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中上健次が故郷紀州に描く“母の物語”。
「秋幸もの三部作」よりも以前の時代を描く、秋幸の母・フサの波乱の半生を描いた物語。
海光る3月。私生児としての生い立ちに昏い痛みを覚えながらも、美しく利発な娘に成長したフサは、十五になった春、生まれ育った南紀の町をあとにした。
若々しい肉体の目覚めとともに恋を知り、子を孕み、母となって宿命の地に根をおろすフサ。しかし、貧しくも幸福な日々は、夫・勝一郎の死によって突然に断ち切られた。
子供を抱え、戦時下を生き延びる過酷な暮らしの中で、後に賭博師の龍造と子を為し、秋幸と名付ける。しかし龍造が賭博で刑務所に入っている間、他の二人の女を孕ませていたことを知り、フサは秋幸には龍造を父と呼ばせぬと宣言する……。
中上健次が実母をモデルに、その波瀾の半生を雄大な物語へと昇華させた傑作長編。
Posted by ブクログ 2023年10月01日
女の一生。
あまりの緻密な描写に中上健次は実は女だったのでは?と疑うほど。2度読み返したが情景描写があまりにも美しくてうっとりする瞬間瞬間。
最初は説明描写が多いなーと思っていたが、気がついたら言葉の海で泳いでいた。
カルマの渦中で生きて行く生々しいフサの一生。
矛盾と心細さと強さが、その時の空気...続きを読む
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