あらすじ
美貌の資産家リネットと夫サイモンのエジプトでのハネムーンに暗雲が垂れこめていた。サイモンのかつての婚約者が銃を隠し二人を付け回しているのだ。不穏な緊張感が高まるなか、ナイル川をさかのぼる豪華客船上に一発の銃声が轟く。それは嫉妬ゆえの凶行か? 船に乗り合わせたポアロが暴き出す意外な真相とは? 解説:西上心太
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ポアロシリーズ。
今回の舞台は、ナイル川を遡上する豪華客船。クリスティー作品ではお馴染み(?)の裕福な美女を巡るロマンスを軸に、登場人物たちの不穏な思惑が複雑に絡み合う。
ミステリー作品なんだけど、中盤までなかなか事件は起きない。それでも著者の卓越した描写力で、普通に人間ドラマの読み物としても面白い。
本作は何と言っても、ポアロの魅力がふんだんに詰まった作品だと思った。謎を解き明かす観察眼と推理力は言うに及ばずで、一癖も二癖もある登場人物たちとの関わり方、言葉の選び方、思いやりや慈悲深さなど、ポアロの人としての魅力が印象深かった。
エジプトのナイル川での旅情や、事件発生後の犯人探しは最後まで楽しめたし、哀愁を感じさせるラストシーンも何とも言えない。
なるほど、この作品も著者の代表作の一つとして数えられるわけだ。名作は色褪せない。
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小学生の時に映画の『ナイル殺人事件』を見てこのトリックにとても驚いてミステリにはまるきっかけの1つになった。最近また映画を見たけど、少し無理があるのかな~って思ったけど、原作だと少しカバーできていた感じ。殺人事件が半ばまで起きないけど飽きずに読めるのはさすがだな~。
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1937年イギリスで出版
2003年発行 文庫
訳者 加島祥造
最初に 著者の前書きと
訳者からのおねがい が載っている
*ゆっくり読んで
*地図を見て参考に
*「探偵小説が[逃避行文学]だと
するなら読者はこの作品で
〜南国の陽射しとナイルの青い水の国
に逃れてもいただける訳です」アガサ
...ひととき旅するように楽しんで
ってことか...
・リネット.リッジウェイ(ドイル)
→美貌の若い資産家女性 銃で殺される
・サイモンドイル→リネットの結婚相手
・ジャクリーン.ド.ベルフォール
→リネットの親友でサイモンと婚約していた
リネットとジャクリーンは
親友なのに
ジャクリーンの婚約者と
リネットがいきなり
結婚していてビックリした
・アンドリュー.ペニントン
→リネットの米国の財産管理人
リネット夫婦がエジプト旅行に
行くと聞いて偶然を装って
その旅に参加する
・ジム.ファンソープ
→英国の法律事務所職員
ペニントンがエジプト旅行に
リネット夫婦と共に同行すると聞いて
大急ぎで自分も参加する
・ポアロ→探偵
・ミセス.オッターボン→女流作家
・ロザリー.オッターボン→女流作家の娘
有名なリネットに不平等という
感情を持っている
・ジョアナ.サウスウッド→社交界貴婦人
・ミセス.アラートン→ジョアナの従兄弟
・ティム.アラートン→アラートンの息子
リネット.サイモン夫婦の後を
ジャクリーンがつけ回し
エジプトの船の旅に参加する
リネットがジャクリーンの付きまといを
ポアロに相談 依頼 するが断られる
ポアロは
リネット サイモン ジャクリーン
3人に直接話を聞き
人物分析する
・ギド.リケティ→考古学者
〜エジプト旅行中に
ミセス.アラートンが現地の子供達が
土産を買ってくれと付きまとうのを
嫌がるところが出てくるけれど…
今のYouTube動画(エジプト等の旅)
にも似た場面出てきて…こういうの
伝統なのか‥遺伝的性格なのか‥
今も昔も同じにみえる〜
・ヴァン.スカイラー→金持ち老婦人
・コーネリア.ロブス→スカイラー従兄弟
・バウァーズ→スカイラーの看護婦
ナイル川を船で旅して
観光地により 遺跡見たり
土産見たり そのうち
船の人と言葉交わすようになり
なんとなく性格もわかってくる
この本読んでいる時
[どうぶつの森]やっていて
本読んでゲームして…繰り返して
いたのでゲームの中で
ナイル川観光‥探検‥している
ような気分になった
その中で リネット サイモン ジャクリーン
と知り合いになり
殺人事件が起きた…
リネットが殺された後
・レイス大佐→英国特務機関員
ポアロ時共に事件の捜査をする
・ファーガスン→社会主義的な男
・カール.ベルナール→中年の医者
〜ポアロ 「美貌の大金持ちのリネットの
周りには色んなものがある
矛盾した 憎悪 嫉妬 羨望
意地悪 まで 蝿の群れみたいに
ブンブン…ブンブン…」
船(カルナク号)に乗っていた人達は皆
一筋縄ではいかない捻くれ者‥蝿の群れ
犯人が見つかりそうになると殺されたり‥
疑わしい人物の名前
言おうとすると銃で撃たれたり‥
コーネリア(ポアロからみると際立った性格)
にいきなりの結婚の申し込み..
..社会主義思想の汚い身なりの男..
と思いきや伯爵...
コーネリアは中年医者を選ぶ
真珠泥棒のティムと
庇おうとしたロザリーが恋仲に..
最後に犯人は
サイモンとジャクリーンとわかる
...銃で命を絶つ
犯人が自ら死を選び
悲しく 潔い キレイな終わり方
この小説より後に
書かれた小説が
アガサの小説に影響されて
いるんだろうな..
と思えてくる
ただの殺人事件の
犯人探しだけじゃなく
幸せエピソードや
悲しい愛情の話出てきたりする
前半の船旅も楽しかったし
後半の3女性の殺害事件の
犯人探しも
二転三転し
目がはなせなかった
出てくる登場人物全員
曲者だけれど
全部が善でも悪でもなくて
(ハリポタの登場人物みたい)
人との相性によっては
幸せそうだったり
不幸せそうだったりで
面白かった
訳者のアドバイス通り
ゆっくり ちょっとづつ
(1クラスの人数位 人出てくるので)
読んだ方が楽しめる
楽しい読書だった
Posted by ブクログ
1937年の作品。
ポアロ・シリーズ長編15作目。
あらすじ
美貌の資産家の娘、リネット・リッジウェイは世の中で手に入らないものはないと思われるほど恵まれた境遇だった。美貌、金、聡明さ…全てを兼ね備えていた彼女だったが、貧しい親友のジャクリーンの恋人、サイモン・ドイルのことが好きになり、彼女から奪い結婚してしまう。ジャクリーンは自分を裏切った2人を恨み、新婚旅行のエジプトまで追いかけてくる。
たまたま休暇中だったエルキュールポアロは、このエジプトのツアーでリネット夫妻とジャクリーンと一緒になる。一行はナイル川沿いを巡るカルナック号のツアーに参加するが、そのツアーの最中にリネットが何者かに撃たれて殺害される。ポアロと情報局員のレイス大佐は、このツアーの参加者の中に犯人がいると見て捜査を始めるが…
感想
ハヤカワ書房の新訳版。
まず、クリスティのまえがきと、クリスティの孫、マシュープリチャードのまえがきから最高です。
クリスティ本人が2番目の夫、考古学者のマックスアローワンとともに行ったエジプト旅行が元になっており、ナイル川を眺めているときこの話が思い浮かんだのだとか。クリスティ自身も大のお気に入りの作品だと自賛している。
マシュープリチャードによるとクリスティとマックスは本当に仲良くこのエジプト旅行を楽しんでおり、キリスト教徒であったクリスティは宗教に関係なく中近東の文化を愛していた。中東をめぐる現在の政治情勢をクリスティ達が知ったら悲しむことだろう…と。
さて、本編についてですが、ヘイスティングス語りの軽めのものが好きな私もこの作品はダントツに好きです!ドラマチックで、本流の殺人事件以外にもいろんな要素が絡み合って、群像劇のような趣きがあります。そしていつも鼻持ちならない自信満々のポアロが、この作品では本当に優しく思いやりがあって胸を打たれます。一緒に捜査をするポアロの友人、レイス大佐も渋めのイケオジでステキ(他の作品にも登場してますね)
しかし、とにかく登場人物がめちゃくちゃ多いので名前を覚えるまでが大変かもしれません笑。
Posted by ブクログ
現代の日本の作家のミステリーももちろん面白いが、やはりクイーンやポワロの活躍する探偵小説はいつでも面白い。比較的長い作品にも関わらず、事件の真相が明らかになるとその長さの中に無駄がなく伏線が詰まっていたのだと分かって衝撃だった。
(あらすじ)
2人の男女が愛し合っていたが、男は裕福な女性リネットと結婚してしまった。2人はそのままエジプトへとハネムーンに出かけるが、そこに男のかつての婚約者が現れた。女の出現に怯えるリネットだったが、撒くために乗り込んだ船にも女が現れ、リネットはその後死体となって発見される。果たしてこれは復讐のための殺人か!?エルキュール・ポワロが明かす意外な事件の真相とは!
Posted by ブクログ
クリスティーの本で一番ページ数が多く、その厚さに二の足を踏んでいましたが、読んで良かったです。名作ですね。
構成は、第一部「登場人物の紹介」と第二部「エジプト」の二部構成。第一部の丁寧な人物造形による前振りが、第二部での愛憎入り乱れたロマンスあり旅情ありの紀行ミステリとして、次第に人物像が明らかになっていくにつれて引き込まれました。
取り立てて巧妙なトリックがある訳でもなく、犯人の見当も付きやすいですが、「あの件とあの件は、どうしたのかな?」と疑問に思っていたことが、最後にポアロの言葉での解説と犯人の語る動機を読んで、うなってしまいました。
また、丁寧に描写された人間関係も相まって、エンディングに向かうほど読ませる力量は流石ですね。なお、犯人の最後は、なるべくしてなった結末ですが、その分を他の幸せで埋め合わせている対比が心憎い。やはり、二度映画化されているだけのことはあるなと感心してしまいました。
あらすじ:
相続により莫大な財産を有する、若くて美しい女性資産家のリネット・リッジウェイ。彼女は、友人のジャクリーヌ・ド・ベルフォールから、婚約者のサイモン・ドイルを奪って結婚してしまいます。二人はハネムーン先にエジプトを選び旅立ちましたが、旅先の同行者には、リネットに関係する様々な人たちがいました。中でも驚いたことに、行く先々でジャクリーヌがストーカーよろしくつきまとってきます。そして、彼らは同じ観光船に乗り込みましたが、その中にはポアロの姿もありました。そんな折、船上という密室で事件が起きてしまいます……。
と、これ以上はネタバレになるので控えます。人物は多めですが、P253のカルナック号の船室見取り図が役立ちました。
ところで、作中に『オリエント急行の殺人』で描かれた印象的なシーンの回想があり、ニンマリしてしまいましたが、登場人物のレイス大佐って誰だろうと、積読本の山(早く読め自分w)から表紙カバー裏の登場人物欄を見ていたら、『ひらいたトランプ』に諜報局員とありました。なるべく背表紙の番号順に読んだ方が楽しめるのかなと改めて思いました。
ちなみに、会話の中で25章でヘイスティングズ、26章でジャップ主任警部のことがでてきますが、ヘイスティングズに関しては、ポアロの会話のネタとして、そのイジられキャラぶりが面白かったです。
Posted by ブクログ
長編の小説でしたが、後半になると展開が早いのはアガサクリスティーの素晴らしさであると感じました。
まさかポアロが睡眠薬を飲まされていたとは思わなかったです。犯人は最後自死を選びましたが、愛が2人を狂わせたと思いました。
Posted by ブクログ
11月に、エジプト旅行に行きました。
帰国してから、夫が「ナイル殺人事件」という映画があるよ、見る?と。2020年の映画を見ました。ついでに「オリエント急行殺人事件」も。
映画では、最初の方に出てきた「アブシンベル神殿」が、もう、正に見てきたので、懐かしい〜!
それを見ただけで、この映画を見た価値がありました。エジプト旅行をする前に、見ても良かったかな。実物を見る感動が!
昔、ローマに行く前に、「ローマの休日」を見て行ったので、色々楽しかったですよ。
映画「ナイル殺人事件」を見ると、ポワロがかなり、登場人物を厳しく詰問する形をとっていました。全ての人を殺人犯として疑っているような…。
そして、徐々に、謎に迫っていく…最後に、そう言うトリックか〜と、只々関心。
ただ、出演者が外国人なので、おまけに沢山登場するので…誰が誰だか、判別できず…特に男性…全てを楽しむことは出来ていないかな。
映画を見ると、原作を読みたくなります。
やはり、原作はいいですね。
しかし、原作も登場人物が多い!
読みながら、何度も、登場人物紹介のページで確認しました。おかげで、繋がりが分かって、楽しめました。面白いです。
小説を読んでから、映画を見た方が良いかな。
たぶん、映画の方が、登場人物が少なくなっていると思います。
そして、原作で小説家が、映画では歌手かな。その方が、映像として映えるからでしょうか?
ネックレスの模造品は映画では扱ってないですし、レイス大佐も追ってる犯人も映画には描かれていません。
映画にするにあたり、ずいぶん、端折っていますね。まあ、しょうがないですよね。
1978年の映画「ナイル殺人事件」も見たくなりました!
Posted by ブクログ
個人的ポアロシリーズ最高傑作です!
人物が多く、関係も複雑でページ数も多い、と慣れないと読むのに苦労するかもしれませんね。
物語はナイル川を遡る豪華客船で悲劇が...と言うもので舞台はエジプトになるのですが、物語が緩やかで、エジプトの描写で旅行している気分になりワクワクします。
ミステリにおいても、様々な事件に様々な証言。嘘をついているのは誰だ?矛盾しているのは誰だ?と読み進めていてとても楽しいです。(意外と犯人とか動機は自然とわかるかも?)
ヒューマンドラマとしても完成度が高く、1本の壮大な映画を見終えたような満足感がありました(映画化されてますが)。
物語のバランスに優れた傑作なので、ポアロ好きであれば必読かと!!!
おすすめ!!!
Posted by ブクログ
船上でのクローズドサークルの中、愛憎を絡ませた人間模様と複数のミスリーディングを交えながら、ミステリーとしての完成度を高めた作品であり、面白かった。休暇中であってもポワロの賞賛欲は健在。
Posted by ブクログ
アガサクリスティーは恋愛メインのミステリが本当に面白い!今回は他作品より分厚くて登場人物も多かったけど、夢中になって読めた。謎も入り組んでいて誰が犯人か分からないし、みんな怪しく見えた…真相にびっくり!そして、若者たちに寄り添い導こうとするポアロが優しかった。
Posted by ブクログ
クリスティー作品3冊目。
途中まで事件は起こらず、船で観光を楽しんだり会話の描写があり穏やかな旅行を感じさせる。リネット周りだけは不穏な空気が漂っていた。一度事件が起こると怒涛の展開でページを捲る手が止まらなかった。
そして、全然思ってもいない犯人だったから驚いた。
↓めちゃネタバレ
ジャッキーは悲劇のヒロインかと思っていたら頭の切れる狡猾な殺人犯だったとは…。
手荷物を調べた時ロザリーのハンドバッグから見つかったピストルがモヤモヤしてたけれど、最後に回収してくれて全てスッキリした。
ただ、リネットの死を本気で悲しむ人がいないことがすごく寂しく感じた。
『大事なのは過去ではなく未来なのである。』殺された人たちを思うとすごく残酷だ。
Posted by ブクログ
「そして誰も」のように真祖にして無敵というわけでもなく、
「オリエント」「アクロイド」のようにアイディア一発というわけでもなく、
きっとこれが「最もクリスティらしい」作品なんだろうなと想像します。
古い作品であまり技巧を凝らされていないこともあり、
ごく自然に犯人がわかりました。
当たったのではなくwhy how who全て論理的にわかりました。
旅情を誘う作品は大好きです。この船のりたーい
面白かった
クリスティこそ人間心理のプロフェッショナルだな、
というのが感想です。
フィクションのはずなのに
登場人物がみな現実に存在する人物のように感じます。
人間は怖い。
Posted by ブクログ
クリスティの名作として名高い本作、人物描写の面白さと前半の人物紹介かなぁ〜と思わせながら伏線が張り巡らされていた感じ、とても良かった。途中、誰が誰だか追い付かなくなることもあったが、後半の方がそれぞれキャラが立って分かりやすくなった感もある。
もしや?と思って裏切られて…の繰り返し、とても楽しめました
Posted by ブクログ
オリエント急行でも思ったことだけど、人物描写がすごく上手くて、登場人物が多いけど映像で頭の中に浮かぶ。シチュエーションも王道密室ミステリーで、次々人が死んでいく。好きです。
物語が始まった時からジャクリーヌが犯人と思わせつつ、違うんだろうな〜と思う。各登場人物が色々掻き乱してきて面白い。そこが逆に取ってつけた感を感じてしまったけど。(お金持ちおばあちゃんの盗み癖の話とか必要だった?とか)
なんか最後がバタバタして終わったのもオリエント急行みがありました。犯人分かってからはなんか進行が雑じゃないか?ミステリー小説であってヒューマンドラマではないからなのか、、最後のジャクリーヌとサイモンの件はあと何ページか描写してもいいものじゃないか、、
Posted by ブクログ
予想以上に読みやすい。たくさん出る登場人物もキャラクターがよく表現されているため混乱しないうえ、それぞれに魅力も感じる。犯人は意外性があり、完全に予想を裏切られた。当時の上流階級や豪華な旅行の雰囲気をほんの少し感じることができる。
Posted by ブクログ
ポアロシリーズ15作め。1937年の作品。
原題は『Death on the Nile』。
『オリエント急行の殺人』と並ぶ人気作ですが、読むのは初めて。
ナイル川をさかのぼる豪華客船なんて猛暑に読むにはちょうどいいだろうと思いましたが、これがほんとおもしろかった。
クリスティー作品によく出てくる男女の三角関係。従来は殺人事件の背景や人間模様の一部だったりしましたが、本作ではこの三角関係こそがストーリーのメイン。
全540ページの250ページくらいまで事件が起こらないのですが、もうこのまま何も起こらなくても十分おもしろい。
作中のカルナック号はサヘル島から第二急湍まで行って帰ってくる7日間のツアー。
1970年にアスワン・ハイ・ダムが完成したため、第二急湍は水没しているのですが、だいたいワディ・ハルファのあたり。
作中でも存在感を放っているアブ・シンベル神殿はダム建設にあたり移築されてるんですね。
エッセブアという地名も出てきますが、これは今はないのか地図では見つけられず。
カルナック号のモデルとなったクルーズ船「スーダン号」は今でも現役。現在はルクソール〜アスワンの5泊6日で1490〜2700ユーロ!(片道です)
カタラクト・ホテルも「ソフィテル レジェンド オールド カタラクト アスワン」として現存。「アガサ・クリスティ・スイート」という部屋もあるそうです。
クラシックな内装といい、当時も上流階級のための優雅な旅だったのでしょう。
このゴージャスな旅を特別なことでもなく、たいして楽しんでいるようでもなく、受け入れている人々の描写がむしろ旅情があって楽しいです。何度も映像化されているのも納得の映えそうなストーリー。
殺人事件現場にしては不謹慎すぎるほどロマンスも発生しますが、個人的には善人すぎる癒しのコーネリア嬢がお気に入り。
(227ページ)
「もちろん人間は平等じゃないです。平等だとしたら説明のつかないことばかりだもの。たとえばわたしは、なんかこうぱっとしない器量で、悔しいと思ったこともあったけど、もう気にしないことにしてます。」
基本的に若い娘さんには紳士なポアロ。リネット、ジャクリーヌ、ロザリー、それぞれにかける言葉が優しい。
『ひらいたトランプ』のレイス大佐も登場。
『青列車の秘密』のルーファス・ヴァン・オールディンも名前だけ登場。
2020年の新訳版。全体的には非常に読みやすいのですが、「博労」、「ピナフォア」、「セコティーン」といった言葉が特に説明もなしに使われているのがちょっと気になりました。
ミスリードがわかりやすいので今回は犯人も当たりましたが、殺人事件そのものよりも、コーネリア嬢を含めていくつかある三角関係の行方が気になり、最後まで楽しめました。
(483ページ)
「じゃ、どうしてわかったんです?」
「わたしがエルキュール・ポアロだからです!」
以下、引用。
6
わたしはこの小説を、自分の〝外国旅行もの〟のなかで最良の作品のひとつだと思っています。探偵小説は逃避文学かもしれませんが(それの何がいけないのでしょう!)、読者は太陽がまぶしく輝く空と、青い川水と、犯罪を、安楽椅子にすわったまま楽しむことができるのです。
19
「どう考えてもおかしいね──あんなに美人なのは。大金持ちでしかも美人──そりゃないだろ! そんなに金持ちなら美人に生まれる権利なんかないんだ。ほんとにきれいだからな……あの女はなんでも持ってる。公平じゃない……」
38
黒人の楽団が突然、奇妙な不協和音を含んだ喜悦の音楽を奏ではじめる。ロンドンが踊った。
39
若いことは幸福だなどというのは見当違いもはなはだしい。青春時代はいちばん傷つきやすい時期なのだ。
56
「お母さんはあの博労のじいさんに甘いですよね」
57
「なぜ過去に生きるんです? なぜ昔のことにしがみつくんです?」
「過去をなくしたあとは何で埋め合わせればいいというの?」
79
ポアロは上機嫌な顔をし、やさしい口調でしゃべっていた。丹念にプレスした白いシルクのスーツに身を包み、パナマ帽をかぶり、人造琥珀の柄に毛の房をつけた、凝った装飾の蠅払いを手にしている。
123
人生では輝きというものが大事な意味を持つのよ、ムッシュー・ポアロ。そしてお金はそれを持つのを助けてくれるの。
154
「あなたも人間に興味がおありなんですの、ムッシュー・ポアロ? それとも興味があるのは犯罪者になる可能性のある人間だけかしら?」
「マダム──そのカテゴリーからはずれる人は多くはいませんよ」
219
ポアロがレイス大佐とはじめて出会ったのは、一年前、ロンドンでのことである。ふたりは非常に奇妙な晩餐会に招待された──その晩餐会は、招待主である風変わりな男の死によって幕を閉じたのだった。
220
ポアロは大佐のためにウィスキーを注文し、自分は砂糖をたっぷり入れたオレンジエードのダブルをあつらえた。
227
「そんなふうに、何かに怒ってばかりいるのって、やめたほうがいいんじゃないでしょうか」
「そして、もちろん人間は平等じゃないです。平等だとしたら説明のつかないことばかりだもの。たとえばわたしは、なんかこうぱっとしない器量で、悔しいと思ったこともあったけど、もう気にしないことにしてます。」
230
「あなたがどなたなのか、さきほどようやく気づきましたよ、ムッシュー・ポアロ。古くからのお友達のルーファス・ヴァン・オールディンからお噂を聞いていたんです。」
312
「不謹慎な質問をされるのは大好きです」
332
「なんという毒々しい女だ! ふう! だれが殺人者か知らないが、殺すならあの女を殺せばよかったのに!」
353
「男物のハンカチですが──上等のものではありませんね。かの親愛なるウールワースあたりの品物でしょう。せいぜい三ペンスの」
389
共産主義の本や小冊子が数冊、スナップ写真が相当数、サミュエル・バトラーの『エレホン』と、サミュエル・ピープスの『日記』廉価版の一冊。
442
「それはきみが文明的すぎるからだよ。きみも死を東洋人の目で見るべきだな。死なんて出来事のひとつにすぎない──特に気にとめるようなことじゃないんだ」
「それはそれでべつにいいんです──東洋人は教育を受けていないんですもの。気の毒だけど」
「無教育なのはいいことだね。教育のせいで白人種は活力をなくしたんだ。アメリカを見たまえ──文化のお祭り騒ぎをやっている。まったくどうしようもない」
444
「わたしは、自分がぱっとしないから、余計に美しいものに敏感なんです。あの人は美しかった──女として──まるでギリシャの女神さまみたいに美しかった。美しいものがひとつなくなったら、世界は大切なものをひとつなくしたことになるんです。そういうことなんです!」
454
「あなたはわたしの友達のヘイスティングズと同じネクタイを締めていますね」
「これはイートン校のネクタイです」
462
「リネットのことは、あの子がピナフォアを着た可愛い女の子だったころから知っていた」
480
音がしないようセコティーンで貼りつけた。
483
「じゃ、どうしてわかったんです?」
「わたしがエルキュール・ポアロだからです!」
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ミステリーの女王アガサ・クリスティの手にかかればもはや何も起きなくても面白い。
事件が起きる前の前半部分がめちゃくちゃ面白く、個人的には事件が起きたことでそこまでのストーリーが停滞してしまったような気がして、むしろ事件が邪魔にさえ感じた。でもそこはさすがのアガサ・クリスティで、読み進めていくと事件前・事件後で分けることすら無意味で、全てはナイル川のようにひとつの流れであったことが分かる。
悩めるジャクリーンを優しく諭すポアロの言葉のひとつひとつがとても良い。
メインの3人に絡む物語は面白いんだけど、他の容疑者たちがわちゃわちゃやってる中で釈然としない描写もあったため自分の中では満点評価とはしませんでした。あとエジプトが舞台だけどこの土地を物語に活かせてたかと言うとちょっと微妙な気がする。
Posted by ブクログ
翻訳が上手だし、エジプトのエキゾチックな感じとかリネットの艶やかさが美しく脳内で描かれるのが楽しかった。推理小説はあまり読まないから新鮮で、ゲームをやり進めてくようなわくわく感もあった。謎の筋書きも面白いですね、アガサクリスティー。
ポアロがたまに口悪いのわらう
Posted by ブクログ
犯行に直接関係ないような些細な謎も鮮やかに解明していく様と、ポアロの優しさというか紳士ぶりが素敵でした。「何でも持っている」と揶揄されていたリネットは、本人も言っていたとおり
周りは敵だらけで、親友や婚約者から裏切られ、
恨みを抱いてる人も多く、彼女が孤独な人間であることが分かり、人間の欲望や愛は誰にも止めらないと皮肉を感じられてよかったです。
Posted by ブクログ
ポアロシリーズ⑮
富と美貌を兼ね備えた女性リネット・リッジウェイと夫のサイモンはエジプトに新婚旅行にきていた。しかし2人は、リネットの友人で、サイモンの元婚約者であるジャクリーン・ド・ベルフォールに旅行の間中つけ回されていた。不穏な空気の中、ナイル川の船上で事件は起きてしまう。
すごく面白かった!
謎が渦巻く船の中を、登場人物一人ひとりが、行動し、さまざまな思いを巡らせる。
そこに無駄がないからこそ、ポアロによって一つ一つの謎が解けていく事で、それぞれの状況や思いに「あぁ〜そういうことか」と納得し、感情移入してしまう。
犯行の手口は素晴らしいものだったけれど、犯行前にあったポアロの優しい説得で、犯人には思いとどまってほしかったなぁ。
Posted by ブクログ
ナイルに死すの2022年の映画版を観た後に、この小説を読んだ。小説の内容と変えられている部分があったから、想像の部分で読んだ部分もあったけど、映画をみたときの意外な犯人だった衝撃を
小説でも改めて感じて、これはアガサクリスティーの中でも傑作に入るなと思った。
絶対、違うと思っていた人が犯人という話の構想がうますぎる。
Posted by ブクログ
やはり登場人物が多いので人物表記を確認しながら読んだ。500ページ超えの長編で、殺人事件が起こるのは250ページ過ぎてから。エジプト旅行の間に、船で殺人事件が起こるのだが、真珠の盗難や、被害者の資産の問題が複雑に絡み合っている。かなり読み応えがあるが面白かった。それにしてもポワロは承認欲求強いのか…。『ほら、エルキュール・ポワロがいかに賢いか、これでわかったでしょう!』と言うのが好きなんだって。
Posted by ブクログ
旅ものの推理小説は、独特の雰囲気があって好きです。
登場人物が多く、伏線も多く、注意深く読む必要がありますが、会話が多くて読みやすかったです。
後半は、ポアロが次々に真相を暴いていき、爽快感すらありました。
Posted by ブクログ
今回はナイル川を遡る豪華客船での殺人事件です。
美貌の資産家リネットを殺したのは誰なのか。
ジョアナ嬢の「あなたってあちこちに敵を作ってるんでしょうね」の言葉から、おっ今回はどろどろの人間模様が展開されるのかな⁉︎と期待してしまいました(笑)
登場人物が多すぎてこの人誰だっけ?と登場人物紹介を見直すこともしばしば。
でもみんなキャラが立ってたので退屈はしませんでした。
リネット、親友の恋人は取っちゃだめでしょ人として……
夢中で読み進めましたしラストも綺麗でしたがこんなに問題のある人ばっかり乗り合わせないよな……とか考えてしまいました。
そんなん言ってたらミステリは楽しめないのでしょうが。
Posted by ブクログ
中盤まで事件らしい事件が起こらないが、それでもただ登場人物たちの人間関係を追っているだけでも面白く読み進められてしまうのが不思議。事件が起こってからは怒涛の展開。殺人で霞んだからか盗難事件に対してはちょっと甘い采配?なのが気になるけれど少しは救いがないとしんどいから仕方ないか。
Posted by ブクログ
超メジャーなサスペンス
結構早めにあらすじは読めてしまった
映画化とかピッタリ
ただ、早川書房の「新訳版」文庫で読み始めたが、
自分的にフォントがせっかく大きいのに何だか読みにくいし、やたらミス○○な表現が多くてイライラしてしまい75%は電子書籍の旧訳版で読んだ
お金が勿体ない、、、と反省
Posted by ブクログ
言わずと知れたアガサ・クリスティーの名作。
中学生の頃、やたらアガサ・クリスティーを読む友人がいた。ある日、彼がこの本を読んでいたことを思い出し(といっても40年以上も前の思い出だが)、読もうと思い立ち手に取る。
1937年に書かれたものだが、僕の思い出とは異なり、色あせることはない。
まず「ナイルに死す」というタイトルが、何とも異国情緒に溢れた響きがあり、いいではないか。
物語は、アフリカの大地をゆったり流れるナイル川のように、さまざまな人々の背景、船上での新たな人間関係、密かな思惑など全てをゆっくり飲み込むかのように流れていく。
太古の文明を築いたエジプトとはそういう場所なのだろうか。
新婚旅行中の美貌の大富豪リネットをナイル川を航行する豪華客船カルナック号の中で殺害したのは一体誰なのか。
複雑なピースを冷静な観察力、分析力で紐解いてくエルキュール・ポアロ。みごとな謎解きにあっぱれ。
500ページを超える大著であるが、不謹慎なるもなかなか殺人が起こらない。実にその描写は251ページになってから。ここまで引っ張るか、というぐらい引っ張る。ここにアガサ・クリスティーの本書に対する力の入れようを感じる。