アガサ・クリスティーのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
アクナーテン
どんな作品でもそうだが取りかかる順番はとても大事で、相乗効果で面白さが増す事がよくある。今作、「アクナーテン」を読む前に「ファラオの密室」(2024年)という作品を読んでいた為、世界観が踏襲され、まるで続編を読んでいるかの様な感覚になった。
「ファラオの密室」では神官とこの時代に生きる市民や奴隷、神々を中心に物語が描かれ、「アクナーテン」ではこの時代のファラオ、王族達を中心に物語が進められる。
今作に登場するファラオ、アクナーテン(おそらくアクエンアテンは読み方の違い)は愛と平和に憧憬する王なのだが、歴史上は余り評価されていない。彼が憧れる世界は理想郷であり、人間の悪い部分、醜い部分が一切見れていない。
彼の母親であるアイや妻であるネフェルティティ、心から信頼しているホルエムヘブなど彼を慕う人物達も沢山いる中で、大国エジプトのファラオの強大な権力、影響力が如何に秩序をもたらしていたのかという事がとてもわかりやすく設定されている。
戯曲は読み慣れていないし、実はクリスティ作品は沢山読んでいたが戯曲と恋愛シリーズは手付かずだったのだが、上記のきっかけもあり、クリスティ作品をもっと楽しみたい思惑もあり、読み始めてみた。
また、エジプト史は学生時代に興味を持っていた分野だったので、抵抗がなく、更に「ファラオの密室」で感じた余韻を楽しみたい意図もあり決心した次第だ。
世界観について、クリスティの設定は見事で、考古学に深い理解のある彼女ならではだと思う。
アクナーテンは悪王としての印象があるが、決してエジプトを滅亡に導いた訳ではなく、彼の思想、経験が破滅への土台になっていたという設定だ。彼はエジプトの神々を抹消し、一神教を強要していくが、その中で腹心であったはずのホルエムヘブさえもが彼の元をさり、最後、唯一愛したネフェルティティのみが彼の元に残るのは印象的な結末だ。
同じ時期にエジプトに関わる偉大な作品を、しかもミステリ、戯曲という型で読む事ができ、改めてエジプト史への興味が湧いてきたと同時に、ツタンカーメンに関わる文庫がまだ家にあったため、いずれ読もうと思う。
アクナーテンだけの感想では無いが、とても楽しめた一週間だった。 -
Posted by ブクログ
邪悪の家は僕が初めて読んだクリスティ作品で思い出のある小説だ(読んだのはエンドハウスの怪事件、他社の翻訳だが)。物語の構成が単純でわかりやすく、フーダニットの面白さ、どんでん返しの魅力が詰まった作品であり、僕は最初にこの作品を読んだからこそクリスティの虜になり心酔していった経緯になる。また、エルキュール・ポアロを知るには最適な作品だと思うし、この作品はそれ程に彼の人間性が詰まった物語だと思う。
ポアロは探偵業を引退し、保養地のホテルにヘイスティングスと滞在している。彼の元には引退後も各国の主要な人物から探偵の依頼が届くがどこ吹く風、全く取り合わない。そんな中、ニックという若い女性と知り合い、彼女が三度も命の危険があった事をポアロに話す。そしてその話の最中にも、彼女は命を狙われる。ニックは気づかないが、ポアロは彼女の危険に気づき、彼女の住むエンドハウスを訪れる。
上記したようにポアロらしさがあふれた作品で、各国主要人物の依頼は受けないが一人の女性の危機には労を惜しまない(今回はそれが裏目に出る訳だが)。ヘイスティングスは相変わらずでストーリーを通じて読者の目線を誘導する役割を与えられている。
ポアロが推理の際にAからJまでで可能性を整理し、我々も犯人が誰であるかの推理をこの中から考えられる様に進むが、中々道筋が掴めない。一つの殺人をきっかけにどうしても噛み合わない問題点や、物語が進むと有名な冒険家の死や毒入りチョコレート、消えた遺言書、凶器のピストル、謎の人物、隠し部屋等様々な疑問が噴出していく。(クリスティの上手なところでこれだけの要素がありながら物語はシンプルに整理されている)
最後は堂々の大団円になり全ての要素が集約される。僕は初見の際は犯人の意外性に驚き、ミステリーとはこうだと基準になった作品であり、今回再読に至っては犯人を知っているからこそ、この物語の根幹の面白さを味わえたし、ポアロの道化役も楽しめる事ができた。
ポアロは終盤に「なんて事だ!!」と騒ぎたてて事件を解決する訳だが、ある意味でポアロの気づきが大きい作品程、後半から終盤にかけてのどんでん返しが起きやすくなったいる。従って彼が騒ぎ出す作品は何かしらの裏切りがあると期待してしまう。今作も例に漏れず驚きがあるが、正しくクリスティがポアロさえ騙そうとしているかの様な作品だった。読みやすくわかりやすい作品だが余りにも悪い奴が多いので(笑)もう少し要素が少ない方がミステリとしてはスッキリする様に思うが、違和感がある訳ではない。
非常に懐かしく楽しい時間だった。そろそろポアロシリーズを読み終えてしまいそうなので味わいながら楽しんでいこう。 -
Posted by ブクログ
今作は僕がまだ読んでいなかったクリスティ作品の一つ。改めてクリスティの独創的なアイデアに衝撃を受ける事になった。
過去作の感想でも述べているが、クリスティ作品の魅力の一つは序盤の構成力であり、その作品から目が離せなくなる様な仕掛けがとにかく秀逸だ。面白い作品の殆どは序盤から面白いし、スタートがつまらなければ最後まで読み終える事はストレスになってしまう。
今作では、主要な登場人物それぞれが過去に起きた美しいローズマリーの死を回想し、それぞれの目線で彼女との関係ややりとりを明かしていく手法をとる。この時点でローズマリーの自殺とされた「死」が疑惑の残るものだと読者に浸透させ、彼女の夫のジョージや妹のアイリスの回想や焦燥を経て新しい事件への一連へと繋がって行く。
登場人物それぞれがローズマリーを思い出し回想しながらオムニバスの様に進行して行くストーリーは見事に尽きると思うし、更にはそれぞれの目線から事件ご語られる事により全員に感情移入してしまい、誰が犯人であればこの作品は綺麗に締められるのかと終盤まで気持ちが高揚してしまった(笑)。実は序盤からある程度の予測はしており、クリスティが好む犯人像とエンディングがある為、ある程度犯人の目星をつける事はできる。しかし、当然フーダニットの魅力は損なわれていないし、衝撃感もありながら楽しむ事が出来た。
トリックについてはある程度納得できるものでありながらも、映像がない中で単純にそうなるかなぁという部分もあるが、駐車場で自車と同じ車を間違えてしまう事がよくある僕にとっては、この様なトリックに騙されるだろうなぁと納得してしまった。
少し勿体ないのは、探偵役が唐突に現れる部分で、それぞれの登場人物達をもったいぶった挙句、とある人物が探偵としての役割を受け持ち始めた瞬間は流石に笑ってしまった(探偵役はある程度明かしていても良かったと思う)あくまでレイスはレイスであり、彼が探偵役では無い事は彼が登場する他シリーズからも読み取れる。最後、真相が明らかになった後、ハッピーエンドの側面と、バッドエンドの側面が上手に構成されていた為、個人的にとても満足感のある作品だ。
特にルシーラとルースの役割が見事だと思う。クリスティは年老いた女性、働く有能な女性の描写が上手く、この二人には特別思いやりをもってしまう。その他、政治家のファラデー夫妻、ルシーラの息子であり問題児のヴィクター、バトルを彷彿とさせる主任警部のケンプ、そして登場人物一覧に名前が挙げられない人々もそれぞれ魅力があり、何故存在しているかの役割が見事に果たされている。 -
Posted by ブクログ
ネタバレクリスマスシーズンということで、数年ぶりの再読。
クリスマスに一家が集合して、遺産問題で揉めて、そしてある夜事件が……!クラシカルな展開だけど、登場人物もわかりやすく、最後まで飽きさせず面白い。ドラマではどう表現しているんだろう?という設定があり、視聴への期待が高まる。もうちょっとクリスマスっぽい食べ物とかか出てきたらもっとよかったなぁ。
(余談)
・途中でヘンリーという名前が出てきて、表紙裏の登場人物一覧を見てもわからず、「誰!?」と混乱したらハリーのことだった。
・ある文学作品に設定が似てるなぁ…と思うがそれを言ってしまうとそちらのネタバレになってしまうのでなかなか言えずちょっと歯がゆい。