窪美澄のレビュー一覧
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小さな商店街の中で育った3人。文房具屋の娘のみひろに、酒屋の兄弟・圭祐と裕太。
みひろの母は男が出来て家を出ながらまた舞い戻ってきた経過を持ち、兄弟の父は浮気性で妻に隠れて他所に通った過去を持つ。
夫婦の契りを結びながら、ひとりの人に添い遂げることが出来ない人の性を、間近に見ながら育った3人の三角関係。
圭祐と同棲しながら裕太に思いを残すみひろの中で迸る明け透けで赤裸々な女の生理が生々しい。
みひろに思いを残しながら他の女性と交わる裕太もよくある男の生態なら、みひろの欲望を取り違えて不妊治療に励む圭祐も切ない。
ひとりの人に決めて結婚しながら他の異性に気が行くのはよくあることで、人間ってどうしようもない動物だとは思うけど、そうした男女の情欲を描いて、それぞれの狂おしい心持ちは自分に当て嵌まるようでもあり、どうしようもない妄想が弾ける中、彼らがどうなっていくんだろうと頁を捲った。
感情の奔流の物語であったが、終章の話の落ち着け方に好感。 -
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血が繋がってるからいつかはわかりあえるとか、我が子は可愛いから愛せるとか無責任なことばかり言う人への嫌悪感。その善意が、無邪気さが人を苦しめることもある。素直にそれを受け入れられない自分を責めてしまう人がいる。窪美澄はそんな者を救う。無理なものは無理でええんやで、と。だから尊い。
窪美澄を読むと初めはグサリと突き刺さり穴が開いたり傷口が開いてしまう。しかし結果的に風通しが良くなり、楽になってる自分がいる。「アニバーサリー」を読んだ後はまさしくそういうかんじだった。
傷を治すのではなく、傷痕をコンプレックスと思わないようになる。自分の一部なんだと認めることができるようになる。それこそが生きていく上で最も大事なことなんだと気付かせてくれる。過去は傷と違って無かったことにできないのだから。 -
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6人の作家さんによる「食」と「人生」を描く短編集
収録作は以下6篇
伊吹有喜
「幸せのカレーライス」
中西智佐乃
「四十歳の栄養」
藤野恵美
「フレンチと返報性」
伊藤朱里
「二代目のミンチョさん」
古内一絵
「五十の壁が高すぎる」
窪美澄
「真っ赤な林檎のその上で」
特に印象的だったのは藤野恵美さんと古内一絵さん、そして窪美澄さん。伊吹有喜さんは『BAR追分』で既読だったが、やっぱり再読。
どれも良かった。
「生きること」と「食べること」は密接に繋がる。
誰と食べるか、何を食べるか。
私も若い頃は特に気にしていなかったが、年齢を重ねる度にその大切さをしみじみと感じるようになった。
一日三食として、これからの人生で私はいったいあと何食食べられるんだろう。
単純だけど、そう考えると一食の重みを感じる。
出来れば健康で、美味しいものを幸せな気持ちで食べたい。きっと身体もそれを望んでいるはず。
6人の作家さんそれぞれにメッセージ性があり、色々な気づきがあるのもまた面白い。
タイトルの最後に「?」があるのがまた乙だなぁ。
ほっこり温かいだけじゃない。
色々あるのが人生だしね。
でもやっぱり思う。
愛を込めて作られた温かい料理はほんと最強!!
さて、今宵は何を食べよう♪
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どんな読後の気持ちを抱くのだろう、そう思った。
ある出来事をきっかけに、見えていなかったものが見え、友人関係に変化も起こる。
菜乃子の気持ちがわからないが、そこではなく、菜乃子を囲む友人たちの生き様が人間らしくていいと思った。
揺れて曲がっても、生は全うしなくては。
そんな気持ちになることはおかしなことではない。
そういう気持ちになることを見つめる。
個人的には達也の思いが真っ直ぐすぎてやるせない。そういう生き方もありかもしれないが、達也なりに。
こんな辛い思いをさせる菜乃子は、やはり良くはない。後で気づいても遅い、そこにいるだけで良い。 -
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ネタバレあなたと私は違う。
だから、一緒にいよう。
多様性が叫ばれ、日本では、様々な国にルーツを持つ人が多く生活している今。そんな現在だからこそ、読んでほしい1冊。
在日外国人、技能実習生の現状について考えさせられる。
多文化共生のためにはおすすめしたい作品!
自分は外国の人に、偏見はないだろうか?と改めて考えさせるきっかけになる。
桐乃みたいに、「違う」と言って、周りから距離を置かれた経験もある。ただし、自分の意見をしっかり伝えられる部分は、私は彼女の選択は正しかったと思う。
私自身も、周りの雰囲気に負けずに自分の気持ちを素直に伝えて生きていきたいと思う。
心に残ったシーンが多すぎて、もはやここには書ききれないほど。自分の生き方についても考えさせられる1冊。
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「雨のなまえ」
愛情も誠意も、何もない男。
彼の気持ちが理解できるだけに、
どこにも踏みとどまれない男の気持ち悪さが際立つ。
「わかる」と思わせておいて、だからこそ「嫌だなあ」と思わせる。
こういう人間の描き方、窪美澄さんは上手いなあと思う。
「記録的短時間大雨情報」
夫、中三の息子、そして預かった姑。
こんな生活がいつまで続くのかって、思ってたな。
でも、そんなことにも慣れる。
それが、良いことなのか悪いことなのかは、わからないけれど。
「雷放電」
好きだった女との妄想の人生を送ってきた男は、
死後もその妄執にとらわれる。
辛哀しい
「ゆきひら」
あまりに感情を移入しすぎると、
自分の足元が危うくなる。
「猫への遺言」
コロナで急逝した夫が残した遺言と手紙。
どんな結末になろうとも、
知られなくて済むことは、墓場に持っていくべきだと思います。
「あたたかい雨の降水過程」
離婚を前提に別居生活をしている女性。小学生の息子がひとり。
子育てをしながら、その周囲のグループや組織に関わっていると、誰でも陥りそうな気分の闇。
わかる部分も多いけれど、あまりに身勝手なこの女性に、だんだん嫌気がしていた。
この短編集のところどころに、東北の震災が触れられる。
それは社会性を持った導入でもないし、道徳的な理を説くものでもない。
そこが、窪美澄さんという作家らしさなのかなと思った。
この最後の短編では、現状の自分に関わる不平や不安が、もっと大きな不穏へとつながっていき、最後には自分自身を顧みるように落としていく。
何かのインタビューで、
「小説どころではない状況」
になったけれど、それでも「自分は小説を書こう」と決めて書き上げた、と話しているようです。
震災の描き方は、作家それぞれ。
みなさんプロだなぁと思いました。 -
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「自分はこうやって、過去の家族との思い出を反芻して生きていくのだろうか」
「家族の思い出はもうこれから先、ひとつも更新されないような気持ち」
「家族が幸福だった時期は、とうに終わってしまったのかもしれないな」
子育てが落ち着いた中年女性の侘しさと焦燥感、余生と向き合う葛藤を題材に、様々な人との出会いの中で変化していく主人公が描かれる。
私にとっても近く迫り来る課題である。
母であり妻であることを全うしていれば、満たされていた時間はやがて過ぎ、いつまでも母妻らしくいて自分をもたなければ、疎ましがられるフェーズが訪れるから、残酷なものだ。
「自分を取り戻す」と言えば簡単だが、長い年月を経て得た「今の自分」を変化させ現状にフィットさせることは、相当に「たおやか」でなければ成し得ない。
迫り来るミドルエイジクライシスに備え、「女性よたおやかであれ」との作者からのメッセージと受け取った。
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この著者の本は初読。
高校の同級生が自死してしまった後の友人達の彼女との思い出やその後の人生、それぞれの関わりを描く。
最後の章が良かった。本人的には目標完遂だったかもしれない自死だが、同級生たちはそれぞれの思いを抱えてその後を生きていた。高校の頃から予兆が見え隠れしていた事から、どこかで「やっぱり」という思いを持つ。
最後の章の、死にたいという感情を持ってもいい。それはお菓子が食べたい、と同じような感情だからそのうち通り過ぎていく。という内容の言葉は、なるほどなぁと思った。確かに人に「死にたいと思うな」とは言えないかも。それでも個人的には、やっぱり踏み切る前にどうにか生きる道はないのかを考えてほしい。この章は心残りがあると成仏できない、に対する著者なりの答えなのかな、と感じた。
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子どもから大人への過渡期に、自分のルーツを含むアイデンティティに揺らぐ心が、繊細に表現されていました。里穂さんには、そこまでやりたいことがあったのに、子どもも望んだのは、無計画すぎるのかなとは思ってしまいました。
技能実習生の逃亡、川口のクルド人問題、最近このようなニュースをよく目にするようになりました。外国人が悪いのか、日本人が悪いのか、第三者でしかない私にはわかりません。でも、これだから外人は、というような意見が巷では散見されます。
言葉も文化も異なる人たちに、恐怖心や嫌悪感を抱くのは普通のことだと思います。何を言われているのか、わからないというのは怖いことです。でも、それはお互い様であることを忘れてはいけないと、そう思いました。その上で、同じ日本に住んでいるのだから、揉めてばかりではなく、お互いに折り合いをつけていかなければならない、そこが難しいところですね。