アガサ・クリスティーのレビュー一覧
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クリスティの長編ミステリ。ポアロシリーズ。クリスティが傑作を発表し続けていたあぶらののっていた時代の作品らしく、フーダニットの傑作だ。
昔からポアロシリーズは沢山読んだが、改めてクリスティの作品を読み進めていくと様々な発見がある。
いずれも人物描写について、クリスティ程作中の人物達が生き生きとしているミステリは少ない。美少女や美青年の表現描写は勿論、嫌な人物までありありと目に浮かぶ。今作はリーという一族の中で発生する事件であるが、正しく人物描写力が光り、作品の面白さを何段階も上げている。
イギリスのクリスマスはおそらく日本人がとらえるよりも重要なイベントであり、今作以外にもクリスマスに事件に巻き込まれるポアロには同情するが、クリスマスに向けて強欲な大金持ちの老人が、自身の息子夫婦や孫達を集め、トラブルを仕掛けて行く。息子達もクセがあり、それぞれの関係性もあまりない中で、老人の遺言や資産の分配を巡り騒動が起こる。そんな中、老人の部屋から物が崩れて壊れるような争いの音があり、続いてこの世のものとは思えないような魂の叫びが聞こえる。ドアをこじ開け室内を確認すれば、おびただしい程の血が溢れ富豪はナイフで殺害されている。
久しぶりに正当なフーダニットを読んだつもりだが、やはりクリスティ、犯人を読者に掴ませないやり方は一流だ。あいつが犯人か、こいつが怪しいか、などというのはミステリを読みながら当然感じる思考であるが、今回は「そのパターン」を僕が忘れていたため、とても新鮮に楽しむ事が出来た。
作中で紹介されているクリスマスのおもちゃについて、昔は全くわからなかったが、大人になり十分理解できた。今の時代に置き換えは難しいが、こういった不思議な装置として現代では様々な機械などが事件の擬装として使用されているのだろう。 -
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クリスティの長編スパイスリラー。トミータペンスシリーズ。記念すべきトミータペンスシリーズの一作目であり、クリスティの長編作品二作目にあたる作品だ。
「若さ」についてとてもエネルギッシュで魅力に満ち溢れた作品で、「若い」事はこんなにも無謀で何でも出来る様な気でいるが、実際人生はそんなに甘く無いとクリスティに釘を刺されている様な気がする(笑)トミーとタペンスの単純な考えで結成したヤングアドベンチャラーズ。戦争の不安が残る中、仕事を見つける、お金を稼ぐ方法がとても大変な世の中。そんな中、幼馴染の二人は再会し、勇敢に(今の時期から見れば余りにも無鉄砲だ)新しい世界に立ち入って行く。
クリスティの冒険ミステリーはいくつかあるが、作品解説にてスパイスリラーとあり、カテゴライズされている。それぞれクリスティの探偵達には得意分野があり役割分担が上手く、探偵然としたポアロ、安楽椅子のマープル(意外に行動力があり、僕の捉え方は間違えているだろうなあ(笑))
そしてトミータペンスは冒険物だ。それぞれが各々に適した物語があるし、誰を登場させるかで解決や世界観も違って見える。
今作はトミータペンスシリーズの一作目なので最後の二人の関係が落ち着く様子は見ていて気持ちがよい。タペンスはお転婆で溌剌としており何にでも無謀に突撃して行く様なパワフルな人物だし、トミーは落ち着いているがカッカしやすい、楽観的な人物だ。
作中、ある意味、そんな事あるかとにやけてしまうストーリー展開なのだが、バカバカしい感じが少なく、面白く読む事が出来るのはこの作品の世界観が見事だからで、カフェでヤングアドベンチャラーズの結成を宣言した矢先からきな臭い依頼が舞い込み、瞬時に謎と危険の中に紛れていく。トミータペンスの持ち前の行動力を活かし、諜報部員からアメリカの女性に引き継がれた機密文書を巡る冒険。無謀な考えで飛び込み、様々に訪れる危機を乗り越えていき・・・。謎の人物ブラウンとはだれなのか。フーダニットの面白さも盛り込まれ。犯人当てはドンデン返しを巧みに用いている。全体を通してあっという間に読んでしまった、魅力的な作品だ。
(スパイスリラーの様なジャンルはぼやかしている部分が多く余り得意ではないが、このシリーズは別物だ!!秘密主義の作品の筈だがぼやかしはなく何から何まではっきりしすぎている。明るい作品だ。) -
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ネタバレクリスティの長編ミステリー。マープルシリーズ。マープルが積極的に事件に乗り出す作品は珍しいが、今作では彼女が以前育てたメイドが鼻を洗濯バサミでつままれて殺害されるという事に義憤を持ち、事件が起きたフォレスキュー一族の住む屋敷に乗り込んでいく。初めに殺害された人物のポケットにはライ麦が入れられており、第二、第三の殺人と立て続けに事件が起きるが第三の事件までの異様性により、全く脈絡のない様な事件に見え、警察も手を焼いている所、マープルがマザーグースの見たてでである事を見抜き、捜査が進展していく。
マープルは安楽椅子探偵のイメージなのだが、今回は自身の知り合いの若いお手伝いへの余りにも惨い殺人の為、彼女本人が現場に乗り出す。マープルに対していつも警察は協力的で、ニール警部もマープルと会話する中で彼女の鋭さや賢さに気がつき、ある意味で協力者となり事件の捜査に助太刀される格好だ(後からマープルの噂を聞いた様で(あれだけ事件を解いていれば当然)更に協力的になっていく)
マープルはいちいの毒がマーマレードジャムの壺に仕掛けられていた状況からとある道筋を推測し、ニールに告げる。それまで、殺されたレックスフォレスキューが過去に起こしたとある事柄について復讐心のある人物が事件の犯人と思われていたが、実は該当者は確かに存在するが殺人とは関係なく、真犯人は別に存在する事がわかる。
マープルが出来た事は事件の推測であり、ニールはそれらに対しての事実確認と証拠集めを約束する。
最後、この作品の最も優れている部分だが、マープル宛の手紙が間違えた住所に送られており、更に相手が不在だった為、転送に時間がかかった手紙が到着する。実は殺されたメイドがどうして良いか分からずにマープルへ手紙を書いており、メイドを唆した男と共に撮った写真も収められている。この手紙が正しく届いていればというやるせなさや、写真に写る幼い娘の表情など、なんとも言えない描写であり、当然、後味は良くないはずなのだが、マープルの推理が正しかったと証明されるものだ。
今作は起承転結がはっきりしており、マープルが感情豊かに活躍する。登場のシーンは少なめだが、その裏で沢山の人とおしゃべりをし、彼女なりにパズルのピースを組み立て事件の真相を組み上げている。マープルシリーズのなかでも上位に入るほど好きな作品の一つだ。
昔のイギリスの生活イメージがわかりやすく描写されている。木曜は〇〇の日の様な地域特定のお約束や行事は知らないが、ある意味で当時の生活の様子や約束事、家族の考え方についてもとても面白い描写だ。
物悲しい作品であるが最後ぜひ華やかな気分になってほしい言われた。 -
購入済み
面白かった
面白かった。
つくづく自分の目は節穴だなと思った。
なるほど、人間の心理ってそういうことなんだね。
いや自分が世間知らずなだけかな。
とにかく面白かった。 -
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初めてのミスマープルもの。
ポアロよりマープルのがキャラとしては好きかも!
ヒロインのグエンダが「いままで一度も訪れたことのない国の、一度も来たことのない家」を買って、張りたいと思い描いた壁紙と全く同じものがそこに張ってあるのを見つけるシーンが、なんとも言えず不可解で最高の導入。殺人を見る夢も不気味でよい。
クリスティー作品の、これから素敵な謎が展開していくぞ、とわくわくさせる始まり方、好き!
解説が恩田陸さんなのも得した気分。
「ふとした瞬間に、ざわざわとした胸騒ぎを覚える小説」「ゆったりとした、語られぬ部分を余白として感じられる小説」まさに!
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ネタバレクリスティの長編ミステリー。マープルシリーズ。巻末解説にて記載されているが、マープルシリーズは12篇しかないという事で驚いた。もっと幾つかの作品があった様に思うが、意外にもたったの1ダースなのだ。ポアロもクリスティ財団公認で続編が発表されているが、マープルの世界観を再現できる人材があれば是非書いてみてほしいし、読み続けたいシリーズだ。
今作、「予告殺人」はクリスティの作品の中でも好きな作品の一つだ。犯人の意外性は勿論の事、殺人を偽装する為のトリックの秀逸さ、真犯人の人生の悲しみと救い、そして今作に蔓延っているなんとも言えないドライな雰囲気。田舎で生活している登場人物達とのコントラストがとてもはっきりとしており、最後、全員で団欒の様に結末を話共有している恐ろしさは田舎特有のものだ(想像して欲しいが、三人も殺害された事件の当事者達が集まり、警察もふまえ、この時はこうだったと楽しそうに語らう様は異様な筈だが時代背景やミステリー特有のものとして誰も不思議に思わない)
残念な事に作中でマープルが死ぬ訳がない為、彼女が失踪した部分についてはスリリングな展開ではなかったが、殺害された人物たちが第二、第三と不用意に何かを漏らしそして殺害されるのはある意味クリスティのお約束なので、受け入れてしまった。ただし、犯人からすれば証拠が増えたり自身に不利になる事は多いはずで、さらに第三の殺人についてはなんとか言い逃れできる道もあるかも知れない為、犯人も不用意だったと想像している。
新聞の広告欄に殺人をお知らせしますとアナウンスがあり、という形で冒頭はスタートしていくが、本当にクリスティのミステリーは序盤に奇想天外に見える様な状況や環境を当ててくる事が多い(それでいて結局は単純な状況だ。)
今作の犯人については余り犯人であって欲しくない人物だったが、巧妙に疑惑の人物を配置し、後々に登場させ、読者を混乱させた。人物の入れ替わりはクリスティ作品では当然の作用であり、驚きも無く、今作も一部人物の真相が隠されているが、一部の偽装については中盤である程度予測はできてしまった。
僕自身の評価が高い点は序盤に述べたが、何より読みやすい事が一番だろう。古典ミステリー、しかも海外ものでは人物名、地名、設定や環境について読み慣れない部分や共感できない、そもそもわからない部分も多いが、今作はとてもすらすら読めた作品だ。 -
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とある婦人の奇妙な質問から幕を開く本作、作中で描かれる殺人はその質問対象となる1件だけというのに退屈させないのは著者の卓越した構成能力故だろうね
昔に仲睦まじい夫婦が自殺した。果たして先に銃の引き金を引いたのは父か母かどちらだったのか
そんな取り留めのない疑問が多くの興味を掻き立て、過去への探求を始めさせるのだから面白い
十年以上前に終わってしまった事件。センセーショナルであっても迷宮入りではないから現代でもその事件を探り続ける者は居ない
ならヒントを探る聞き込みは出来ないかと思いきや、意外や意外に覚えている者が居る。勿論、断片的だったり間違っていたり思い込みが多分を締めていたりと事実全てを覚えている者は居ないのだけど、それぞれがそれぞれの尺度で何かしらを覚えている
そういった好奇心が凝り固まった噂を集める事で過去へ迫っていくわけだ
思えば探偵役となるオリヴァやポアロだって捜査を始めた理由は好奇心に似た感情
でも、事件の影を引きずる若いカップルが前面に出てくるに従って、二人の行動理由も変わってくる
だからこそ、次第に見えてくる事件の光明はその新しい行動理由にリンクしているし、最終的に到達する事件の真相もその類である事に納得できる
そうして積み上げられた諸々が美しく描かれるクライマックスで真相が明かされた際には思わずうるっと来てしまったよ…… -
Posted by ブクログ
クリスティー読み直しはまたまた変化球かよ!というね
この前、次あたりは王道『オリエント急行』あたりをなんて言ってたのにね!
それにしても面白かったです
普段から評価ゆるゆるの私も短編集となると評価が低くなりがち、でもこのトミーとタペンスのおしどり探偵の短編集はどれもこれも面白くての高評価
クリスティー作品のレビューで何度も触れてますが、クリスティーの最大の魅力は登場人物たちの軽妙なやりとりにあると思うんですね
そしてその最大の武器を活かすためには、クリスティーの生み出す名探偵たちにはどうしても「話し相手」が必要になってくるんです
ただそれが助手であったり支援者であったりだと、どうしても主従の関係になってしまうことが多いんです
だから探偵がちょっとしたユーモアを交えて会話しても皮肉のように受け取られてしまうことも多いんです
ところがクリスティーが生み出したトミーとタペンス夫妻の素人探偵が他と決定的に違う対等な関係性をもっているんです
対等な二人が織りなす会話は皮肉そのものであっても、ユーモラスでほほえましいものになるんです
二人が楽しい会話を繰り広げながら事件を解決していくパロディはクリスティーの読書家の一面も感じさせてくれます
トミーとタペンスの活躍もっと読みたくなってきてしまった
『オリエント急行』はまた後回しやなw