海外文学 - グーテンベルク21の検索結果
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戦争と平和
アレクサンドル1世、ナポレオン、クトゥーゾフといった実在の人物や歴史的事実の間に、自己の創造した人物を自在に配して、二度にわたるナポレオン戦争の時代を生きた人々の運命を描いた記念碑的作品。貴族社会の俗悪さを軽蔑しきり、自らロシアのナポレオンになろうという野心に燃えて戦場に赴くが、アウステルリッツで負傷し、悠久の空以外すべてはむなしいと自覚するアンドレイ公爵。美しい妻エレンの不貞の後、フリーメイソンに精神の救いを求め、これにも幻滅、ボロジノー戦で初めてロシア民衆のもつ巨大なエネルギーに心打たれるピエール伯爵。小説はこの二人の青年を中心に、あけっぴろげな魂をもつ天真爛漫な少女ナターシャ、信仰心あつい女性マリヤなど、多くの人々の愛と悩みが描かれる。登場人物の数559人! 全4編およびエピローグからなるこの大長編歴史小説で、トルストイは主要な作中人物に託して、自己の世界観や歴史観、さらには民衆観を展開し、歴史的事件を決定するのはそれに参加した民衆すべての意志の総和であるという独自の哲学を打ち出している。世界文学に高峰のようにそびえる絢爛たる絵巻物。 -
ソロモン王の洞窟
冒険小説、伝奇小説でいまもなお魅力を失わないライダー・ハガードの代表作。着想の奇抜さ、読者をたちまち怪奇、幻想、戦慄の世界にひきずりこむ迫力は、この作者の独壇場だ。ソロモン王の時代から、アフリカの奥地に眠るという莫大な財宝。それをもとめてヘンリー・カーティス卿は、探検家アラン・クォーターメンとともに出発した。三世紀も昔の1枚の地図をたよりに、一行はソロモン街道にたどり着く。だが、そこで一行が目にしたのは、大虐殺の現場だった。そこを支配するのは、ソロモンの秘密を知る唯一の人間……魔法使いの老婆ガグールだった。ヘンリー・ミラーは「もっとも親近性のある尊敬すべき作家」としてハガードを高く評価している。 -
大地
清朝末期から中華民国成立までの動乱の時代を背景に、貧農出の王一家の父子三代にわたる変遷をたどる家族物語。1931年、「大地」は出版と同時にベストセラーとなりピューリッツァー賞を受賞、各国語に訳された。 貧しい農夫、王龍(ワンルン)と阿藍(オーラン)一家の暮らしにようやく明るさが訪れようとしたとき、飢饉が襲う。二人はやむなく町へ出、それぞれ車夫と乞食になって糊口をしのぐ。そのうちに二人は、折からの暴動の勃発によって思いがけぬ大金を手にする。一家は再び故郷に帰り、没落した地主から土地を買い入れる。さいわい引き続く豊作にめぐまれて王龍は大地主にまでなるが、余裕ができると女遊びに走り、ついには妾を家に入れる。阿藍はただ黙々と働きつづける。子供たちは大きくなり、一家の暮らしはしだいに変容し、やがて二人にも死が。 -
転身物語
ギリシア・ローマ神話について少しでも詳しく、面白く書かれた物語を求めるとすれば、この「転身物語」以上の作品はない。作品のテーマは「不思議な転身を物語る」ということになっている。しかし、そうした物語は一部にすぎず、全体はギリシア・ローマの神話・伝説の一大収集であり、宝庫であって、まさにその百科全書。この作品ほど後世に多く読まれ、数多く翻訳されたラテン文学作品はなく、ヨーロッパ人の神話的教養のほとんどは、この作品(ないしこれを再話した作品)に負っている。この改訂版では、さまざまな時代のエッチング、リトグラフ、絵画の名作40点以上を解説つきで収録した。 -
デヴィッド・コパフィールド
ディケンズの自伝的要素あふれる代表作。デヴィッドが生まれた時、すでに父は死亡していた。大伯母は、女の子誕生を信じていたが、裏切られて家を出ていった。陽気な乳母ペゴティーはデヴィッドを兄の暮らすヤーマスへ連れてゆき、デヴィッドは好青年ハムや幼い恋心をおぼえたエミリーに出会う。母はマードストンと再婚する。マードストンとその姉はわがもの顔で家に居座り、母は心身衰えて死亡する。デヴィッドは寄宿学校に入れさせられるが、そこで二人の生涯の友を得る。怖いもの知らずのスティアフォースと愉快なトラッドルズだ。デヴィッドは学校をやめさせられ義父がロンドンで経営する商会に小僧に出される。デヴィッドは貧乏人ミコーバーのもとで暮らすが、やがてミコーバーは借金のため牢獄へ。デヴィッドは逃げ出して徒歩で大叔母の住むカンタベリーへ向かう。大伯母に保護されたデヴィッドは、その友人である弁護士ウィックフィールドのもとに寄宿し、その娘のアグネスと親しくなり、不気味な人物ユライア・ヒープに出会う。デヴィッドは地元の学校に通うようになる。 -
洞窟の女王
ケンブリッジの若き教授、ホーレス・ホリーは危篤のヴィンシィ教授から幼い息子レオを引き取ってくれと頼まれ、同時に鉄の箱を渡された。それにはレオが25歳になるまで開けてはいけないという指示が書かれていた。20年後、箱を開けると、レオの父による一通の手紙と古地図、ギリシア語が刻まれた古代の壺の欠片、宝石の指輪が入っていた。壷の破片には2千年以上前のとあるギリシア人と不死の秘術を持つアフリカの女王との悲恋の物語が。ギリシア人は女王の求婚を拒んで殺される。手紙にはレオの父が耳にした、アフリカの奥地にアラビア語を話す部族の国があり、白人の美しい女王がいるという噂が書かれ、それが陶片に刻まれた女王そのものではないか、ぜひ真相を確かめてほしいと記されていた。ホリー、レオ、従者のジョブは勇躍アフリカへ旅立つ。待っていたのは戦慄と幻想の目くるめく世界だった! ヘンリー・ミラーは『洞窟の女王』を「驚嘆すべき書」と絶賛した。コナン・ドイルも「空想やスケールの点ではハガードに及ばぬかもしれないが、作品の質と思想の面白さにおいてはハガードを凌ぎたい」と書いた。 -
夏の日の声
1964年のある日の午後、第二次世界大戦退役軍人のユダヤ人フェデロフは、息子の野球試合を見ながら過去50年を回想する。移民の息子に生まれ、よき妻に恵まれ、元気のいい二人の息子をさずかった。いまも健康だし、ビジネスもまあまあ成功した。……俺が死んだら、とフェデロフは思った。火葬にしてもらおう。お祈りなしで。俺の灰なんかどこかに捨てればいい。俺が幸福だったところに。ヴァーモントの野球場の芝生に。ニューヨークの街で童貞と処女がはじめて愛をかわしたベッドに。戦時中の夕方、休暇中の軍曹がアメリカの赤毛の美女と並んで佇んだ、パリの家並を見おろすバルコニーに。息子のゆりかごに。晴れわたった夏に泳いだ大西洋の大きな波間に。そして、愛する妻の優しい手のなかに……夏の日の声はいつの時代も同じだった。 -
ニーベルンゲンの指環
ライン川の川底にひそかに眠る黄金。これから指環を作れば、その持主は絶大な権力を握るといわれる。それを守る乙女たちをだまし、こびと族のアルベリッヒは黄金を奪う。一方ワルハラ城を神々のために建造した巨人族二人は、主神ヴォータンに謝礼を迫り、黄金を要求する。ヴォータンは地下の国を訪ね、アルベリッヒから黄金と指環を奪い、これを二人に与える…だが、指環には呪いが。二人の巨人ファーゾルトとファーフナーは争い、指環は後者の手に移る。「たった一つの指環をめぐってくりひろげられる数奇な物語は、非現実の陶酔にさそいこんでくれる。ページを繰って耳をすますと、壮厳にして官能的なワーグナーの楽劇がきこえてくることだろう」これは寺山修司の言葉だ。 -
ノーサンガー・アベイ
本作は、十七歳のキャサリンを主人公に、前半はファッショナブルな温泉保養地バースを舞台に、後半はグロスターシャ―の裕福な地主の家ノーサンガー・アベイに場所を移して、繰り広げられる。バースでは裕福な地主アレン夫妻や新興ブルジョアのソープ一家を中心に、社交場や遊歩道などを舞台に都市小説風の展開を見せ、ノーサンガーでは怪奇小説的要素を加えて、古い屋敷を舞台に、裕福な地主の生活ぶりを浮かびあがらせる。平凡なキャサリンが自分で判断のできる一人前の女性に成長していく過程がていねいに描かれるが、軽い喜劇的な気分にも満ちている。「高慢と偏見」「知性と感性」「エマ」「マンスフィールド・パーク」「説きふせられて」に継ぐ本作で、オースティンの全長編は完結する。 -
白痴
霧ふかいある冬の朝、ペテルブルグの終着駅へと、列車が疲れきったかっこうで物語を運んでくる。三等車の座席に三人の男がいる。色あせた包み一つをかかえてスイスから帰国途中のムィシキン公爵と、熱病やみの男で、着のみ着のままでプスコフからわが家へ帰るラゴージン、そして、赤鼻、吹き出物だらけで、何のために列車に乗っているのか見当もつかぬ、抜け目のないレーベジェフだ。列車の到着後、その日のうちに主人公はほとんどすべての登場人物と会う。…純真な子供のような眼をもつムィシキンを、ひとは「白痴」よばわりする。だが公爵は常にその曇りのない大きな空色の眼に微笑をたたえているのである。……「しんじつ美しい人物を描こうとした人は常に失敗しています。なぜなら、それは量り知れぬほど大きな仕事だからです」ドストエフスキーのこの決意が結実した傑作。 -
ハテラス船長の冒険
ヴェルヌの「驚異の旅」は1863年の「気球旅行」でスタートし、「地底」「月世界」と続いたが、本書は67年刊で、「グラント船長」や「海底二万リーグ」より前であった。本書の訳者は「これほど面白い作品がどうして邦訳されていないのか」と述べる。冒頭から、帆船フォワード号を取り巻く謎で、読者の心を掴む。その行先は分からず、船長は姿を現わさず何者であるかも分からない。同号は船長からの秘密の指令によって北極へ向かう。ついに姿を現わした船長は北極征服熱一色に染め上げられた誇り高きイギリス人であった。この人物は単一の情熱に支配され、目標に向かって邁進する。極北の酷寒、乗務員の反乱、未踏の地の不確実性との戦いに、冒険心と知識欲に駆られたハテラスの勇気と決意は微塵ともしない。推理小説と冒険小説が渾然一体となった傑作。 -
響きと怒り
フォークナーは全く予備知識を与えぬまま読者を白痴ベンジーの意識のなかに連れこむ。そしてその錯乱の意識を通りぬけた読者は第二部で再び意識の流れの激しい屈折に戸惑う。しかし第三部、第四部では次第にこの作品の主題と意味が明らかにされてゆく。この作品は現在と過去との交錯がいちじるしい。とくに一部、二部はそうであり、たとえば第一部ではベンジーの意識が現在の知覚から過去へ移るときにはたいていイタリック体で書き表わされているが〔訳文では【 】で囲った〕、同じ技法が第二部でも用いられている。そしてこれら錯綜する時間と映像の下に、登場人物の心にとって意味の深い出来事が埋められているのである。米国南部社会の醜悪で陰惨な人間心理を描写し、『響きと怒り』は二十世紀の傑出した小説のひとつと評価される。