窪美澄のレビュー一覧
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重く、苦しく、しかし先を見ずにはいられない。そんな小説でした。
心が健康な時に、自室で読むことを推奨します。
まず、この小説には元となった事件があります。しかし、読んでいる間は、敢えてその事件のことを考えずに読んだ方が、この話の伝えたいことに集中できると私は思います。現実には…と考えることは、ノイズになりかねません。
私がこの小説を購入し、読み始めたのが昨年の5月末でしたので、半年もかけて、ようやく読み終えたことになります。
初めから物語に引き込まれ、続きが気になり、どんどん読み進めたくなったのですが、題材も重く、しかも妙に生々しい性描写及びグロ描写を含むため、なかなか外で読むことが難しかったです。
一章一章考えながら、ゆっくりと噛み砕くように読みました。疲れた時には読めないなとも思っていたので、自分の心が落ち着いている時に…、と後回しにしていたらこんなに時間が経ってしまいました。
それでも、初めの方の描写を今でも覚えているほど、鮮烈な物語です。それこそ、人の中身を覗き込むような体験をしました。
物語の展開としては、オムニバス形式で、主に4人の語り手から語られます。私はこの形式が好きでした。本当は交わらないはずの人生が、それぞれの行動によって、交わり、点が線になり、結び、絡まり、そして千切れる。そんなイメージが頭に浮かびました。
後で酷い目に遭うことが想像できるのに、なぜ登場人物たちがそんな行動を取ってしまうのか、ずっとそう考えながら読みました。それでも理解できる点もあり、読んでいて苦しかったです。少年更生について、考えを改めなくては、と思う点もありました。
そして、最後の最後に、タイトルの意味を突きつけられることになりました。
もしも、この小説を気になった方がいれば、ぜひ、この意味を考えながら読んでいただきたいです。 -
Posted by ブクログ
家族の物語。最初の3編は幼少期の記憶のせいで子供とうまくいかない人たち。最後の1編を除いて、小さな子供のいる家庭の話。緊張感がただならない。読んでて息苦しい。
第1話 昔イジメにあったせいで、お母さん軍団の中でうまくつきあえない私。
第2話 父とうまく幼少期を関係作れなかった父になったおれ。妻と子供と義実家との関係がどうもうまくいかない。
第3話 妹が障害者だった。自分の子供は健常者なのに、どうしてもこの事実が受け入れられずに不安の中で過ごしてしまう。
第4話 妻と子供と味気ない三人暮らし。そこに新しい女性の影が。
第5話 小さな頃に母が出て行った。今は父が再婚して、再婚相手にも子供がいて、4人家族になって暮らしている。
第6話 心臓が生まれつき奇形だったのに、高校に入ってから診断された。手術を受け、運動制限のかかる日々。母と祖母の関係が悪くなり、家庭の中の居心地が悪くなってしまった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレうう…。泣いた。もう、号泣。
ずっと「読みたい本」に登録してたんだけど、なぜ早く読まなかったのか後悔。
「ははのれんあい」というタイトルなんだけど、前半は、「母」が3人出てきて、いったい誰の恋愛の話になるのか?どう考えても主人公は「由紀子」なのだが、由紀子の恋愛の話になりそうにはないので、早くその真相が知りたくて夢中で読み進めた。
時代は昭和50年代くらいじゃないかと思われる。つまり団塊の世代の女性が、時代の変化のさなかで必死で子育てをしている。まず、出てくる登場人物に、誰も「悪い人」がいないところが切ない。まぁ、でも、由紀子の夫の智久は、私からすると、悪い人ではないかもしれないけどやっぱり絶対に許せない夫だ。
昭和の核家族の、典型的な家事や育児ができない男で、結婚して自分が家族を養う、と思っている。(しかし実際には稼ぎが非常に少ないため、由紀子は自分も働きたい、と考える。)学歴も、秀でた特技もない由紀子だが、「家族(子ども)のために何でもする」という覚悟で、必死で働く。今はパートで、後々正社員にもなれる、という希望をもって、子どもを保育園に預け、必死で働く。夫の智久は(稼ぎ少ないくせに笑)、そんなにしてまで働かなきゃいけないのか、子どもが一番ではないのか?などと由紀子に問うこともある。しかし基本的には良い夫であり、良い父であり、子どもに愛情をもって接しているし、お風呂に入れたり、ミルクを(おそるおそる)あげてみたり、保育園のお迎えに行ったり、その時代の男の中では家事・育児に参加する方ではある。
しかし、可愛かった妻が、家事に育児に仕事にと奔走し、だんだんたくましく、強くなり、更に双子も生まれ、母子の関係が強くなっていくと、家庭に居場所をなくし、水商売の外国人女性と恋仲になってしまう。
男が、妻が子供のことに一生懸命で色気がなくなり、もう女とは思えなくなった、という感じで家に居つかなくなる過程を、すごくうまく描いている。
しかし多くの、子育て経験のある女性は、これはどうしても許せないと思う。もちろん私も許せない。まじで死ね!って思う笑。私は年子の兄妹を育てた。この物語では、由紀子はやっとのことでパートの仕事に就いたと思ったら次の子どもを妊娠し、しかもそれが男の子の双子で、一気に3人の子どもの母になりつつも、また仕事に戻り、夫の両親とも良い関係を築きながら、必死で子育てをしている。学歴はなく、もともとただ大人しく可愛いだけの妻だったが、否応なく強い母になっていき、夫に対して言いたいことがあってもたいがいはこらえている。しかし、子どものために必要だと思えば、勇気を出してきちんと話し合いを持とうとする。
そんな彼女に、責めるべき要素は一ミリも見当たらない。それでも、「いい人」であるはずの智久は家に居場所を見つけられず、浮気をする。
女性(母)目線からすると、「おいおいおいおいおいおい!居場所は自分で作れや!家事と育児をお前もやれや!」としか思えない。由紀子が仕事をしようとするのを、近くに住む智久の両親も、少し離れたところに住む由紀子の母も、全力で支えてくれる様子も、私にとってはとても切ない気持ちで読んだ。私もそうやって子育てをしてきたからだ。
ここでは、智久の「母」も、由紀子の「母」も、とても尊い存在で、「母なるもの」の偉大さを感じずにはおれない。
そのどこに「ははのれんあい」が出てくるんだ?と思う。
しかし後半。急に主語が、由紀子の長男の智晴に切り替わる。いや、前半部分も、主に由紀子が主語だが時々夫が主語になったりするので、智晴が主語になっても違和感はなく、流れは自然だ。
智晴は本当に良い子に育つ。前半、智晴がまだ幼児のときに双子の弟が生まれ、家族がみんな大変になる場面では、智晴は両親からも祖父母からも「お兄ちゃん」と呼ばれ、混乱する。令和の子育てでは、上の子を「お兄ちゃん」とは呼ばないだろう(多分)。でも昭和では当たり前だったんじゃないかな。読んでいると、まだ幼いのに「お兄ちゃん」と呼ばれ、我慢させられ続けて智晴はどうなるんだろう?と心配になって来るが、智晴は立派なお兄ちゃんになり、忙しい母に代わって二人の弟の面倒を見る。
後半はそんな智晴の物語になるのだ。
自分たちを捨てて他の女性と家庭を築いた父への嫌悪。母を助けたいという想い。弟たちが父を慕う気持ち。友人と幼馴染の女の子との三角関係。智晴の葛藤と、成長の物語だ。
切なくて、いじらしくて、愛おしくて、泣ける。
私はやっぱり智久のことを許すことはできない、と思うけど、それでも物語は一応ハッピーエンドだ。
前半を読んでいるとき、必死に子育てをする由紀子に共感してしまい、どうか由紀子が不幸になりませんように。幸せになってほしいと祈るような気持ちになる。できれば、智久はよその女のところに入り浸ったりしないで、まっすぐ家に帰り、家事と育児を分担し、由紀子に寄り添って二人で幸せになってほしい。それが正解だと思う。
しかし、智久が出て行って、更に強くならざるを得なくてますます強く、たくましい「働く女」になった由紀子だからこそ、もしかして「本当の自分」を見つけ、「本当に愛し合える相手」を見つけたかもしれないのだ。なんてことだろう…。
そんな「ははのれんあい」も受け入れることができる智晴、すごい。
ちょうどこの本を読む前に、「不機嫌な夫婦」という新書を読んでいて、女性と母性について論じられていたので、すごくリンクして胸が痛かった。「母」は、母性優先でなければならないのか?「子どものために自分の人生が犠牲になっている」と考えてしまいがちな現代は、何が間違っているのか?という問題提起がされているのだが、まさに由紀子は「子どものために」という一心で、仕事と家事と育児を必死でやってきた。
前半の方で、「三人の子どもを抱えながら、仕事をすることは、ぴーんと張ったロープの上で綱渡りをするようなものだ」という記述があるが、私もまさにそうやって生きてきた。
由紀子への共感、由紀子の母世代の母性への敬意、智晴の成長に対する感動、そして悔しいが、すべて読み終えると智久に対する許しの感情すら生まれてしまう・・・。
いろんな人におススメしたい小説でした。 -
Posted by ブクログ
昭和の東京オリンピックのときに建てられた古い団地で生まれ育った、15歳のみかげ。父親は病死、母親は男と出ていき、夜の仕事をする姉の七海と暮らしています。
読み終えた後、何事にも立ち向かう強さを得た成長を感じました。味方になってくれる人達と出会いと様々な出来事を通して、これからの未来に向けて大きく成長していく期待を感じる物語でした。
ぜんじろうさんから無理矢理、団地警備員にさせられたことが、みかげの大きな成長に繋がりました。そして、夜の学校で出会った素敵な友達二人。同じようにいじめにあっていたからか、さりげない気遣いとやさしさがありました。そして何よりも姉の七海の妹に対する責任感と思いやりに、胸がうたれました。
小説のなかでは、弱い立場の人たちに現実に起こっているつらい出来事が多く描かれていました。その張本人だけが悪いわけではないのに、起こってしまう出来事。全くの他人事として考えてはいけないと思いました。
さらに、弱い立場の人が同じような人のために頑張っていることが描かれていました。痛みを知るからこその優しさ、つまりぜんじろうさんの後悔が突き動かしたことが、お互いが生きることに繋がっていたことが印象的でした。
もう一つ、みかげが興味津々だった遺体への思いが、心を許せる人たちと出会ったことで、死は悲しいものだと気づけたことに安堵しました。
最後は、団地警備員の星のバッジをつけた3人の姿に、これからの未来を切り開いていく強さを感じることができました。ただかわいそうと思うだけではなく、色々なことを考えさせられた小説でした。
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子供がテーマの短編集。
テーマがテーマなだけに、繊細なストーリーだけれど、私にはその繊細さが心地よく感じた。
夫婦のあり方だったり、子供に対する考え方がそれぞれ違っていたり、ちょっと心の中に風が吹くみたいな話が多い。
一番好きだな、と思ったのは、ラストの『金木犀のベランダ』。
今にも金木犀の緩やかな香りやパンが焼ける甘い香りが漂ってきそうで本当に素敵。
そして、繭子と栄太郎の穏やかな夫婦の形がいい。こういう夫婦、理想だな。
繭子の、
今の栄太郎との二人の生活が本当に幸せ、というのが伝わってくるしそんな彼女が愛おしくも感じる。
元来、人間は多くを求めるのではなく、今の自分の置かれている場所で一生懸命に咲く、という考え方が私自身の中にあるからであろう。
ああ、でも、一歩踏み出してみてほしいとも感じる。
繭子と栄太郎、いいなあ。続編ないかしら。 -
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ネタバレ子ども、不妊治療、夫婦…
自分の人生におけるタイムリーのテーマを、ここまでリアルに描くか!!というくらい描いている本作。
窪先生は性や命を隠すことになく、真正面から命懸けで描いている…だから毎回目が離せない。とてつもなく好きな作家さんだ。
『1LDKとメロンパン』
姪が生まれたことで、自分たちにも子どもがほしいと感じ始めた夫。それでも子どもがほしいと思えない私。そんな率直な意見を伝えたときの夫の返事に胸が熱くなった…
『無花果のレジデンス』
結婚して2年。子どもができない夫婦は妊活を始めることに…それでも妊娠できないために、不妊治療専門クリニックで検査してもらうと夫の体が妊娠を妨げている可能性が高いとの診断が出る。果たして夫婦の出す結論は…
『私は子どもが大嫌い』
主人公女性は住んでいるアパートの同じ階で、深夜子どもが一人でいるのを発見する。そんな子どもと自分を重ねる女性の葛藤がリアルに描写された話。
『ほおづきを鳴らす』
幼くして亡くなった娘と公園に現れる奇妙な女性に、面影を重ねる男性。男性はそんな彼女に不思議な感情を抱いていく…
『金木犀のベランダ』
パン屋を営む夫婦。子どもを望む夫と、子供を望まない妻。そんな妻に夫は自然妊娠したら、子どもを育てたいと提案し避妊を止めるが、5年経っても子どもはできなかった。そして夫は養子がほしいと妻に新たな提案をする。
登場人物たちの妬みや痛み、辛さ、後悔…
生きている中で感じるマイナス感情が、ひっきりなしにドバッと自分に全て流れてくる。
そしてそれが痛いほど、自分と重なる。
辛くて辛くて、何度も読むのを止めたくなる。
いつも死ぬほど辛い読書を、いつも窪先生はくれる。
でも必ず最後には光もあって、
それを知りたくていつも読んでしまう。
これからも先生の作品を自身の修行だと思って、
がんばって読んでいきたいと思う!
いつもいつも私を強くしてくれる窪美澄という作家に、これからも必死にしがみついていきたい。 -
Posted by ブクログ
次から次に生まれるシャボン玉、そしてひとつのシャボン玉に焦点をあてたきれいな装丁の本です。
小説は古い団地群に住む二人の中学生、桐乃とベトナム人のヒュウ、そして桐乃の母親の里穂が、それぞれの立場から物語を進めていました。
外国人に対してはルーツが違うことで差別し、日本人同士でも自分と違うことに寛容になれないなかで、孤独と戦っている二人の中学生の悲しさが綴られていました。
お互いの孤独に気づき、この団地を出ていきたいと願う気持ちが同じだった桐乃とヒュウが夏休みに経験したことは、優しさと現実でした。
ルーツが違う人達のなかで幸せを感じると同時に、初めて言葉がわからない集団の中で生きていく大変さを経験した桐乃。現実の自分の問題になって、初めて本当に理解できるのだと思いました。
夏が終わったあとの桐乃とヒュウが、自分の人生をきちんと生きていこうとする姿には、希望を感じました。最後に祈るような気持ちとともにタイトルの意味を理解しました。
登場人物の気持ちや状況が変わっていくなかで、団地の給水塔をふと見上げて思いを馳せる場面が何度かありました。すべてをみてきた給水塔には、多くの思いが貯まっているように思えました。
小説を読むと、その都度様々な感情と出会えます。この本では、読者の私が日頃知ろうとしていなかったことに対して、思いを馳せることができました。生きることの大変さは誰もが味わっていることですが、そこに少しの寛容さと優しさを持つことが必要だと改めて思いました。知ることの大切さを教え、違いを認め合うことの難しさに向き合える環境を作っていくのが、大人の仕事のひとつではないかとも思いました。
〈目次〉
第一章 一学期
第二章 夏休み
エピローグ