アガサ・クリスティーのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ミス・マープル長編2冊目。1作目の『牧師館の殺人』に続いて読んでみる。
牧師館の事件から半年後くらいかな。『火曜クラブ』でも登場したミス・マープルのお友達、アーサーとドリーのバントリー夫妻初登場の話だった。
ある朝ドリー・バントリーは泣きながら駆け込んできたメイドに起こされる「あの、あの、奥さま、書斎に死体があるのです!」
なんですって?しょさいにしたい?とりあえず夫のアーサーを起こしましょう。「ねえ、書斎に死体があるんですって」「なにをいっているんだ、むにゃむにゃ」
…という始まり方。まあ無理もないよなあというバントリー夫妻のやり取りと、「いいからさっさと見に行ってくれー」という先を知りたい読者の気持ち・笑
アガサ・クリスティは序文で「書斎に死体というのは、探偵小説にはおきまりの素材だ。このよく知られたテーマに変化をつけられないか」として、「我がミス・マープルの旧友であるバントリー夫妻に書斎の典型とも言う書斎を持たせた」のだそうだ。
なおこの序文では「登場人物に実在の人物を使うととたんに作品での生命を失ってしまう」と言っています。なるほど。
まあそんなわけで、古びて雑然として絵画だとか花瓶が置かれる居心地の良い典型的な書斎に、見たこともないけばけばしい若い女性の死体が転がっていたんです。
警察の捜査の合間に、ドリー・バントリー夫人は友達のジェーン・マープルを呼ぶ。「あなた名探偵でしょ!見に来て!」
若い女性は、デーンマスのマジェスティック・ホテルのダンサーで18歳のルビー・キーンだと分かる。その名前を聞いてもバントリー夫妻は「誰それ?」
しかし警察にルビーが行方不明だと届け出たのがホテルの客で、車椅子の実業家ジェファースンだと聞くと「彼なら知っているわ!ジェーン、一緒にマジェスティック・ホテルに行きましょう!書斎に死体が見つかったなんて楽しまなくちゃ!」として、バントリー夫人とミス・マープルはホテルに向かう。そしてミス・マープルを信用している元警視総監サー・ヘンリーが捜査協力していることから、ミス・マープルも捜査情報を得られることになった。
ジェファーソンは飛行機事故で息子、娘を亡くし、自分は足を失って車椅子生活となった。だが不屈の精神力で事業を成功させて資産家となった。ジェファーソンの屋敷では、死んだ息子の妻アデレードとその息子ピーター、死んだ娘の夫マークが同居している。
しかし最近ジェファーソンは金髪で貧しいルビーが「きゃー、ジェファーソンさんすごーーい」と言ってくるのにとってもとっても気に入って「彼女を正式に養女にして財産を残す」と宣言。
この時点での容疑者は、金銭的被害を被るアデレードとマーク。しかし彼らにはアリバイがある。
さて、「うちの書斎に死体!探偵ごっこ!」とはしゃぐようなバントリー夫人ですが、しかし本心では「若い女の死体が家で見つかったなら、夫のアーサーに変な噂が立ち、町から仲間はずれにされ、やっていないことを疑われ、そしてアーサーは殻にこもってしまうにちがいない。アーサーのためにも真相をはっきりさせなくちゃ!」という決意がある。ミス・マープルもそれを分かって事件に関わっている。
読者が親しみを感じる(ように書かれている)ミス・マープルやバントリー夫人がしっかりしているし、犯人たちには同情の余地もないし、殺人はあったけれど残った人たちには新たな未来も開けたので、小説としてスッキリ読めました。 -
Posted by ブクログ
ジェリー・バートンは飛行機事故により田舎町への療養を勧められ、妹のジョアナと共にリムストックにやってきた。よい空気と静かな生活、何もしないこと。この町はそんな生活にうってつけだろう。
だがジェリーとジョアナはすぐに騒動に巻き込まれてしまった。家を決めてから数日後に匿名の手紙が届き「二人は兄妹ではなくて愛人関係」とほのめかされていたのだ。(もちろんこれは事実無痕、二人は健全な兄妹です!)
どうやらリムストックでは、しばらく前から町の人々にこのような手紙が届いているという。誰と誰が不義の関係にある、◯夫人の子供の父親は夫ではない…、でっち上げでえげつのない内容ばかり。
リムストックの人々はひどいいたずらだと相手にしないのだが、これから起こるかもしれないもっと大きな事件を気にする人もいる。「当てずっぽうだとしても、もしかしたら本当のことを言い当ててしまうかもしれない、その時はもっと大変なことが起きるかもしれない」
その懸念通り、ついに死者が出てしまった。ある人物が中傷の手紙を受け取って自殺したのだ。
ジェリー・バートンは、外部から来た信頼の置ける人物ということで警察の取り調べに同行するようになる。
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ミス・マープル物のはずだけれどなかなか出てこない。これはきっと最後にだけ出てきて事件解決するんだろうなと思っていた。そうなると、いつどうやって出てきてどうやって事件を解くのかを考えながら読む。
ミス・マープルが出てこない分、ジェリーとジョアナの都会人田舎ライフと、それぞれの恋愛模様が繰り広げられます。この兄妹は結構な資産家で教育もあり交流関係も広く都会らしさが板についているので、正直言って恋愛に関しては「この人たちが田舎町の人と結ばれてうまくいくのか?」という気はした。それでも最後に恋愛がまとまるとなんだかうまくいくような気もする、さすがアガサ・クリスティー。
ミス・マープルの田舎町が舞台の物語では、一見穏やかな町で繰り広げられる水面下の人間関係、そして事件を起こさないために住人同士がゴシップ噂話でお互いを監視し合っている様子が書かれます。リムストックでも、いつ、誰が、どこで、何をしたか、がお互い筒抜けなのである意味アリバイは証明しやすい・笑 それでも人々の噂を逃れた秘密もあり、その二面性を持った人物こそが今回の事件の真相になっている。
ミス・マープルは「すべてを見ていて、正しく判断する。人間に甘い期待hせず悪い面を見る」という特徴があり、特に故郷セント・メアリ・ミードでは「ミス・マープルに知らないことはない」で事件の真相を見向きます。
今回はまったく外部のリムストックで、事件も一通りが置きてから呼ばれて登場。今回のミス・マープルは、町の住人ではないためにむしろ町の人々さえも気が付かない人間関係や人が隠していた面が見えたのですね。
殺人などひどい事件ではあるけれど、最後は抑圧されていた人たちが開放されたり、新しいことにチャレンジしたり、最後はスッキリ前向きになっていました。
そしてこの題名『動く指』について。解説の久美沙織によると「MOVING FINGER」は「不気味なこと、犯罪をを引き起こす」ようなニュアンスがあるらしい。そして久美沙織によると「いつも編み物をして指を動かしているミス・マープルとの、動く指対決」とも考えられるようだ。
犯人と、犠牲者はこの中にいる!
●ジェリー・バートン:怪我療養のためリムストックの「リトル・ファーズ邸」を借りた。
●ジョアナ・バートン:ジェリーの妹で兄に同行した。美人で資産のある都会女性らしくおしゃれで物怖じしないが、今でいうと「ダメンズ」でしょっちゅう恋愛・失恋騒動を巻き起こしている。
●エミリー・バートン:リトル・ファーズ邸の持主の老婦人。母親が強烈婆さんだったようで、姉妹たちを完全支配下に置き不道徳を絶対悪と教え込んだので、家族の最後の一人のとなった今でも型にハマったこと以外はできないようだ。
●パトリッジ:リトル・ファーズ邸のお手伝い。エミリー老婦人の女中だったので都会から着たジェリーとジョアナとはちょっとやり合ったりする・笑
●ディック・シミントン、モナ・シミントン夫妻:事務弁護士とその妻
●ミーガン・ハンター:モナと、最初の夫の間の娘。20歳だが若干知能が遅れてる?のか身だしなみに構わずちょっと変わった言動をする。だがそれは実父が非道い男だったという事と、今の家庭でのけ者にされていることが関係しているようで、鋭い感性も見せる。ジェリーとジョアナは彼女を気遣い様子をみたり家に誘ったりしている。
●エルジー・ホーランド:シミントン夫妻の二人の少年(ミーガンの異父弟)の家庭教師。とても美人、だが平凡な女性でもある。
●アグネスとローズ:シミントン家の女中たち
●オーエン・グリフィス:医師で、ジョアナの美貌にドギマギしているが、女性慣れしていない。
●エメ・グリフィス:オーエンの妹で大変精力的な女性。本当は自分が医師になりたかったのに、両親は娘であるエメには教育費用を出してくれなかった。今では兄の手伝いをしたりで、リムストック少女団を率いたり、女性の権利、女性も社会に!女性も仕事を!とフェミニズム活動を行っている。
「女性も社会参加!教育!」というのはまさしくごもっともなんだが、小説内では相手の都合や状況を考えずに自分の考えをゴリ押しするので賛同はしづらい(^_^;)
●ケイレブ・デイン・カルスロップ、カルスロップ夫人:教区牧師夫妻。カルスロップ氏は日常会話にラテン語を混ぜるので町の人達は理解できない(^_^;)。夫人はちょっと変わった目線を持っていてある意味町の人達から畏れられている。
●パイ氏:修道院長で古美術品収集家。リムストックの人たちからちょっと煙たがられている。
●クリート夫人:魔女と畏れられている。本人もなんか自分は知ってるよのねーという雰囲気を出す。最初は匿名の手紙の犯人ではないかと思われていた。
●ナッシュ:郡警察の警視。ジェリーに情報収集などの協力を頼む。 -
Posted by ブクログ
ネタバレいやー面白かった。クリスティ作品の中ではなかなか目立たない作品だが、いやはやどうして面白いではないか。「チムニーズ館」と同じくロマンス色が少し強いかな。
それにしても、リン、それでいいのか…? とは思った。「若い女は危険な男に惹かれる」という信条がクリスティにはあるのだろうか。リンの男に惚れる理由には戸惑いしかない、が、まぁロマンス詐欺もどき兼殺人者か傷害致死の犯人なら後者の方がマシなのだろうか……すまんわからん。こう並べてみるとリンの男運と見る目がなさすぎる。とはいえ昔の、とりわけ戦後のことだから選択肢はなかったんだろうが。
さてはて、肝心な3つの殺人事件について。
見事にどれもこれもが予想外の犯人すぎて驚いた。さすがに想像はつかなかったな。
1番気の毒なのはロザリーンじゃなかろうか……。 -
Posted by ブクログ
ネタバレあーーー犯人そこーーーーー。
となった。まさかコーラが別人だとは思わなかったし、本命が〈そっち〉だとは思わなかったよなあ。
最初は弁護士のエントウィッスル氏を疑っていたよ。だってあまりにも語り口が胡散臭くてさ。信用できない語り手かと思っていたら、いつの間にか気配が薄くなって消えていた…。
途中では、そこまで頭良くない設定なのに分かっている風なことを言うロザムンドも疑った。
その全てがミスリードだったとは…。
確かにミステリーの定石は「一番怪しくない人が犯人」だけれども、「怪しくない人が複数いる」のはクリスティの十八番ですね。してやられた感。
やはりクリスティは好きです。 -
Posted by ブクログ
「アクロイド殺し」を除きこれまでポアロ長編作品はアーサー・ヘイスティングス大尉の視点で描かれてきたが今作ははじめて三人称で描写されている
アガサは今作ではヘイスティングス大尉を再びクビにしたらしくポアロのセリフで一二度名前が出たきりである
重要なのは今作の登場人物の一人キャサリン・グレーである
彼女はちょっとした遺産を相続したことで舞台となる列車ブルー・トレインに乗りこの列車で殺人事件が起きる
個人的に注目する理由は彼女がセント・メアリ・ミード村の住人ということだ
セント・メアリ・ミード村である。
大事なことなので2回書いた
セント・メアリ・ミード村といえばミス・マープルが住んでいる村だ。
残念ながらミス・マープルは一切登場しないが想像の余地はある
もしかしたらキャサリン・グレーはマープルと面識があるかもしれない。
彼女に何か相談したかもしれない。
など色々と妄想できて非常に面白かった
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Posted by ブクログ
今作はクリスティ作品の中では評価が低い
要因は幾つか考えられるが、
個人的には「アクロイド殺し」の次の長編なので期待値が高すぎたのでは?と考える
前作「アクロイド殺し」出版後から今作が出版された1927年までにアガサ・クリスティにとって心労が重なる出来事があったのも要因の一つだろう
最初の夫アーチボルト・クリスティ大佐の不倫と離婚問題、その後の失踪からしても今作を書いた当時アガサは一種のスランプ状態だったのではないか?
そんな彼女に義兄キャンベル・クリスティが「短編をまとめて出版してみれば?」というアドバイスをして今作は書かれた。
後年アガサが述べているが、ポアロは短編よりも長編向きた。
そしてポアロの人物像とスリラーが相性が悪かったのもあるだろう
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Posted by ブクログ
ネタバレやはりミス・マープルはクリスティに愛されていたよう。
同時期に書かれたポワロの最終作同様、作品全体は不穏で落ち着かない雰囲気が貫かれているけれど、こちらはまだまだ元気に活躍してくれるのではという想像の余地を残してくれている。
謎を追う主人公に危害が及ばないように自主的に庭で張り込み(おせっかいから庭の手入れをするおばあさんに擬態)をしているのもさりげなくキュート。
最終作の位置付けの割に主役では無く登場も少なめなのがやや物足りないけれど、若い主人公に言葉を額面通りに受け取ることの危険を指摘し、指南役としてきらりと光る存在感を残している。
真実に向かって誘導していくマープルから読み手も一緒にヒントをもらえるため、要所要所で立ち止まって咀嚼し、犯人と結末を考え考え読み進めるのが楽しかった。
読み終えて、私もやっぱりミス・マープルが好き、と満足しました。