【感想・ネタバレ】おしまいのデートのレビュー

ユーザーレビュー

Posted by ブクログ 2021年04月05日

生きていればどんなことにも次はある。
出会いには別れがつきものとはよく言うが、別れても次はある。
生きている限りそれの繰り返しだと思えるそんな物語が綴られた短編集。

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Posted by ブクログ 2020年06月22日

デートがテーマの短編集。
瀬尾まいこさんの作品は、読みやすく温かい気持ちになれるので好きです。色々な作品を読みましたがこの作品は中でもお気に入りです。

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Posted by ブクログ 2020年05月07日

「デート」がテーマの短編集。短編で泣かせてくる瀬尾まいこさん、すごくないですか…?やっぱり好きです。文章がほんとうに読みやすい…。

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Posted by ブクログ 2020年03月14日

瀬尾まいこさんの小説が好きで、手にした一冊。
短編で読みやすく、色々なパターンのデートが書かれていて面白かった。

ランクアップ丼はじーんときた。きっと地味だけど、すごーく人から慕われるおじいちゃん先生だろう上じいが、想像できた。

どん底に落とされず、人の力で人が救われるようなお話が多くて、心癒さ...続きを読むれた。

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Posted by ブクログ 2021年03月07日

それぞれおしまいの意味が違いますが、それぞれの登場人物にとって大切な1日であったことが読み取れます。

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Posted by ブクログ 2021年02月07日

ほっこりしますこの本は。
いろんなカタチのデートがありました。

結末がびっくりなのもありますが、どのお話も前向きなお話で素敵です。

何度も読み返したいなぁ。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年02月03日

知り合いに勧められて読んでみたら、絶対に過去に読んだことがある作品でびっくり!

・おしまいのデート
おじいちゃんと中学生の女の子の話。
ソフトクリームの色が混ざるっていうのが記憶残ってる。雨が降らなければ幸せになるって言ってたけど雨が降った。でもそれは幸せになれないっていう暗示ではなくて、雨が降...続きを読むって弟(になる子)とひとつの傘で雨を凌ぐ描写から別のかたちで幸せになるのかなって思った。

・ランクアップ丼
この話はめっちゃ泣ける。
高校の時にちょっとグレてた男の子が先生にご飯をおごってもらってて、大人になって逆に奢るようになって…


・ファーストラブ
男の主人公が、ほとんど話したことも無い男の子とデートする話。一日でぐっと近づくけど…

・ドッグシェア
私はこの話が1番好き。
公園に捨てられた犬を初めましての2人が世話する話。
この話は最後も別れるとかはないのかなって思う。
男の子の不思議な感じが好き。

・デートまでの道のり
これはあんまり好きじゃない。
保育園の先生と園児のお父さんの恋愛がちょっと嫌かな。園児と仲良くなろうとする動機が、それだけではないにしても恋愛というのはちょっと好きじゃない。もちろん実際にもあるんだろうし。仕方なくはあると思う。

ただ、ここで言うデートは主人公とお父さんではなくて 主人公と園児(とお父さん)。
幸あれ

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Posted by ブクログ 2021年01月23日

どの短編も心がほわっとする話です。

個人的に好きなのはランクアップ丼、ファーストラブ、デートまでの道のりの3作。5作のうち3作が良いって短編集でなかなかすごい。

普段、解説って読んでも「ふーん」くらいにしか思わないですが、解説がまた良かった。

ちょっと疲れた時なんかにオススメです。

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Posted by ブクログ 2020年12月05日

いろんな形のデートが出てきます。
人と関わりを持つ暖かさを感じさせてくれました。
私はランクアップ丼がイチオシです。

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Posted by ブクログ 2020年12月10日

ドッグシェア

誰かが自分を思ってしてくれたことに、
困ってしまうことがある。
悲しいけど、ある。

その誰かの気持ちを、
大切に掬って受け取れるように。

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Posted by ブクログ 2020年11月19日

祖父と孫のドライブを描いた表題作ほか4編。短時間でするする読めますが、胸にあたたかな余韻を残す短編集です。この著者は食べ物をおいしそうに書くのが上手だなとしみじみ。

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Posted by ブクログ 2020年11月17日

おしまいは中休み。最後ではないってなんだかいいなあと思った。
すごく強烈な何かはないけど、心がじんわりする話がたくさん、読んでいてとても心地よかった。
自分も考えが色々な人との出会いで変わってく、成長してる、そうやって良い意味で人との出会いがプラスになるといいなあ。

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Posted by ブクログ 2020年09月26日

祖父と孫娘、元教師と教え子、公園に捨てられた犬の世話を通じて知り合ったOLと大学生、男子高校生同士、それぞれのデートの様子を描いたショートストーリー。そして、最後の話は、保育園児の父親と保育士が園児も含めてデートするために試行錯誤する様子を描いている。

いずれも、心がほっこり温まるストーリーだけど...続きを読む、個人的には、表題にもなっている"おしまいのデート"と、"ランクアップ丼"が好き。
どちらも、月に1度、年齢差はあれど心置きなく話せる相手と会って、ソフトクリームや玉子丼など手軽な物を食べながら、たわいもない話をする。互いに信頼感ができるだけでなく、いつの間にか、たぶん無意識のうちに、会うことがどこかで心の支えになっている、そんな関係性の相手がいることがなんてステキなんだろう、と思わせてくれる。

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Posted by ブクログ 2020年09月05日

『玉子丼はにおいのとおりにおいしかった。長ネギも玉子もとろりとやわらかく、玉子と甘いだしが絡んだご飯はふっくらしていた』

かつて同じ時間を共にした人のことを思い出す時、何故か食べ物のことが一緒に思い出されることってないでしょうか?もしくは、何かを食べていて、逆にそれをきっかけにして、あの時のこと、...続きを読む彼のこと、彼女のことを思い出してしまう、そんなことってないでしょうか?『ソフトクリームはすぐに溶けだして、答えを出すことをせかしてくれる』、そんな時、視覚、臭覚、味覚の三つの感覚が同時に刺激され、深く心に刻まれていきます。「おしまいのデート」、その作品名からは恋人たちの関係の終焉を描いた内容が想像されます。しかし、そこに描かれるのは色んなきっかけで繋がった人たちの一つの時間の終わりと次の時間のはじまりを告げる物語でした。

作品名でもある〈おしまいのデート〉という短編を含め、五つの短編からなるこの作品。『デート』という言葉から想像される恋人同士のいわゆる”デート”のイメージを思い浮かべると、その予想外に展開する内容に驚くことになります。”デート”の組み合わせは多種多様。おじいちゃんと孫、同級生の男の子同士、そして教師と教え子と様々な組み合わせの人物たちが日時と場所を決め、出会い、語らい、そして食も共にする、そんな”デート”の風景が描かれていくこの作品。中でも絶品だと思ったのは2編目の〈ランクアップ丼〉でした。

『毎月、二十四日の給料日には必ず玉子丼を食べる。働きはじめて二年近く、ずっと続いている習慣だ』というのは主人公の三好。しかしそんな玉子丼を一緒に食べるのは『六十二歳のじいさんとだ』という三好は『上じい、まだ六十二歳やろ?後、二十年は生きなあかん』と諭します。『日本人の平均寿命は、八十くらい』という三好に『えらい面倒くさい話やなあ。後、二十年もあるんか』と返す上じい。三好は、ふと『俺が初めて上じいと玉子丼を食べたのは、高校三年生の時だ』と過去を振り返ります。『生まれながらにして母子家庭』だったという三好家は『仕事も恋愛もしまくる母さんの下、必然的に俺は一人になることが多かった』という生活から『高校生の時の俺の食生活はおそろしく乱れていた』という状態。『そんな高校三年生の夏の日、二組の山根とけんか』をし、どっぷり日が暮れるまで担任に叱られた三好が生徒指導室を出ると、そこに『二組の担任である上じいが立っていた』という光景。『今度は山根の担任に文句を言われるのかと』思う三好に『飯を食おう』と誘う上じい。断る三好に『まあ、三好。そう言うなって』と『学校近くのうどん屋に連れて』行かれます。『定年間近の社会の教師だった』という上じいは、『まあ、食え。お前がけんかするのは、いらいらしとるからやろ?いらいらするのは、腹減っとるからや』と、『玉子丼二つ』を頼みます。『すぐに運ばれてきた』玉子丼は『甘辛い、いいにおいがする。半熟の玉子がつやつやして見るからにおいしそうだ』と三好の空腹を刺激します。それを『きれいに平らげた』三好。その日以来『俺はちょくちょく上じいと食事をした』と二人の間に玉子丼を一緒に食べる関係が出来上がります。奥さんを早くに亡くし、子どもも独り立ちして一人住まいという上じい。そんなある日『天丼二つ』と『誇らしげに注文をした』上じい。『なんや、今日は玉子丼ちゃうの?』と問う三好に『そうや。今日は奮発して天丼や。最後の晩餐やからな』と答える上じい。そんな最後の晩餐を経てもさらに続いていく二人の関係は三好にとってかけがえのない時間となっていきます。そして…というこの短編。玉子丼から天丼へとランクアップしていく食事を共にする二人のひと時。玉子丼で繋がる上じいと三好。お互いを思いやる人としての優しさをしみじみと感じる結末に、目頭が熱くなるのを感じた逸品でした。

“デート”をして相手と一緒に食事をしたことがないという方はいらっしゃらないと思います。食べるということは人にとっての一番の喜び。そんな喜びを共にする相手は仕事でもなければ、あなたが好きな人、一緒にいて楽しいと思う人だと思います。そんな人との楽しい時間だからこそ食事がさらに美味しくなる、美味しい食事だからこそ幸せな時間がますます幸せになる。そんな相乗効果もあってか、そんな時の食事のことはよく覚えているものです。『ソフトクリームを食べ終わるまでに、今日どうするかを決めなくてはいけない。ソフトクリームはすぐに溶けだして、答えを出すことをせかしてくれる』と二人の暗黙の決まり事を演出する『ソフトクリーム』。『悪さをしなくても玉子丼を一緒に食べるようになった。変わってないのは、玉子丼の味だけだ』と二人の関係の変化を演出する『玉子丼』。食が演出する二人の幸せな時間。特別でも何でもない、ごく一般的な食べ物である『ソフトクリーム』や『玉子丼』。そんなどこにでもある食べ物が二人の特別な時間を作っていく、二人の特別な食べ物になる、そして二人の中にいつまでも残り続ける大切な思い出になる。そんな二人の特別な思い出の時間は、読み終わってふっとため息をつきたくなるような静かな余韻を残す素朴で味わい深いものでした。

瀬尾さんの作品は、実に淡々と描かれるものが多いように思います。〈ランクアップ丼〉の結末も他の作家さんだったらもっとシーンを盛り上げる演出を入れて感動深いものにするのではないかと思います。しかし、瀬尾さんはあくまで淡々とその場面を描いていきます。冷静なまでの淡々さ。すると、読者にはそこに描かれる光景に静かに対峙する時間が生まれていきます。そんな時、読者は素の気持ちで登場人物の気持ちに向き合うことになります。押しつけられる感動ではない、シンプルに淡々と提示される事実だけが、読者の心を射抜きます。そこに生まれるのは、演出による感動ではなくて、読者が、提示された事実に素直に反応する素直な気持ちです。なんだかわからない、じわっとしたあったかいものが体の中から込み上げてくる感覚。女性作家さんの小説ばかり読んでいる私ですが、こんな感情に包まれる作家さんは他にはいないように感じています。これが瀬尾さんの魅力、瀬尾さんの作品の一番の魅力。時々無性に瀬尾さんの作品を読みたいと思う感覚はこんなところから来るのかな、そんな風に思いました。

「おしまいのデート」。『デート』という言葉から思い浮かぶ恋人たちの甘く幸せな時間とは異なる五組の”カップル”がそれぞれに過ごした大切な時間。そして、おしまいの先にも続いていく物語。淡々とした瀬尾さんの描き方が故に五組それぞれが過ごした幸せな時間が、自分の中にも共有されたような不思議な読後感、とても素敵な作品でした。

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Posted by ブクログ 2020年06月27日

この本のおしまいは決して悲しいものではなく、
これからを想像したくなる優しい物語。

特にドックシェアが好き。
あぁ、そうか
人に寄り添うとはこういうことだ、と
納得させられる話。
そして、人と共有できるとは
生き生き暮らすことにつながるんだなと思った。

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Posted by ブクログ 2020年05月31日

デートをテーマにした短編集。全体的に悪くなかったが特に、高校の先生と玉子丼を食べる話「ランクアップ丼」と、同じクラスの男子にデートを申し込まれる男子の話「ファーストラブ」が飛び抜けて良かった。


「どうしてじいちゃんはカツラにしないの?」私はじいちゃんのほうを見てにやりと笑った。「まだカツラをかぶ...続きを読むるほどハゲてないだろう」じいちゃんはきれいさっぱり髪の毛がなくなった頭を撫でた。

「そういう久永さんは?OL?」「まあ、そうだけど」「ってことは、マダムとかセレブとかお局とかで分類すると何になるの?」

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年05月15日

大好きな作家さんです。
タイトルの通り、いろんな関係性の人たちの、いろんな形での「おしまいのデート」が描かれてます。
おしまいの意味もそれぞれ。
でもなぜかあたたかな気持ちになるのは、すべての物語からおしまいの代わりにはじまりを感じるからでしょうか。
あと瀬尾さんの物語は、出てくるごはんがいつもおい...続きを読むしそうに描かれてます。そこもお気に入り。

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Posted by ブクログ 2020年03月14日

5編の短編を収録。孫娘と祖父、元教え子と教師、同じクラスの男子二人、捨て犬を見つけたOLと学生、保育士と親子が「デート」する。瀬尾作品らしく、悪者が出てこない読後がすっきりした物語が良い。中でも元不良の教え子と定年間近の教師の話が泣ける。

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Posted by ブクログ 2020年02月06日

やはり、瀬尾まいこさんは、夫婦の愛を語らない。ここまで語られないと、あえてそれが明示的にも感じる。

解説が薄っぺらくて、ぶん殴りたくなる衝動に襲われて、気が狂いそうになる。違う。薬膳スープなどではない。うまく、それっぽくまとめるな。

瀬尾まいこさんの作品は、一見暖かい、ハートウォーミングな物語に...続きを読むみえるが、決してそんな陳腐なものではない。うまい言葉が、見つからない。ただ、彼女の作品は凶器でもあるのだ。

愛に飢えた人間にとって、純度の高いフィクションの愛は(享受することのできなかった愛の、フィクションは)、心をえぐる凶器なのである。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年04月19日

おいまいのデートを読む前と後で、思い描くデートがガラッと変わった話

・今日でこんなふうに会うのは最後だ。そうしようって約束したわけじゃないけど、そうなのだ。晴れ晴れした心地もするけれど、やっぱり寂しい。
 頭の上には、きっぱりと夏を待つ決意をした空が見える。p9

・私は顔を窓の外に出した。潮をい...続きを読むっぱい含んだ重い風が髪の毛をさらう。もうすぐ海だ。漁師の孫だから、界面が見えなくても風の匂いをかげばどれぐらい離れた場所に海があるのかわかる。p17-18
→相手との関係性の中で出来た自分を見つめるのも、デートがくれるひとつの大切な機会なのかもしれない。

・「なんだ。又聞きの情報か。そいつは不確かだ。よし、実際に見せてやろう。地球が球形だってことを」
 じいちゃんはそう言って、私を経ヶ岬に連れてきた。
 岬からは、遮るものがなく、顔を向けるところ全てに海が見えた。どこまでも続く海と水平線を端から端まで見渡すと、不思議と地球が丸いことがわかった。
 漁師のじいちゃんより、教科書に載っているガリレオ・ガリレイのほうがたぶんすごい。だけど、海と共に暮らすじいちゃんは、ここの海が何を見せてくれるのか誰よりも知っている。私はその時、じいちゃんをちょっと尊敬した。p18-19

・「まぁ、ハゲもチビもデブも治せるからいいじゃないか」
 じいちゃんが陽気に言った。
 「治せるの?」
 「毛生え薬もカツラも、シークレットブーツも、うさんくさいダイエット食品も日本には溢れるほどある」
 「それって治せるんじゃなくてごまかしてるだけじゃん」
 「おお、中学生ともなると鋭いね」
 じいちゃんは笑った。
 「だけど、ごまかせる程度のことだったらいいじゃないか。たいして問題はないってこと」
 「まあね」
 原口さんの容姿が端麗でも、気の重さには変わりはない。母さんの再婚は経済的な面から見ても悪くないし、とりあえず賛成だけど、一気に父親と弟ができるのはヘビーだ。
 「母親と二人だけで暮らすのも、他人が参入して暮らすのも、煩わしさはそう変わりゃしないさ」
 じいちゃんの言うとおりかもしれない。母さんと二人の不自由さと気楽さ。人数が増えた家族の気詰まりと豊かさ。プラスマイナスにすると、同じぐらいかもしれない。その収支の結果はもっとずっと先にわかることだろうけど。
 「どうしてじいちゃんはカツラにしないの?」
 私はじいちゃんのほうを見てにやりと笑った。
 「まだカツラをかぶるほどハゲてないだろう」
 じいちゃんはきれいさっぱり髪の毛がなくなった頭をなでた。p25-26
→こう言う悩みを言えて、笑い飛ばしてもらえて、優しい言葉をかけてくれるのも、誰かといるから出来ること。

・俺がさっそく箸をつけようとすると、上じいに、
 「食う前には、いただきますと言え。作った人に失礼や」
 と頭をはたかれた。なんなんだよ。と言いたかったけど、何より早く食べたかった俺は、素直に「いただきます」と手を合わせた。一人で飯を食べる時に、「いただきます」なんて言うことは、まずない。手を合わせるなんて、小学校の給食以来でなんだか照れくさかった。p44

・俺がスーパーで働くことに決めたのは、上じいからのアドバイスからだった。
 就職先を決める時、高校生だった俺は、人付き合いも下手だし物腰も良くない、だから、自転車修理業とか運送の仕事とか、自分の腕だけで勝負できる仕事を探した。
 一人でコツコツできる仕事。それが性に合っていると思っていた。
 でも、上じいは、
 「三好はそういうのは向いてへん。お前は人が集まる場所で働かなあかん」
 と言った。
 当時の俺には、そんなことまったく信用できなかった。友達も少なかったし、教師にどちらかと言うと嫌われていた。あまり人受けするタイプではなかった。
 「三好は人と接してな、絶対あかんようになる」
 たいていのことは、「それでええ」とか「思うようにやったらええ」と流してしまう上じいが、この時ばかりはきっぱりと断言した。上じい以外に、俺にアドバイスするような大人は周りにいなかったし、上じいがあまりに強い口調で言うので、まあそんなもんなのかなあと、俺はスーパーでの仕事に就いた。
 だけど、働きはじめてすぐ仕事にうんざりした。
 青果売り場に配属された俺は、品出しや商品の陳列はすぐにマスターできた。ところが、接客はなかなかうまくいかなかった。サービスカウンターにいるわけでもないのに、客に質問されたり、文句を言われたりする。そのたびに俺は戸惑った。嫌な客も多かった。店員という自覚を持って、きちんと対応しているつもりだったけど、上司には、「三好は口の利き方は悪い」「お前は客をなんやと思ってるんや」と度々怒られた。でも、半年が経ち、一年が経ち、俺は少しずつこの仕事にはまっていった。
 すごくたまにだけど、客に「ありがとう」と言われたりする。「こないだ兄ちゃんが言ったとおり、きのこ炒めて食べたらおいしかったわ」などと、感謝されたりする。そのたびに、おおげさだけど、俺は胸がジーンとしてしまうのだった。お客さんの嬉しそうな顔を見る。たったそれだけのことで、俺はこの仕事をやっててよかったと思えた。p53-54
→人との関わりの中で、自分の知らない一面に気づく。自分の世界が広がる。それもやっぱり人と会うことの大切な部分。

・「俺のこと、人に好かれるなんて言うてくれるんは、日本広しといえども、上じいだけやけどな」
 「そらそうやろうなぁ。そやけど、日本は三好の思っとるほど広くもないし、それに、もうぼけとるで、わしの言うこともあてにならんで」p54-55

・「…三好がゆずなんて知ってることに、仰天しとるんや」
 上じいは失礼なことを言うけど、そのとおりだ。
 「そういえば、俺、ゆずなんか知らんかったな」
 「そうやろう」
 「そうや、スーパーで働きはじめて、野菜の名前がわかるようになったんやわ。昔はレタスとキャベツの違いもわからへんかったのになぁ」
 働きはじめて知ったことは、いくつもある。別に誰かに直接教えられたわけじゃないのに、野菜の種類、調理法、保存法、包丁の使い方、挨拶の仕方、お金の計算、敬語の使い方などなど。いろんなことが少しずつ、俺の中に染み付いていった。うっとうしいことも多いけど、やっぱり人の集まる場所で働くのはいい。
 「上じいのアドバイスどおり、スーパーで働いてよかったんかもしれんな」p55-56

・「どうでもええけど、しっかりまともなもん食わなあかんで」
 「なんや、三好。結婚するとなったら、突然偉そうなこと言うようになったな」
 上じいは笑った。
 「当たり前や。食べることは基本や」
 「そないなこと、三好に言われんでもわかっとるわ」
 「そやったらええけど」
 俺は玉子丼を上じいと食べるようになって、一人の時もましなものを食べるようになった。キャベツしか入っていない焼きそばを炒めたり、ぐちゃぐちゃの卵を焼いたりする程度のことだけど、何かをおなかに入れようと思うようになった。上じいにとっても俺との玉子丼が、一人暮らしの中でちゃんと食べるきっかけになってくれたらいいのだけど。
 「俺が結婚しても、子どもが生まれても、みんなにホモやって言われても、借りや貸しやとか面倒なこと言わんと、こうやって一緒に玉子丼食おうな」
 俺がそう言うと、
 「ああ、そやな」
 と、上じいは今日は素直にうなずいた。p64-65

・「ええやない。父さんに花もたせてやってよ」
 「そやけど」
 「それに、十分すぎるほど借りを返してもらったわ。あなたとの玉子丼があったから、父さんは告知されていたより、長く生きたんよ」
 娘さんはそう笑った。優しい笑顔だ。上じいと同じ笑顔。俺はその顔に思わず涙ぐみそうになって、慌てて天丼を口の中に押し込んだ。全然味のない天丼。いつもの玉子丼の半分も美味しくない天丼。
 俺にはまだまだ天丼は早いんやな。本当に誰かと天丼をゆっくり味わえるようになるまで、まだまだ頑張らなあかん。
 つゆがしっかり染みたご飯をほおばりながら、俺はそう思った。p74

・「ところで、広田って、何が好き?」
 「何が好きって?」
 「食べ物。好物は何?」
 野球の話から一転して、今度は食べ物の話。宝田は何を訊きたいのだろう。俺はますますわからなくなった。
 「そうだな…。米かな」
 「米?いいねぇ。健康的だ」
 俺が不思議な顔のまま答えるのに、宝田は満足そうにうなずいた。
 「じゃあ、嫌いなものはある?アレルギーを起こす食べ物とか?」
 「いや、なんでも食えるけど…」
 俺は首をさらにかしげた。
 「おお、すばらしい。やっぱ、高校生はそうでないとね」
 「あのさ、なんの調査か知らないけど、俺、あのバスに乗るから」
 宝田の訳のわからない話はまだ続きそうだけど、バスが向こうのほうにやって来るのが見えた。
 「え、そうなんだ。じゃあ、急いで用件を片付けないと。広田って、今度の日曜日、暇?」
 宝田は少し早口になった。
 「暇は暇だけど?」
 日曜日は部活の練習も休みだ。遊ぶ約束もない。
 「じゃあさ、遊びに行こう」
 「遊びに行こうって、俺とお前で?」
 「そうだよ」
 「そうだよって、二人で行くのかよ?」
 思いもしない宝田の申し出に、俺の声は大きくなった。
 「あぁ、もちろん二人で。まぁ、簡単に言えばデートみたいもんだな」
 宝田はへへへと笑った。p80-81
→なんか良いよね。男同士だけど、照れ臭くて。お互いのことをよく知らない二人が近くには、こーゆー思い切る場面も必要かもね。

・一体どんな格好をして行ったらいいのだろうか。ばっちり決めていって、はりきっていると思われるのは困る。かといって、あまりにラフな格好ではなぁ。学校での様子を見てると、宝田はおしゃれなやつだ。一緒にいて、俺のダサさがめだってしまうのはいやだ。はぁ。デートって面倒くさい。それに、お金はどうしよう。いくらぐらい持っていくべきなのだろうか。男同士なんだから、当然割り勘だよな。だいたい宝田はどこにいく気なのだろうか。普段交流がないから、行動が読めない。女の子とはデートしたことがあるけど、男とはない。どうしたらいいのかわからないことだらけだ。p84
→めっちゃデート前って感じ。いろいろ考えた結果、面倒になるのわかるなぁ。

・「ああ。いただきます…。っていうか、お前ってめちゃくちゃ器用なんだな」
 俺がつかんだおにぎりは、きれいな三角形になっている。
 「めちゃくちゃってことはないけど、そこそこね。料理なんて、やってみたら案外簡単なんだよ」
 「へぇ」
 感心しながらかぶりつくと、おにぎりの中にはほんのり甘辛いかつおが入っていた。
 「すごい。中身入りじゃん。俺、調理実習でおにぎり作ったことあるけど、こうはいかなかったな」
 「一回こっきりじゃうまくいかないって。二、三回続けてやってみないとな」
 宝玉はミートボールを口に入れた。俺も同じようにほおばる。ミートボールの中にうずら卵が入っていて、俺はまた驚いた。卵焼きもコロッケも、どれもおいしい。
 「本当にすげえ」
 「広田って、単純だなぁ」
 「いやいや、本気ですごいって。野球部のやつらに食わしたら、みんな同じような反応するぜ」
 「野球部って、単純なやつらがそろってるんだね。僕、マネージャーにでもなろうかな」
 「おう。なればいいって…。あ、俺、飲み物買って来るわ。お茶でいいよな」
 夢中で次々に口に放り込んでいたから、飲み物がないことに気づかなかった。温かいお茶でもあると、もっと弁当がおいしくなる。俺は、公園の入り口にあった自販機に向かった。
 「広田って、いいやつだよな」
 宝田は俺が買ってきたお茶をごくりと飲んだ。
 「え?」
 「広田って、やっぱりすごくいいやつだ」p94-95

・「これはさ、お礼だよ。お礼」
 「お礼?」
 「うん。広田さ、こないだ僕のことかばってくれたじゃん」
 「こないだ?」
 そんなことあっただろうか。宝田にかかわらず、俺は人をかばうようなやつじゃない。必死で記憶を呼び起こしてみたけど、思い当たる節はなかった。
 「そうやって、忘れてるところが広田のいいところだよね。ほら、先週のテスト週間に、僕が学習委員会の報告をした時だよ」
 「テスト週間の時…?」
 …「そんなことで、俺を誘ったの?」
 「ああ。すごい嬉しかったんだよね。ちょっと、胸がじーんとしちゃってさ。あの時の広田ってかなり格好良かったよ。僕に恩を着せることとなく、何も言わず一目散に教室出ていくんだからさ」
 それはテレビのためだ。爆に乗り遅れないため必死だったのだ。
 「いや、なんていうかさ。あれは、たまたまだ」 
 買いかぶられた俺は、まごまごした。
 「そんな謙遜しなくたっていいじゃん。同性でも、仲良くない相手でも、いいことしてもらえると、胸は勝手に動くんだよね。ぞくっとしてから、じーんと熱くなった」p99-102

・「俺は軽音楽部だからいいけど、やきゅうぶでそれはまずいだろう」
 俺のバッティングを見た宝田は、隣のブースからでかい声で言った。
 「いいんだよ、俺は。守備専門だから」
 そう言いながら何度も打っているうちに、やっとタイミングが合ってきた。そうなれば、気持ちよく球が当たる。部活でやる野球と同じように、こういうバッティングも楽しい。やっぱり俺は野球が好きなんだなと思う。p103-104

・「なんか、めちゃくちゃ楽しくなってきた」
 感覚さえつかめば、後は簡単だ。一球当てることができた宝田は、その後はバンバン打ちはなっていた。
 初めて付き合った女の子とも、バッティングセンターに行ったことがあった。やっぱり彼女は全然打てなくて、教えてくれと言われてアドバイスした。それなのに、何度か注意しているうちに、「もう、ほうっておいて」と逆ギレされたことがある。
 「おお、今の逆転満塁ホームランだよね」
 宝田がでかい当たりに歓声をあげた。
 「お前、センスあるじゃん」
 「こつさえつかめばね」
 「すごいすごい」
 「広田のおかげだ。広田って、教えるのうまい」
 「そんなことないけどさ」
 「またまた謙遜しちゃって」
 すっかり上手になった宝田と俺は、気の済むまで球を打ちまくった。p105-106

・「おう。とにかく、汗流せるところに行こう」
 「それって、もしかして?」
 「いいじゃん。風呂入るだけだって」
 「なんか、やらしい」
 さんざん汗をかいた俺たちは、コンビニでパンツを買い、げらげら笑いながら銭湯に向かった。
 駅前のスーパー銭湯は、まだ夕方だというのにたくさんの客がいた。湯気の立ち込めた浴場にみんなの声がこだましている。
 宝田はさっさと身体を洗うと、いろんな種類の風呂があるのが面白いのか、あちこちの浴槽につかっては移動していた。
 俺はしっかりと汗を流すと、一番大きな湯船につかった。広い風呂は気持ちいい。固まった筋肉がみるみるやわらぐ。家だと風呂なんて5分で済ませてしまうけど、銭湯だといつまでもつかっていられそうだ。
 「やっぱり、露天風呂は寒いな」
 全種類の風呂を制覇した宝田が、俺の隣にやってきた。
 「忙しいやつだな」
 「せっかくだから、どの風呂にも入りたいじゃん。普段、あんまり銭湯なんて来ないし」
 「まぁな」
 「へへへ。ゆっくり風呂に入れるなんて、良いデートだ」
 宝田が満足げに言った。p106-108

・「そっか。ごめん。じゃあ、何か他のを買ってくる」
 「いいよ。飲む飲む」
 「でも、炭酸だめなんでしょう?」
 「せっかく買ってもらったのに悪いじゃん」
 「無理しなくていいのに」
 「無理しないよ。こうやって振って、炭酸抜けてから飲む」
 内村君は缶を開けると、静かにコーラを降り始めた。
 「なるほど、賢いね」
 「だろう?」
 私もコーラを振ってみた。炭酸は好きだけど、内村君の様子を見ていると楽しそうで何だかまねしてみたくなった。
 ごくたまにダイスケが私に何かを買ってくれることがあった。洋服だったり、ハンカチだったり。けれど、ダイスケはセンスがなく私は始末に困った。洋服やバッグだけでなく、タオルにしてもティッシュペーパーひとつにしても、ダイスケの買ってくるものはいまいちのものばかりだった。そのたびに、私は文句を言い返品に行くことすらあった。
 こんなふうに寄り添うことができたら、もっとダイスケとうまくやれたかもしれない。趣味の悪いタオルだって使い道があったはずだ。コーラの炭酸を抜きながら、そんなことを思い出した。
 「よし、もういいだろう。飲もう」
 内村君の合図で、私たちはコーラを飲んだ。気の抜けたコーラは、甘いだけの水になっていたけど、何とか飲めた。
 「まぁ、まずくはないね」
 「うん。お子様用コーラとして、売り出そうかなあ」
 「絶対売れないだろうけどね」
 甘ったるいコーラを飲む私たちのそばで、ポチは静かに座っていた。夕焼けの下で見ると、ポチが弱っているのがよくわかった。
 「本当に。ポチはおばあちゃんだったんだね」
 私がそう言うと、内村君は静かに「そうだね」とうなずいた。p156-157

・今の時代、父子家庭も多いし、お母さんの方が仕事が忙しい家もある。だから、お父さんのお迎えもめずらしいことではなかった。だけど、修平さんは目立っていた。
 すらりと背が高くてスーツをきちんと着ていて、保育園の中にいると浮いて見えた。若く見えるというわけではなかったけど、子持ちという雰囲気はまるでなかった。ところが、自分の子どもを見つけたとたん、修平さんはがらりと変わった。修平さんはいつも、「おお、幹一」と、何年かぶりに息子に会うかのように、大きく手を広げてわが子を迎えいれる。カンちゃんのほうは、面倒くさそうに、でも、やっぱり嬉しそうに父親へと近づく。感動しながらカンちゃんを迎えにくる修平さんは、生粋の「お父さん」という感じだった。
 「今日もいい子にいていたか?」
 修平さんは大体そう訊く。カンちゃんはたいして良い子にはしていないのだけど、「まぁね」と返事をする。すると、修平さんは大満足してカンちゃんを抱きしめる。毎回見るその様子は滑稽で笑えたけど、すごくいいなと思えた。
 奥さんがいないことがかわいそうだという気持ちや男二人の暮らしは大変だろうなという気持ちで惹かれた部分もある。けれど、一目ぼれに近かった。こういう人が私の理想だったんだ。そう思った。p170-171

・「それより、おやつにしよう」
 修平さんは冷蔵庫からヨーグルトを出してきた。修平さんは誰かが来ると、すぐ「おやつ」にしたがる。子どもがいる証拠だ。
 りんご味の甘いお子様ヨーグルト。それを機関車トーマスのプラスティックのスプーンで食べる。甘い食べ物は好きじゃないけど、こういう愉快なものをごく日常で食べられるのって、子どもと関わっている特権だと思う。p176
→自分だからこそ分かる。相手が自分でも気づいてない一面を発見できることもあるよね。

・「そうよ。そんなに塞がないで。これから先、カンちゃんは風邪だっていっぱい引くし、熱だって何度も出る。いちいち落ち込んでたらついていけないよ。今日一日寝たから、明日にはカンちゃん元気になるからさ」p189-190
・「そうだよ。これから先、幹一はたくさんぐれるし、たくさんわがまま言うだろうし。こんなことで落ち込んでたらついていけないよ」
 修平さんはさっきの私の口ぶりを真似てそう言った。p192
→お互いがお互いのことを見てるから、優しくできるし、優しさを返してもらえる。相手のことを自分のように大切に思ってこそ。

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