高田大介のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ文章は読み応えがあり、そして長い。しかし長いことが苦になることはない。
むしろ、長さはこの物語の世界に長く居続けられることを意味し、すらすらとは理解できないことがある文章は、早く先を知りたいがために焦ってページをめくろうとする手を宥めてくれる。
ファンタジーにカテゴライズされているのは、独自の地理と歴史を持った世界を描いているためと思われるが、物理や自然科学の法則は、この現実世界と何ら変わりない。魔法、超能力、異種族、モンスターといったものも出てこない。そういう意味では、これをファンタジーと呼んでいいものか迷う。
一方で、アジア、ヨーロッパ、南洋地域を想起させるような国や地域が登場し、街の歴史や成り立ち、陸地や海の形などに由来する地政学が緻密に設定されている。こういう世界の成り立ちを想像しながら読むのも楽しい。
マツリカとキリヒトのコンビもいい。キリヒトが鋭い感覚で何かを察知し、マツリカがそれを知識と結びつけて、思いもよらないところまで考察を深めていく。この連携が実に面白い。知識だけでも、感覚だけでもたどり着けないところに、二人だからこそたどり着け、それが物語を推進しているという感覚が得られる。
あと、この物語では言語が重要な意味を持つ。言語とは、単に音声や文字で情報を伝えるためのものではない。言葉というものを、多角的に掘り下げて物語に組み込んでいるのが面白い。
言葉を大事にしている作品だけあって、本文もまた、一つひとつの言葉が丁寧に選ばれ、編まれている。決して気軽に読み飛ばせる文章ではないが、それがいい。 -
Posted by ブクログ
最後まで読んではじめて、タイトルの意味の深さに気づきました。推理小説?歴史小説?読んでいて面白く、主人公と上司との討論やフランスの歴史や現実を確実に把握したと思われる(著者はフランス在住でしたよね)叙述、地方と中央の捉え方、そして音符、記譜の歴史や音楽の成り立ちが、対位法のように重層的に展開されます。
ほんとうにフランスをほんの少し旅したような、その懊悩を一欠片化でも知ることができたような気持ちになりました。
ある意味、誰も犯人でもなく何も起こらない物語は作者が伝えたいことを訥々と語りながら、最後の最後に、心に重く響くメッセージを伝えて終わります。
歴史とは何か?人が感じ、理解し、伝えるとは何か?
果てしなく繰り返された問への一つの答えだと思いました。
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Posted by ブクログ
ネタバレ場所の特定までは地学、救出作戦は地理(気候)の知識と、これまで学んできたものってこうやって実践になるんだなぁと大変面白く読んだ。もちろんいつもの高田先生として言語学も混じる。
なぜわざわざこんな難しい言い回しをするのか?と前から少し思っていたが、この物語の雰囲気というだけではなく、「赤」は「赤」をもってしか言い表せないように、あらゆる言葉は完全な言い換えができるものではない、というやりとりで腑に落ちた。
マツリカが断食して限界に近づいた際、文章も平易に一文が短く改行が多くなったのは、マツリカの頭が回っていないことを視覚的にもわかりやすくしていて、苦しみがダイレクトに伝わってきた。
キリヒトが武力チートすぎるけど、信仰に厚いという部族の設定がここに生きるか!と膝を打った。そもそもミツクビに忠誠を誓っているわけでもあるまいし、螺旋階段で敗走してそのまま逃げるかと思ったが、そこにダメ押しという形か。
仲間が増えて、紅花とキリヒトのやりとりなども今後気になるところ。