P+D BOOKS作品一覧

  • P+D BOOKS 冬の宿
    値引きあり
    4.0
    1巻500円 (税込)
    映画化もされた戦前のベストセラー作品。 「私にとっては、霧島家の貧寒で乱雑な空気だけが身を置くべき場所となっていた。泥水の中でなければ落ちついて棲むことのできないある種の魚たちのように……」  大学生の〈私〉は、学校にも学友ともなじめず、下宿していた叔父一家ともしっくりいかずに、貸間と貼り紙のあった霧島家の6畳間を借りることになった。  ところがその主人・嘉門は自分勝手な暴れ者で、幼いふたりの子を抱えたクリスチャンの妻・まつ子を泣かせてばかり。しかし〈私〉はなぜか嘉門を嫌いになれず――。  原節子出演で映画化もされたベストセラー作品。  旧制高校の同窓会を通じて、戦後の現実をシニカルに描いた「アルト・ハイデルベルヒ」を併録。
  • P+D BOOKS フランスの大学生
    値引きあり
    4.5
    1巻500円 (税込)
    仏留学生活を瑞々しく描いた著者デビュー作。 1950年、27歳の遠藤周作は文学研究のため、いち留学生としてフランスに渡る。 そこにはいまだ大戦の荒廃が色濃い日々の暮らしがあった。ナチスの残虐行為、肉欲、黒ミサ、サド、ジイド等々、ときに霧深いリヨンの街で、あるときは南仏の寂しい曠野で、人間の魂の暗部を擬視しながら綴った思索の足跡――。  愛とは、信仰とは? 本書は、戦後初の留学生として渡ったフランスでの学生生活について日本に書き送った原稿をまとめたエッセイ集であり、著者の原点ともいえるデビュー作である。
  • P+D BOOKS フランドルの冬
    値引きあり
    4.0
    1巻693円 (税込)
    狂気の世界に踏み込む精神科医の深淵を描く。 フランス北部に広がるフランドル地方のサンヴナン精神病院に勤務する日本人留学生コバヤシの精神科医としての日々を描く、著者自身の留学経験をベースにした長編処女作。 1967年に発表され、芸術選奨新人賞を受賞。糞臭たちこめる不潔病棟や、素裸の精神病患者――コバヤシは青空が殆どないフランドルで精神科医として働くうち、自己と患者との境界を踏み越えて、正気と狂気の間をさまよい始める。 若い看護師との同棲やフランス人医師たちとの交流も深まるものの、人間存在の孤独に耐えきれなくなっていく……。復刻にあたっての著者あとがきも併録。
  • P+D BOOKS ブルジョア 結核患者
    値引きあり
    -
    デビュー作「ブルジョア」を含む初期作品集。  父が天理教に入信し、叔父夫婦に育てられた芹沢光治良。帝国大学卒業後、農商務省に入省したが、経済の研究を志してパリに留学するもそこで結核に感染し、フランス、スイスで療養生活を経験する。そんな体験から書かれたデビュー作品集である。  雑誌「改造」の懸賞創作で1等に入選した「ブルジョア」は、結核患者が集まる町を舞台に、病に侵された夫と妻、多国籍の入院患者らの懊悩を描いた作品。 「結核患者」「昼寝している夫」「椅子を探す」は、杉夫妻を主人公に、結核に倒れた夫が心身ともに復活していく様子を描写し、「橋の手前」「風迹」は、共産主義に対する市井の人々のとらえ方を描出している。
  • P+D BOOKS プレオー8の夜明け
    値引きあり
    -
    兵士の日常を描いた芥川賞受賞の戦争文学。 第2次大戦後、戦犯容疑でサイゴン刑務所に抑留された日本兵の鬱屈した日々をユーモア交えて描いた第63回芥川賞受賞作「プレオー8の夜明け」。 他に筆者処女作「墓地で」から、晩年の名品「セミの追憶」(第21回川端康成文学賞作品)まで、戦争の記憶をつむぐ短編16作を収録。 戦後すでに70年を超え、戦下の記憶は風化するにまかされる。30年にわたる筆者の貴重な営みを通じ、名もなき兵士たちは、何を考え死んでゆき、生き残った者たちは何を思うのか――今改めてその意味を問いかける、珠玉の“戦争文学短編集”。
  • P+D BOOKS ヘチマくん
    値引きあり
    -
    1巻500円 (税込)
    太閤秀吉の末裔が巻き込まれた事件とは? ヘチマくんとは、太閤の末孫、豊臣鮒吉のアダ名である。容貌風采ヘチマの如くモッサリとして世知に疎く、底抜けに善良で人を疑ぐることを知らない。 その彼がまきこまれた事件とは、海千山千のバー・マダム菊池銀子と、学友・熊坂とが争う鹿児島・桜島の土地買収競争だった。 遠藤周作が、得意の明朗軽快なタッチで、現代における人間回復を訴えた、「おバカさん」に次ぐユーモア長編作。
  • P+D BOOKS 変容
    値引きあり
    -
    1巻500円 (税込)
    老いてなお盛んな画家の生きざまを描く。 「老齢の好色と言われているものこそ、残った命への抑圧の排除の願いであり、また命への賛歌である。無関係な人には醜悪に見える筈の、その老齢の好色が、神聖な生命の輝きをもって私の前方にまたたき、私を呼んだのだ。」  還暦を迎えようとしている画家が、友人の妻や姉、亡くなった妻の親友らと交わる様子を、ときには艶めかしく、ときにはユーモラスに描く。時代を感じさせない流れるような筆致で、“老いらくの性”を当たり前のものとして捉え直した傑作長編小説。
  • P+D BOOKS 鳳仙花
    値引きあり
    4.3
    1巻693円 (税込)
    中上健次が故郷紀州に描く“母の物語”。  「秋幸もの三部作」よりも以前の時代を描く、秋幸の母・フサの波乱の半生を描いた物語。  海光る3月。私生児としての生い立ちに昏い痛みを覚えながらも、美しく利発な娘に成長したフサは、十五になった春、生まれ育った南紀の町をあとにした。  若々しい肉体の目覚めとともに恋を知り、子を孕み、母となって宿命の地に根をおろすフサ。しかし、貧しくも幸福な日々は、夫・勝一郎の死によって突然に断ち切られた。  子供を抱え、戦時下を生き延びる過酷な暮らしの中で、後に賭博師の龍造と子を為し、秋幸と名付ける。しかし龍造が賭博で刑務所に入っている間、他の二人の女を孕ませていたことを知り、フサは秋幸には龍造を父と呼ばせぬと宣言する……。  中上健次が実母をモデルに、その波瀾の半生を雄大な物語へと昇華させた傑作長編。
  • P+D BOOKS 抱擁
    値引きあり
    -
    1巻423円 (税込)
    妖しい洋館が舞台のロマネスクな人間模様。 大都会・東京の真ん中に静かに佇む洋館に心惹かれた「私」は、得体の知れない不動産屋に誘われるままにその館を訪ねることになる。 そこには幻想的な少女・霧子や近寄りがたい老主が住んでいた。身を固く包んで口さえ開こうとしない霧子に、私の興味は膨らんでいく。 主である霧子の祖父の依頼で、彼女の家庭教師として洋館に同居することになる私……。そこで、この一家の住人たちは数奇な運命に翻弄され始めるのだった。 「ある夕陽」で芥川賞を受賞した日野啓三が幻想的作風で新境地を開き、泉鏡花賞に輝いたロマネスク小説の傑作。
  • P+D BOOKS 焔の中
    値引きあり
    -
    青春=戦時下だった吉行の半自伝的小説。  昭和19年8月――、僕に召集令状が届いた。その後の入営は意外な顛末を迎えるが、戦時下という抑圧された時代、生と死が表裏一体となった不安を内包し、鬱屈した日々を重ねていく。まさしく「焔の中」の青春であった。  狂おしいほどの閉塞感の中にあっても、10代から20代の青年らしい友人との、他愛のない会話、性への欲望、反面、母への慕情など巧緻な筆致で描かれる。また、戦争とは一線を引いたかのような、主人公の透徹した眼差しと、確固たる自尊心は一貫しており、吉行自身のメンタリティが垣間見える、意欲作である。
  • P+D BOOKS ぼうふら漂遊記
    値引きあり
    -
    1巻423円 (税込)
    著者の真骨頂ともいえる世界の賭博場放浪記。 カミさんと別れたのをきっかけに「くだらないことをしてやろう」と思ったナルコレプシー(睡眠発作症)の男が、ラスヴェガスを皮切りにニース、ロンドン、サイパン、カイロ、ベイルートなどの賭博場を転々と放浪することに――。 同行する秘書兼通訳のミセス・アンはユダヤ人の母と、日本人医師の父とのハーフで機知に富んでいる。 ギャンブル描写のみならず、著者が世界各地で出会ったユニークな人々を特有のユーモラスな視点で描写しているのが痛快な一冊。
  • P+D BOOKS マカオ幻想
    値引きあり
    4.0
    1巻539円 (税込)
    亡くなった年に発表された遺作短篇集。 「もしも日本に帰れずに、かの地で死ぬようなことがあったら、私は必ず前歯にジェズスの教えのみしるしを刻みこんで置きます。」  本家の敷地内から発見された壺の中から、365年前にマカオに流された先祖の“遺言”が発見された。遺骨の行方を捜しにマカオを訪れた千葉裕平は、亡くなった娘・由紀子に生き写しの女性、葉銘蓮と出会う。果たして、“みしるし”を刻んだ遺骨は見つかるのか、そして葉銘蓮の正体は――。  マカオへの幻のような旅を綴った表題作に、八甲田山雪中行軍の外伝「生き残りの勇士」、イギリス公使オールコックが外国人として初めて富士山頂に立った顛末を描く「富士、異邦人登頂」など8篇を収録した短篇集。亡くなった年に出版された遺作のひとつ。
  • P+D BOOKS 曲り角
    値引きあり
    3.0
    1巻539円 (税込)
    人生の曲り角を迎えた中高年を描く17篇。 ――世間というものはおそろしいな……庭をちょっと作り変えれば、どこかおかしいと思われるし、他愛のない絵を描けば変態扱いか……そういう自分たちの、どこが正常だと思ってやがるんだろう――  定年前後の男たちが、庭の作りかえや裸婦画、プラモデル作りなどに熱中するが、周囲にはまるで理解してもらえない悲哀を描いた「積み木あそび」、ナイフやフォークを持つときに相手が小指を立てていたという一事で見合いが流れてしまう「小指」、病気で倒れたお偉いさんのため、好物だという鰻を熱々の状態で届けたが、どんでん返しに遭う「鰻」などなど、中高年の悲喜劇17篇を収録した名作短篇集。
  • P+D BOOKS 街は気まぐれヘソまがり
    値引きあり
    4.0
    無頼派作家のヘソまがりエッセイ集。 「私は富士山が大嫌いである。……即刻切り崩しかきならしてしまうがよろしい。」(富士の裾野の暴風雨) 「私はゴルフもやらない。……皆がやっている遊びをやらなくたって、少しもさしつかえない。」(困ること、腹立つこと) 「日本料理というものは、完全に殿様か老人向けにできていて、ただ害がないというだけのものにすぎなくなっているようだ。」(肉には大根おろしが……)  ギャンブル、食、作家仲間や芸能人との交流……雑多なテーマについて、気の向くままにぶった切る痛快エッセイ集。「アサヒ芸能」に1年間連載された47篇を収録。
  • P+D BOOKS 眞晝の海への旅
    値引きあり
    -
    1巻500円 (税込)
    帆船という“劇場”で巻き起こる人間ドラマ。 海を愛する若者が生の歓びを求め、ブリガンティン型帆船<大いなる(グローセル・)眞晝(ミッタ-タ)>号に乗り込んで船出をする。 「無一物主義」という哲学思想をもつベルナールを船長に、フランソワ、ターナー、ケイン、女性のファビアン、そして日本人の私など11人のクルーは、ヨーロッパから日本を経由して、一路、太平洋へと航海を続ける。 やがて、南太平洋に入ると、荒れ狂う颶風(ぐふう)圏に突入していく中、嵐のさなかに恐るべき事件が起きてしまう。帆船の船内は、さながら芝居の劇場のように複雑な人間関係が入り組んで、それは悲劇への序章にふさわしい舞台だった。 辻作品らしい“詩とロマンの薫り”に満ち溢れた長編小説。
  • P+D BOOKS 魔法のランプ
    値引きあり
    3.0
    著者の博学多識ぶりを証明するエッセイ集。  化学は錬金術の正統な娘ではなかったけれども、いかさま錬金術師をもふくめて、金属変成を夢みた多くの道士たちのでたらめな実験のなかから、数々の貴重な化学上の発見がもたらされたのは事実であった。いってみれば、化学は錬金術の私生児みたいなものだったのである。(「錬金術夜話」より)  博覧強記、博学多識で知られる澁澤龍彦が、錬金術をはじめ、処女生殖、タランチュラ、コクトー、泉鏡花、推理小説、絵画、舞台、映画など多種多様な事柄について、縦横無尽に論じたエッセイ集。  雑多なテーマを取り上げているように見えるが、一つひとつの作品が他者にはまねのできない切り口と深みをもっており、いつしか澁澤ワールドに引き込まれていく。
  • P+D BOOKS マリリン・モンロー・ノー・リターン
    値引きあり
    -
    1巻500円 (税込)
    多彩な野坂ワールド!オリジナル編集短編集。 徹底的に現実を拒否し、次々に湧き上がるおぞましき妄想を、世紀の美女・モンローに仮託して謳い上げた作家自身の“私小説”である表題作「マリリン・モンロー・ノー・リターン」。 ほかに老いと介護をテーマとした「死の器」、大学落研の青春を描いた「ああ軟派全落連」、原発建設がもたらす悲劇を描いた「乱離骨灰鬼胎草」、怪奇幻想小説「砂絵呪縛後日怪談」等々、遠国の美女への願望、女たちの執念、反逆的なヒューマニズムや現実逃避をテーマとして、多面性に富んだ作家・野坂昭如ワールドが味わえるP+D BOOKSオリジナル編集版。
  • P+D BOOKS マルジナリア
    値引きあり
    4.0
    欄外の余白(マルジナリア)鏤刻の小宇宙。  強靭な思考力と該博の知識による、マルジナリア(欄外の余白に嵌め込まれた書き込み)の絢爛たる鏤刻の小宇宙・―エドガー・ポーのひそみにならい書き継がれた多彩な断章の集積が、いま異色の読書ノートとして顕現する卓抜なエッセイ集。  著者晩年の雑文集にて、映画「E・T」への考察、作家・石川淳への言及等、多彩な「マリジナリア」が、読書録として纏められている。
  • P+D BOOKS 水の都
    値引きあり
    -
    1巻577円 (税込)
    大阪商人の“市井文化と歴史”を描いた秀作。 熟年主人公の「私」は大阪府出身ながら生家は郊外にあり、家庭を持ってからは東京暮らしとあって、大阪の街について、実はよく知らない。そこで「私」は妻の従弟にあたる「悦郎さん」に会い、昔日の大阪を語って貰おうと会いに出かける。 明治・大正・昭和の3代にわたる大阪商人の日常を丹念に聞き取ることで、“水の都”の移り変わりが匂い立つように浮かび上がってくる。淡いファンタジーの如く、さまざまな市井の人々の営みが生き生きと描かれた“第三の新人”庄野潤三の秀作だ。
  • P+D BOOKS 三つの嶺
    値引きあり
    -
    1巻500円 (税込)
    義妹・マリアが選ぶのは双子の兄か弟か?  名峰ドライチンネで遭難死したイタリア人ガイドの娘・マリアは、ガイドのバディーであった日本人・鳥羽省造の元に引き取られ、2歳上の双子・博、豊とともにすくすくと成長する。10歳だった少女は、双子と同じく山登りが大好きな美しい女性になり、やがて省造が勤める会社のマスコットガールを務めるまでに。一方、大学生になっていた博と豊は、マリアへの募る思いを抑えることができず、ほぼ同時に愛を打ち明ける。  ふたりのどちらかを選ぶことができないマリアは、タレント活動に没頭する日々を送るが、ある日、博と豊が北アルプスで遭難したという知らせを受けて――。  きょうだいだが恋愛も結婚もできるという微妙な関係にある3人が織りなす、山を背景とした濃厚な人間ドラマ。
  • P+D BOOKS 耳学問・尋三の春
    値引きあり
    -
    1巻539円 (税込)
    悲惨な状況を笑いに変える木山捷平の真骨頂。  満州で現地招集されたものの、数日で終戦となり、日本に帰国する術がないまま現地で過ごしていた〈私〉。ある日、シベリア送りにする日本人を徴発していた巡査につかまってしまい、目を盗んでなんとか逃げだしたものの、その先ではロシヤ兵が待ち構えていた。付け焼き刃で覚えていたロシヤ語を駆使して事態を打開しようとするが――。  危機的かつ悲惨な状況をユーモラスな筆致で描いた直木賞候補作「耳学問」のほか、太宰治らとの交流を綴った「玉川上水」、小説デビュー作にして芥川賞候補となった「抑制の日」など13篇を収録した、“短篇の名手”木山捷平の面目躍如の一冊。
  • P+D BOOKS 武蔵野インディアン
    値引きあり
    -
    1巻539円 (税込)
    武蔵野を題材にさまざまな明と暗を描く。 「おい、日清戦争の前の年まで、今の東京都下は神奈川県だったのを知っているか。……都下という言い方、いかにも東京白人の発想だ。植民地扱いじゃないか」 関東大震災後に郊外に移ってきたサラリーマンの子・太田久雄は、武蔵野にルーツを持つ中学時代の友人たちからそう指摘される。彼らは自らを「武蔵野インディアン」と称し、地に足がついておらず「紙とインクの世界しか知らない」都会の“白人”とは一線を画する存在だというのだ――。  武蔵野を題材に、都会と地方、戦前と戦後、保守と革新といった、さまざまなコントラストを見事に描出した珠玉作。
  • P+D BOOKS 虫喰仙次
    値引きあり
    -
    1巻500円 (税込)
    戦後最後の「無頼派」色川武大の傑作短篇集。 元海軍司令官の父の末弟で、受験に何度も失敗し自らの人生を決めあぐねた若き叔父・御年。悲しい結末を迎えた彼の書き残した父宛の手紙で構成した「遠景」をはじめ、夢の手法をまじえて綴った「復活」ほか、生家をめぐる人々をモチーフとした作品を中心に、ギャンブル仲間であった一人の男の意外な出世と悲惨な転落を追った「虫喰仙次」など、短編7篇を収録。戦後最後の無頼派作家の描く、はぐれ者たちの生と死。
  • P+D BOOKS 無妙記
    値引きあり
    -
    1巻500円 (税込)
    「楢山節考」の戯曲を含む名作短篇集。 ――京の都は古い歴史を持っていた。その間、その土地では大勢が死んで、土の下には数えきれない死骸が埋められて白骨になっているのである。――  誰も彼もが白骨の群れに見えてしまう、初老の男の無常観を描いた「無妙記」。若いころ、無免許運転で馬をはね殺してしまった男が、数々の不幸に見舞われる「妖術的過去」。帝の血をひく“三宮”が夜な夜な女性を食い物にしていることを知り、かつての従者の息子が犬山椒の毒で三宮を手にかけようとする「妖木犬山椒」など味わい深い7篇に、名作「楢山節考」の戯曲を加えた珠玉の短篇集。
  • P+D BOOKS 冥府山水図・箱庭
    値引きあり
    3.0
    1巻423円 (税込)
    短編出世作と不倫の性を描いた代表長編小説。 「冥府山水図」は己の絵の完成に生涯を賭した老画家の鬼気迫る執念と、到達点のない芸術の魔性を巧みに描き、“芥川の再来”とまで評された著者出世作の短篇。 東京山の手を舞台にした、広大な敷地に住む明治生まれの老父母、大正生まれの長男夫妻、昭和生まれの次男夫妻と、世代の異なる一族が繰り広げる赤裸々な人間模様を描いた「箱庭」は、一見平和で裕福に見える裏側に蠢く、性の衝動や空疎な関係性を生々しく描いた長篇意欲作。
  • P+D BOOKS 山中鹿之助
    値引きあり
    4.5
    松本清張、幻の作品が初の電子化!  主君・尼子家の再興を願い、大敵・毛利に果敢に挑み暴れた、山陰の戦国猛将・山中鹿之助の、短くもドラマチックな生涯を生き生きと描く。 没落しつつあった尼子家一筋に全てを捧げ、月山富田城を取り囲む毛利元就の大軍を、その抜群の勇力と才智により何度も跳ね返し、武名を高めた鹿之助だったが、最終的に尼子義久が毛利の軍門に下り、富田城を明け渡すことになった。  その後、牢人をしながらも尼子家再興を使命とし、尼子勝久を擁立し、幾度の苦難を乗り越え、石見国入りし新山城を占拠するも、毛利勢との戦に敗れ富田城へ入城することは叶わなかった。  さらに、10年後、織田信長の毛利攻めに乗じ、再び、尼子軍を再興した鹿之助だが……。  100度打ちのめされ、1000回も挫折を味わう壮絶な鹿之助の人生、しかし、進むことはあっても退くことはなかった、その義勇の名は、天下に鳴り響いた。  弊社雑誌「中学生の友」に1年間連載された、松本清張、幻の作品。著者が代表作「点と線」を執筆した頃に同時に描いた、名作が50余年の時を超えて甦る。
  • P+D BOOKS 楊梅(やまもも)の熟れる頃
    値引きあり
    -
    土佐の13人の女たちから紡いだ13の物語。 おきみさん、おときさん、おまつさん……、南国土佐の女たちの人生から着想を得て、著者が初めて試みた“ルポルタージュ・フィクション”。 「司牡丹」「得月楼」「お遍路」「足摺岬」「栴檀(せんだん)」「日曜市」「長尾鶏」「竹林寺」「赤岡縞」「珊瑚」「一絃琴」「狩山紙」「やなせ杉」といった高知の特産物や風物、名所などが鍵言葉(キーワード)となり、幾何かの波乱を含んだ女たちの人生と絡み合う13の短篇集。 抗えぬ運命や襲いかかる困難に翻弄されながらも、健気に気丈夫に生きる故郷の女たちの気質が巧みに描かれている。
  • P+D BOOKS やややのはなし
    値引きあり
    -
    軽妙洒脱に綴った、晩年の短文随筆集。 安岡章太郎、結城昌治、立原正秋、村松友視、森茉莉、澁澤龍彦、色川武大、柴田錬三郎ら作家や知人との交流、子供の頃の邂逅、愛用の粋な小道具、酒や甘味、美人論、身体の不調など還暦前後の身辺を腹蔵なく語っている。 《いささか変った書名をつけてみたが、同じ題名の随筆が、この本の中にある。「ややや」と驚く短い話ばかりを集めてみたものだが、いま読み返してみると、そういう要素を含んだ話がこの本の大部分といえそうだ。》あとがきより。 昭和57年から平成3年までの短文随筆を所収。
  • P+D BOOKS 誘惑者
    値引きあり
    5.0
    鬼気迫る“自殺者と自殺幇助者”の心理葛藤。 噴煙吹き上げる春まだ浅い三原山に、女子大生がふたり登っていった。だが、その後、夜更けに下山してきたのは、ひとりだけ――。 遡ること1ヶ月前、同様の光景があり、ひとり下山した女子大生は同人物だった。自殺願望の若い女性ふたりに、三原山まで同行して、底知れぬ火口に向かって投身させた自殺幇助者の京大生・鳥居哲代。 生きていることに倦んだ高学歴の女学生たちの心理を精緻に描き、自殺者と自殺幇助者の軌跡をミステリー風に仕立てた悽絶な魂のドラマ。高橋たか子の初期長編代表作で第4回泉鏡花賞を受賞。
  • P+D BOOKS ゆきてかえらぬ
    値引きあり
    4.0
    女性と人間について洞察する著者の真骨頂。  人物評伝では高く評価されている瀬戸内晴美が、自らとゆかりの深い人物について掘り下げた短篇集。  欧州社交界にこの人ありといわれた薩摩治郎八が余生を過ごす徳島に、地元生まれの著者が訪ねていく表題作のほか、太宰治の終焉の地近くに住むことになった著者が、“斜陽の子”太田治子との対話などを綴った「三鷹下連雀」、恋多き男・竹下夢二が最も愛した女性・彦乃との悲しい物語「霧の花」、著者が師事する丹羽文雄と老画家との奇妙な交流と別れを描いた「春への旅」、幸徳秋水の元妻の独白の形で綴られる「鴛鴦」の5篇が、著者ならではの、女性と人間についての深い洞察で描出される。
  • P+D BOOKS 夢のつづき
    -
    1巻770円 (税込)
    中高年が主人公のショートストーリー集。 ――私の見てきた商売の裏側を、洗い浚い書いちゃおうと思うの。今お偉いさんになっている連中が、実名で、ばんばん出てくるのよ。みんな、青くなるな、きっと……――  夜の店のママが、客の行状を洗いざらいぶちまける回顧録を書いていると聞いて、やましいところのある元常連たちが“対策協議会”を開く「近火御見舞」をはじめ、妻の浮気が原因で別れたのに、浮気相手に捨てられると元夫に秋波を送る女性に振り回される「あとの祭」、社員からも恐れられ、“財界の狼”と異名をとる男が、ひょんなことから海辺の町の女性と出会い、心癒される「狼男」など、中高年男性を主人公にした17のショートストーリー。  P+D BOOKS『曲がり角』に続く、味わい深い短篇集。
  • P+D BOOKS 夢見る少年の昼と夜
    値引きあり
    -
    1巻693円 (税込)
    珠玉の“ロマネスクな短編”14作を収録! 帰りの遅い父を待ちながら優しく甘い夢を紡ぐ孤独な少年の内面を、ロマネスクな文体で描いた表題作「夢見る少年の昼と夜」。 不可思議な死を遂げた兄の秘密が自分の運命にも繋がっている事実を知った女性の生を見つめる「秋の嘆き」ほか、「死神の叡者」、「鏡の中の少女」、「夜の寂しい顔」「未来都市」、「鬼」など、意識の深い底に横たわる揺らぎを凝視した福永ワールドの短編14作。 初版単行本『心の中を流れる河』、『世界の終り』より編纂した一冊。
  • P+D BOOKS 幼児狩り・蟹
    値引きあり
    3.0
    中年女性の屈折した心理を描く「蟹」他6篇。 外房海岸を舞台に、小学一年生の甥と蟹を探し求めて波打ち際で戯れる中年女性の屈折した心理を描き、第49回芥川賞を受賞した「蟹」。 ほかに、知人の子供や道端で遊ぶ子供に異常な関心を示す、子供のない女性の内面を掘り下げた「幼児狩り」。 夫婦交換による男女の愛の生態を捉えた「夜を往く」、「劇場」など、日常に潜む欺瞞を剥ぎ取り、その“歪んだ愛のカタチ”から、よりリアルな人間性の抽出を試みた、筆者初期の短篇6作を収録。
  • P+D BOOKS 幼年時代・性に眼覚める頃
    値引きあり
    3.0
    1巻539円 (税込)
    室生犀星“初の小説”を含む自伝的作品集。  婚外子として生まれ、生後間もなく養子に出された〈私〉。いつもやさしい義姉を除いて、周囲に理解してくれる人はおらず、小学校では喧嘩を繰り返して先生からも目をつけられていた。  そんななか、実の父親が亡くなり、母が行方不明になってしまう。ますます自棄になって乱暴を繰り返していた〈私〉は、川のなかでその後の人生を変えるあるものを見つける。それは、苔むした地蔵だった――。 自伝的色彩の濃い、著者初の小説「幼年時代」をはじめ、「性に目覚める頃」「或る少女の死まで」を加えた“幼年時代三部作”を中心に、繰り返し映画やテレビドラマになった「あにいもうと」を加えた全4篇を収録。
  • P+D BOOKS 夜風の縺れ
    値引きあり
    -
    1巻616円 (税込)
    最古作、未発表作を含む単行本未収録作品集。  表題作「夜風の縺れ」は、1955年9月に発行された同人誌「運河」第1号に収められていたもので、従来、色川作品最古といわれていた「小さな部屋」(1956年9月「文学生活」初出、『色川武大・阿佐田哲也 電子全集7』所収)よりも古く、『怪しい来客簿』(『色川武大・阿佐田哲也 電子全集1』所収)の「門の前の青春」にもつながる貴重な作品。  さらに、杉民也名義で書かれた「寝心地よいアスファルト」、歴史小説「影にされた男」「覇城の人柱」などの新規発掘作品8篇と、1985年に記されたまま公表されていなかった未発表の「日記」を収録。  加えて、『色川武大・阿佐田哲也 電子全集23』に収録された30篇の単行本未収録小説・エッセイを網羅した、ファン待望の1冊。
  • P+D BOOKS 夜の三部作
    値引きあり
    5.0
    1巻693円 (税込)
    人間の“暗黒意識”を主題にした三部作。 人間の奥深い内部で不気味に蠢き、内側からその人を突き動かそうとする“暗黒意識”を主題に書かれた『冥府』『深淵』『夜の時間』の三部作。 作家・福永武彦の死生観が滲み出た作品群だが、各ストーリーにつながりはない。 「僕は既に死んだ人間だ。これは比喩的にいうのでも、寓意的にいうのでもない。僕は既に死んだ」という書き出しで始まる『冥府』は、死後の世界を舞台にした幻想的な作品。 『深淵』は敬虔なクリスチャンの女性と、野獣のごとき本能むきだしの男との奇妙な愛を描いた物語。二人それぞれが一人称の告白体で、サスペンス的な要素も色濃い作品。 『夜の時間』は、男女の三角関係を、過去と現在の二重時間軸構造で描くロマンあふれる作品。
  • P+D BOOKS 四十八歳の抵抗
    値引きあり
    4.5
    1巻616円 (税込)
    “中年の危機”の男を描く「男性研究の書」。 1955年から56年にかけて読売新聞に連載され、大反響の下、流行語にもなった「四十八歳の抵抗」。 55歳が停年の時代に、真面目一筋に勤めてきた48歳の保険会社次長、西村耕太郎は恵まれた家庭を持ち、傍目には幸せそうな日々を送っているが、実のところはなにやら満たされない。 その心中を見透かしたように社内の島田からヌード撮影会に誘われる。そして一度も恋愛をしてないという焦燥から、耕太郎はバーの娘で19歳のユカリを口説いて熱海の旅館に出かけるのだが――。 社会的な地位があり体裁を繕って生きてはいるが、まだ燃え上がる激情も秘かに抱えた“ミドルエイジ・クライシス”を描いた普遍的な「男性研究の書」である。
  • P+D BOOKS 輪廻の暦
    値引きあり
    -
    1巻500円 (税込)
    凄絶な半生を描いた自伝的長編の完結編。  母に捨てられ、有名な詩人だった父・洋之助が亡くなってからは祖母に虐待されて育った嫩(ふたば)。結婚後も夜な夜な暴力を振るう夫に悩まされ続け、やっと別れることができてほっとしたところに、父の知人・岸上太郎が訪ねてきた。 「軽いエッセイや小説でも。いや、そんなことより洋之助の思い出を書いてみなさい。……君なら書ける」  詩人萩原朔太郎の長女・葉子の実体験をもとにした自伝的小説で、『蕁麻の家』『閉ざされた庭』に続く三部作の完結編。三部作全体のあとがきとして書かれた「歳月――父・朔太郎への手紙」も収録。
  • P+D BOOKS 若い詩人の肖像
    値引きあり
    -
    1巻654円 (税込)
    詩人の懊悩と成長を描いた青春の記録。 「『若い詩人の肖像』は著者の青年時代を描いた自伝小説である。多少伏せたところや作ったところもあり、人名も仮りの名にしたものがあるが、大部分は事実に即している。」(著者あとがきより)  詩人や小説家として活躍し、数々の名作を世に送り出した伊藤整。その小樽高等商業学校時代から、卒業して中学の英語教師になり、東京商科大学(一橋大学の前身)に入学する頃までの、恋愛、同人誌創刊、詩作、若い作家たちとの交流などを生き生きと描写した一冊。  小林多喜二、川崎愛(左川ちか)、北川冬彦、梶井基次郎らが実名で登場し、著者の詩にかける意気込みとともに、当時の詩壇の様子が垣間見える好著。
  • P+D BOOKS 若い人 上・下巻 合本版
    値引きあり
    -
    1巻1,001円 (税込)
    待望の合本版!! 「私は男を知りたい。その男を通して私の父を感じたい」――。 容姿端麗、頭脳明晰だが、たびたび問題を起こす女学生・江波恵子。理知的で美しい女教師・橋本スミ。北国のミッション系女子校で国語教師をしている間崎慎太郎は、橋本に惹かれながらも、早熟で危うい魅力を放つ江波からも目が離せない。江波たちの学年の修学旅行に同行することになった間崎は、旅先で橋本の義母に会うことになり――。 何度も映画化、テレビドラマ化された青春文学の金字塔にして、第1回三田文学賞に輝いた、石坂洋次郎の出世作の上下合本版。
  • P+D BOOKS 別れる理由 全6巻 合本版
    値引きあり
    -
    1巻2,255円 (税込)
    待望の合本版!! “第三の新人”を代表する作家・小島信夫が、文芸誌「群像」に1968年10月から1981年3月まで、全150回に亘って連載した“執念の大作”全6 巻の合本版。 夫婦の愛、男女の愛、人間の愛のカオスを複層的、かつエネルギッシュに描き、伝統的な小説の手法を根底から粉砕した文学世界が展開される。現在と過去が交錯しながら織りなされるように展開していく「姦通」をテーマにした異色の愛憎世界!第38回日本芸術院賞、第35回野間文芸賞を受賞。
  • P+D BOOKS わが青春 わが放浪
    値引きあり
    4.0
    太宰治らとの交遊から芥川賞受賞までを随想。 昭和49(1974)年、62歳にして『月山』で芥川龍之介賞を受賞した著者だが、弱冠20歳で華々しく文壇デビューした後、筆を擱(お)き長い長い流浪の旅に出たのは何故か。あまり世に知られていない、空白の40年間が垣間見える随想録である――。菊池寛に見出され、横光利一の推輓により、毎日新聞で『酩酊船(よいどれぶね)』を連載するなど前途洋々、将来を嘱望された若手作家だった森。同時代を生きた朋友・太宰治、壇一雄との交遊、太宰が『走れメロス』を執筆したエピーソードや、井伏鱒二や尾崎一雄、川端康成、谷崎潤一郎、志賀直哉らの名も日常生活を語る中で登場する。奈良や山形月山などで暮らした日々も綴られている。主に新聞の文化欄に掲載された文章だが、どんな短文にも筋が通った森流論理が窺える。
  • P+D BOOKS われら戦友たち
    値引きあり
    -
    1巻500円 (税込)
    名著「されどわれらが日々」に続く青春小説。 1964年の第51回芥川賞受賞作で、当時、一大センセーションを巻き起こした『されど われらが日々――』。 その続編ともいえる本作では、その時代の新左翼運動にかかわった血気盛んな青年男女の機微を、ダンスパーティーの現金紛失事件とからめてミステリー仕立てで描いている。 登場人物がそれぞれの視点で世界を見つめ、それが一つに収斂されることなく多様性に開かれたまま放置されている点は、『されど われらが日々――』とは対称的な位置づけにある作品といえる。
  • P+D BOOKS エイヴォン記
    値引きあり
    -
    1~3巻500~616円 (税込)
    懐かしい本と、孫娘がある幸せを噛みしめる。 デイモン・ラニアン『ブッチの子守唄』、ツルゲーネフ『ページンの野』、チェーホフ『少年たち』、トルストイ『ふたりのおじいさん』など、著者の心に残った珠玉の短編を紹介する「読書日記」の体裁をとりつつ、著者夫婦が暮らす「山の上の家」にやってくる孫娘らとの平穏な日々を綴った心温まるエッセイ。 近所に暮らす〈清水さん〉が季節ごとに届けてくれるエイヴォン、バレンシア、ソニアといったバラや水仙、ヒヤシンスなどの花々が、淡々とした日常にさり気ないアクセントを与えている。 『鉛筆印のトレーナー』『さくらんぼジャム』と続く「フーちゃん三部作」の第一弾。
  • P+D BOOKS 辻音楽師の唄 ~もう一つの太宰治伝~
    値引きあり
    -
    1~3巻500~616円 (税込)
    津軽出身作家だから描けた「若き太宰治伝」。 新しい世代にも常に熱狂的信奉者が現れ、いまだ人気の衰えぬ作家・太宰治。彼にとって「書く」こととはなんだったのか。家への激しい憎悪と絶望的なまでの孤独感、結婚を控えての心中事件、「太宰治」という筆名に秘められた思い。 太宰の幼年期から青春時代までを克明に辿り、同じ津軽地方出身で直木賞作家の長部日出雄が、その太宰像を塗り替えた著者渾身の新たなる太宰伝。太宰への特別な愛情と深い理解を両輪に、著者ならではの視点で描いた秀作長篇評伝。
  • P+D BOOKS 別れる理由1
    値引きあり
    -
    1~6巻500~654円 (税込)
    姦通をテーマに“愛のカオス”を描いた大作。 “第三の新人”を代表する作家・小島信夫が、文芸誌「群像」に1968年10月から1981年3月まで、全150回に亘って連載した“執念の大作”ともいえる全6巻の序章。 第1巻には第1~22話までを収録。幻想のごとき脆い夫婦関係を描いた名作『抱擁家族』から17年を経て、主人公は三輪俊介から前田永造と変貌したが、本作でも「姦通」をテーマに据えている。 夫婦の愛、男女の愛、人間の愛のカオスを複層的、かつエネルギッシュに描き、伝統的な小説の手法を根底から粉砕した文学世界が展開される。第38回日本芸術院賞、第35回野間文芸賞を受賞。

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