アガサ・クリスティーのレビュー一覧

  • カーテン

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    クリスティーのガイド本で興味を持って読んでみました!
    確かに、ポアロ・シリーズでも最上位の極上のミステリー、でしょう。
    ポアロ最後の事件は穏やかですが独特な緊張感を維持しつつ進んでいきます。あの人がXか、いやコイツも怪しい…。
    衝撃的なラストまで、一気に読みたい気持ちを抑えつつ、ワクワクしながら毎日少しずつ読み進めて。
    残念ながら最後の事件は終了してしまいましたが、まだまだ元気なポアロが登場する読んでいない作品が残っていますので、どれから読もうか楽しみです。

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    2023年11月22日
  • ビッグ4

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    もともと短編だったものを、長編にする為少し書き変えて作品にしたらしく、文章に違和感があるとのことだっんですが、アクション要素が多くハラハラドキドキでとても楽しめました!
    落ち着いた展開が多いポアロシリーズなので、こうゆう作品があってもいいのかなと思います。(まだ数冊しか読んでいませんが。)

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    2023年11月09日
  • おしどり探偵

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    トミー&タペンスシリーズはシリーズ通して初めて読んでいるが面白い。今作もやっと手に入り、読めずにとっておいた二作品も近々読むことにしよう。
    今作は秘密機関の後、夫婦となった二人の物語どであり、アルバートも彼等に従事してシリーズの登場人物として成長していく。クリスティはスパイスリラーの様な小説も多く、その中でも面白く魅力的なシリーズだ。
    アパートの妖精
     トミーはトミー、タペンスはタペンスだ(笑)タペンスの冒険への渇望は読者からすれば笑っていられるが、トミーにしてみれば気が気では無いだろう。何より本当に無茶をしかねないタペンスにトミーは振り回されている様だ(笑)
     夫婦の元にとある指令が届き、二人の冒険が再開する。長官から既に危険な指令がある訳だが、いったいどうなる事だろうと心配だ(笑)
    お茶をどうぞ
     探偵事務所を引継ぎ、偽名での事業をスタートした夫婦とアルバート。最初の頃は浮気調査しか依頼が無かったが、数日後、とある人物から人探しの依頼が舞い込む。トミーは探偵として、タペンスは秘書として依頼人と関わり、大袈裟に探偵事務所を誇張しながら依頼を達成する。真相はなんて事ない事件だが(笑)現代では許されないだろうが愛嬌がある作品。各章ごとに有名な探偵をモチーフにして行動する二人も魅力的。
    桃色真珠紛失事件
    伯爵令嬢のネックレス盗難事件。前回の評判が広まり屋敷内での盗難事件の調査を依頼される。
     警察沙汰にはしたくない屋敷の住人達。トリックは古典的だが面白く、懐かしい気持ちになった。じけんじたはなんて事はないものだがトミー&タペンスの生き生きとした姿勢、行動力がとても魅力的だ。真犯人はかなり油断したのだろう。
    (ソーンダイク博士)
     怪しい来訪者
     段々と面白さが増していく。今回は待ちに待った、長官から注意されていた封筒がもたらされる。意気揚々のトミーとタペンスだが、気付かぬうちに事務所に来訪者があり、依頼を受ける。タペンスは罠だと疑い、トミーは乗り込もうとするが、そこに刑事が応援に駆けつけ共に捜査に乗り出す事に。トリックは予想通りだが、面白い作品だった。(オークウッド兄弟)
    キングを出し抜く
     タペンスの勘が冴え渡る作品。仮装パーティに乗り込んだ二人。新聞上に寄せられていた暗号の送り主を捜査。そしてとある女性がナイフで殺害されるが、死ぬ間際、人物の名前を残す。証拠も証言も一人の男を指し、しかし彼の容疑に納得できない面々。そんな中、タペンスの閃きにより新しい可能性が浮上する。ミステリーに寄った作品。(おしのびマッカーディ)
    婦人失踪事件
     この事件は確かに二人の探偵の記録として残すべきでは無いだろう。ある意味コメディ作品だ。
     冒険家の男が計画より早く帰路に着き、婚約者の元を訪れる。しかし、婚約者は見つからず、彼女の叔母も居所について要領を得ない。後程電報が届きとある地域に向かうとあるが、冒険家は全てを不審に思い探偵事務所を訪れる。現代に同じプロットをら使用すれば馬鹿馬鹿しい作品になるだろう。女性にとって当時からダイエットは課題の様だ(笑)(シャーロック・ホームズ)
    目隠しごっこ
    トミータペンスの擬装が的に気付かれ始めていると局長から報告を受け、しかし一向に帰る気のないタペンス。合わせてトミーは今回盲目探偵の役柄を演じるため、目隠しをしながら、タペンス、アルバートを巻き込みゲームをする。そのままレストランに食事に出ると、とある大尉を名乗る人物が声をかけてきて、急遽、依頼を受けてくれと促される。それぞれ別々に行動する二人だが、案の定、依頼人は擬装で二人は危険に巻き込まれる。最後、上手くいなした感じだが、もっとどんぱちやって欲しいなあ。           (ソーンリー・コールトン)
    霧の中の男
    物語の始まりが「ブラントの腕利き探偵たち」の大失敗からスタートする。トミーは神父の格好のまま、タペンスとホテルのバーのカクテルで失敗を慰めていると旧友に遭遇する。彼は有名な女優と一緒におり彼らに紹介する。大女優は店から出る際にトミーに置き手紙をしており、一行は指定された家を訪ねる事に。
     とても濃い、先の見えないロンドンの霧、大女優の巻き込まれる事件。怪しい男性。トリックはわかりやすいが面白い作品だ。(ブラウン神父)
    パリパリ屋
    マリオット警部からの依頼。偽札の出所を探る。
    「警察の犬」の話題を冒頭で振りながら、締めで猫を用いており、皮肉があるなと感心してしまう。潜入捜査、怪しい人物の元に潜り込み偽札がどこから出ているかを調べていく。とても美しい女性と父親に嫌疑を持ったトミーだが、そんな彼にとある危険が迫る。もう少しどんぱちあっても良さそう。パリパリ屋のセンスが面白い。
    (エドガー・ウォレス風)
    サニングデールの謎
    クリスティ得意のとあるトリックが冴える。警察でもお手上げ状態だった殺人事件の真相にトミータペンスが挑む。些細な事実が明らかにされていく中、それらの情報を元に新しい仮説を立てて検証する。とある人物が、ゴルフコースの途中で女性と会話、その後、プレイに戻るが動揺し、全く出鱈目なプレーに終始、途中で帰宅後殺害されたとあるが、この一連がトリックで擬装される。最後、マリオットが合流するが、段々と怪しくなってきたなぁ。(隅の老人)
    死のひそむ家
    ミステリーよりの作品。他のシリーズ通してもクリスティが大量殺人を描く事は珍しい。長編でアレンジしても面白そう。トミータペンスシリーズの魅力は冒険の部分だが、今回は推理小説として描かれている。ただし犯人当ては難しいだろう。
    タペンスが看護師をしていた予備知識がある中で見事に推理、解決にいたるが、結末をこの様に解決させるのも古典独特の価値観だろう。    (アノー)(ヴァン・デューセン)
    鉄壁のアリバイ
    ゲーム的な作品、アリバイトリックを解決させる事。依頼は単純で、二つの地域、それぞれに一人の人物が現れる。そのトリックと謎を解き明かす。結局は古典的なトリックで、現在では「アンフェア」と言われるだろうが、決して本格シリーズでは無いためこれもアリかと納得。確かにそれしか解決はできないだろう。(フレンチ警部)
    牧師の娘
     タペンスが牧師の娘という事はほとんど忘れていたが。牧師の娘が依頼人となり、隠された財産を探す宝探しの物語だ。暗号を駆使して娘が相続した赤い館の秘密に迫るトミーとタペンス。暗号は翻訳版ではなぞなぞの様だが楽しむ事ができた。
    大使の靴
    とても不思議な事件。船内にて、大使が持っていた鞄と別の人物が持っていた鞄が入れ替わってしまう。後日、相手の遣いがバックを交換に大使の元を訪れ、大使は不在だったが使用人が確認をした上でバックを入れ替える。後日、相手は政治家で大使と面会する機会があり、大使が鞄入れ替えの件を話題にすると政治家は全く知らないと言う。不審に感じた大使は話題の探偵事務所に依頼する。バックに入っていたものは靴。重要書類や盗まれたものも無し。ただ入れ替えられ、元に戻されただけ。いったい何の目的があったのか。調査を進めると謎の婦人、怪しい男が登場。アルバートの活躍も冴える?
    (フォーチュン医師とベル警視)
    16号だった男
    様々な事件を解決し、それなりの成果を挙げたと納得する二人だが、どうやら本当に危険な人物がいよいよやって来るようだと局長から報告がある。十分に警戒している中、怪しい依頼人が登場、依頼を受け、トミー、タペンスそれぞれが別行動に。そして待ち受ける二人の危機と絶望感。最後はポアロの探偵術(というか、灰色の脳細胞)をフル活用し、16号と対決する。
    (エルキュール・ポアロ)

     全編通してとても痛快なサスペンススリラーだ。本格では無い為、簡単に読めるしわかりやすい作品だ。シリーズ通して魅力が充分で、作品自体は少ないが、二人が歳をとるまで長い期間の時間軸で描かれている愛すべき作品。

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    2023年11月09日
  • ホロー荘の殺人

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    ホロー荘の殺人
     この作品のトリックは中々に特殊で。冷静に考えれば余り見た事がない。犯人が同様のパターンは知っているが、犯人を設けた上で進行していくポアロ達の一連のやり取りは、無駄を一切省いた整理された推理小説であり、様々な意見はあるがとても真っ直ぐなサスペンスミステリーだ。
     クリスティ作品の中でも屈指の「悲劇」であり、ヘンリエッタを中心として物語がどんどん進化していく。クリスティ得意の恋愛がふんだんに盛り込まれ、ミステリー、サスペンス、ロマンスのバランスもよく、更には読み進める障壁がない為スラスラとページを捲る事ができる。一つのドラマとして完成度が高く印象的な作品の為、一度読めば犯人や結末を忘れない強烈な小説だ。
    (僕は今作は再読になるが、十数年前に読んだ記憶が残っており、物語の概要、犯人は頭の片隅にありながらそれでも読みたい、読もうと思った作品だ)
     印象深い要因の一つ目として登場人物の描写が作品の中でも際立っており、先に述べたヘンリエッタを始め、アンカテル一族それぞれの個性や執事を含めた一族に従事する人達。クリストウ一家の存在感(子供達の印象も強い)アンカテル家の人々と交友のあるミッジ。近隣の別荘に暮らす女優のヴェロニカ。全員が間違いなく作中の役割を受け持ち効果的に生きており、悲劇的な作用を形成する。
     印象深い要因の二つ目としてはポアロの役割であり、かれの立ち回りや真相にたどり着いた後の対応が、僕がこの作品を「悲劇」と位置付ける理由の一つで、想像にはなるが、数年後のストーリーを思い浮かべる事もできるし、「とある人物」がどの様な想いでこの真相を受け入れるのかを考えるとやるせない気持ちになる。クリスティは比較的事件解決後は登場人物達を前向きに描く事が多いが、今回はかなり厳しい結末を用意している。
     ヘンリエッタについてもポアロが感嘆するほどのの人物であり、最後の彼女の行動は正しくイメージのままだ。現代作品で同じテーマの作品があれば、彼女の様な役割をもつ人物は設定しない(こういう感覚にならない)だろうと思う。人間の愛情や信頼は難しいが、作中ではとある人物への慈愛に満ちて生き生きしており、ミステリーとしての王道的なものよりも人間模様に特化したミステリーとした方が面白く読めるだろう。
     今作も僕のおすすめだ。少し違ったクリスティの作風を感じる事ができるはずだ。

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    2023年11月06日
  • 無実はさいなむ

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     無実はさいなむ
     女性資産家の殺人事件。逮捕されたのは養子の息子(ジャッコ)。息子は獄中で半年後に亡くなり、しかしアリバイを主張していたが、確認されなかった。二年後、事件の起きたアジール家にキャルガリという学者が訪れる。彼は二年前の事件当日、屋敷から離れた場所で逮捕されたジャッコを車に乗せた事実を伝えにやってきた。
     事件当時は交通事故に巻き込まれ、その後僻地での仕事の為、彼が逮捕されたことを知らず。せめて死後であっても彼が犯人ではないという事実を明らかにする為にアジール家を訪問する。
     殺人の罪で逮捕された無罪の男。彼のアリバイを持ちながら不幸により証言できず、良心の呵責を持つ学者。犯人と思われていた人物の無罪がわかり、動揺するアジール家の人々と関係者。
     そして当然、事件は再捜査になり、それを担当する陰気な警視のヒュイッシ。
     この作品では主人公と言われる人物がいない為、様々な目線、心情から物語が明かされていく。アジール家の人々は子供達は全員養子で性質も異なり、全員が一癖、二癖もある人物達で、その他主人の秘書やお手伝い、娘婿等人物も豊富で一体どういう性質の事件で女性資産家が殺害されたのかが終盤までわからない。また、アジール家の人々は事件を掘り返す事を拒み、それでいてそれぞれがそれぞれを疑う様な状態になっていく。屋敷全体に不穏な空気が蔓延り、様々な物が崩壊していく手前にある。
     当然、二年前の事件で警察が新事実や証拠を押さえる事も難しく、更にはアジール家の人々も非協力的だ。一方、キャルガリも自身の行動によりもたらした結果が更なる不幸の連鎖になる事に責任を感じ、独自に真相を追求する。
     
     作品としてプロットはクリスティの中でも屈指では無いだろうか。現代のミステリーでもこの様な多角的な視点でのミステリーは少ない様に思う。真実を告げたキャルガリ学者目線、再捜査により何としても事実を明らかにしたいヒュイッシ警視目線、そして養子の婿であり屋敷に留まり事件の究明に好奇心を燃やすフィリップ目線が主な視点だが、その他登場人物達の目線から語られる章も沢山あり、かつ養子姉弟という関係性を考慮しながら進行する為、少し複雑になっている(探偵や語り手が固定されていない為、その部分が不満の人もいる様だ。しかし想像してみると多角的な視点から物語の本質へフォーカスされていく様子はとても見事でドラマチックだ)。
     残念な事は、最後結末(犯人が判明してからエピローグに至るまで)がまるで手抜きの作文みたいに一瞬で終わってしまう事だ。犯人を究明するパート迄至高の流れだったのにいきなりトーンダウンどころかクリスティがどこかへ行ってしまったかの様だ。実はもっと話を長くした方が重厚感や様々な人間模様が見れるし(絶望感、愛情、信念、守秘、悪意、憎悪の全てがあるはずの作品なんだ)最後の陳腐なメロドラマオチも丁寧にまとめれば傑作の一つだったのではと思う。
    しかしそれでも星は5なんだ(笑)。設定、犯人の意外性、動機、悪意。これだけでもこの小説が充分に面白いと思ってしまう!!

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    2023年10月27日
  • ねじれた家

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     クリスティ作品は再読が多いのだが、今作は初めて読む作品だったのだ。クリスティにもその種類のミステリーがあったのかと驚愕、新しい発見だ。余り今作をクリスティのベストにランクしているものを見た事が無いが、少なからず現時点では僕のクリスティ10選に入れたい程、強く衝撃を受けた作品だ。
     「ねじれた家」という土台がありながら、そのイメージに合った世界観、環境観下でありながら、実は家族愛に満ちたレオニダス一族の物語で、クリスティ作品では金持ちは嫌な印象を与える事が多いが今作のアリスタイドは読み進めるととても好印象な人物である。しかし、その「家族愛」こそねじれの原因であり、家族一人一人が個性と歪みを持っており作品自体を「ねじれた」イメージにする一環を担っている。
     物語のスタートは戦時下のイギリス。若い二人の男女、チャールズとソフィアは気が合い、結婚を考えるが、チャールズは二年感東洋での任務がある。彼はソフィアに二年後ロンドンでまだ自分達の気持ちが変わらなければプロポーズしたいと伝え、彼女も了承。その時初めて彼女が大金持ちの孫娘である事を知る。
     二年後、任務を終えイギリスに戻り、ソフィアと再会するが、その際に彼女の祖父アリスタイドが亡くなった事を知る。ソフィアは結婚自体反対ではないが、祖父の死に疑念があり、それが解決しなければ家族が原因で暗いモノを引きずるかも知れないため、真相の解明を望む。チャールズの父親は警視総監であり、警察の捜査とともにソフィア達の暮らす通称「ねじれた家」を訪問する。
     あからさまな探偵役が乏しい為、一体真相はどうなのかが終盤まで明かされない。ソフィアの妹が探偵役の片鱗を見せるが、中々チャールズに伝わらない。ソフィアの家族達は何かを感じている様でありながらそれも読者には明らかにされないもどかしさもあり、不穏な空気感漂う世界観が続いていく。
     今作の真相について、有名作家の作品には必ずある種類の真相であり、ある意味でフーダニットの王道になるが、当時はまだ少なかった手法だろう(ネタバレになるので作品名は挙げないが、クイーンのシリーズが挙げられる)。ミステリー好きなら読みながら犯人を推測するが、一番衝撃的なのはという事で二名程怪しんでいたがそれでも充分に驚いた。
     また、結末についても慈愛に満ちたものであり、登場人物のイメージがガラリとかわる。結末も先程挙げたクイーンの作品と同じプロットなのだが、こちらの方が印象が強い。完成度が非常に高く、作中でクリスティ特有の伏線や匂わせがあるにも関わらず気持ち良く騙される。
     チャールズ、ソフィアもそうだが、エディス、ジョセフィンと活躍する人物が多い。特にジョセフィンは12歳で有りながら一部探偵役を担いチャールズは振り回される様がワトソンの様だ。
     非常に面白く、是非おすすめしたい作品。実は読み易く余りクリスティを読んだ事がなくても勧めたい。

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    2023年10月23日
  • 動く指

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    ミス・マープルものとして読むとちょっと物足りないかもしれない。ミス・マープルの出番は後半のごくわずか。
    それでもやはりクリスティらしい誰もが怪しく見える作品で、主人公の兄妹が微笑ましい。
    じっと編み物をしながら、頭をフル回転させるミス・マープルのように世の中を見てみたいと思ってしまう。彼女の頭の中では様々なことがきちんと整理されていくのである。

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    2023年10月22日
  • 予告殺人〔新訳版〕

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    ネタバレ

    初めてのミス・マープルシリーズ。
    ドラマで見たことはあったのでストーリーは大まかに覚えていたけど、やはり活字を目で追いながら情景を想像するのはとても楽しい。
    個人的に一番好きなのはジュリア(エマ)。淡々としていて、可愛らしいところもあって、素性がバレても狼狽えず堂々と振る舞う。素直で無垢な子供のようだけどしっかりと自分の意思や考えを伝えることができる強く優しいバンチも好き。そしておっとりとしてロッキングチェアが似合いそうな老嬢ミス・マープルのラストの掃除道具入れ?の中に隠れてドーラの声を真似るという行動力と度胸は老嬢故の人生経験から得たものなのか、はたまた彼女の生まれ持った素質なのか。ミス・マープルはてっきり安楽椅子探偵なのだと思っていたので、その行動力にはとても驚かされてすっかりファンになってしまった。
    この勢いで他のミス・マープルシリーズも全て読むつもりだ。

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    2023年10月18日
  • ヘラクレスの冒険

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    テーマを付けた短編集として「火曜クラブ」と並び秀逸。
     ポアロのクリスチャンネームがヘラクレス(フランス読みでエルキュール)は有名。今回はポアロとバートン博士が名前について語らっている。(いつの時代もキラキラネーム問題はあるんだなぁ(笑))
    ポアロは博士の指摘を受け、自身がヘラクレスらしからぬ事、いや、現代のヘラクレスとして引退迄に十二の事件を解決する事、それが古代ヘラクレスの十二の難業を現代に再現する事だ。と考え、依頼を進めていく。
    十二編をコンセプトとしてまとめ、更にはポアロの名前を冠した作品集だ。
    第一の事件 ネメアのライオン
    ミスレモンが整理した手紙について、ポアロが面白い依頼はなかったかと尋ねると、ペギニーズ犬の捜査依頼があると言う。前日に現代のヘラクレスに相応しい事件を解決すると決めていたポアロは怒りに狂いそうになるが、基本的にミス・レモンは勘が鋭い為、渋々依頼の手紙を確認する事に。何か感じるものもあり、依頼を受ける事にしたポアロ。こうして現代版のヘラクレス12の難業がスタートする。
     単なる犬探しだけではなく、その裏に潜む根本的な問題の解決、そして依頼人に隠された秘密など。解決方法に賛否はあるだろうが、最初の謎として相応しい事件だった。ポアロが相手にする「ライオン」は可愛らしい気もするが(笑)
    第二の事件 レルネーのヒドラ
     噂話は決して消える事はなく、まるでヒドラの頭の様に切り落としても生えてくる。妻の死後、噂話ぬ悩まされる医師がどうにか助けて欲しいとポアロの元を訪ねてくる。ポアロは噂の真相を探る為、腹心のジョージを従えて噂話がはびこる町に赴く。途方もない噂を聴きながら、噂の出所を見つけ出す。あわせて、医師の妻の死が自然死ではなく他殺である事を証拠づける為、遺体の掘り起こし、死亡解剖が実施される。
     真相に辿り着き、真犯人を見つけ出したポアロ。ヒドラのしぶとさは確かなものだが、見事ポアロが退治した様だ。
    第三の事件 アルカディアの鹿
     冬の夜にポアロの高級車が故障してしまい、仕方なく歩いて距離のあるホテルを訪れ、宿泊する事に。そこに車の修理工の美男子が現れて修理について説明し、合わせて有名な探偵であるポアロに相談したい事があると切り出す。とある屋敷のボイラー修理を依頼され訪れると、とあるダンサーの美しいメイドがおり、彼女と仲良くなり、再会を約束する。しかし約束の場所に彼女は現れず、きっと何かが起きたのではないかと心配になる。ポアロはこの依頼が三番目の難業に相応しいと考え、彼女の捜索を開始する。ミステリーというよりもロマンスに近い素敵な作品。
    第四の事件 エルマントスのイノシシ
    第三の事件でスイスに来ていたポアロ。ついでに見た事の無い土地を見て回ろうと観光していると、ケーブルカーの車掌が切符と一緒に一枚の紙切れを渡す。それによればとある凶悪犯がこの地を訪れる予定で、既にホテルに警察が侵入しているとの事。ポアロは第四の事件として親和性を感じ、「イノシシ」を捉える手助けをする事に。最後殺人事件や未遂事件が起きるが、他の宿泊客とも協力し、被害を最小限に食い止める。三日後、刑事達が到着し、一件落着と思われる所、ポアロが衝撃の事実を告げ、どんでん返しが起きる
    第五の事件 アウゲイアス王の大牛舎
     ポアロを敵に回すとはどういう事か。万が一ポアロが策略を持って何かを企めばきっと上手くいくのだろう。今回は政治家の不正を元にいかがわしい新聞社がゆすりをしようとするが、相対するのは政治家に雇われたポアロ。政治家側から金銭での解決を提案されたがえ新聞記者は拒否、ポアロ達との交渉を決裂させる。新聞社の記者は政治家の妻の不貞記事や浮気記事などを掲載。世間では記事に対する政治家夫妻の悪い噂が広まり、いよいよ名誉毀損で訴える事に。
     新聞記者は名誉毀損について問題視はしていない。一方政治家側は世間の信頼に足る人物の証言、並びに新聞記者が雇って政治家の妻のふりをさせて写真などを準備した女性を召喚、新聞記者が彼女に政治家妻の真似をさせ、様々なスキャンダルを撮影する手伝いをさせられたと証言し、形成逆転、新聞社は巨額の費用を請求され、後々倒産する。政治家ぎほっとする中、実はポアロと政治家妻の仕組んだ罠だったというオチ。ポアロは敵に回すと恐ろしい人物だ!!
    第六の事件 スチュムパロスの鳥
     構成として猛禽類を思わせる様な恐ろしい見た目の双子の老嬢を登場させ、あたかも彼女達が問題の根幹、この話の敵である様に見せかけてストーリーが展開される。ポアロ登場迄に時間ぎある為、どの様に解決されるのか、どういう事件なのかが読者に判明するのが終盤。それまではドキドキしながら読む事ができる。
     世間や上司の評判も良い政治家。独身貴族で自由気ままな人生を送る主人公と、彼と懇意にする母娘。娘は既婚であるが、夫は難しい人であり、娘が男性と話す抱けで嫉妬に狂う様な人物。主人公は娘に想いがあり、彼女の夫を腹立たしく思う。一方、ホテルにポーランドから恐ろしい容姿の双子の老嬢があらわれ、主人公は不吉なものを感じる。そんなおり、娘が悲しみにくれているのを介抱した事が娘の夫につたわり、母娘が宿泊しているホテルに乗り込んでくる。そこから怒涛の展開が起きる。どんでん返しが楽しめる作品。
    第七の事件 クレタ島の雄牛
     女性からの依頼。婚約を破棄されたというが、相手の男性の様子がおかしいという。父親が息子を海軍から呼び戻してしまう。父親は海軍で働く息子を賞賛していたはずなのに。婚約者の家に赴き事情を探るポアロ。動物の遺体が捨てられていたり、洗面所が血溜まりになっていたり。しかし、男性は覚えていない。おそらく一族の精神異常の血が遺伝してしまったと訝しみ、彼女と婚約を破棄。合わせて男の母親は男が幼い頃にボート事故で亡くなっていた事をしる。
     ロマンスからのスタートで、全てが覆される驚きの短編。但し、父親の友人の行動に疑問あり。
    第八の事件 ディオメーデスの馬
    ポアロの友人の医師からの依頼。とあるパーティに呼ばれた医師。コカインを使用した形跡があり、二人の婦人が治療を受ける。合わせて、錯乱した婦人の一人が銃を数発乱射し、偶々付近にいたホームレスにあたり、医師は治療の為呼ばれていた。麻薬の出所を探る為、また、若い婦人を守る為にポアロが捜査をスタートする。途中に出てくるポアロの知人女性が強烈。ポアロもタジタジなのが面白い(笑)。結末はしっかりと意外なものに着地している。
    第九の事件 ヒッポリュての帯
     絵画盗難事件と学生失踪事件。ポアロは特に乗り気では無かった絵画盗難事件を調査する過程でとある女学生の失踪事件が発生、警察から相談を受けて興味を持ち調査する事に。調査の過程で、ポアロが追っていた絵画盗難事件と女学生失踪事件の関わりが明るみになっていく。女学生失踪事件は冒頭から全くの謎なので解決されていく過程が楽しめる作品。最後のオチはとてもチャーミング(笑)。
    第十の事件 ゲリュオンの牛たち
     第一の事件に登場したミス・カーナビィ再訪。犯罪者としてポアロも称賛する人物だが、とある信仰宗教と友人の婦人の件でポアロに相談に訪れる。ミス・カーナビィが信仰宗教の本部に潜入しながらポアロの調査をサポートする。彼女はポアロのスパイとして行動しながら、読者には信仰宗教の怪しさや危険な描写もされており、更には彼女が途中で心変わりがある部分など、とてもスリリングで面白い作品だ。相変わらずペギニーズは利口な様だ(笑)
    第十一の事件 へスペリスたちのりんご
     金持ちが購入した絵画を巡る事件。絵画が金持ちの元に届く前に盗難事件がおき、絵画がなくなってしまう。盗難した犯人も亡くなってしまい、二度と絵画を見つける事は出来ないと思われたが。警察でもどうする事も出来ない盗難事件とポアロの名推理、そしていつの時代も金持ちというのは悲しい人だという教訓に満ちた作品。
    第十二の事件 ケルベロスの捕獲
     ヴェラ・ロサコフ伯爵夫人再登場。ポアロがロサコフ伯爵夫人に振り回される(騙される訳ではないが、やはりポアロも男性だった(笑))大掛かりな麻薬事件がバックボーンになりながら、ポアロとロサコフ伯爵夫人のやり取りが面白い作品。最後、冷徹なミスレモンがポアロの様子を見て口走る描写があまりにも滑稽で、ヘラクレスの冒険は難しい事件と共に堅苦しい十二編にさせず、作品通してのユーモアをつけた様な形だ。動物を使ったトリックはホームズてもよくあるが今作の方が断然分かりやすい。
     以上、過去と現代のヘラクレスの冒険が無事完了する。この後、ポアロはかぼちゃ栽培に勤しむ訳だが、どうなるかは「アクロイド殺し」を是非読んで欲しい。

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    2023年10月16日
  • ゼロ時間へ

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    ネタバレ

    凄かった、凄かった。
    最後に一気に回収されていく複線。
    呆然としてしまう、あまりの凄さに。
    バトル刑事の娘さんの件までこう作用するとは…。
    ケイのヒステリックもネヴィルに影響されてたんだろうかとか考えてしまう。

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    2023年10月15日
  • 牧師館の殺人

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    ネタバレ

    あーあ、面白いミステリが読みたいなーーと思って助けてクリスティー!と読んだら…最&高!笑
    もー面白すぎる!これだよこれなんだよ〜〜!大満足。
    犯人わかった時本を取り落とすかと思った。
    この鮮やかな謎解きを待ってた。
    変にグロくもなく特殊な設定とか余計なものナシ、静かな村で起きたひとつの殺人を追うだけでノンストップで読み切らせる物語の上手さにひれ伏しちゃう。余計なものがないんだよねー!

    登場人物も多いから、読みながら推理するのも楽しいし、暇を持て余した老嬢(この単語すごい)たちの無益なおしゃべりも退屈すぎて笑える。

    さすがに時代が違いすぎて、物語の中で当たり前に過ぎてくこまかな描写がわかんないことも多いけど、100年近く前に書かれたとは信じられない。

    次はアクロイド殺し読むの楽しみだなー。

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    2023年10月14日
  • なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?

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    ネタバレ

    楽しかった〜!面白かった〜!!
    解説で言いたいこと全部言ってくれてたけど、謎解き・冒険・ロマンスの3つがそろったとても楽しいミステリ小説だった!

    読むきっかけを与えてくれた、夢水清志郎シリーズ(「なぜ夢水に頼まなかったのか?」というセリフがある)と、古典部シリーズ(「なぜ江波に頼まなかったのか?」という副題がついた作品がある)に感謝!!
    好きな小説を書く人がオマージュする作品って、やっぱりわたしも好きなんだな〜と思えた。

    通勤電車や昼休みに夢中になって読み進めた。解明されていく謎と深まる謎のバランスが良くて、最初はこの1人の殺人事件だけでこんなに長編?と思ったけど、読み終わる頃には寂しい気持ちになって、読み終わったときには満足感がすごかった。
    やっぱりアガサ・クリスティーってすごい!

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    2023年10月30日
  • 象は忘れない

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    アガサ・クリスティーの才能が迸る物語。

    小説家のミセス・オリヴァは、とあることから過去の事件について、関わった人たちから当時の話を集めて真相を解明しようとするも手に負えず、友人のエルキュール・ポアロに助けを求める。

    『象は忘れない』のタイトルは、「象は過去のことを忘れないで、いつまでも覚えている」という逸話をもとに、オリヴァが話を聞きに行く相手のことを「象」と呼びだしたことからきている。

    私には、もう一つの逸話「盲人と象」のように触った感触だけで「象」という生き物を語る人たちの情報を、ポアロが丁寧に全体像に置き換えていく状態も指しているように思えた。

    ラストシーン、ミセス・オリヴァの締めくくりの言葉……「象は忘れない、でも、ありがたいことに人間は忘れることができるんです」

    悲しくとも未来に向かって前向きな結末が、心地よい。

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    2023年10月05日
  • 復讐の女神

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     まず、なにより邦題も「ネメシス」でよかったのではと。日本語にしてしまうと名称としての力強さがなくなり、少し説明じみたイメージになってしまう。ネメシスの方が復讐の女神より力強さや恐ろしさを感じるのは僕だけだろうか。
     
     僕はクリスティがミステリにおける殆どの試行やトリックを編み出し使い尽くしたと考えており、彼女以降の作家は新たなジャンルや作風の工夫こそ出来うるかも知れないが、ミステリの観点でアイデアで彼女の創作を超えていく事は難しいと常々偉そうに語っている(笑)
     ミステリの形式としては、1.犯人は誰か2.何故事件は起きたのか3.事件の過程を解き明かす4.叙述トリックなどが考えられるのだが、今回は問題は何かというまさかのテーマであり、そもそもミステリの殆どは何かの事件やトラブルに対しての道筋であるはずなのだが、今作ではマープルと同じ様に読者も広大なフィールドに投げ出され、とにかく進んで何かを見つけろと言われている様な気分であり、新しいジャンルを経験している様な気分だ。中盤から終盤にかけて、徐々に今作の解明すべき問題が明らかにされていき、ラフィールが一体何をマープルに託したのか、が構築されていく。大枠としては漫画やゲームの構成と似ているなぁと感じた部分もあり、そういったものがまだ表現されていないなかで、文章で表現されているのは驚きだ。
     カリブ海の秘密で共闘した数年後、新聞の死亡記事にラフィールの名前が載る。マープルは彼の名前をようやく思い出し、カリブ海での事件に思いを馳せる。数日後、弁護士事務所を通じてマープルの元にラフィールからの不思議な依頼が届く。何について、誰について、全く何の依頼もなく、弁護士達も何も知らされていない。そんな中、マープルはラフィールが手配したバスツアーに参加する事となり、少しずつラフィールが意図した事件の輪郭が姿を現してゆく。
     物語の軸自体を読者が探し、考察しながらストーリーの真相に迫っていく。ある意味で謎解きの幅が広くなり、登場人物達を全て精査していく必要上、読みにくくなる事が考えられたが、全くそんな事はなく、反対に非常に整理された道筋を辿るため読みやすくさえあると言える。
     今作は連作のため、カリブ海の秘密から続けて読むと格別だ。(バートラムホテルの事件は次に読む予定)また、本来三部作を予定しており、英題を読み解くと、ウーマンズレルム(女性の領域?僕は今作かは勝手に想像し、女王の庭と略した!!)
    が完成しなかった事は残念だ。僕は本当にこの二作が好きで、ふたつ合わせてクリスティの10指の一つに選びたい。

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    2023年09月30日
  • カリブ海の秘密

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     クリスティ作品の中で最も完成度が高く、読んでいて心地よい作品。今作と「復讐の女神」は連作になっている。復讐の女神とは今作中において、大金持ちのラフィールがマープルから夜中に叩き起こされるシーンでマープル自身の形容について冗談の様に言った事なのだが、復讐の女神(メネシス)に似ても似つかない様がずっとラフィールの印象に残ったのだろう。次作のタイトルが「復讐の女神」である事も鳥肌物で、今作の完成度がずば抜けて凄いと感じてしまう要因の一つだ。
     更に巻末を見て驚いたが、今作は三部作構成の計画があったという事だ。クリスティが亡くなり実現しなかったという事らしいが英題まで決まっていた様で物凄く残念だ。願わくば今の時代に生きる有名なミステリ作家がタイトルを引き継ぎチャレンジしてほしいが、きっと誰も納得しないんだろうなぁ。
     普段はセント・メアリー・ミードから出る事がないマープルだが、甥のレイモンドの愛情により旅行にでている。マープルが何処かに出かける作品は意外に多く実は彼女はとても行動的なのだが、カリブ海はメキシコ湾の辺りの様で数少ないマープルの旅行物だ。ホテルの人達や滞在客は皆んな優しく過ごしやすい環境だが、ある日パルグレイヴ少佐の死亡をきっかけにマープルが疑問をもつ。彼は病死とされていたが、マープルに話しかけていた際にとある事件の犯人の写真を見せびらかそうとした際に、不意に何かに気づき話題を変えていたが、その事を不自然に感じ、マープルができる限りの調査を開始する。
     今作の好きな所の一つ目は冒頭に挙げた次作のタイトルを見事に表現している部分なのだが、二つ目は探偵小説にありがちな矛盾を逆手にとっている事だ。そもそも素人探偵に警察が協力する訳が無く、数あるミステリではとにかくこの部分を誤魔化す訳だが、今作ではマープルは孤独を理解し、仲間を巻き込む所から始まり、最初は医者を利用し(彼は利用されたで良いだろう(笑))、その後、大金持ちのラフィールを味方につけ、彼の部下も巻き込み真相を解決している。少なからずマープルは探偵役としては欠点が多い訳だが、今作ではそれが大いなる魅力に変換され、作品の山場を見事に演出している。そして、根本には犯人の意外性や幾つもの殺人、伏線となる語られた過去の事件等は当然のごとく表現されている。
     実は落ち着いてみると、クリスティのベストに入る作品なのでは。と今更ながらに思う。読み終えてから次に手に取るのは、言わずもがな、「復讐の女神」だ。

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    2023年09月28日
  • 牧師館の殺人

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     愛すべきミス・マープルシリーズの長編一作目に当たる訳だが、マープルのお披露目には最適な作品である。
     マープルシリーズは短編からスタートしており、後々「火曜クラブ」が発売されるが、本当の意味でマープルの驚異的な推理力を知らしめられるのは「火曜クラブ」であり、長編としての面白さ、彼女がどの様な人物であるかを読み解くのであれば、今作「牧師館の殺人」が最適である。
     田舎の村、セント・メアリー・ミードで起きた殺人事件。長閑な場所で、十五年以上殺人等が起きていないこの土地で、一人の老紳士が牧師の家の書斎で頭を撃ち抜かれて殺害されている。若い画家が殺害を自供し、事件は解決されたかと思いきや、様々なトラブルが発生していきセント・メアリー・ミードは大騒ぎだ(まさしく文字通り大騒ぎだ。設定はありきたりなのだが、時代背景の違いが強く、警察が横柄だったり(なんてひどい捜査だ!!)婦人たちが煩わしかったり(なんて恐ろしい土地か!!)とにかく田舎の長閑さと比較して人間の内面、人間的な部分が存分に表現されている作品だ(田舎の人間であれば今作の様な人間的な煩わしさを現代でも経験した事があるだろう)
    「ミス・マープルは常に正しい。」ある意味で住人達の中に彼女の全てを見透かしている様な態度について恐ろしさを感じているのは驚きだった。優しいオールドミス(オールドミスには皮肉もある様で優しい訳がないのだが(笑))のイメージがあったのだが、数作品読み進めると彼女の内面の強さや正義感優しさ等のバランスがわかる様になる。
     今作では犯人はとても意外であり、僕自身は再読のため、とある人物が犯人だったなぁと読んでいたら記憶が間違っており。ある意味で新鮮に衝撃を受けた訳だが、同じ様な構造の作品はクリスティの他作でも見受けられ、しかし良い意味で繰り返されており、クリスティがそれぞれの探偵やノンシリーズで上手に構成を当てはめてパズルの様にマネジメントしている事を尊敬している。それでいてストーリーは面白いし、トリックは新鮮、ドンデン返しもある為満足のいく作品だ。
     ある意味で読みやすく王道のミステリーといっても良いだろう。まず何を読むかを相談されればおすすめの一冊に今作が該当するだろう。
     セント・メアリー・ミードはこれ程恐ろしいむらだったのかと。衝撃的だったが、この様な環境かにおいて幼少からきたえられたマープルは必然的に人間性を観察するやり方を学んたのだろう。
     

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    2023年09月27日
  • カーテン

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    ネタバレ

    34か月間でポアロシリーズ読破!ヘイスティングスがポアロに呼ばれ一路スタイルズ荘へ。衰弱したポアロとの対面、いきなり「ここで大変な事件が起きるかもしれない」とポアロ。しかも犯人の目途は立っている。が、ヘイスティングスに真相は告げず。ヘイスティングスに犯人捜しを頼む。納得いかないが彼なりに慎重に住人と会話する。そこで医師の妻が自殺、別夫婦の妻への誤射、ヘイスティングスの殺人未遂、愛鳥家が拳銃自殺、ついにポアロが病死。複雑な真相はポアロの手記で明かされる。ポアロの幕引きは切なくも格好良かった。そうきたか~⑤

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    2023年09月17日
  • ナイルに死す

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     クリスティ作品の傑作は山程あり、中には僕がまだ知らない作品もあるのだが、「ナイルに死す」は間違い無く僕が選ぶクリスティ作品の「A級」に当たる作品で、大好きな作品の一つだ(とは言いつつ殆どの作品がA級になるのだが(笑))
    今作は冒頭のクリスティ含めた財団の人達の挨拶も素敵で一種の映画の様な、そんな気持ちよさまで感じてしまう。とある金持ちの女性を中心にイギリスの片田舎から渦を巻いてエジプトへと集約されていくストーリーは何度読んでも引き込まれてしまい、抜け出す事は不可能である。クリスティ自身も述べている様に、外国旅行物としてもっとも良い作品という事は紛れもなく、更にはエジプトを舞台としてとても美しい描写を楽しめる作品である。
     リネット、サイモン、ジャクリーンと三人の男女を中心に展開されるロマンスミステリー。と書くと印象が全く異なるが、今作はミステリーを土台に少しサスペンス的な恐怖を加え、ロマンスをミステリーの邪魔にならない様に全くの配合バランスで加えた構成になっており、始まりから終わりまで全く破綻のないスピードで進んで行く。ポアロの役割は勿論殺人犯を見つけ出す事により、真相を明らかにする事が求められているのだが、元来のロマンチスト、彼の出会った人達を幸せにするという考えかたから、とある犯罪を大目にみたり、結末としてああなってしまう事を推察しながらも認めていたりと人間的な心情がみて取れる(ヘイスティングスがいたら認めないだろう。レイス大佐である理由がこの部分だろう。)
    大金持ちのリネット、彼女の親友のジャクリーン、恋人のサイモン。ジャクリーンはリネットにサイモンを紹介するが、リネットは彼に好意を持ちその後結婚する。ハネムーンでエジプトを訪れる夫婦の前に、都度ジャクリーンが現れて嫌がらせをする。ポアロはそんな様子に気づきジャクリーンを諭していくが、結局は無駄になり。その後、ナイルを降る船内で様々な事件が発生するが、登場人物達は皆んな曲者揃い。エジプトに集約され、ナイルにて事件が広がり、都市について事件が決着する。一連が凄まじい作品で出来栄えは群を抜いている。
     クリスティ作品で珍しく金があり溌剌としていて頭も良い女性がとても悲しい結果になっており、人生において彼女は皆んなから羨ましがられ、嫉妬され、波瀾万丈の短い人生だった。サイモンに出会う前の婚約をしていれば違っていたのだろうが、クリスティは恋愛の恐ろしさを書くのが上手く今作の完成度に大きく作用している。
     ナイルを降る怒涛のミステリー。クリスティの最高峰の一つだ。読み応えもあり、クリスティを堪能するにはもってこいの作品。

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    2023年09月15日
  • 予告殺人〔新訳版〕

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    いやぁこれは!久々に「面白かった!」と声に出てしまいました。
    先に読んだ『火曜クラブ』にそこまでハマれず、ううむ私はミス・マープルよりポワロ派かも、と思いかけていましたが、こうして他の本にも手を出してよかったです。やっぱり長編の方が好きだなぁ。

    「殺人をお知らせします。……」
    開幕数ページで鮮やかに告知される"殺人"。小さな村の人々は、特に関心なんてありませんよという顔をして続々とミス・ブラックロックの屋敷であるリトル・パドックスに集います。

    私は基本的に、ミステリーを読む時に推理をしないタイプ。
    ただ純粋に、ああこれからどうなるんだろう、この人もあの人も怪しいな――と、作者が散りばめたひっかけに次々とハマっていくんです。
    そして最終的に全員が犯人に見えてしまう中で、鮮やかに明かされる真実。見事に、騙されました!
    これはきっと二度目に読むともっと面白いでしょうね。久々に、満足の行く読書体験でございました。

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    2023年08月29日
  • ポアロのクリスマス

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     クリスティの長編ミステリ。ポアロシリーズ。クリスティが傑作を発表し続けていたあぶらののっていた時代の作品らしく、フーダニットの傑作だ。
     昔からポアロシリーズは沢山読んだが、改めてクリスティの作品を読み進めていくと様々な発見がある。
     いずれも人物描写について、クリスティ程作中の人物達が生き生きとしているミステリは少ない。美少女や美青年の表現描写は勿論、嫌な人物までありありと目に浮かぶ。今作はリーという一族の中で発生する事件であるが、正しく人物描写力が光り、作品の面白さを何段階も上げている。
     イギリスのクリスマスはおそらく日本人がとらえるよりも重要なイベントであり、今作以外にもクリスマスに事件に巻き込まれるポアロには同情するが、クリスマスに向けて強欲な大金持ちの老人が、自身の息子夫婦や孫達を集め、トラブルを仕掛けて行く。息子達もクセがあり、それぞれの関係性もあまりない中で、老人の遺言や資産の分配を巡り騒動が起こる。そんな中、老人の部屋から物が崩れて壊れるような争いの音があり、続いてこの世のものとは思えないような魂の叫びが聞こえる。ドアをこじ開け室内を確認すれば、おびただしい程の血が溢れ富豪はナイフで殺害されている。
     久しぶりに正当なフーダニットを読んだつもりだが、やはりクリスティ、犯人を読者に掴ませないやり方は一流だ。あいつが犯人か、こいつが怪しいか、などというのはミステリを読みながら当然感じる思考であるが、今回は「そのパターン」を僕が忘れていたため、とても新鮮に楽しむ事が出来た。
     作中で紹介されているクリスマスのおもちゃについて、昔は全くわからなかったが、大人になり十分理解できた。今の時代に置き換えは難しいが、こういった不思議な装置として現代では様々な機械などが事件の擬装として使用されているのだろう。

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    2023年08月29日