【感想・ネタバレ】満潮に乗ってのレビュー

あらすじ

大富豪ゴードン・クロードが戦時中に死し、莫大な財産は若き未亡人が相続した。戦後、クロード家の人々はまとまった金の必要に迫られながら、後ろ盾のゴードンを失くし窮地に立たされる。“あの未亡人さえいなければ”一族の思いが憎しみへと変わった時……戦争が生んだ心の闇をポアロが暴く。

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Posted by ブクログ

親族全員を庇護していた大富豪ゴードン・クロードが若い娘と結婚した直後、遺言状を更新しないまま死亡した。残された遺族たちは、ゴードンの援助なしには生活できなくなり……。
ポワロシリーズ23作目→

戦時中という環境下、頼り甲斐がある独身貴族の突然の結婚、そして死。残された若き未亡人には厚かましい兄がついていて……とまぁ、揉めそうな要素盛り沢山な設定。それをキャラごとに上手く盛り上げるクリスティの手腕たるや。上手い……ほんとにこの女王は人間ドラマを描くのが上手い。→

そして、しっかりとトリックもある。上手い……二重三重と驚きがあり、ドラマが盛り上がり、きちんと締める。ポアロが今回もチャーミング。ニヤニヤしちゃうんだよねぇ、ほんと。

読みやすいし面白いし驚けるし、いやもう、海外ミステリのお手本でしょ。マイナー作品のこれでこのレベル……すごいわ

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2024年07月22日

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ネタバレ

戦後の不穏な雰囲気が濃厚な作品。
クリスティは戦争のことを書きたくないのかなと思い込んでいたけれど、こんな作品もあったなんて知らなかった。
各々の生活、思想だけでなく、物語を動かす三角関係さえも戦争の影響下にあるように思える。
トリックは当時の電話交換など少しピンとこなかったので、再読したい。

禍ではもてはやされ、通常の社会では受け入れられないディビットの、暗い魅力が余韻で残る。

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2024年04月05日

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ポアロシリーズではこれと「カーテン」を最後に残しておいたのは、タイトルがなんか惹かれなかったから。
でもこんなに面白い本、意図してないとはいえあとに残しといてよかった!
どんな予想も全て裏切られた。
オススメを聞かれたら間違いなくBEST5に入れます。

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2022年03月28日

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ネタバレ

英語の表題だと分かりやすい。
taken at the flood
floodというと、洪水かと思っていたが、
波が押し寄せる、満ち潮もの状態なのかもしれない。

潮の満ち引きに関するいろいろな言葉が引用されていた。
どれも読んだことがない文献なので、いちど確かめようと思う。

ロザリーンが、性格がよいことになっていたので、読み進みやすかった。
味方したくなる人間と、味方したくない人間とがあるのは仕方がないことなのでしょうか。

結果としては味方していた2人は犯人でなかったのでよかったが、
結果はハッピーエンドとはいえないのだろう。

遺書が結婚で無効になるが、その場合は全額相続ではなく、
信託財産になるという仕組みなど、こまめに読んでいると
イギリスにおける遺産相続の法律に詳しくなりそうです。

動機がなさそうに見ることが、ある制約条件が成り立つと、
動機そのものだったりすることも知りました。

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2011年08月14日

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ポアロはプロローグから登場するけど殺人が起きるまでがけっこう長い
それまではロマンスと人間ドラマがおもしろいから読むのには飽きなかった
ヒロインのリンのキャラクターに感情移入できるかによってラストの評価は別れそう

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2025年11月17日

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ポアロ長編はやはり面白い!殺人者の一登場、殺人者のニ登場、今までと異なる展開にワクワクした。解説者も書いていたけど、アガサクリスティーは誰が被害者になるかを想像するのも楽しい。

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2025年04月16日

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「満潮に乗って」
なんてミステリー小説には、似合わないタイトルだこと……。

全てが顔見知りのような田舎
一代で富を築いた男の死と、遺産をめぐる親族と若い妻。
ポアロは単に人の話を聞いてまわるが、読んでいる読者は「たぶんこうだ」と思うもののなかなか辿り着けない。
だって満ち潮に乗って(勢いにまかせて?)事件を起こすミステリー小説があるはずが無いって先入観があるから。

これが成立するのは、作者の巧みなわざと登場するひとりひとりの魅力が、読んでいる者をずっと惹きつけているから、と、ラストシーンを読み終わって感じた。

終わってみたら、結構面白いお話でした。

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2024年07月09日

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事件はなかなか起きないのに飽きずに読める。
流石です。
一人の大富豪の死によって狼狽する一族の人間模様や彼らと関わりのある人物の描写が丁寧に書かれている。
関係性が整理しやすく、物語の構成としても面白い。
設定自体は地味だけれど、意外性のある展開や真相で楽しませてくれる。

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2023年12月09日

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推理小説においてワクワク出来る舞台装置は色々有るけれど、その一つとして挙げられるのは本作が扱う「大富豪の遺産を巡る殺人」だろうね
大富豪ゴードン・クロードの後ろ盾を頼りに生活してきた一族が彼の死と戦後の空気に拠って困窮していく様子はどう捉えても殺人事件の土台が整えられているとしか受け止められないもの

その一方で舞台が整えられ過ぎているとも言えるのが本作の面白いところ
ゴードン・クロードの遺産を横から掠め取るようにして手にしてしまった哀れなロザリーン。誰も彼もが彼女の死や不義を願うのは理解できる流れとして、その感情を後押しするように様々な噂が錯綜するのだから奇妙な話になってくる

事件が起きる2年も前にロザリーンの前夫が現れるとポアロの前で予言する少佐、事件直前にもクロード一族の女性が霊のお告げでロザリーンの前夫が死んでいないとポアロに教える
そして実際にロザリーンの前夫、ロバート・アンダーヘイを思わせる男性が現れるのだから本当に奇妙で面白い

舞台は非情に整っている。だからこそ、整っていない部分が引っ掛かりとなって事件をより意味不明なものとしていくわけだ


本作の特徴をもう一つ上げるなら、事件を起こす動機を持つ者が多すぎる点が挙げられるのだろうね
遺産を巡る心理的動揺がクロード一族やロザリーンの兄、デイヴィッドに巻き起こっているから誰が殺人を犯しても可怪しくないように思える
実際に私も読んでいる最中は「あの人が犯人だろうか?」と思った数分後には「いや、あっちの人が犯人なのでは…?」と迷ってしまうほど

誰も彼もが戦後の苦しさから遺産を自分の手元に呼び寄せたいとロザリーンの不幸を願ってしまう。それが誰が犯人になっても可怪しくない空気感を醸成し、ミステリドラマとして読み応えある内容となっていたよ


どのような事件だろうと、名探偵ポアロが関わるなら犯人は明らかになる。本作も例に漏れず混迷を極めた事件推移だろうと犯人は最終的に明示される
個人的には「そう来るか!」と様々な意味で思えるラストでしたよ
最高に面白いというわけではないけど、人間ドラマに絡めたミステリとしてはかなりの一品として仕上がっているね

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2023年09月26日

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 クリスティの長編ミステリー。ポアロシリーズ。
 何よりもまず。戦争とは悲劇であり、世界中不幸であり。過去の小説などを読むと恐ろしさや怖さがとても感じられる。今作は戦争が少し落ち着いた時代のイギリスが舞台なわけだが、一体罪とは何なのだろうか、と疑問に思う。当時、今回の様な事が時と場合で許容されるのはナンセンスだと思うし、一方の事件(ネタバレにならない様に注意するが)は現代ではでは当然積みに当たるしまあ、仕方がないには絶対ならないだろう。
 ある意味でポアロはよくこういう事をする訳だが、「オリエント急行」や「ナイルに死す」等は受け入れられるが、今作は違う(笑)。真実を知るのはポアロと事件の真相を打ち明けられた数名のみなので当然、彼らが打ち明けなければおもてに出ることは無いのだが。ポアロ自身、リンに対してはポアロの好きなタイプでは無いと言っており、そういった人物には今まで「ポアロおじさん」は発動しなかったのだが。少し不満の部分だ。
 金持ちが空襲で亡くなり、若い未亡人とその兄が生き残る。金持ちは一族に大きな影響力を持っており、財政的な援助なども踏まえ、彼なしでは破綻してしまう様な一族だ。遺書等もなく、巨額の財産は未亡人が受け継ぎ、一族は困窮してしまう。そんなおり、とある謎の人物が一族の住む村に現れじけんに繋がっていく。
 フーダニットがベースではあるが、そもそも序盤から練り込まれたトリックがあり、最後に衝撃を喰らう。再読だが、初めて読んだ時はインパクトがあり記憶に残っていたが、大人になってから読むと昔ほど印象深い作品ではなかった。
 登場人物達が綿密であり、クロード一族は今後衰退していくだろう。当たり前のものが当たり前ではなくなる、自分が手に入るはずだったものが他人のものになる。そんな時に生まれる人間の嫌な部分が詰まっている作品であり、少しだけセンチメンタルになった気分だ。
 トリックの面白さ、登場人物達の灰汁の強さはシリーズにおいても面白い方で、ポアロのメロドラマ的な部分も充分楽しめた作品だ。最初の数冊には勧めないが幾つか読んでからの方が味が出る作品だ。

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2023年09月16日

Posted by ブクログ

ポアロもの。

大富豪ゴードン・クロードが死亡し、その莫大な財産は若き未亡人ロザリーンが相続しましたが、実質はロザリーンの“兄”・デイヴィッドのコントロール下にある状況です。
そして、ゴードンに経済的に依存しまくっていたクロード一族の人々は、“後ろ盾”がなくなってしまい、金銭的窮地に立たされてしまいます。
クロード一族と、ロザリーン&デイヴィッド兄妹の間に不穏な空気が流れる中、ある日村にロザリーンの前夫(ゴードンの前の夫)を知るという人物が現れて・・・。

解説にも本作品が「ドラマ重視」と書かれていましたが、確かに“事件”が起こるまでのヒリついた人間模様がしっかり描かれていますね。
そして、一応ヒロイン的ポジションのリンを巡る三角関係も並行していて、以前からの婚約者で朴訥な農夫・ローリィと、ロザリーンの兄で危険な魅力(?)を備えたデイヴィッドとの間で揺れるリンの心理描写にもご注目です。
(私からすれば、“どっちもどっち”という感じでしたが・・汗)
そんな人間ドラマの土台の上で展開するミステリ部分も秀逸で、ポアロ言うところの“まともでない”という表現の通り、“動機と犯行が合わない”という状況に翻弄されてしまいました。
思い返せば、あちこちにヒントが散りばめられてはいたのですけどね~。
(例えば、ポーター少佐の“あの台詞”に、“ん?”となったのは、私だけではないはず・・)

このように、人間ドラマとしてもミステリとしてもグイっと読ませる本作品。
ちょいと登場人物達のキャラが弱いかな・・と思わんでもないですが、個人的にはフランセスとケイシイが何気にいい味出していたかも。と思いました。

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2023年08月10日

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物語自体は地味な印象。
だが、いつも通り仕掛けられた二重三重に仕掛けられた罠の方向性が、通常の作品と少し異なるベクトルを向いていて、意外性があってよかった。
クリスティのこの頃の作品らしく、人の心情を描くことに注力しているようで、物語の中盤まで殺人が起きないし、ポアロも出てこない。

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2022年09月15日

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アガサクリスティー。ポアロシリーズ。
お金持ちの未亡人とそれを取り巻く人々のお話。
お金を受け継いだ気弱な未亡人とその兄が今までそのお金に頼ってきた一族と対立する。その中で未亡人側の弱みを握った脅迫者が殺され、それをきっかけに第2、第3の死体があらわれる。
丁寧に作られているが、少し物語としては地味だと思う。
また無理に恋愛色を出す必要はないと思った。

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2022年02月28日

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連続してクリスティを読んでいるので、いくつかの要素がキーになることは予想できたのだが、使い方が予想外だった。悪いことをする人、悪企みをする人、つい嘘をついてしまう人、そして大部分は良心の呵責を感じる人。いろんな人がいるから、真相が最後までわからない。人間がよく書かれていると評価の高い作品ではあるが、兄弟の金をあてにして頼りきっている人々というところに共感できず(当時のイギリスは働かない方が普通だったとはいえ)★一つ減。

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2018年06月10日

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アガサ・クリスティーの面目躍如! と言えるミステリーです。冒頭に少し姿を表してから、中盤まで出てこないポアロ。代わりに語られるのは、遺産の相続権を、後妻に奪われた、一族の物語です。一族の嫉妬や恨みが渦巻く一方で、当の後妻は、かなり気弱な様子。しかし彼女の兄がなかなかの曲者で、一族と真っ向から対立します。事件が起こるまでの人間関係に標準を当て、読ませるのは、さすがクリスティーです。

事件の展開も意外な方向に転がります。ここで単純に後妻やその兄を被害者にしないところが、この小説の面白いところ。兄妹を脅迫する謎の男、古い友人の登場と、事件の様相は、第一の事件以降、様々な形に移り変わります。ここで前半に描かれた一族のドラマが効いてきて、犯人は誰か、まったく予想がつかなくなるのです。みんながみんなとにかく怪しい(笑)

様々な思惑が入り乱れた事件を、一本の線に繋ぐポアロの推理はさすがです。そして個人的には、本の最後の一文も、伏線が見事に決まった、ニクい一文で思わずニヤリとしてしまいました。

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2016年07月10日

Posted by ブクログ

事件に至るまでの経緯が丁寧に描かれているので、ギスギスしたクロード一族の人間ドラマ、そしてリンをめぐる三角関係の恋愛模様が濃厚ですし、ツイストの連続で面白いです。
しかし、伏線は色々張られているものの、謎解きに必要な手掛かりが明確に提示されていないため、ミステリーとしてはやや不満が残ります。

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2015年07月01日

Posted by ブクログ

大富豪ゴードン・クロードが戦時中に死亡し、莫大な財産は若き未亡人が相続した。
戦後、後ろ盾としてのゴードンを失った弁護士や医師らクロード家の人々は、まとまった金の必要に迫られ窮地に立たされていた。
“あの未亡人さえいなければ”
一族の思いが憎しみへと変わった時・・・戦争が生んだ心の闇をポアロが暴く。
(当書裏表紙あらすじより)

解説を読んで初めて知ったんですが、クリスティー作品の中後期には本作のようなタイプが幾つかあるんだそうです。
クリスティー作品の超有名作品「ナイルに死す」もそのタイプに入るそうで、そのタイプとは「ドラマ性の高いミステリー」なのだそうです。
曰く、「事件がなかなか起きない」「事件に関わる人々の物語が詳しく書かれている」というものなのだそうです。
実際、本作は冒頭にポアロが少しだけ出てきて以降、半分をクロード家の人々の状況や遺産を相続した兄妹の事をつらつらと描写することに費やしています。
「誰かが殺されてドラマが始まる」にではなく、「様々な問題を抱えた登場人物たちの誰が犠牲になり、そして誰が犯人なのか」という読み方が出来る作風とも言えるそうです。
なるほど、そういう読み方をすると全然違った感じになりそうです。

こういったことを全く知らずに読み始めたので、なかなか事件が起きないなぁ、と感じながら読んでいました。
だから前半は読むスピードが遅かったんですが、事件が起きてからは一気でした(笑)
え、こいつが犠牲者になるのか!
絶対犯人と思ってたけど違うの?
おっと、そうくるのかぁ!!
と、事件の謎解きでは見事にヤラれました(^^ゞ
読み直してみたくなる作品、ということで星4つにしました♪

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2021年09月21日

Posted by ブクログ

若い未亡人と再婚した大富豪のゴードン・クロード。彼は一族の生活を支えており、一族全員が彼の庇護のもとにあった。だが、彼は空襲で死亡し、財産は全て若い未亡人のロザリーンが継ぐことになった。それ以来、一族の生活費の支出は、実質的にロザリーンの兄のデイヴィッドの許可が必要になった。「彼女さえいなければ」戦争が人の心を闇にしていく。ポアロは空襲から避難した場所で居合わせたポーター少佐から、アフリカにいる彼の友人ロバート・アンダーヘイと彼の不幸な結婚についてや、その妻はその後ゴードン・クロードの妻となったが、アンダーヘイがまだ死んでいないかもしれないことを聞く。

狭い村での人間関係の絡まり、戦争という大きな変化により今までの生活が失われたことに対する人々がまだ受け止めきれないところが緻密に書かれていてリアルだなと思う。いつも緊張状態に置かれていたリンが、帰ってきて平和を喜ぶと同時に物足りない気持ちになって結婚を迷う気持ちになる部分はとても共感できた。でも一方で、最後に自分を傷つけようとしたローリーと結婚を決意するというのは腑に落ちなかったなあ。私だったらデイヴィットもローリーも嫌(笑)偽者だったというオチは面白いけど、純粋なトリックを楽しみたい読者としてはちょっと物足りない結末だった。

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2025年11月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

真実を全て世間に明らかにしない、明らかにしないほうが幸せなこともある。殺人事件という非日常はそんなに起こり得ない。だからこそ事件が起こる前の人間の心情描写を丁寧に描く。動機を持っている人が犯人ではないこともあるし、一見動機がないのに明らかになると納得できるような隠された動機がある。みんな怪しいし、殺されそうな人は明らか。えっこの人から殺されるの!この人今死んじゃうの、、そんなドキドキも味わえる良い作品

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2024年08月27日

Posted by ブクログ

【ポアロ】
解説に「この本を手にしている方は、かなりの重症のクリスティー・ファンだろう」と書いてある。解説者もこの本は「四十数冊目くらいのクリスティー本」らしい。
私もこの本でクリスティー48冊目で、ポワロ作品は自分の好きなタイプはほぼ読み終わってしまった。
だから残りのポワロ作品になかなか手が伸びず、かなり久しぶりのポワロ。
ここからのポワロは自分の苦手な作品が続くので、どこまでいけるのか自分に挑戦。

大富豪ゴードンが戦災で亡くなる。
亡くなる直前に若い娘と結婚し、巨額の財産は彼女のもとに行くことに。親族は複雑な思いを抱く…。

いつまで経ってもなかなか事件は起こらない。
登場人物は全員大富豪ゴードンの遺産に寄生していて、優柔不断で煮え切らないグダグダした個性の薄い人ばかりで、誰にも魅力を感じない。
だんだんイライラしてきて他の本も挟みながら、読み終わるまでに3日くらいかかった。

でもラストはさすがクリスティーだった。
伏線もたくさん張ってあったし、遺産に寄生する一族にイライラさせることもクリスティーの計算上だったのかもしれないとも思えてきた。
読み終わってみれば普通にこの作品も面白かった。やっぱりこれだからクリスティーはやめられない。
クリスティー58歳の作品。
★3.5

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2024年09月07日

Posted by ブクログ

1948年発表。ポワロシリーズ第23作。突然潮目が変わり、大海原に投げ出されたクロード一族の面々を中心に、波乱に飛んだストーリー展開が面白い。事件自体のご都合主義っぽい特性もトリックに一役買っており、クリスティの巧者ぶりが遺憾なく発揮されている。終戦後の作品でもあり、世界規模の人殺しを経て、平和を取り戻した人々の悲劇が描かれている。生き残った人々もまた戦争の被害者だとでも言いたいのだろうか?

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2024年07月08日

Posted by ブクログ

クリスティはお金持ち一族のいざこざを書くのが上手いように思う(実際にあったことがないので厳密には何とも言えないが)。トリックより登場人物のドラマに重きが置かれている作品だった。

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2023年07月04日

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ネタバレ

世界的富豪ゴードン・クロードの別荘でガス爆発事故が発生、ゴードンは死亡し、新妻ロザリーンと、その兄デビッドは生存する。それから2年が経ち、ロザリーンとデビッドの厳しい遺産管理により、クロード一族は苦しい生活を強いられ、クロード一族にとってロザリーンは邪魔者となる。一族の反感をくらうロザリーンは、日に日に憔悴の度を深める。さて、ポアロシリーズの中でも「推理」よりも、最後に誰と誰が恋中でゴールインするのでしょうか?という問い探しミステリーといった方が良い作品。今回「おかしい」人間の多さにはびっくりたまげた。③

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2022年12月09日

Posted by ブクログ

ポアロ
人間関係のドラマを楽しむタイプ。なかなか面白かった。しかしリンの最終的な選択は自分には理解しにくいものであった。あとクリスティー作品に時々でてくる降霊術に傾倒する登場人物。苦手というか読み飛ばしたくなるほど苦痛だ。

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2021年07月10日

Posted by ブクログ

またまた人間ドラマ的作品。資産家が一族を養うという状況が前時代的でイマイチ設定に入りきれないが、クリスティを読んでると思っていれば十分に楽しめる。

ただクリスティを読破するぞ!と決意して読んで23冊目、もうちょっと推理ものである事を期待して読み出した頃からすると、これは本当に自分が読みたいジャンルの小説なのか?との疑問も湧いてきた…今3冊に一冊はクリスティと決めて読んでたけど、ちょっと間を空けてみようかな。この作品もよく出来てるとは思うけど、なんか素直に楽しめなくなってる気がする。

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2020年01月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

悲劇はあたかもシェイクスピアのように。

大富豪の未亡人、その兄と、困窮する一族。戦争の傷が描かれた作品で、戦後を生きるイギリスの人々の姿に思うところがある。戦時中は従軍し、戦後田舎に帰って婚約者との結婚に戸惑うリン・マーチモントが印象的。前半でたっぷりとクロード一族の人間模様を描き、ポアロは名探偵だが、もはや主役ではないのでは。ラストは、すっきりとまでは言わないが、ひとつの人間関係の決着に満足した気持ちになった。クリスティ作品に出てくる女性は、いつも印象的で、何十年たった今でも全然古びていないと思った。

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2019年07月04日

Posted by ブクログ

久しぶりにクリスティの作品を読み返してみると、謎ときや犯人探しよりも、人間模様というか登場人物たちの心理描写が面白いと感じる。
ポワロものとはいえ、彼が本格的に登場するのは小説半ばからだ。作品の主眼に置かれているのは、戦争後の混乱期における家族ドラマではないかと思う。
外地で従軍した女性が、戦争を経てもなお何も変わらない田舎の人々に感じる苛立ち、村の外からやってくる災いの気配、裕福な親戚の庇護の下、金銭的自立から目を逸らし続けた結果に戸惑う一族…
結末には少々納得しかねるが、時代を考えればそんなものなのかもしれない。

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2019年05月19日

Posted by ブクログ

正直、殺人事件の犯人よりもリンをめぐる人間関係の方が気になっていた。そういう意味でももちろんミステリとしてもラストの展開はめまぐるしかった。ただリンのような女性の気持ちは分からない。あんな激情にまかせて短絡的な行動をとる奴はだめだと思うんだけど。

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2015年04月18日

Posted by ブクログ

つらつらとマイペースに読める本だった。
最初の方は中々ポアロが出て来なくてつまらなかったけど、あとあと考えると必要だったなぁと思う。
にしてもリンはあんな奴と結婚して大丈夫なんだろうか。。
他人事ながら心配。。。

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2013年07月02日

Posted by ブクログ

ポワロ作品

【ストーリー】
資産家が自宅で空爆を受けて亡くなった。運良く生き残った若い未亡人が莫大な財産を相続するが、資産家を頼って暮らしてきた親族は窮地に追い込まれつつあった。
そんな折、未亡人の前夫が生きているという疑惑が持ち上がる。真実であれば資産家との結婚は無効となり、遺産は親族のものとなる。やがて、遺産を巡って殺人事件が発生するが…。

【感想】
誰に感情移入したかによって随分印象が分かれる作品。最初は嫌味な存在だった未亡人が、後半は哀れに感じる。
偶発的とはいえ罪を犯した人間を許すのは納得いかないけど、それがポワロならではの措置なのかも。

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2013年03月23日

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