P+D BOOKS作品一覧
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4.0
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-中上健次、未完の遺作が初単行本化&電子化! 1個3億円のエメラルド3個を携え、ブラジルから来日したオリエントの康の遺児タケオは、新宿で「中本」の一統である“毒味男”や、オリュウノオバの甥っ子である“九階の怪人”と出会う。 “毒味男”の一味は、最初に地上げ屋の斎藤順一郎を焼き殺したが、彼らの周囲をGメンが嗅ぎ回り始めので、一味は共に紀州・新宮へ舞い戻る。そして、次の標的に土地の実力者・佐倉(この時、130歳近い年齢だが)を選ぶのだが……。 新たな抗争の予感を湛える長編。「千年の愉楽」の続編ともいえる未完作。「週刊ポスト」にて連載中に絶筆した。
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3.5
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4.0待望の上・下巻合本版!! 古都鎌倉に美しく燃え上がる宿命的な愛。 夫は、なぜ失踪したのか? 理由なき別れに苦しみ、無為不安の日をおくる里子は、40代の会社社長で、骨董の目利きでもある男、坂西と出会う。妻子を捨てた夫と、年上の女との情事が日々うつろなものに変っていくのとは対照的に、二人の愛は古都鎌倉の四季の移ろいの中で、激しく美しく燃え上がった……。 日経新聞に連載され話題を呼んだ長編小説。男女の宿命的な愛を鮮烈に映すとともに鎌倉や京都を舞台に、和服や自然を通して日本の四季が美しく描写されており、作品の魅力に彩りを添えている。
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4.0元女性教師と教え子の恋の結末は――。 「わたしはね、善ちゃんのお嫁さんになりたかったんだ、これでも」 女学校を出たばかりの教師・伸予は、教え子で中学三年生の善吉に恋心を抱いていた。卒業後は交流が途絶え、伸予は許嫁との結婚と死別を経験し、最近は趣味に没頭する日々を送っていたが、教師仲間からの情報で善吉の消息を知り、再会を果たす。 中年になってなお、少女のような純粋さを保っている伸予と、どこか冷めた雰囲気を漂わせている善吉。二度目の逢瀬でついにふたりは結ばれるが――。 第79回芥川賞を受賞した表題作のほか、第37回文學界新人賞受賞作「ぽぷらと軍神」、「清吉の暦」の全三編を収録。
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4.0退廃的な田舎町で過ごした“青年のひと夏”。 誇り高い姉と、快活な妹――いま、この2人の女性の前に横たわっているのは、一人の青年の棺だった。 美しい姉妹に愛されていながら、彼はなぜこの世を去らねばならなかったのか? 卒業論文を書くために「廃墟のような寂しさのある、ひっそりした田舎の町」にやってきた大学生の「僕」は、地所の夫婦、妻の妹の三角関係に巻き込まれる。 古き日本の風情を残しながらも、どこか享楽的な田舎町での青年のひと夏の経験から、人の心をよぎる孤独と悔恨の影を清冽な筆致で描いた表題作「廃市」は、後に大林宣彦監督によって映画化された。ほかに「飛ぶ男」「樹」「風花」「退屈な少年」「沼」の全6編を併録。
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-『青葉繁れる』に連なる自伝的小説の名篇。 東大生や早大生の学帽を見るたびに、自分がかぶっている鷲のマークの学帽に引け目を感じ、ついには吃音症になってしまった小松夏夫は、花石に住む母親の誘いで、夏のあいだ気晴らしを兼ねて東京を離れることに。 東北の田舎町だと思っていた花石には、大きな製鉄所と三陸随一の漁港、内外航路があり、港町らしいにぎやかな花街もある。母の下宿先の岩舘老人、母が営む屋台の常連さん、向かいの部屋の気立てのいい娼婦・かおりらに囲まれて、夏夫の気持ちは次第に癒されていった。 休みも終わりに近づき、夏夫は“鷲の校章の大学”に戻る気になっていたが、夏夫に大きな影響を与えたある人物が結核になってしまい――。 『モッキンポット師の後始末』『青葉繁れる』『四十一番の少年』などに続く自伝的小説で、東北弁が聞こえてくるような臨場感あふれる秀作。
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5.0
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3.5
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4.5
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4.5
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-事故で記憶をなくした男の“再生”物語。 ――見えないはずの物が見え、覚えているはずのことが消えて何が悪い? おれの記憶の中心には穴がある。それが〈現実〉というもので、掛け値なしの現実は何と異常で気味悪く透明なものだろう。―― 月面基地での作業中に事故に遭った〈男〉。帰還したものの強い逆行性健忘症になってしまい、さまざまなことが思い出せない。 しかし、中国人看護師との会話や、放浪していたところをかくまってくれた老婆、ホームレスの老人との出会いによって徐々に記憶を取り戻していく。はたして、〈男〉にとって光とは、闇とはなんだったのか――。 近未来を舞台に、物質文明や人間の陰陽を見事に描出した傑作長編。第47回読売文学賞受賞作。
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4.0心中現場から、何故か一人だけ姿を消した姉。 ワンマン社長の横暴に不満を募らせる社員達が、それに対抗しようと組合闘争に明け暮れる本多銃砲火薬店。 その工場に勤める花城由記子が、妹の佐紀子に遺書を残して失踪した。社長の一人息子・本多昭一と心中するという書き置きを残して姿を消したのだが、山梨の昇仙峡で昭一の遺体が発見されたにもかかわらず、由記子の遺体は発見されないままだった。ついには殺人犯人として指名手配を受けてしまう由記子――。 姿を消した姉を追って、一人残された妹・佐紀子は必死の捜索を続けるが、そこには思わぬ結末が待ち受けていた。 卓抜したトリックに、人間の底知れぬ業を描いた笹沢左保、会心のミステリー。第14回日本推理作家協会賞受賞作品。
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-世間を震撼させた猟奇事件に中上健次が迫る。 海と山に囲まれた熊野の寒村。そこでひときわ広い土地を所有する池田家の長男・達男は、小さいころから悪行が絶えず、猿の肉を食べたり、神事に使う魚を獲るなどやりたい放題。それでも面と向かって文句を言う者は誰もいなかった。 そんななか、何者かがハマチの養殖場に重油を流して地元に大損害を与える事件が発生。次いでぼや騒ぎまで起きた。だれもが達男の仕業だと考えたが――。 実際に起きた「熊野一族7人殺害事件」をもとに、中上健次が映画シナリオを書き下ろした話題作と、のちに雑誌連載されたノベライズ版を収録。
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-人には言えない秘めたる思いを集めた短篇集。 「実はお前にだけ話すが、内地へ引揚げるとき、どさくさにまぎれて船着場ではぐらかして置いてくるつもりにしていたんだよ。自分の名前もいえない子供だったから」 知的障害のある子を抱え、途方に暮れていた〈兄〉。妹・花子の支援もむなしく、兄の子・正夫は家族に面倒ばかりかけていた。しかしある日、正夫が行方不明になってしまい、四ヵ月も帰ってこない。〈兄〉はあまり心配していないようだが、花子は何か引っかかりを感じて――。 心に秘密を抱える兄妹を描く表題作のほか、五十歳になった女性が、夫への不信感から夫の同僚の若い男に秘密の思いを抱く「黒い年齢」、パリで暮らす日本人の男が、フランス人妻の不貞を知りながら表面的には穏やかに暮らす「パリ祭」など、人には言えない思いで綴られた14篇の短篇集。
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-癌の妻を救うために奮闘する作家の体験記。 ――寿美は眠りながら、微笑をうかべていた。顔は少しやせているが、一向にとげとげしいところがなく、優しく美しい微笑の表情であった―― いつも元気で病気とは無縁だった妻・寿美が、お腹の違和感を訴えた。いくつかの病院にかかるものの、いずれも胃カタルとの診断。だが、実際には卵巣癌で、余命いくばくもないことが判明する。 お世辞にも愛妻家ではなかった「私」は、その日からなりふり構わず治療法を探しはじめる。臍の緒、梅の木に生えた猿の腰掛、研究中の新薬……。効果があったのか、手の施しようのなかった状態から、手術できるまでに病巣は小さくなり、1年以上持ちこたえたが――。 芥川賞作家が万感の思いを込めて綴る体験記。
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-酒からSFまで……バラエティ豊かな短篇集。 [──何だね、これは? 水を呉れと云つたぢやないか。 ──あら、ソオダ水の方がいいと思つたものですから。 ソオダ水を三杯お替りしたマノ氏は、何やら日頃の気難しい顔は椅子の下に捨ててしまつたのか、たいへん上機嫌な赤い顔をして一人の女と話をしてゐた。 ──先生のお髭、素敵ね。 マノ氏は八字髭をひねくつて満更でも無い顔をした。] 酒も煙草もたしなまず、女性にも縁のないマノ氏が、酒と女性にはまっていく様をユーモラスに描いた表題作のほか、あらゆることにだらしのない元妻に脅迫される気の弱い男性が主人公の「乾杯」、飲み仲間の男性3人が、若くて楚々とした女性をめぐって争うものの、みな手玉に取られてしまう「不可侵条約」、SFチックなテイストの「女雛」「焼餅やきの幽霊」など、バラエティに富んだ10話からなる短篇集。
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4.0映画化もされた戦前のベストセラー作品。 「私にとっては、霧島家の貧寒で乱雑な空気だけが身を置くべき場所となっていた。泥水の中でなければ落ちついて棲むことのできないある種の魚たちのように……」 大学生の〈私〉は、学校にも学友ともなじめず、下宿していた叔父一家ともしっくりいかずに、貸間と貼り紙のあった霧島家の6畳間を借りることになった。 ところがその主人・嘉門は自分勝手な暴れ者で、幼いふたりの子を抱えたクリスチャンの妻・まつ子を泣かせてばかり。しかし〈私〉はなぜか嘉門を嫌いになれず――。 原節子出演で映画化もされたベストセラー作品。 旧制高校の同窓会を通じて、戦後の現実をシニカルに描いた「アルト・ハイデルベルヒ」を併録。
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-著者初の単行本と短篇集をカップリング。 単行本デビュー作である『フライパンの歌』は、戦後の赤貧時代を綴った自伝的作品。上京して早々に生活に行き詰まり、神田の工場に間借りして、妻と乳飲み子の3人暮らしを始めた安田。友人に紹介された出版社で編集長の肩書を得て、やっと生活が落ち着くかに見えたが、会社の経営が思わしくなく、安月給で妻はお乳も出ないほどの状況に……。そんななかでも、あまり悲壮感を漂わせることなく、飄々として生きる主人公を描く。 『風部落』は、貧しい集落に住む老婆が、重い病を患う息子のために、裕福な家の山雀を盗んでしまう表題作など8篇をまとめた、著者初の短篇集。 いずれも、「机にむかうと書きたいことはたくさんあった。」(『フライパンの歌』より)という、若き日の情熱を凝縮したような作品集。
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4.5
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-狂気の世界に踏み込む精神科医の深淵を描く。 フランス北部に広がるフランドル地方のサンヴナン精神病院に勤務する日本人留学生コバヤシの精神科医としての日々を描く、著者自身の留学経験をベースにした長編処女作。 1967年に発表され、芸術選奨新人賞を受賞。糞臭たちこめる不潔病棟や、素裸の精神病患者――コバヤシは青空が殆どないフランドルで精神科医として働くうち、自己と患者との境界を踏み越えて、正気と狂気の間をさまよい始める。 若い看護師との同棲やフランス人医師たちとの交流も深まるものの、人間存在の孤独に耐えきれなくなっていく……。復刻にあたっての著者あとがきも併録。
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-心やさしい園丁はなぜ大逆事件に連座したか。 1911(明治44)年、幸徳秋水、管野スガ、新村忠雄、宮下太吉らが天皇暗殺を企てたとして逮捕されたいわゆる大逆事件。実家が没落し、自らは低身長を理由に差別されたことで社会主義に傾倒していた園丁の古河力作は、事件の首謀者ではなく、重要な役割も与えられていなかったにもかかわらず逮捕され、死刑を宣告されてしまった。 「眼あれども節穴の如く、耳あれ共木耳の如く、血通へ共鬼畜の如き裁判官を、被告に利益の事は赤でも淡紅色と書し、真実を申立てても弁解となし、被告に不利益の事は淡紅色でも赤と書き、嘘でも誠とする裁判官を、政府より月給を貰つて居る裁判官を公平無私、公明正大なるものと思つて居た僕はよつぽど馬鹿だつた。」 著者と同郷の力作について、郷里をはじめ神戸、東京とゆかりの地を訪ね歩き、幸徳秋水の担当看守や力作の家族にも取材をして古河力作の人間像をあぶりだした名作ノンフィクション。
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-“死者の谷”から生還した元兵士の心の叫び。 戦争末期、雲南の地で日本人兵士がほぼ全滅した騰越・龍陵の戦い。そこからほど近い旧ビルマの“死者の谷”フーコン谷地でも、全滅の危機に瀕している部隊があった。 ――ああこれでは勝負にならない、と一等兵でも思う。そう思いながら戦闘をしたのであった。敵は……必要な条件を整えたうえで戦った。こちらは、弾がなくても、食糧がなくても、とにかく、やれと言う。……弾がなくても食糧がなくても、一人が二十人殺せば二十倍の敵に勝てるわけだから、そうしろと言う。―― 六割以上が亡くなった無謀な戦いから、片腕と引き換えに生還した村山辰平は、あの戦闘で夫を亡くした中川文江とともに、フーコンで自分がたどった場所を地図に記していく。それは、将官への怒りを新たにする作業でもあり、「諦めながら恨む」作業でもあった。 第48回菊池寛賞に輝いた古山高麗夫戦争三部作の完結編。
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-デビュー作「ブルジョア」を含む初期作品集。 父が天理教に入信し、叔父夫婦に育てられた芹沢光治良。帝国大学卒業後、農商務省に入省したが、経済の研究を志してパリに留学するもそこで結核に感染し、フランス、スイスで療養生活を経験する。そんな体験から書かれたデビュー作品集である。 雑誌「改造」の懸賞創作で1等に入選した「ブルジョア」は、結核患者が集まる町を舞台に、病に侵された夫と妻、多国籍の入院患者らの懊悩を描いた作品。 「結核患者」「昼寝している夫」「椅子を探す」は、杉夫妻を主人公に、結核に倒れた夫が心身ともに復活していく様子を描写し、「橋の手前」「風迹」は、共産主義に対する市井の人々のとらえ方を描出している。
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-兵士の日常を描いた芥川賞受賞の戦争文学。 第2次大戦後、戦犯容疑でサイゴン刑務所に抑留された日本兵の鬱屈した日々をユーモア交えて描いた第63回芥川賞受賞作「プレオー8の夜明け」。 他に筆者処女作「墓地で」から、晩年の名品「セミの追憶」(第21回川端康成文学賞作品)まで、戦争の記憶をつむぐ短編16作を収録。 戦後すでに70年を超え、戦下の記憶は風化するにまかされる。30年にわたる筆者の貴重な営みを通じ、名もなき兵士たちは、何を考え死んでゆき、生き残った者たちは何を思うのか――今改めてその意味を問いかける、珠玉の“戦争文学短編集”。
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-一特派員がたどり着いたベトナム戦争の真実。 すでにAPの記者たちが打った電報のカスを、まるで残飯を恵んでもらうような調子で拝読させてもらう自分の姿が、私には全然気に入らなかった。(中略)心の中で固く決心した――彼らの世話になんかなるものか、おれはおれの情報源と判断で対等に仕事をしてみせる。(本文より) 新聞記者として戦地に赴任した著者は、特約を結んでいるアメリカの通信社からの情報や、ベトナム政府の公式発表、米軍のブリーフィングなどを鵜呑みにするのではなく、自分の足で開拓したニュースソースや自身の臭覚などを頼りに、ベトナム戦争の“真実”に迫ろうとする。 のちに芥川賞を受賞する作者の、原点ともいえる作品。
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-恋多き男・岡倉天心の愛の軌跡をたどる評伝。 「二人のあいだのこの素晴らしい出来事が、ほんとのこととはまるで思えません。私という人間は、結局のところ、一場の夢ではないのですか。」 「私は今あなたをより近く感じますが、奇妙な気恥しさがしのびよってきて、私がどう感じているかを言えないのです。言わなくても、私の言いたいことを察してくださいますでしょう?」 東洋美術史家・フェノロサとともに古美術調査を行ったり、東京美術学校(現東京藝術大学)の校長として活躍したりして美術史家、思想家として名をはせた岡倉天心。だが、不倫騒動を起こし東京美術学校校長をはじめとする役職から退くことになる。 失意のなか、ボストン美術館の顧問としてアジア諸国を回ることになった天心は、インドで声の美しい女流詩人・プリヤンバダ・デーヴィーと出会い、急激に惹かれていく。一方、夫と息子を亡くし、ふさぎ込んでいたプリヤンバダも、天心と出会って心が癒されていく――。 そんな二人の往復書簡を中心にしながら、「放埒で、利己的で、頑迷で、いやらしい獣で……」と自らを評する天心の愛の軌跡を綴った傑作評伝。
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-著者の北京での子ども時代を描いたエッセイ。 絵本「100万回生きたねこ」が大ベストセラーになった著者が子ども時代に過ごした北京での暮らしを描いた珠玉のエッセイ。早くして亡くなった大好きなお兄さんとの二人きりの日常生活、お父さんのこと、お母さんのこと、やがて表に出て戦前の北京の町に触れ、お友達ができていく、そして北京を去る日がやってくる。それぞれがさりげなく描かれている日常の鮮やかさ、儚さが印象的。子ども目線での瑞々しい感性が読む者の心に染みてくる。 絵本作家である著者が描く子どもの世界が、大人の心をとらえて離さない。
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4.6中上健次が故郷紀州に描く“母の物語”。 「秋幸もの三部作」よりも以前の時代を描く、秋幸の母・フサの波乱の半生を描いた物語。 海光る3月。私生児としての生い立ちに昏い痛みを覚えながらも、美しく利発な娘に成長したフサは、十五になった春、生まれ育った南紀の町をあとにした。 若々しい肉体の目覚めとともに恋を知り、子を孕み、母となって宿命の地に根をおろすフサ。しかし、貧しくも幸福な日々は、夫・勝一郎の死によって突然に断ち切られた。 子供を抱え、戦時下を生き延びる過酷な暮らしの中で、後に賭博師の龍造と子を為し、秋幸と名付ける。しかし龍造が賭博で刑務所に入っている間、他の二人の女を孕ませていたことを知り、フサは秋幸には龍造を父と呼ばせぬと宣言する……。 中上健次が実母をモデルに、その波瀾の半生を雄大な物語へと昇華させた傑作長編。
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-妖しい洋館が舞台のロマネスクな人間模様。 大都会・東京の真ん中に静かに佇む洋館に心惹かれた「私」は、得体の知れない不動産屋に誘われるままにその館を訪ねることになる。 そこには幻想的な少女・霧子や近寄りがたい老主が住んでいた。身を固く包んで口さえ開こうとしない霧子に、私の興味は膨らんでいく。 主である霧子の祖父の依頼で、彼女の家庭教師として洋館に同居することになる私……。そこで、この一家の住人たちは数奇な運命に翻弄され始めるのだった。 「ある夕陽」で芥川賞を受賞した日野啓三が幻想的作風で新境地を開き、泉鏡花賞に輝いたロマネスク小説の傑作。
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-青春=戦時下だった吉行の半自伝的小説。 昭和19年8月――、僕に召集令状が届いた。その後の入営は意外な顛末を迎えるが、戦時下という抑圧された時代、生と死が表裏一体となった不安を内包し、鬱屈した日々を重ねていく。まさしく「焔の中」の青春であった。 狂おしいほどの閉塞感の中にあっても、10代から20代の青年らしい友人との、他愛のない会話、性への欲望、反面、母への慕情など巧緻な筆致で描かれる。また、戦争とは一線を引いたかのような、主人公の透徹した眼差しと、確固たる自尊心は一貫しており、吉行自身のメンタリティが垣間見える、意欲作である。
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-地球を侵略せんとする邪神クトゥルーと、それを迎え撃つ地球本来の神々。人類も巻き込んで今、壮絶な戦いがはじまる! 〈溶ける……溶けてしまう〉――ごく平凡な大学生・伊吹涼は連夜にわたって、からだがどろどろと溶けてゆこうとする悪夢にさいなまれていた。同じ夢にうなされる複数の人々、そしてその夢を操るあやしい女。「目覚めよ、古の者の裔よ」と囁く声と、謎の画家・葛城繁が残した奇怪な絵に導かれて彼らが集った時、古き者、クトゥルーの神々との、凄絶な戦いの火蓋が切って落とされた。左翼あがりのルポライター・安西雄介とその弟・竜二の助力を得て、不本意ながらも涼はその戦いに巻き込まれていくのだった。 栗本薫が圧倒的な筆力で現代日本にクトゥルー神話を甦らせた、超伝奇シリーズ第一弾!
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5.0地球を侵略せんとする邪神クトゥルーと、それを迎え撃つ地球古来の神々。人類も巻き込んで今、壮絶な戦いがはじまる! 〈溶ける……溶けてしまう〉――ごく平凡な大学生・伊吹涼は連夜にわたって、からだがどろどろと溶けてゆこうとする悪夢にさいなまれていた。同じ夢にうなされる複数の人々、そしてその夢を操るあやしい女。「目覚めよ、古の者の裔よ」と囁く声と、謎の画家・葛城繁が残した奇怪な絵に導かれて彼らが集った時、古き者、クトゥルーの神々との、凄絶な戦いの火蓋が切って落とされた。左翼あがりのルポライター・安西雄介とその弟・竜二の助力を得て、不本意ながらも涼はその戦いに巻き込まれていくのだった。 合本版だけの付録として、永井豪がイラストを担当した『魔界水滸伝1~20』単行本初版書影写真、イメージアルバム『SOUND NOVEL 魔界水滸伝』のジャケット写真、ライナーノーツなど。 栗本薫が圧倒的な筆力で現代日本にクトゥルー神話を甦らせた超伝奇シリーズ全20巻のすべてがここにある! ※この作品はカラー画像が含まれます。
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4.0亡くなった年に発表された遺作短篇集。 「もしも日本に帰れずに、かの地で死ぬようなことがあったら、私は必ず前歯にジェズスの教えのみしるしを刻みこんで置きます。」 本家の敷地内から発見された壺の中から、365年前にマカオに流された先祖の“遺言”が発見された。遺骨の行方を捜しにマカオを訪れた千葉裕平は、亡くなった娘・由紀子に生き写しの女性、葉銘蓮と出会う。果たして、“みしるし”を刻んだ遺骨は見つかるのか、そして葉銘蓮の正体は――。 マカオへの幻のような旅を綴った表題作に、八甲田山雪中行軍の外伝「生き残りの勇士」、イギリス公使オールコックが外国人として初めて富士山頂に立った顛末を描く「富士、異邦人登頂」など8篇を収録した短篇集。亡くなった年に出版された遺作のひとつ。
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3.0人生の曲り角を迎えた中高年を描く17篇。 ――世間というものはおそろしいな……庭をちょっと作り変えれば、どこかおかしいと思われるし、他愛のない絵を描けば変態扱いか……そういう自分たちの、どこが正常だと思ってやがるんだろう―― 定年前後の男たちが、庭の作りかえや裸婦画、プラモデル作りなどに熱中するが、周囲にはまるで理解してもらえない悲哀を描いた「積み木あそび」、ナイフやフォークを持つときに相手が小指を立てていたという一事で見合いが流れてしまう「小指」、病気で倒れたお偉いさんのため、好物だという鰻を熱々の状態で届けたが、どんでん返しに遭う「鰻」などなど、中高年の悲喜劇17篇を収録した名作短篇集。
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4.0無頼派作家のヘソまがりエッセイ集。 「私は富士山が大嫌いである。……即刻切り崩しかきならしてしまうがよろしい。」(富士の裾野の暴風雨) 「私はゴルフもやらない。……皆がやっている遊びをやらなくたって、少しもさしつかえない。」(困ること、腹立つこと) 「日本料理というものは、完全に殿様か老人向けにできていて、ただ害がないというだけのものにすぎなくなっているようだ。」(肉には大根おろしが……) ギャンブル、食、作家仲間や芸能人との交流……雑多なテーマについて、気の向くままにぶった切る痛快エッセイ集。「アサヒ芸能」に1年間連載された47篇を収録。
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-帆船という“劇場”で巻き起こる人間ドラマ。 海を愛する若者が生の歓びを求め、ブリガンティン型帆船<大いなる(グローセル・)眞晝(ミッタ-タ)>号に乗り込んで船出をする。 「無一物主義」という哲学思想をもつベルナールを船長に、フランソワ、ターナー、ケイン、女性のファビアン、そして日本人の私など11人のクルーは、ヨーロッパから日本を経由して、一路、太平洋へと航海を続ける。 やがて、南太平洋に入ると、荒れ狂う颶風(ぐふう)圏に突入していく中、嵐のさなかに恐るべき事件が起きてしまう。帆船の船内は、さながら芝居の劇場のように複雑な人間関係が入り組んで、それは悲劇への序章にふさわしい舞台だった。 辻作品らしい“詩とロマンの薫り”に満ち溢れた長編小説。
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3.0著者の博学多識ぶりを証明するエッセイ集。 化学は錬金術の正統な娘ではなかったけれども、いかさま錬金術師をもふくめて、金属変成を夢みた多くの道士たちのでたらめな実験のなかから、数々の貴重な化学上の発見がもたらされたのは事実であった。いってみれば、化学は錬金術の私生児みたいなものだったのである。(「錬金術夜話」より) 博覧強記、博学多識で知られる澁澤龍彦が、錬金術をはじめ、処女生殖、タランチュラ、コクトー、泉鏡花、推理小説、絵画、舞台、映画など多種多様な事柄について、縦横無尽に論じたエッセイ集。 雑多なテーマを取り上げているように見えるが、一つひとつの作品が他者にはまねのできない切り口と深みをもっており、いつしか澁澤ワールドに引き込まれていく。
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-多彩な野坂ワールド!オリジナル編集短編集。 徹底的に現実を拒否し、次々に湧き上がるおぞましき妄想を、世紀の美女・モンローに仮託して謳い上げた作家自身の“私小説”である表題作「マリリン・モンロー・ノー・リターン」。 ほかに老いと介護をテーマとした「死の器」、大学落研の青春を描いた「ああ軟派全落連」、原発建設がもたらす悲劇を描いた「乱離骨灰鬼胎草」、怪奇幻想小説「砂絵呪縛後日怪談」等々、遠国の美女への願望、女たちの執念、反逆的なヒューマニズムや現実逃避をテーマとして、多面性に富んだ作家・野坂昭如ワールドが味わえるP+D BOOKSオリジナル編集版。
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-義妹・マリアが選ぶのは双子の兄か弟か? 名峰ドライチンネで遭難死したイタリア人ガイドの娘・マリアは、ガイドのバディーであった日本人・鳥羽省造の元に引き取られ、2歳上の双子・博、豊とともにすくすくと成長する。10歳だった少女は、双子と同じく山登りが大好きな美しい女性になり、やがて省造が勤める会社のマスコットガールを務めるまでに。一方、大学生になっていた博と豊は、マリアへの募る思いを抑えることができず、ほぼ同時に愛を打ち明ける。 ふたりのどちらかを選ぶことができないマリアは、タレント活動に没頭する日々を送るが、ある日、博と豊が北アルプスで遭難したという知らせを受けて――。 きょうだいだが恋愛も結婚もできるという微妙な関係にある3人が織りなす、山を背景とした濃厚な人間ドラマ。
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3.0小説と随筆をシームレスにつなぐ小沼の世界。 「グリイン・コオチと云ふ緑色の長距離バスがあつて、それを利用して娘と小旅行した。このバスは倫敦を出ると田園風景のなかを走る。巨きな樹立の続く竝木路とか、緩かな起伏を持つ牧場、森蔭に覗く町の教会の尖塔……そんなものを見てゐるだけで愉しかつた。」 早稲田大学の在外研究員として半年間ロンドンに滞在した経験から書かれた表題作のほか、江戸時代にロシアに漂着したある日本人が、現地で日本語教師として活動し、ついには世界初の露日辞典まで編纂したという史実に基づいた「ペテルブルグの漂民」、師と仰ぐ井伏鱒二ら文学仲間との東北旅行を描いた「片栗の花」など、小説と随筆を取り混ぜて11篇収録。 旧仮名遣いながら、ユーモアを交えた流れるような文章で、読者を小沼ワールドに誘い込む。
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-悲惨な状況を笑いに変える木山捷平の真骨頂。 満州で現地招集されたものの、数日で終戦となり、日本に帰国する術がないまま現地で過ごしていた〈私〉。ある日、シベリア送りにする日本人を徴発していた巡査につかまってしまい、目を盗んでなんとか逃げだしたものの、その先ではロシヤ兵が待ち構えていた。付け焼き刃で覚えていたロシヤ語を駆使して事態を打開しようとするが――。 危機的かつ悲惨な状況をユーモラスな筆致で描いた直木賞候補作「耳学問」のほか、太宰治らとの交流を綴った「玉川上水」、小説デビュー作にして芥川賞候補となった「抑制の日」など13篇を収録した、“短篇の名手”木山捷平の面目躍如の一冊。
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-武蔵野を題材にさまざまな明と暗を描く。 「おい、日清戦争の前の年まで、今の東京都下は神奈川県だったのを知っているか。……都下という言い方、いかにも東京白人の発想だ。植民地扱いじゃないか」 関東大震災後に郊外に移ってきたサラリーマンの子・太田久雄は、武蔵野にルーツを持つ中学時代の友人たちからそう指摘される。彼らは自らを「武蔵野インディアン」と称し、地に足がついておらず「紙とインクの世界しか知らない」都会の“白人”とは一線を画する存在だというのだ――。 武蔵野を題材に、都会と地方、戦前と戦後、保守と革新といった、さまざまなコントラストを見事に描出した珠玉作。
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-「楢山節考」の戯曲を含む名作短篇集。 ――京の都は古い歴史を持っていた。その間、その土地では大勢が死んで、土の下には数えきれない死骸が埋められて白骨になっているのである。―― 誰も彼もが白骨の群れに見えてしまう、初老の男の無常観を描いた「無妙記」。若いころ、無免許運転で馬をはね殺してしまった男が、数々の不幸に見舞われる「妖術的過去」。帝の血をひく“三宮”が夜な夜な女性を食い物にしていることを知り、かつての従者の息子が犬山椒の毒で三宮を手にかけようとする「妖木犬山椒」など味わい深い7篇に、名作「楢山節考」の戯曲を加えた珠玉の短篇集。
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-現代社会に警鐘を鳴らす著者初の長編SF。 「当社は現代科学の及ぶ範囲の事なら何でも致します。契約が成立しさえすれば、その日からあなたはやり直しの権利を持つのです。今すぐドリーム保険に入りましょう!」 合理主義一辺倒の会社に嫌気がさし、恋人も失ったシロタは、その胡散臭い広告の文句に全財産を賭けることにした。だが、それはエリダヌ人が仕掛けた罠で、彼は人体実験の対象にされてしまう。高度な科学力に圧倒されるシロタだが、やがてエリダヌ星も地球も滅亡の瀬戸際にいることを知り……。 豊かな精神性よりも、合理性や効率、利益を求める現代社会に疑問符を突き付ける、著者初の長編SF。
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-直木賞受賞作「ミミのこと」を含む名短篇集。 病気や飢餓をともに乗り越えた戦友・朝日丸と〈ぼく〉。戦後、朝日丸は浪曲師として有名になり、11人の原爆孤児たちを引き取って新聞にも載るが――。 「浪曲師朝日丸の話」と、耳が不自由で売春を生業としていたミミとの切ない純愛を描いた「ミミのこと」という第81回直木賞受賞作を中心に、夜の生活を拒否し、周囲にまったく気を使わない悪妻に嫌気がさして、かいがいしく世話を焼いてくれる女性との再婚を決意するが、その彼女が作った味噌汁の味に失望する「味噌汁に砂糖」、私小説的要素が強い表題作「香具師の旅」など、軽妙なタッチのなかにノスタルジーと深みを詰め込んだ珠玉の短編集。
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4.0松本清張、幻の作品が初の電子化! 主君・尼子家の再興を願い、大敵・毛利に果敢に挑み暴れた、山陰の戦国猛将・山中鹿之助の、短くもドラマチックな生涯を生き生きと描く。 没落しつつあった尼子家一筋に全てを捧げ、月山富田城を取り囲む毛利元就の大軍を、その抜群の勇力と才智により何度も跳ね返し、武名を高めた鹿之助だったが、最終的に尼子義久が毛利の軍門に下り、富田城を明け渡すことになった。 その後、牢人をしながらも尼子家再興を使命とし、尼子勝久を擁立し、幾度の苦難を乗り越え、石見国入りし新山城を占拠するも、毛利勢との戦に敗れ富田城へ入城することは叶わなかった。 さらに、10年後、織田信長の毛利攻めに乗じ、再び、尼子軍を再興した鹿之助だが……。 100度打ちのめされ、1000回も挫折を味わう壮絶な鹿之助の人生、しかし、進むことはあっても退くことはなかった、その義勇の名は、天下に鳴り響いた。 弊社雑誌「中学生の友」に1年間連載された、松本清張、幻の作品。著者が代表作「点と線」を執筆した頃に同時に描いた、名作が50余年の時を超えて甦る。
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-土佐の13人の女たちから紡いだ13の物語。 おきみさん、おときさん、おまつさん……、南国土佐の女たちの人生から着想を得て、著者が初めて試みた“ルポルタージュ・フィクション”。 「司牡丹」「得月楼」「お遍路」「足摺岬」「栴檀(せんだん)」「日曜市」「長尾鶏」「竹林寺」「赤岡縞」「珊瑚」「一絃琴」「狩山紙」「やなせ杉」といった高知の特産物や風物、名所などが鍵言葉(キーワード)となり、幾何かの波乱を含んだ女たちの人生と絡み合う13の短篇集。 抗えぬ運命や襲いかかる困難に翻弄されながらも、健気に気丈夫に生きる故郷の女たちの気質が巧みに描かれている。
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-私小説家・川崎長太郎の自叙伝を含む決定版。 独身のまま56歳になったわが身を憐れむ「女に関する断片」、自分が服装には無頓着であることを書いた「ぼろ談義」、絵のうまい甥を誇らしげに語る「日曜画家」など、身の回りの出来事を軽妙に綴った作品集「一夜の宿」に、「抹香町もの」「葛西善蔵訪問記」など文学に関する話題を中心にした作品集「木彫りの亀」を同梱。 さらに「文藝」に連載された「私小説家」――旧制中学への合格と退学、丁稚奉公、家業の手伝い、東京での同人誌時代、物置小屋暮らしなど、出生から“長太郎ブーム”までの半生の記録をあわせた決定版。
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-鬼気迫る“自殺者と自殺幇助者”の心理葛藤。 噴煙吹き上げる春まだ浅い三原山に、女子大生がふたり登っていった。だが、その後、夜更けに下山してきたのは、ひとりだけ――。 遡ること1ヶ月前、同様の光景があり、ひとり下山した女子大生は同人物だった。自殺願望の若い女性ふたりに、三原山まで同行して、底知れぬ火口に向かって投身させた自殺幇助者の京大生・鳥居哲代。 生きていることに倦んだ高学歴の女学生たちの心理を精緻に描き、自殺者と自殺幇助者の軌跡をミステリー風に仕立てた悽絶な魂のドラマ。高橋たか子の初期長編代表作で第4回泉鏡花賞を受賞。
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4.0女性と人間について洞察する著者の真骨頂。 人物評伝では高く評価されている瀬戸内晴美が、自らとゆかりの深い人物について掘り下げた短篇集。 欧州社交界にこの人ありといわれた薩摩治郎八が余生を過ごす徳島に、地元生まれの著者が訪ねていく表題作のほか、太宰治の終焉の地近くに住むことになった著者が、“斜陽の子”太田治子との対話などを綴った「三鷹下連雀」、恋多き男・竹下夢二が最も愛した女性・彦乃との悲しい物語「霧の花」、著者が師事する丹羽文雄と老画家との奇妙な交流と別れを描いた「春への旅」、幸徳秋水の元妻の独白の形で綴られる「鴛鴦」の5篇が、著者ならではの、女性と人間についての深い洞察で描出される。
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-中高年が主人公のショートストーリー集。 ――私の見てきた商売の裏側を、洗い浚い書いちゃおうと思うの。今お偉いさんになっている連中が、実名で、ばんばん出てくるのよ。みんな、青くなるな、きっと……―― 夜の店のママが、客の行状を洗いざらいぶちまける回顧録を書いていると聞いて、やましいところのある元常連たちが“対策協議会”を開く「近火御見舞」をはじめ、妻の浮気が原因で別れたのに、浮気相手に捨てられると元夫に秋波を送る女性に振り回される「あとの祭」、社員からも恐れられ、“財界の狼”と異名をとる男が、ひょんなことから海辺の町の女性と出会い、心癒される「狼男」など、中高年男性を主人公にした17のショートストーリー。 P+D BOOKS『曲がり角』に続く、味わい深い短篇集。
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-室生犀星“初の小説”を含む自伝的作品集。 婚外子として生まれ、生後間もなく養子に出された〈私〉。いつもやさしい義姉を除いて、周囲に理解してくれる人はおらず、小学校では喧嘩を繰り返して先生からも目をつけられていた。 そんななか、実の父親が亡くなり、母が行方不明になってしまう。ますます自棄になって乱暴を繰り返していた〈私〉は、川のなかでその後の人生を変えるあるものを見つける。それは、苔むした地蔵だった――。 自伝的色彩の濃い、著者初の小説「幼年時代」をはじめ、「性に目覚める頃」「或る少女の死まで」を加えた“幼年時代三部作”を中心に、繰り返し映画やテレビドラマになった「あにいもうと」を加えた全4篇を収録。
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-最古作、未発表作を含む単行本未収録作品集。 表題作「夜風の縺れ」は、1955年9月に発行された同人誌「運河」第1号に収められていたもので、従来、色川作品最古といわれていた「小さな部屋」(1956年9月「文学生活」初出、『色川武大・阿佐田哲也 電子全集7』所収)よりも古く、『怪しい来客簿』(『色川武大・阿佐田哲也 電子全集1』所収)の「門の前の青春」にもつながる貴重な作品。 さらに、杉民也名義で書かれた「寝心地よいアスファルト」、歴史小説「影にされた男」「覇城の人柱」などの新規発掘作品8篇と、1985年に記されたまま公表されていなかった未発表の「日記」を収録。 加えて、『色川武大・阿佐田哲也 電子全集23』に収録された30篇の単行本未収録小説・エッセイを網羅した、ファン待望の1冊。
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5.0人間の“暗黒意識”を主題にした三部作。 人間の奥深い内部で不気味に蠢き、内側からその人を突き動かそうとする“暗黒意識”を主題に書かれた『冥府』『深淵』『夜の時間』の三部作。 作家・福永武彦の死生観が滲み出た作品群だが、各ストーリーにつながりはない。 「僕は既に死んだ人間だ。これは比喩的にいうのでも、寓意的にいうのでもない。僕は既に死んだ」という書き出しで始まる『冥府』は、死後の世界を舞台にした幻想的な作品。 『深淵』は敬虔なクリスチャンの女性と、野獣のごとき本能むきだしの男との奇妙な愛を描いた物語。二人それぞれが一人称の告白体で、サスペンス的な要素も色濃い作品。 『夜の時間』は、男女の三角関係を、過去と現在の二重時間軸構造で描くロマンあふれる作品。
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4.5“中年の危機”の男を描く「男性研究の書」。 1955年から56年にかけて読売新聞に連載され、大反響の下、流行語にもなった「四十八歳の抵抗」。 55歳が停年の時代に、真面目一筋に勤めてきた48歳の保険会社次長、西村耕太郎は恵まれた家庭を持ち、傍目には幸せそうな日々を送っているが、実のところはなにやら満たされない。 その心中を見透かしたように社内の島田からヌード撮影会に誘われる。そして一度も恋愛をしてないという焦燥から、耕太郎はバーの娘で19歳のユカリを口説いて熱海の旅館に出かけるのだが――。 社会的な地位があり体裁を繕って生きてはいるが、まだ燃え上がる激情も秘かに抱えた“ミドルエイジ・クライシス”を描いた普遍的な「男性研究の書」である。
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-「勇兵団」生き残りの声をありのままに綴る。 仙台に本拠を置く陸軍第二師団「勇兵団」の一兵卒として南洋に送られた著者は、旧ビルマと中国の国境で、雲南遠征軍を相手に苦戦を強いられている龍陵守備隊を救出する任務に就く。しかし圧倒的な物量の差はいかんともしがたく、上官、同僚が次々と亡くなり、負傷していった。 ――挙国一致だと。糞食らえだ。尽忠報国だと。糞食らえだ。……気力なし、体力なし、プライドなし、自信なし、希望なし。……私は、もう、なにがどうでもいいような気持になっていたのだ。―― その絶望的な戦いをともに経験した勇兵団の生き残りを中心に、丹念に取材を続けてまとめられた一冊。相手は饒舌ではない東北人だが、それだけに一層言葉に重みが感じられる。 古山高麗雄の戦争三部作のうち、『断作戦』に続く第二作。
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-凄絶な半生を描いた自伝的長編の完結編。 母に捨てられ、有名な詩人だった父・洋之助が亡くなってからは祖母に虐待されて育った嫩(ふたば)。結婚後も夜な夜な暴力を振るう夫に悩まされ続け、やっと別れることができてほっとしたところに、父の知人・岸上太郎が訪ねてきた。 「軽いエッセイや小説でも。いや、そんなことより洋之助の思い出を書いてみなさい。……君なら書ける」 詩人萩原朔太郎の長女・葉子の実体験をもとにした自伝的小説で、『蕁麻の家』『閉ざされた庭』に続く三部作の完結編。三部作全体のあとがきとして書かれた「歳月――父・朔太郎への手紙」も収録。
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-詩人の懊悩と成長を描いた青春の記録。 「『若い詩人の肖像』は著者の青年時代を描いた自伝小説である。多少伏せたところや作ったところもあり、人名も仮りの名にしたものがあるが、大部分は事実に即している。」(著者あとがきより) 詩人や小説家として活躍し、数々の名作を世に送り出した伊藤整。その小樽高等商業学校時代から、卒業して中学の英語教師になり、東京商科大学(一橋大学の前身)に入学する頃までの、恋愛、同人誌創刊、詩作、若い作家たちとの交流などを生き生きと描写した一冊。 小林多喜二、川崎愛(左川ちか)、北川冬彦、梶井基次郎らが実名で登場し、著者の詩にかける意気込みとともに、当時の詩壇の様子が垣間見える好著。
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4.0太宰治らとの交遊から芥川賞受賞までを随想。 昭和49(1974)年、62歳にして『月山』で芥川龍之介賞を受賞した著者だが、弱冠20歳で華々しく文壇デビューした後、筆を擱(お)き長い長い流浪の旅に出たのは何故か。あまり世に知られていない、空白の40年間が垣間見える随想録である――。菊池寛に見出され、横光利一の推輓により、毎日新聞で『酩酊船(よいどれぶね)』を連載するなど前途洋々、将来を嘱望された若手作家だった森。同時代を生きた朋友・太宰治、壇一雄との交遊、太宰が『走れメロス』を執筆したエピーソードや、井伏鱒二や尾崎一雄、川端康成、谷崎潤一郎、志賀直哉らの名も日常生活を語る中で登場する。奈良や山形月山などで暮らした日々も綴られている。主に新聞の文化欄に掲載された文章だが、どんな短文にも筋が通った森流論理が窺える。
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4.0懐かしい本と、孫娘がある幸せを噛みしめる。 デイモン・ラニアン『ブッチの子守唄』、ツルゲーネフ『ページンの野』、チェーホフ『少年たち』、トルストイ『ふたりのおじいさん』など、著者の心に残った珠玉の短編を紹介する「読書日記」の体裁をとりつつ、著者夫婦が暮らす「山の上の家」にやってくる孫娘らとの平穏な日々を綴った心温まるエッセイ。 近所に暮らす〈清水さん〉が季節ごとに届けてくれるエイヴォン、バレンシア、ソニアといったバラや水仙、ヒヤシンスなどの花々が、淡々とした日常にさり気ないアクセントを与えている。 『鉛筆印のトレーナー』『さくらんぼジャム』と続く「フーちゃん三部作」の第一弾。
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-小悪魔的女学生と、理知的な女教師の間で。 「私は男を知りたい。その男を通して私の父を感じたい」――。容姿端麗、頭脳明晰だが、たびたび問題を起こす女学生・江波恵子。理知的で美しい女教師・橋本スミ。北国のミッション系女子校で国語教師をしている間崎慎太郎は、橋本に惹かれながらも、早熟で危うい魅力を放つ江波からも目が離せない。 江波たちの学年の修学旅行に同行することになった間崎は、旅先で橋本の義母に会うことになり……。 何度も映画化、テレビドラマ化された青春文学の金字塔にして、第1回三田文学賞に輝いた石坂洋次郎の出世作・前篇。
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-姦通をテーマに“愛のカオス”を描いた大作。 “第三の新人”を代表する作家・小島信夫が、文芸誌「群像」に1968年10月から1981年3月まで、全150回に亘って連載した“執念の大作”ともいえる全6巻の序章。 第1巻には第1~22話までを収録。幻想のごとき脆い夫婦関係を描いた名作『抱擁家族』から17年を経て、主人公は三輪俊介から前田永造と変貌したが、本作でも「姦通」をテーマに据えている。 夫婦の愛、男女の愛、人間の愛のカオスを複層的、かつエネルギッシュに描き、伝統的な小説の手法を根底から粉砕した文学世界が展開される。第38回日本芸術院賞、第35回野間文芸賞を受賞。