窪美澄のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
(2023年4月14日、読み終わったのはバス停のベンチ)
壱晴が、余命幾ばくもない哲先生のもとを訪れるようになった場面から、看取った場面、桜子の家に行く場面、そしてその家での出来事、ずっと涙が止まらなかった。切実さが、必死さが、眩しくて切なくて。人の命はいつか消えるからこそ眩しい。
人の感情を貝のむき身だと例えた桜子、恋愛は傷つかずに済むものではないという解説、窪美澄らしく人間のダークサイドを書いているという解説、どれもこれも深く刺さってもう抜けそうにない。私も〇〇さん(※片思いしていた、バイト先の先輩だった方です)に、むき出しの自分を晒せるだろうか。逆に晒してもらえるだろうか。桜子の焦 -
Posted by ブクログ
書き出しから引き込まれた。DVの描写が非常に生々しい。青森の村では浮いていたモダンな建築の家で虐待を受けていた主人公が、家を撮影するカメラマンになるという筋書が面白い。彼が撮影をした家で出会った、笑わない男の子のその後に希望があることを願う。家というのは、場合によっては「外から侵入することができない」という本来安心するべき条件によって最も危険な場所になる。成人した主人公に謝罪する駐在さんの思いが切ない。主人公の史也と梓の二人、過去と向き合う青森の旅で、向き合うのが恐ろしい暗い記憶の中で心を通わせる二人の関係性が対比的に浮かび上がるようだった。史也にとっては伯母、梓にとっては新しい両親(すれ違い
-
Posted by ブクログ
(2023年12月21日の感想。帰りのバスで書く。)
アンソロジーっていいよね。宝箱みたい。いろんな作家さんたちが一度に会していて豪華。
この本を買った頃は丁度自分のなかで島本理生、窪美澄、一穂ミチのブームが来ていた。だからウッキウキで買って、そのあと暫く読めずにいたのを今になってようやっと読めた。
面白かったのは綿矢りさ「スパチェラ」
綿矢りさは、中学生の頃に『蹴りたい背中』、大学二年の秋に『勝手にふるえてろ』を読んだ。両方とも、それから今回の「スパチェラ」にも当てはまることだけど、今を生きる若い女の子を描くのが本当に上手。綿矢りささん自身は歳を重ねているのに、寧ろ作品のなかではより若く -
Posted by ブクログ
ネタバレ家事の合間に少しずつ
読み進めました。
後半はページをめくる
たび涙が溢れて、
泣いてるとこを家族に
見られたくなくて、
誰もいない部屋に何度
か緊急避難しました。
他人に無償の愛を捧ぐ
ぜんじいの横顔は、
家庭を顧みず娘を死に
追いやってしまった、
死んでも死にきれない
後悔の顔。
他人への献身はそれが
娘に対する贖罪であり、
娘が生きた証を感じる
ものだったからかしら
・・・
だれも訪れない独りの
部屋で、
お茶菓子を揃えて子供
たちの訪問を心待ちに
してた、
浪江さんの淋しい笑顔
は冬の夜空に瞬く星の
ようで・・・
ねえ、聞こえますか?
ぜんじい、浪江さん、
御 -
Posted by ブクログ
ネタバレありきたりな展開のようでここまで繊細に登場人物の言い表せないドロドロとした感情を鮮明に写している作家さんだなあとしみじみ。
窪さんの作品を読むのは初めてだったので、どんな展開が待ち受けているのか予想ができずとても面白かった。
登場人物のキャラ設定が実際に存在する人物と言っても過言ではないくらいに的を得ている気がする。
私はとても共感できた。
自分のことを女性だと認識している私は、主人公のような欲に駆られることがあるのだろうか。あそこまで思い切った行動をできるのだろうか。妄想を現実にすることは恐怖も伴うのだと知った。
自分が一緒にいて幸せな人はやはり一緒にいて笑顔になれる人なのだろうか。自問 -
Posted by ブクログ
ネタバレ連作部分もある短編集。読んでいて苦しくてたまらない。心の内側を描くのが本当に上手い。
「ちらめくポーチュラカ」田舎育ちで現在は豊かな暮らしをする妻が、ブロガーとして人に認められつつも他人の目を気にしてしまう…妻の名前が出てこないところも、話とリンクしていて辛い。
「ゲンノショウコ」娘、風花の知的障害を疑う美幸。障害を持つ妹が自分を追いかけ線路で事故に遭った経験があり、上辺だけで大変だね、という人に対して我慢ならない気持ちと、実際の苦しみの間で揺れ動く。
「かそけきサンカヨウ」父が幼い子連れの女性と再婚。自分がその年齢の頃、すでに産みの母親がいなかったこともあり、早くから大人になるしかなかった主 -
Posted by ブクログ
ネタバレ息が詰まるような読後感。読んでいて、どこか共感できる部分が多く、でも読まずにいられない、そんな本。
自分自身が子どもは大嫌い、の状態で結婚した。でも相手は何人でも欲しい人だった。ひとり授かり、今となっては本当にいてくれてよかったと思っている。
子どものいる道を選んだら引き返せないこと。その通りで、でもいてくれたおかげで、思いがけない人生を歩んでいる。
この本の中のみんな、
子どもをほしい夫、ほしくない妻、不妊治療をして子どもを授かった妹、急かしてくる母
男性不妊が判明した夫、妊活休止を提案する妻
夫に先立たれた妻、上司を支えた部下
子どもが嫌いな女性、施設で育てられる子ども、施設で育つ子ども
-
Posted by ブクログ
ネタバレスピンオフの最後はちょっとうまく収めすぎに思えたけど、、全体として良かった。
寡黙系の智久と不器用な恋を経て結婚した由紀子。智久の、由紀子が仕事をすることに対する考え方とかその伝え方(というか伝えないで態度に先に現れる感じ)とか、嫌だった、、、リアルですね、、、。
家事育児の負担感の描写もリアルであーーやっぱり結婚全然したいと思えないなあーーと思ったんだけど、幼い智晴がそれを上回る愛しさで、ああ、やっぱり子供いいなあと思った。
大人になっていく智晴が良い子すぎる。
智久にうわあって思うこともあったけど、悪い人じゃないし(浮気はしたけど)、本当に嫌な人が誰も出てこなくて良かった。
いい意味でリア