長嶋有のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ妻に離婚を迫られているAV監督速水の物語だが、中に挟まれる書評は実在の本について。
どこまでホント?とか思いつつ読み進めると、後ろ三分の一は「あとがき」として枡野浩一の実際の状況と、枡野に加え、穂村弘と長嶋有の特別寄稿。そして枡野の短歌30首。最後に映画評論家、町山智浩の解説、という変わった本。
最後の解説で、一気に読者のひっかかりがクリアになる感じ。穂村弘の指摘もするどい。
枡野浩一について、本人が一番わかっていないっぽい。
一言で言ってしまえば、だから奥さんがあのような形を取ってでも離婚したんだね、ってこと。
この人の短歌は嫌いじゃないけど、人としてはね~。
むしろ、発達障害系空気読めない -
Posted by ブクログ
「タンノイのエジンバラ」「夜のあぐら」「バルセロナの印象」「三十歳」の4編収録した短編集。
大傑作、とはいかないまでもいずれも秀作揃い。
個人的には「三十歳」が一番好き。
長嶋有の小説は、情景が在り在りと目に浮かぶところがいい。
しかもその情景は何の変哲もない平凡な街だったり建物だったり部屋だったりする。
風景が人の生活や人生と結びつき、情景となる。
「三十歳」に、パチンコ屋の屋上のシーンがあります。
これがいい。
「パラレル」にも屋上の場面があったけど、ビルの屋上という場所は、世間から疎外されているようで離れきれない、むしろ世間を俯瞰して眺めてしまったりする、独特の雰囲気をもった空間で、 -
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長嶋有はデティールを描くということについてはこだわりがあるのだろうと思うし、実際上手いと思う。本作は、そんな長嶋有の実力がいかんなく発揮されるとともに、震災後のツイッターという空間を介して、時代を写しとった一冊だと思う。ツイッターという空間でいろいろな人が他愛もなくおしゃべりをしている、そんな雰囲気がよく写しとられているだけではなくて、それが形式上も、登場人物の行動が切り取られてつながっていくさまに現れている。そんなつながりが心地よく、しかし、一方で、その背後には震災や秋葉原の殺人事件といった時代的な背景がある(別にそれが主題ということではなくそれも含めて切り取られている)。実のところ、ツイッ
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「夜のあぐら」の中に”定見が無い”という言葉が出てきます。なるほど、どの作品の主人公も定見が無く、周りに流されていく人々です。同じように”定見が無い”人を良く描く作家として川上弘美さんが居ます。
しかし、この二人の雰囲気は随分違います。川上さんの主人公達は行く先不明のボートに乗っているものの、周りはゆったりとした流れで、波に揺られて暖かくて居心地はなかなか良さそうです。一方、長嶋さんの主人公は、周りの岩にゴツゴツぶつかりながら流されています。なんだか迷惑そうなのですが、かといって必死に抵抗をすることも無く流されているようです。
どうも、川上さんの世界の方が好きですね。
ただ、この長嶋さん -
Posted by ブクログ
いいなあ、いいなあ。
なーんにも起こらないんだけど、長嶋有さんの小説はとてもいい。
「泣かない女はいない」って、ボブマーリーの歌からのタイトルだったのかあ!
私も確かにあの曲の歌詞カードに「女 泣くな」って書いてあったの覚えてる。なんじゃそりゃ、と思ったっけ、その時は(笑)
表題作より「センスなし」の方が好き。
焼き鳥は塩よりタレっての、すごいわかる。
なんかみんな、「タレ」って言うより「塩」っていう方が「通」な感じするって思ってそうで嫌(個人調べ。特に私の旦那の身内(笑))。私は昔から焼き鳥はタレで食べてたから、塩だとなんか物足りない感じする。ホントにみんな、そんなに塩?とか思っちゃう。 -
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これはなかなか良いエッセイ本でしたね…! 長嶋さんの小説はいくつか読んでいて「好みだな~」と思っていましたから、エッセイも肌が合うんじゃないかと…読んでみた次第ですけれども、いやぁ…良かったですね!
ヽ(・ω・)/ズコー
色々と趣味の範囲が広いお方のような気がしますねぇ…音楽だったり映画だったりゲームだったり漫画だったり…「ブルボン小林」という名義でレビュー本?みたいなのも出しているみたいですから、そちらも読んでみましょうか…。
氏の書くレビューをもっと読んでみたいなぁ…と思わしてくれる本でしたね。おしまい…。
ヽ(・ω・)/ズコー -
Posted by ブクログ
高校の「図書部」を舞台にした物語。何か事件が起こるわけでもなく、個性豊かな部員たちの日常が淡々と描かれる。こんなふうに書くと、よくある(本当によくある)ラノベ的学園世界を想起してしまうけど、この小説が書こうとしている世界は、たぶんそれとは違う。
図書部の面々は、ゆるゆるとした毎日を過ごしている。部室でお茶を飲みつつダベり、漫画の貸し借りをして、「本来の」活動である図書室の貸出業務もおこなう。かつて文科系高校生だったすべての男女が「いいなぁ」と嘆息する日常がいきいきと描かれ、心地良いノスタルジーへと誘う。そして同時に、彼らがそのノスタルジーの奥底に沈めたものを呼び覚まし、ときおりヒヤッとさせたり -
Posted by ブクログ
こういう何でもないひとの平凡な日々を丹念に書く作品は読み手のメンタリティと嗜好にかなりの部分左右されると思う。
今回はそれが合致していてすごく好きな雰囲気だった。
裏表紙のあらすじほど恋人の別れ感は薄く、特に終盤まではお仕事小説の色合いが強い。
埼玉にあるメーカー子会社の物流会社に転職した主人公。
働いていない恋人とふたり暮らし。
同僚の女性社員は実家通いで給料はおこずかいに遣ってしまうような子ばかりで、なんとなく空気が違う。
些細な出来事を積み上げて、だんだん親しくなっていくという描写が優しい。
物語自体も、事件やで変化により動きがあるので冗長さもなかった。
主人公がどういう性格なのかあえ -
Posted by ブクログ
そんなに可愛いとか思ったこともない女性に、いきなり告白めいた事を言われて、急にゾワッとしたって感じ。
泣かない、淡々とした女が見せた最後。
本当に淡々としていて、田舎の町にあまり考えもなく来てとりあえず仕事して…
一緒に住んでいる人はいるものの、特筆するほど出てこない登場人物の一人で。
そんな生活にもちゃんとドラマがある。大手の下請け工場でも、静かにも激しい感情の揺さぶりは起こる。それはとても当たり前の事なんだけど、作者の切り口がほんの少しのほころび程度の感情の描き方なので、最後の鮮明な描写にハッとさせられ、呼吸を乱される。
元社長の入院の後、奥さん綺麗でしたねの一言で和む場面。ちゃんと君はム -
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【本の内容】
隣家の女の子を押しつけられたり、実家の金庫を盗みに行くはめになったり。
人生には、そんな日がめぐってくるのだ。
話題の芥川賞作家、待望の最新短篇集。
[ 目次 ]
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長嶋有さんと川上弘美さんは似ている(もちろん作風がですよ。外見は似ていない)。
と、思う。
ご賛同いただけるでしょうか。
以前川上さんの小説が「俳味がある」と表現されているのを目にした覚えがあるのだが、言い得て妙だわと膝を打った覚えがある(長嶋さんも川上さんも俳句を詠まれるとのことだし)。
解説に「長嶋本のなかでもっともいい」と書かれた本書だが、私もすごく主人公たちに共感した。
彼ら