰囲気とばっちり合っています。

    もう一つの特徴は、「家族」が描かれていること。
    家族、中でも親子や兄弟姉妹といった、子供のころからひとつ屋根の下暮らしてきて、大人になるにつれ何時の間にか「ずれ」が生じてしまったような、微妙な心理的距離を描くのがとても巧いと思います。

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    2019年01月06日
  • 問いのない答え

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    長嶋有はデティールを描くということについてはこだわりがあるのだろうと思うし、実際上手いと思う。本作は、そんな長嶋有の実力がいかんなく発揮されるとともに、震災後のツイッターという空間を介して、時代を写しとった一冊だと思う。ツイッターという空間でいろいろな人が他愛もなくおしゃべりをしている、そんな雰囲気がよく写しとられているだけではなくて、それが形式上も、登場人物の行動が切り取られてつながっていくさまに現れている。そんなつながりが心地よく、しかし、一方で、その背後には震災や秋葉原の殺人事件といった時代的な背景がある(別にそれが主題ということではなくそれも含めて切り取られている)。実のところ、ツイッターでの言葉遊びなんて、という思いもなくはないが、それでもやっぱり引き込まれて読んでしまったのは、長嶋有の描写の上手さがやっぱり大きい。

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    2019年01月05日
  • 結婚失格

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    妻とのケンカ中に読む。著者をモデルにした小説風、書評風。みんな自分は正しいと思うものなのだ。

    (300)

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    2018年10月12日
  • いろんな気持ちが本当の気持ち

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    長嶋有のリラックスしたエッセイ集.「すみれseptmver love」を一風堂で聞いた世代と,シャズナで聞い世代,その狭間でカブキロックスで聞いた世代がいる事を忘れないでもらいたくない.1980年代後半から90年代前半のバンドブームに多感な十代を過ごした世代をカブキロックスの「すみれseptmver love」で括る辺りが秀逸.私も同世代.

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    2018年10月09日
  • タンノイのエジンバラ

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    「夜のあぐら」の中に”定見が無い”という言葉が出てきます。なるほど、どの作品の主人公も定見が無く、周りに流されていく人々です。同じように”定見が無い”人を良く描く作家として川上弘美さんが居ます。
    しかし、この二人の雰囲気は随分違います。川上さんの主人公達は行く先不明のボートに乗っているものの、周りはゆったりとした流れで、波に揺られて暖かくて居心地はなかなか良さそうです。一方、長嶋さんの主人公は、周りの岩にゴツゴツぶつかりながら流されています。なんだか迷惑そうなのですが、かといって必死に抵抗をすることも無く流されているようです。
    どうも、川上さんの世界の方が好きですね。
    ただ、この長嶋さんも悪くない。もう少し読んで見ましょうかね。

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    2017年10月30日
  • 泣かない女はいない

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    いいなあ、いいなあ。
    なーんにも起こらないんだけど、長嶋有さんの小説はとてもいい。
    「泣かない女はいない」って、ボブマーリーの歌からのタイトルだったのかあ!
    私も確かにあの曲の歌詞カードに「女 泣くな」って書いてあったの覚えてる。なんじゃそりゃ、と思ったっけ、その時は(笑)

    表題作より「センスなし」の方が好き。
    焼き鳥は塩よりタレっての、すごいわかる。
    なんかみんな、「タレ」って言うより「塩」っていう方が「通」な感じするって思ってそうで嫌(個人調べ。特に私の旦那の身内(笑))。私は昔から焼き鳥はタレで食べてたから、塩だとなんか物足りない感じする。ホントにみんな、そんなに塩?とか思っちゃう。

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    2017年03月29日