瀬尾まいこのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
3編からから短編集です。
子どもの病棟で出会った小学生同士の友情を描いたこの物語は、想像していた以上にやわらかくて優しい世界が広がっていました。
登場人物に「悪人」が一人も出てこない安心感。その分、子どもたちの小さな不安や寂しさ、そして友情がまっすぐに胸に届きます。読んでいると自然と笑顔になり、でも少し涙もこぼれそうになる——そんな感覚。
「もっと読みたかった」と感じるのは、短編だからこそ。“物足りなさ”ではなく“もっとこの世界に触れていたい”という余韻なんだと思います。
初読みでこの読後感。
次の作品に手を伸ばしたくなる予感がしています。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「上を向いて歩こう」や「心の瞳」、「東京ブギウギ」といった名曲を惜しみなく登場させることで、この作品自体が立体的になって新鮮だった。
水木さんと本庄さんが大好きになった。特に、「心の瞳」を宮路と自分の曲だと言った本庄さん。"遠回りをしてた人生だけど君だけがいまでは愛のすべて 時の歩み いつもそばでわかち合える""いつか若さを失しても心だけは決して変わらない絆で結ばれてる"これを自分と本庄さん2人の曲だと言われた宮路がどんな気持ちだったか。宮路が何年もの間諦めきれずにしがみついていたものはきっと音楽じゃない。音楽が連れてきてくれる何かなんだ。
話自体は短い -
Posted by ブクログ
自分の正義って、思いもよらない一つの出来事でひっくり返ってしまう。一度ひっくり返ったものを元に戻すことってなかなか難しい。ひっくり返ったことが良い時もあれば、自分の個性を削りすぎてしまうこともある。
だけど、削られた自分を取り戻すのは、やっぱり新しい人間関係がキッカケだったりする。その出会いは何か劇的なものでないのだけど、気づいたら心地よかったり、自然に日常に入り込んでいたり、そういう人間関係が意外と自分の運命を大きく動かしていることがある。
文芸部の顧問である主人公とその部員生徒との関係性は、まさにそんな感じだと思った。けれど、主人公の兄弟や恋人も大きくて……と考えると、出会う人みんな運命の