窪美澄のレビュー一覧
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出来事そのものはあくまでもフィクションの範囲で自分の身の回りでは聞かないような話ばかり(だし、端からみれば結構トンチキな背景だろうし)でしたが、登場人物の考えていることがしっくりとなじむ、なじみすぎる。
アスリートでいうところのゾーン状態と同じように、自分の気持ちや考え方なんてごくごく限定的な条件で成り立っているもので、それは例えば自分の仕事や体調であったり、周囲の人にも同じように何かしらの変化があったときにそのことをどう認識するかであったり、とにかく自分も他人も移ろい行くなかで、莫大な数の変数(しかもそれぞれ独立してないし)によって刹那的に出力されているものなんじゃないか、その出力結果って簡 -
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ネタバレよかった、最後はハッピーエンドでよかった
章ごとに、登場人物の視線で描かれてて読みやすかったり、皆の思いが知れてよかった
海
母親が5歳の時に家を出てしまい、父親も出ていってしまい父の恋人とその後くらす
その恋人、美佐子さん(継母)
血の繋がらない幼い海をおぶって、病院へ駆け込んだり高校を卒業まで海と暮らす
海のことが大好きで、本当の親になりたいと願い海のお父さん緑亮と籍を入れる
海の本当の母が出てきても海を取られないために
海の父親、緑亮
父親の顔も知らず、保育園児の時にある日とつぜん母は消えてしまう
そんな辛い思いは、絶対子どもにはさせないと思いながらも海の前から消えてしまう
海は -
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最近は三国志や三体など大作めいたものを読み耽っていた私だが、夫の風俗通いを見つけてしまったとこから始まる小説を楽しめるのか不安だったけど、やっぱり窪美澄さんは最高である。
登場人物がそれぞれ抱える悩みが身近で、家族や友人、街ですれ違う人や電車で向かいに座った人、全員が大なり小なり悩みを抱えているんだと再認識させられた。
窪美澄さんの小説は、穏やかに始まって、気づいたらドカ雪が降って、暖かい日差しで雪解け、そこは元の形に戻らないけど、一歩前進した新しい場所になっているみたいな、最後はすごく温かい気持ちになれる。
大好きな作品になりました。 -
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『女』のあなたにお聞きします。
“あなたは、『女』になりたいですか?”
(*˙ᵕ˙*)え?
う〜ん、なんとも意味不明でいて、それでいて意味深な質問から始まったこのレビュー。そもそも性別=『女』であるにもかかわらず、『女になりたい』という言葉が一般的な言葉としておかしいとも言えないところにこの言葉の奥深さがあるように思います。
今の世にあっては、人の人生を簡単に示すこと自体難しいものだとは思いますが、『女』としてこの世に生まれた人の一生を敢えて綴るとした場合、『女』として生まれ、恋をして『女』になって、結婚して『妻』になって、子を産んで『母』になる。このような言い方はできると思います -
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大人の事情、子どもの事情。
どちらも互いの事情に巻き込まれざるを得ないのが、家族だ。
現在は母であり、かつては子どもだった私には、母・由紀子の第1部も、息子・智晴の第2部も、どちらも刺さりまくる。
でも、どちらも相手を思いやっているのが痛いほど伝わるので、あたたかい気持ちになる。
感情のちょっとしたゆらぎが丁寧に丁寧に描写されているので、心をほんの少し突かれただけで、なにかが決壊してしまいそうな読書だった。
ぐっとくるシーンはたくさんあるのだけれど、個人的に一番良かったのは、智晴が自分の進路を自分で決めるところ。
由紀子も智晴も、ずっと人のために生きてきた。自分のこれからを自分の思いだけ -
Posted by ブクログ
読めば読むほど物語の世界に入りんでいき、一人一人に感情移入し、読み終えるのがさみしくなってしまう本だった。
この本を読んでから、平気そうに振る舞ってるあの人にもこの人にも、きっといろいろあるんだろうな…と想像してしまう。
人は一人では生きていけなくて、問題を一人で抱えこんだり、がんばり続けるのは、信号が点滅してる状態なんですね。
自分の弱さや欠けたところに気づき、受け入れ、誰かやどこかに助けを求め、少しずつ強くなっていく。
でもその人も、知らず知らず誰かを助けていたりする。
“避難所みたいな人や場所をいくつか作っておくといいよ。”
さおり先生の言葉。
そんな人や場所がいくつかあっ