窪美澄のレビュー一覧
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後味少し苦味の残る短篇集。
居酒屋の女性の店員が気になって、町で偶然出会って…と現実味のない感じで関係性が進展していく話が印象に残った。
もはや最初から出会い自体が仕組まれていたのだろうか?「中野さん」は一体何がしたいのか?「中野さん」の夫は、彼女のこの奇行を受け入れているようだがそれでいいのか?等いろいろ気になる。
何にしろ、失恋の痛手を被ってまだ完全に立ち直れていないところ、今度は詐欺のような恋愛をすることになった主人公が憐れだ。
でも、なぜか「中野さん」はそこまで悪い女性ではない気がする。本当は何か辛いことがあって、それを紛らわすためにこういう行動をしてしまうんじゃないか…とか考えてし -
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排外的な人を見ると、どうしようもなく嫌な気持ちになる。
舞台は外国人が多く住む団地で、所謂移民問題を窪美澄さんが住民目線で描いている。
移民2世や3世や技能実習生や不法滞在者の苦しみであったり、国籍やルーツによるイジメや偏見、さらには親子関係や友達関係も描かれている。
読んでいて胸が痛くなった。
大切にしなくてはならない当たり前の感覚。
価値観の違いでは済まされない人間としての倫理や道徳心の話。
個人的に何の為に読書を続けるかという理由の1つに、想像力を広げてやさしい人間になりたいというのがあるのだけれど、自分が考えてこなかったことや知らなかった世界を知る事や考えるキッカケを作ってくれた。
窪 -
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もし実在するならば、わたしもここに行きたかった。
『椎木メンタルクリニック』
とても優しい旬先生に、カウンセラーのさおりさん。
この2人の連携で心救われる方々がたくさん居るのがとても嬉しく感じます。
人は、お互いに知らないだけで何かしら辛い思いを抱えていたりするものですよね。
こんな優しい先生とカウンセラーの方に支えていただけるのは、本当にありがたいことです。
そして旬先生もカウンセラーのさおりさんも。
自身の辛い過去があるのにああして人と向き合う仕事を選ばれたことに、物語でありながらもとても尊敬します。
わたしもそこでスタッフとして働きたいなぁ。 -
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「真夜中のアボカド」は、婚活アプリで知り合った相手のことで悩む女性。人と関わりを深めることの難しさがじわじわと。自分の気持ちは、その時々で、自分が一番いいと思う方法で伝えていいのに。
「銀紙色のアンタレス」は、16歳高校1年男子の夏休み。同年代や大人の女性に向ける眼差しが、懐かしいような、こそばゆいような。この年頃の若者の発する言葉はストレートで残酷なんだな。
「真珠星スピカ」は、辛いことが身近で起こる中1の女の子。そばにいる人が鈍感なので、強くあろうと頑張ってしまうのが痛ましい。人は悲しい時には我慢しないでしっかり泣ききったほうがいい。
「湿りの海」は、妻子に捨てられ、知り合った女性と -
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外国から日本に来て、在留期限が切れて不法滞在の対象になる。
難民申請を出しても受理されず強制送還の対象になりつつ仮放免の状態。
ただその子供は教育を受けるために学校へは通学できる。
そんな状態のスリランカの母子を支えるボランティア(といってもスリランカのランチを食べて話を聞くだけだけど、、)に参加している。
その子供がつい最近大学に合格。
奨学金も受け取れることになった。
ただ経済的にはかなり厳しい。
少しでも役に立てれれば。
人にはいろいろな事情がある。
でも人にはそれが簡単には理解できない。
特に子供は残酷。
自分には理解ができないけれど、それを認める。
それはとても大切なことだと思うけ -
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窪美澄さんの読み手を引き込む描写で、それぞれの短編はどれも印象深かったです。装画は、タイトルを上手く表現されていると思いました。
好きになる人は人それぞれでいいと思うのですが、相手があってのことです。だから、なかなか上手くいかなくて悩む人はたくさんいると思います。LGBTQという言葉がようやく浸透してきたなかでも、偏見はあります。この短編集ではその事も含めて、人を好きになることの喜び、そして難しさが書かれていました。
【海鳴り遠くに】
海辺近くの別荘で暮らすようになった女性の物語です。自分の本当の思いは口に出さなければ伝わらないと、やっと気づいたことが書かれていました。
【風は西から】
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様々な形の愛や恋やそれとはまた別の何か。
友愛や性愛および無性愛。
心の内面の揺らぎや矛盾のようなものを丁寧に掬い取っているような、心のやわらかい部分を生々しくもやさしく描き、感情の微細な震えのようなものを捉えるほどの繊細さを感じた。
最後の数行で物語がストンと落ちる。
洗練された数行の気持ち良さは文学的カタルシス。
心の中でスタンディングオベーション。
物語の温度感が変わるような余白を持たせつつ、決めでも纏めでもない静かな反転のような、そんな綺麗な終わりかたはとても叙情的で、感情の落ち所がとても心地良くて、生きていくことの不安定さや難しさをふんわりと包み込むように肯定されたような感覚。
微か -
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「恋愛」をテーマにした
5名の作家さんによるアンソロジー
収録は以下の5作品
「あなたが大好き」 奥田英朗
「銀紙色のアンタレス」 窪美澄
「アポロ11号はまだ空を飛んでいるか」 荻原浩
「ドライビング・ミス・アンジー」 原田マハ
「シャンプー」 中江有里
窪美澄さんの作品は『夜に星を放つ』で既読だったが、好きな作品なので再読した。
他作品は、私は初めてのものばかりだった。
どの作品もそれぞれに趣が違っていて、個性豊かで、色々な恋愛模様がたのしめる。
こんなに大当たりばかりのアンソロジーは、なかなかないと思う。しいて選ぶなら、私は荻原浩さんの作品が特にグッときた。
読んでいて気恥ずかし -
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ネタバレ恋とか愛とか、心の柔らかい部分を描いた物語。その柔らかい部分が愛によって包み込まれたり、柔らかいからこそ簡単に傷ついたり。
感情の描写が、とても繊細だと感じました。
私が特に好きだと感じたのは、「天鵞絨のパライゾ」です。ユーシェンと主人公の関係性。
恋情があるわけではない。けれど、深くお互いを愛し大切にしているように見えました。それでも彼らは、恋情ではないから自分の人生のために、自分のやりたいことをするために、相手の人生を大切にするからこそ離れる選択をする。恋情だと、近くにいようとしてしまうけれど、近くに居なくともお互い大切に思っているとわかっているからこそなのかな?私は思いました。人を好きに -
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古い団地に暮らす中学2年生の桐乃。
桐乃のクラスメイトで同じ団地に住むベトナム人のヒュウ。
桐乃の母親で、外国人のために活動する里穂。
この3人で話は進む。
最近なにかと話題の外国人問題。文化の違いや技能実習生や不法滞在の問題など、それぞれの視点から見ると、それぞれいろんな事情があるよねって。
ワタシ的には、外国人問題の話・・・というよりも母娘の関係についての方に意識が行ってしまう。ワタシも中学生の娘がいるのでね。
娘さん辛いよね、可愛そうすぎる。
最後は、なんだか母娘が分かりあった感じではあるけれど、でも娘が母親を理解して母親側に寄って行った感じで。母親自身は変わってないなって。
母親が