長嶋有のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
単純に装丁買いで。
うまく説明できないんだけど、今年1番のヒット。
地の文の投げやりな丁寧さに惹きつけられてしまった。
散らされた鍵括弧が、波紋みたいに、地の文に余韻を広げてる。
長嶋さんの小説ってこんな感じだったろうか。
あんまり、比較とかはしちゃいけないんだろうけど、少し大崎さんの小説の空気に似ていて、逆に相違が際立って、勝手に世界が広がっていく感じがした。
わたしは多分、こういう主人公が好きだし、こういう女性の描かれ方が好きだし、螺旋階段や繰り返されるモチーフが好きだ。
このくらいの軽さも、このくらいの深さも。
*
あとあれです、解説がすげーよかった。 -
Posted by ブクログ
うまいしおもしろい。
長嶋有という作者は強烈なインパクトのある話を書くわけではないけれど、なんかあの作家すきなんだよね、と私の頭に必ず浮かぶ。
この短篇集はそんな作者の長所が盛り込まれている。
まず、説明が少ないところが好き。
情景描写だったり登場人物たちの輪郭からじわじわと話の核を攻めてくる。
そして最終的に読者に不明瞭な点を残さない。
2人の姉と引きこもりの弟の奇妙な話を描いた『夜のあぐら』では特に、そう思った。話の組み立て方のうまさが際立っている。
また、人間の描き方がとてもリアルで、急に気が変わったりする。このキャラクターはこういう人だから、とかそういうセセコマシサがない。キャラクタではなく、まぎれもなく人間。
あとは単純に言葉の選び方が好き。
タンノイのエジンバラを題名にもってくるあたり、相当いい。何度も声にだしたし、現物もネットで調べた。誉めすぎか?
幼少時の些細な記憶とか
思い出した。とくに姉、というキーワードが私にはよかったのかな。
長嶋有をみんなに知ってもらいたいと思う反面
だれも知らなくていいとも思う。 -
Posted by ブクログ
タイトルが良い。とあるマンションのプールが多元的な視点から語られる。八方塞がりな状況や瑣末な日常が最後の章で軽やかに飛躍を遂げるのが気持ちよかった。長島有ならではの小さな視点の連続。小さいけど大切なね。「母親は必ず心配するもの」だ、そのことについて謝るだけではなく自分で気づいてほしいという父親の思いとか。世の中がタイパ、コスパで測られてしまうことのやるせなさと打開しようと奮闘する若者への眼差しとか。悪者、と表現されたおじさんの考え方にも心を寄せる。いつも温かい気持ちになります。
プール施設にはセブンティーンアイスの自販機。これはマーケティングの成果なのでしょうか。毎度買わされた(そして、一口もらった)。 -
Posted by ブクログ
目次
・タンノイのエジンバラ
・夜のあぐら
・バルセロナの印象
・三十歳
ストーリーはさておき、どの作品にも「人とのつきあい方が苦手」な気配を濃厚に感じた。
家族をも含む他人の、発する言葉と感情の乖離が、その距離がよくわからないと思っている語り手たち。
感情が希薄で、体温が低そうな語り手たちの、世間を見るまなざしの不安。
差し伸べていいのかわからず、中途半端に止まってしまう手。
そういうあれこれが、まるで私の心の内をのぞかれているような、でも決して不快ではない、不思議な気持ちで読んだ。
「人とのつきあい方が苦手」なのは私だけではないと思うと、少し心が緩んでくる。