あらすじ
残忍な殺人は平穏な海辺の館で起こった。殺されたのは金持ちの老婦人。金目的の犯行かと思われたが、それは恐るべき殺人計画の序章にすぎなかった――人の命を奪う魔の瞬間“ゼロ時間”に向け、着々と進行する綿密で周到な計画とは? ミステリの常識を覆したと高い評価を得た野心作。
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Posted by ブクログ
ホロー荘の殺人の次に読んだので、また事件が起きるまでなげーな……と思いながら読んでいましたが、ラスト50ページで評価が逆転しました。
これまで読んだクリスティ作品の中でも上位にくる面白さでした。
マクワーターの証言の秘密にやられましたね。オチも大好きです
Posted by ブクログ
邦題がかっこよすぎる。原題ももちろんよい。
冒頭の「私ならこう書く」推理小説の欠点は、事件が起こるまでの描写ってどうしても退屈に感じてしまってなかなか集中できない…というところだと思うんだけど、しだいに不穏になる空気の作り方がうまかった。そして読み終わってみればさすがクリスティー、そこに全てが詰まっている。無駄なパートがなくてびっくりする。バトル警視のよいお父さんぷりすらちゃんと伏線だった。
犯人については、資料として載っていた地図のせいで事件が起こってすぐ見当がついてしまったところがある。でも「遺言があると大体金目当て」と前回書いた感想は見事に外れ、ちょっと珍しい動機の犯人だった。賢くすてきなご老人たちになんてことをする。
Posted by ブクログ
先日からアガサクリスティにハマっている。ほぼ一気読み。人間関係の複雑さや、大どんでん返しもあり非常に面白い。登場人物が多くて若干混乱しやすいけど、間違わないようにゆっくり読む。再読したらどんな感想を持つか楽しみ。アガサクリスティの作品全て読み倒したい。
Posted by ブクログ
久しぶりにクリスティー。舞台はイングランドの別荘ガルズポイント。裕福で支配的な未亡人トレシリアンの屋敷に、甥ネヴィル、元妻オードリー、新妻ケイが集い、意図的に不快な三角関係が作られる。本作は論理のミステリとしては脆弱で、心理劇としての誇張が目立つ。一方で、感情の力学を描く点では鋭い。バトル警部は「最も安全な位置」にいながら「他人に疑いを向ける状況」を設計した人物に辿り着くが、謎解きの核心に据えられた自己犠牲は、結果的に犯人の計画を完成させてしまう。そこに心理的必然性の過剰さを感じた。評価は分かれそう。⑤
Posted by ブクログ
見事な構成で読みやすく面白かった。前半の人間関係の緊張感みたいなのも面白く読めた。
すでに殺人事件が起きているのにどこがゼロ時間?と思っていたら最後にそういうことか、となった。
何気にネヴィルみたいな人が一番怖い。
バトル警視がポアロに言及していて、ちょっと嬉しくなった。
Posted by ブクログ
冒頭で、殺人事件を考えることについて、つまりこの小説の書き方について語られる。
「殺人事件のニュースや小説を読む時、殺人事件の調査をする時、人々は殺人が起きたところから考え始める。しかし殺人は結果なのだ。因果関係はその以前から始まっている。あの目撃者がそこにいたのはなぜ?あの証人が嘘をついたのはどんな感情で?殺人事件に至るまでには、計画があり、多くの偶然により思いもかけない形が作られ、関係者となった人たち性質が影響して、殺人という”ゼロ時間”に集束するのだ。」
物語の前半は、ある年の月に海辺の町ガルズポイントに集まることになった人々の事情、それまでにした経験が語られる。
スコットランドヤードのバトル警視は、大柄で木彫りのような印象で、切れ者には見えないのだが警官としての素質は確かだった。今回も娘が学校でかけられた盗みの冤罪を晴らした。夏の休暇は家族と日程が合わず、少し遅い休暇を甥のジェームス・リーチ警部のいるガルズポイントで過ごすことにする。
アンドリュー・マクハーターは、何もかもうまく行かず自殺しようとするが失敗した。その後思いもよらない縁で就職が決まった。そこで改めて彼の地、ガルズポイントで最後の休暇を過ごして自分を振り返ってみることにした。
ガルズポイントの屋敷に老未亡人トレシアン夫人と使用人たちが住んでいる。今年の9月にはいつもと違った客が来ることになった。
テニス選手のネヴィル・ストレンジは、亡トレシリアン氏の遺産受取人だ。彼の現在の妻は若く美しく派手なケイ。最初の妻オードリーを追い出して結婚した。なんと今年はネビルの今の妻ケイと、以前の妻オードリーが同じ時期にトレシリアン夫人の屋敷で過ごすことになった。
オードリーは「白い幽霊のような印象」と言われる薄幸そうな女性。若いケイは自信家で自由気儘。「白雪ちゃんと紅薔薇ちゃん」と例えられたり、「目を引くのは間違いなくケイだが、眼の前にいない時に思い出すのはオードリーのこと」などと全く正反対だ。
さらに、オードリーに思いを寄せる昔なじみのトーマス・ロイド、ケイに思いを寄せる若い美男子テッド・ラティマーも滞在することになった。絡み合った恋愛、遺産受取人問題で緊迫感に満ちたトレシリアン屋敷。
そこへ、亡トレリシアンの旧友で、引退した名弁護士トリーヴが訪問してくる。共に過ごした夕食の場で、トレーブ氏はまるでその場の誰かに警告するかのような謎の物言いをする。
果たして「犯罪を犯したが罰せられず逃げ延びている」人物がこの場にいるのか?そして改めて事件が起きるのか…?
冒頭の「ゼロ時間」説明により、この小説は「殺人をスタートではなくて、そこに至る偶然や人間の感情から描き始め、殺人は結果として書きますよ」というものなのね、として読んでいきました。しかし実際に事件が起きてからは「あれ?普通の事件捜査小説だよね?」と感じました…が!しかし!終盤の謎解きでなぜこのような書き方をしたのか納得!!前半のガルズポイントに行く前の会話、体験が、ガルズポイントでの「ゼロ時間」に見事につながった!
「あの時こんな経験をしたので、犯人はこのよう殺人を計画し、関係者はこのように行動・証言し、探偵役はこのように解決した」がピッタリはまります。そして登場人物たちは、見かけと実際の性質が違うような人が複数いるのですが、その人がなぜ本質と見かけが違うのかも納得です。
やっぱりすごいなーアガサ・クリスティー。
探偵役のバトル警視も良かったなあ。一見冴えない無骨なのに、捜査の勘も、懐の大きさも、考え方の柔軟性も超一流。彼はエルキュール・ポアロといっしょに捜査したことがあり「あのベルギー人ならどう考える?」なんて考えたりします。
相変わらず「事件解決後、やたらにカップルが誕生する。たまに意外なカップル誕生」のクリスティーですが(笑)、今回も無事カップル誕生して終わりました(笑)
Posted by ブクログ
クリスティ自身が自作ベストテンに入れたことが肯ける作品。
普通の推理小説は“事件”から始まるが、この小説は“事件”に向かって話が進んでいく。
それを思いつくクリスティの発想の豊かさもさることながら、伏線の回収の仕方など、その見事さに唸るばかりで、読み終わったときは「お見事!」と思わず快哉を叫びそうになりました。
・・・ところで、メインキャラクターであるオードリー・ストレンジについて、目が離れていることが描かれているのだけど、これは何か意味があるのかしら?当時(1944年以前)の人相学などの影響か、単におっとりした印象を与える顔だと書きたかったのか? そこだけ不思議に思いました。
Posted by ブクログ
1944年の作品。
バトル警視が活躍するサイコスリラーサスペンス。
あらすじ
有名なテニスプレーヤーのネビル・ストレンジは、再婚したばかりの美しい妻、ケイ・ストレンジと夏の休暇を養母のトレシリアン夫人の屋敷、ガルズポイントで過ごすことにした。だが、ネビルは別れた妻のオードリーストレンジも同じ時期に招待し、元妻と現妻に仲良くなってほしいと提案する。
さらにケイ・ストレンジに想いを寄せるテッド・ラティマー、オードリーストレンジの幼なじみで、オードリーに結婚の申し込みをしようと決意しているトマス・ロイドも屋敷にはやってきて、ガルズポイントには居心地の悪い不穏な空気が流れていた。
そんな中、トレシリアン夫妻の旧友だった弁護士のトリーブスが屋敷を訪れ、凶悪な殺人鬼の性質を持つ恐ろしい子供の話をする。そしてその次の日トリーブスは持病の心臓病で亡くなってしまう。
さらに、トレシリアン夫人が何者かに撲殺される事件が起こる。
ロンドン警視庁のバトル警視とその甥リーチ警部は殺人事件の真相を暴くために捜査を開始するー
ポアロでもマープルでもなく、バトル警視が主人公の作品を読むのは初めて。
シリーズ物が好きなのでどうかなー…と思って読み始めたら…
なんだコレ…めちゃくちゃ お も し ろ い
序盤、全然無関係かと思われた何げないエピソードが後半に生きてくる。
様々に散りばめられた伏線が最後に全て回収されていく。
すごい…見事としか言いようがない。アガサクリスティ様。
マープルともポアロとも違うタイプのバトル警視は、天才肌ではなく地道に捜査をすすめてコツコツ考え犯人を追い詰めていく、いぶし銀のベテラン警部タイプ。松本清張の「点と線」の鳥飼刑事のような。娘の言葉からヒントを得るというところも似てるかも。
ポアロは登場しませんが、バトル警視がもしポアロがここにいたら…などポアロを思い浮かべながら捜査をするところも楽しいです。
ゼロ時間へ
思わぬ結末でした。え、そうなの?とおもってからのどんでん返し。
サスペンス好きですが不穏な空気はあるものの、なかなか殺人は起こらない。まだあ、という感じだったのはしばらくで、しだいに引き込まれていきました。
実は久しぶりの読書でした。
舞台を観に行くので予習として。
でも、引き込まれてしまいました。
アガサ クリスティの他の本も読みたくなりましたし。アガサ本人お気に入り?いいもの読みました、
Posted by ブクログ
文句無しに面白かったです。
俗に、ノンシリーズと言われる本作。事件の解決は、ポアロのような名探偵ではなくバトル警視。解説によると、このバトル警視の登場自体は5作目。彼は、それまで地味な扱いだったのが、本作で華開いたとのこと。
作中で、バトル警視がポアロの名前をあげて、意識的に違和感を嗅ぎ取って推理し、活路を見出すのがいいですね。ポアロの人柄や推理の仕方が出てくるので、一冊はポアロの登場する本を読んでおいた方がいいでしょう。自分は、一作目『スタイルズ荘の怪事件』を読んでいたのでイメージできました。
物語は、老弁護士が推理小説を読むときの持論を語り出し、「殺人は結果なのだ。物語はそのはるか以前から始まっている - すべてがある点に向かって集約していく…クライマックスに!ゼロ時間だ。」というプロローグから始まります。
内容はプロローグ通り、ある人物が相手を破滅させるために、用意周到に計画を立て、その計画がまさに行われる「ゼロ時間」に向けて進んで行きます。つまり、逆に言えば中々事件が起きないので、ミステリ好きの人には退屈かも知れない。その分、人物描写や心理描写が丁寧で、男女のいざこざからくる緊張感もあり、自分は飽きずにどんどん読み進められましたけどね。結局、犯人当てはハズレて、またしても騙されてしまいましたが、伏線の回収も見事でとてもいい終わり方でした。
クリスティーは、まだまだ有名作品が多々あるので、他の本の合間に少しずつ読んで行きたいと思います。
Posted by ブクログ
凄かった、凄かった。
最後に一気に回収されていく複線。
呆然としてしまう、あまりの凄さに。
バトル刑事の娘さんの件までこう作用するとは…。
ケイのヒステリックもネヴィルに影響されてたんだろうかとか考えてしまう。
Posted by ブクログ
ポアロさん本人は出てこないが、名前だけ出てくる。
今風にいうとスピンオフということだろうか? ポアロさんのシリーズで顔出しをしているバトル警視が探偵役をしている。
このバトルさんが良い感じなんだよなあーっ
挿話として、彼と彼の娘の話が伏線として出てくるんだけれども、その時のやりとりがすごく良い。この人のシリーズがあったら、めちゃくちゃよかっただろうなあと感じてしまう。誰か書いてくれないかしら……ポアロさんほど卓越した感じはなくとも、堅実で、悪を追い詰めるためには手段を選ばないところもある。そういうのも良い。
資産家の老婦人が殺される。謎の殺人事件という触れ込みだけれども、実際はその事件が起きるまでの経緯を丁寧に書き込んでいる話で、主題はどちらかというとモラハラ、クズ男への断罪という感じでかなり今時なテーマである気がした。
Posted by ブクログ
「ゼロ時間へ」。なんてワクワクするタイトルでしょうか。まるでSF小説のような。
殺人が起きるその瞬間をゼロ時間として、物語りはそこに至るまでの人間模様がとても丁寧に描かれていて、このような展開の作品は意外と少ないかもしれません。
この先に必ず殺人がおきるとわかっているので誰が犯人なのかを疑いながら読んでいたのですが、出てくる人が皆怪しくて。どのような展開になるのか全くわかりませんでした。
そして本作では名探偵が不在で、バトル警視が捜査にあたるのですが、クリスティー作品で名探偵不在というのも新鮮でした。
Posted by ブクログ
他のクリスティ作品のような派手さがある訳ではないものの、ストーリー構成や人物描写が飽きさせない。途中のエピソードとの関係性、ちょっとした描写にヒントが散りばめられており、比較的犯人が想像しやすかった方だと思う。心理描写の上手さ際立つ一冊だった。
優れた小説家は優れた人間観察者と言われるが、真面目な紳士のサイコパス性を見抜き、犯罪計画に仕立て上げる様はミステリーの女王という呼び名に相応しい組み立てだと思うのだった。
Posted by ブクログ
離婚してからも元旦那の親戚の集まりに参加しないといけないのはなんと辛いことか‥そりゃ殺人事件も起きてしまう‥犯人が誰なのか最後まで裏切られる展開だった。ケイをそこまで悪者にしなくてもと不憫に思った。
Posted by ブクログ
学生時代以来振りの再読。
改めて感じたのは、本作のミステリー性が「事件の謎」を解くものではなかったということ。
それよりも事件がどうやって起こる状態に至るのか、その過程こそがこの作品のテーマではないだろうか。
犯人探しやトリックが肝ではない。
登場人物の造形や互いの距離感、感情のもつれの積み重ね。どれも単体では些細だが、それが事件に向かって整然と配置され、事件の起こる「ゼロ時間」へと収束していく。
伏線の回収も見事だが、その伏線は日常会話や何気ない描写として置かれている。回収される度に「あれもそうだったのか」と感じる心地よい構造。
探偵役も名探偵ではないが、それでもポワロと地続きの世界であり、彼の言葉を踏まえた上で起きた出来事を整理していく。
派手ではないが、地味でもない。
再読の方が読後感は強く、骨太な一作と感じた。
ナニか物足りない
やたらと散りばめられた多数の伏線が
見事に回収されて、すごいなと思う。
ゼロ時間に向かって物語が進んでいくのも斬新だなと思う。
その一方で、後だし感が強いなとも感じた。
Posted by ブクログ
ゼロ時間。殺人はその結果であって、それ以前から物語が始まっている。タイトルから秀逸。クリスティの新たな試み、これまでのミステリーの常識を覆す画期的な作品。
Posted by ブクログ
【ノンシリーズ】
ポアロじゃない「ノンシリーズ長編」。
全ての伏線が最後に一気に回収される。
繋がりがないように思えたエピソードも全て
関係している。
偶然に起きる殺人なんてものはなく、たくさんの要素が絡まった時に殺人は起きてしまう。人間の心理を描いたクリスティーらしい作品。
今回も犯人を当てられなかった。
犯人がわかってからもう一度読み返すと、犯人の心理的な怖さをもっと感じられる。
バトル警視は、ポアロのような灰色の脳細胞を持つ天才タイプとは違って、良いお父さんであり人間味がある。作中でポアロの話も出てきてニヤリとしてしまう。
最初のエピソードが最後になって意味を持ってくる。そこにクリスティーのとてつもない巧みさと、格好良さを感じた。
後からジワジワくる深い渋い作品。
再読したらまた違う面白みがありそう
★4.5
◆あらすじ
休暇を過ごす海辺のリゾート地に集まってくる多重三角関係の男女。そこには不穏な気配が漂う…
Posted by ブクログ
ひとりごと
アガサ•クリスティーさんの作品を初めて読みました。登場人物が多くて(最初名前も覚えるのが難しい)慣れるまで登場人物、役職を見返しました。
本作は自殺しそこねた男から始まり、それぞれが1つの屋敷に集まって何やら起こりそうな雰囲気が漂う中、殺人事件が起こるー。
ゼロ時間の種明かしをされた時、サイコパスの人は1つの事柄だけでここまで用意周到に準備をし実行するんだと思うと怖くなりました
憎い人を簡単に殺めるのではなく徐々に追い詰めてそして思いつく1番の苦しい方法で消えてほしい
その為に、犠牲者が何人いても構わない犠牲者はただの演出という考えが恐ろしいです
ただ普通の人達が理解できないくらいのサイコパス思考、行動を発揮してくれた犯人には感謝です
面白くてすいすいと読めました
Posted by ブクログ
海の見える館ガルズポイントで行われた殺人。被害者の遺産はネヴィル・ストレンジとその妻に相続されることになっていたが、奇しくもその日館には、現在の妻ケイと前妻のオードリーが顔を揃えていた。時を同じくして、ガルズポイントに客として訪れていた高齢の弁護士が死亡する。心臓を患っていた彼は、何者かがエレベーターを故障中と偽装して階段を歩かせたことが原因で死亡したと見られる。
バトル警視は、不自然なほど揃い過ぎた証拠を検証しながら、甥で同じく警察官のジェイムズとともに犯人を追い詰めて行く。
登場人物の過去や心情を丁寧に描きながら、動機やアリバイを重視したクリスティらしい作品。
クリスティの作品は高齢の人物が「最近の人たちは」と若者の現代的な考えに苦言を呈することがよく見られるが、現代人の我々からみてもネヴィルの考えはかなり自己中心的で歪んでいる。
自殺未遂したアンガスがどのように事件に絡んでくるのかというところが良かったのと、リゾート地の夏の終わりを感じさせる描写が素晴らしい。
ポアロシリーズではない作品でポアロが引き合いに出されるのはなかなか珍しいのではないだろうか。そして最後までトマスが残念すぎる。
殺人は物語の結末。つまり物語は、その「ゼロ時間」に向かって進んでいる。
Posted by ブクログ
犯人が怖すぎる…。真相が分かってからはオードリーがただただ気の毒。やたらトマスとメアリーの会話が多いと思ったらそこがくっついたので、納得した。冒頭のシルヴィアの話関係あるのか?と思っていたらしっかり拾われて脱帽。
Posted by ブクログ
殺人事件は始まりではなくて、物語の結末、つまりゼロ時間。
館の老婦人が殺された。証拠が出揃い、犯人は明らかかと思われたがバトル警視には引っかかることがあった。スポーツマンと離婚した元妻と現在の妻、友人、親戚、使用人たち。人間関係を追った後に明らかになった真相とは——。
クリスティーはナイルでもそうなのだが、殺人事件が起こるまでのストーリーが読ませる。作中でバトル警視も述べているように、多くの殺人事件を描いた物語は、まず殺人事件が起きてそこに探偵がやってきて、と始まる。しかし本来、誰かが人を殺すには、そこまでに至る物語がある。
クリスティー作品は登場人物が多くてもその一人ひとりの顔がしっかりイメージできるのがすごい。今回も登場人物たちの動きに惹きつけられて一気に読んでしまった。
最初の妻であるオードリーが語る自分の変化。追い詰められて、もう楽になりたいからやってもいない罪を自白しそうになる。現代でいえば精神的DVだろうか。この男女の関係は書かれてから半世紀を超えても新鮮に読むことができる。
この物語の探偵役はバトル警視。ポアロほど個性が強いわけではないが、地道に捜査と考えを進ませていく。物証に乏しい今回の犯人を追い詰めるシーンは、読んでいてもハラハラする。なぜ出てきたのかわからなかった自殺未遂者の登場で一気に展開が進むのもすごいが、その後で彼が持ち出した決定的一打も綱渡りだったことを読んで、さらにクリスティーの筆力に感服。
Posted by ブクログ
犯罪が起きた時がスタートではなく、様々な要素が絡まり合って収束する、ゼロ時間こそが全て。
中学の時に読んで感銘を受けたクリスティ作品。
改めて読み返したが、やはり素晴らしい!時代を感じさせない!
惜しむらくは、訳が堅苦しくてややぎこちないところ…。
Posted by ブクログ
いつもながら、素晴らしい筆力。
誰もが怪しく見えるのに、ラストはいつも驚かされる。今回は自分でも推理に挑んでみたけれど、大外れだった。
クリスティー女史はいつも事件が起こる心理的な要因に着目していて、そこが他のクライムサスペンスとは一線を画しているが、本作にはそのエッセンスが詰め込まれているように感じた。作者ご本人もベストテンに選び、江戸川乱歩はベスト8に挙げたとあとがきで読んだが、それも納得の珠玉のミステリ。シリーズものではないが、バトル警視が出てきたのも嬉しかった。
Posted by ブクログ
「殺人は結果であり、物語ははるか以前から始まっている」当然と言えば当然だが、殺人が起こるまでを切り取るのは面白い。僕はクリスティがほとんどのトリックや構成を彼女の時代に生み出したと思っているが、今回も秀逸だ。
バルト刑事シリーズもクリスティの中では有名だが、改めて読むと彼の人間性(無骨だが力強く優しさがある)に惹きつけられる。彼の娘の事件は確かに頭の悪い女教師の暴走だが、それに対してのリアクションがバトル刑事の魅力を思い出させてくれた。
章が変わり、登場人物達の紹介が行われ、彼らは物語の舞台ソルトクリークに終結する。どの人物達も一癖も二癖めありそうな連中ばかり。これからどのように経過が進み、0時間に到達するのか。
クリスティは人物描写、風景描写に定評があるが、今回も館の喧騒の中にいる様な気分になる程熱量を持った描写をしている。クリスティ作品として、動機で一番多いのはお金、愛憎だが、それでも数十の作品を通してオリジナリティ溢れる作品が多いし、今作もそれぞれの人物達の思惑がまるで渦の様に物語の世界を飲み込んでいる様だ。
ネヴィルとケイの夫婦、元妻であるオードリー。不穏な事を打ち明けた後に亡くなった老弁護士。何かを匂わせて殺されるのはクリスティ作品ではよくあるパターンだ。
真相が明るみになり、その後の結末はさすがクリスティと思わされるクオリティだ。
自殺未遂を起こし、自分自身に嫌気がさしていたマクワーターという男性が、伏線を回収し、彼が生きている事に意味を見出し(冒頭で彼が看護婦から言われた千里眼的予言まで回収してしまうとは。また、彼が自分のポリシーを返して嘘をつく部分は温かい気分になった。)最終的に主人公の様になるのはとても良かった。
クリスティは実は悪役はきちんと悪い奴で、不幸な登場人物達は最終的に幸せになる事が多い。
今回も沢山の登場人物達が事件後幸せになるであろう事は、読後、爽やかな気持ちになれる要因だ。
それにしても、犯人が実行を計画した「ゼロ時間」に向けてストーリーが集約していく様子は見事だった。
Posted by ブクログ
だいぶ好きでした。人間関係の伏線回収と、オチが良かった!ゼロ時間、なるほどね、と思いながらスラスラと読み切りました。久しぶりのアガサクリスティ!さすがです。
Posted by ブクログ
タイトルがなんだか未来的?でかっこいいと思ったら、中身はいつものクリスティ的お屋敷ミステリーだったのは少々肩透かしではあったが、とは言え安定の面白さだった。
殺人事件そのものよりもそこに至る人間の物語を主軸にした作品、ってことなんだけどクリスティって割といつもそうじゃない?と思ってしまい、この作品独自の面白さはいまいち見い出せず。
無関係のところから急に飛び込んできて解決の手がかりになるマクワーターの存在はドラマチックで面白かったけど。
結局は事件発生前の男女の愛憎劇を楽しめるかどうかに尽きるのかな、とも思いつつ個人的には『ナイルに死す』や『五匹の子豚』のドラマ部分の方が登場人物に感情移入しつつ楽しめたので、そんなに高評価とはならなかった。
ネヴィルへの愛やケイへの嫉妬を抱えつつ一生懸命平静を装っているようにしか見えなかったオードリーの本心が実は全然違った!というのは面白く、これこそクリスティの真髄のように思う。
ただ、せっかく面白い要素なのに他の要素も盛り込み過ぎて霞んでしまっているかなあという印象。
外側から見て分かる状況だけで、その渦中にいる人の気持ちまで決めつけてはいけないなあと改めて肝に銘じた。
Posted by ブクログ
微妙にアガサらしくない作風な気がするけど
やはりキャラがよくできてる
トリックは適当だけど笑
しかし犯人は意外だったが確かに言われてみればなぁという感じもした
Posted by ブクログ
2/3程過ぎても何も起きず、なんだなんだと読んでいたが、驚きの結末。テニスプレーヤーのネヴィルと若き妻ケイ、離婚した妻オードリー。オードリーが殺人をしたと見せかけてネヴィルだった。最後、冒頭にいたアンガスという自殺に失敗した男が目撃者になり、オードリーと結ばれるという運命的な展開。オードリーを捨てたのかと思ったがネヴィルが捨てられたのか。男の逆恨みって怖すぎる。バトル警視が探偵役。ポワロは居ないが全然面白い。
Posted by ブクログ
しっかりした和食(横溝作品)が続いて洋食が食べたくなったので、久々にクリスティーを。
ちょうど、”夏の終わりに読みたくなるミステリー”とtwitterで聞いたもので、海辺の館が舞台のこちらを選びました。
殺人は事件が起きるはるか以前から始まっている――。
ずばり、これが今作のテーマです。
殺人犯がいかにして強い憎悪を抱き、どんな計画を立て、そして分厚い仮面の下にそれを隠してあたかも普通の人を装って生活する様を、我々読者に気取られないように書き切ったクリスティーの筆力はさすがとしか言えません。なかなか事件が起きないのに退屈させないのもすごい。
事件が起きて、証言や証拠が集まって、探偵が皆を集めて「さて……」と言う。そんないつものパターンとは異なる読書体験に、脳の違う部分が刺激された気がします笑
それにしても、犯人があの人だったとは……。
それを踏まえて再読したら、そのサイコパスっぷりに背筋が寒くなりそうです。この作品の発表は1944年とのことですが、その時代にサイコパスや精神的DVといった要素を持つ人物を描くクリスティーは、どれほど時代感覚に優れていたというのか。。
今作はノンシリーズとのことで、いわゆる探偵役を務めるのがバトル警視。
娘とのエピソード(一見関係ないように思われる)で、すっかり夢中になってしまいました。
派手さはないものの、堅実な捜査を重んじ、そして自身の直感も大切にする。
そんなバトル警視から、ポアロさんへの言及があったのには思わずニッコリ。二人が共演する『ひらいたトランプ』、早速ぽちってしまいました〜♪
犯人を追い詰める証拠の弱さと結末のラブロマンスはちょっと引っかかりましたが(トマス、いいところがないじゃないか!笑)、でも、これまで他人に傷つけられてきた二人だからこそ今後は幸せになってほしいな。
真相を覚えているうちにぜひ再読したい一冊です。