窪美澄のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
結婚しても仕事を続けるって今は普通(というよりもそうしないと生活できない)だが、昔は「寿退社」なるものが当たり前だった。本作は、そんな時代にある雑誌の編集部で出会った3人の女性の物語。フリーのライターとイラストレーターと後に専業主婦となる雑用の女性社員という組み合わせがどう絡んでいくのか。この流れがとても自然だった。そして3人が一緒に見に行った新宿騒乱。その臨場感がいい。
他にも時代時代の出来事が絡んでくるのが妙にリアルだった。窪美澄さんは実際にあった出来事と絡めた物語を描くのが本当に上手だ。
3人のうち2人がたどる人生の最後はとても幸せとは思えない。でも、だからどうだっていうのか。自分たちがやりたいようにやって生き抜いた人生。それが次の世代を作ったとも言える。それだけでも十分に意味のある人生だったはずだ。
結婚しても出産しても、仕事を続けて自分のしたいことをしようとする女性は増えていると思う。でもそれって社会が成熟しただけじゃなくて、男の給料だけでは生活できなくなってるという後ろ向きな意味合いもあるのが悲しい。
そんなやや小難しいことを考えてしまったが、単純に物語として面白い小説だった。窪美澄さんの懐がどんどん深くなっている。これからも読んでいきたい作家だ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ最悪な結婚について書かれた短編が4つと、最高な結婚について書かれた短編3つ。
黒い結婚の方は、「かっぱーん」と「愛の結晶」はイマイチ。あとは黒も白もとても良かった。黒い結婚の「水際の金魚」と「家猫」は、わかりやすく結婚に向かない人を描いている。自分が一番可愛い、みたいな。
白い結婚の方は、「シュークリーム」は婚約者の彼に不信感を抱き始めるけど、大どんでん返しで安心する素敵な話。こういう人いるよね、と思った。周りからは「要領のいい奴」とちょと誤解されるんだけど、実は見えないところでけっこう努力している。けな気というか。「あいつは要領がいい、ずるい」などと妬む人は、そういうことに想像が及ばず、自分では何の努力もしない人だ。
「ダーリンは女装家」は、15歳の頃の純粋な初恋もうまく描かれているし、40歳の大人の愛も素敵だ。女装が趣味の彼を愛し、理解し、お互いに理解しあい、ボーダーを超えて行く。
「いつか、二人で。」も、愛しあい、支えあって生きた老夫婦の物語で涙が出ます。
結婚って、いいよね、と黒から読んで白で終わったから思えた。逆に読んだらそうは思わなかったのかも!? -
Posted by ブクログ
ネタバレ実際にあった事件を題材にしてるだけに、不快に感じる方も多いかもしれないけど、解説にある通り"事件自体"を思考の外側に置かないとさよならニルヴァーナの深層を掴めない。
この事件を知らなかった自分はこれをきっかけに悲惨な事件だったと知ったから意味はあると思う。
妹家族に振り回されいる独身女性、少年Aに最愛の娘を殺されて何年も苦しむ母親、少年Aを好きになってしまった女の子、異常すぎる性癖を抑えられず14歳にして全てを失ってしまった少年A。
形は違えど皆一筋縄では解決できない地獄を抱えている。
人生はそんなものなのかもしれない。ドラマみたいに一発逆転はなくて、気づいたら"地獄の住人"になっていた。最後まで救われない。
ニルヴァーナ=死ぬ事で得られる苦のない安らかな世界。
「このまま死んでしまいたいです。」
少年Aは裁判所でそう言った。少年Aにとって死ぬことで涅槃の境地(ニルヴァーナ)に行くことができる。世間も死を望んでいる。色々なものを抱えて生きていく方が辛い。しかし国は死ぬ事を認めない。
やっと自分を好きでいてくれる少女という救いを手に入れたかに見えたが、愛する娘を殺された母親のように、最後には大切な人を失い、大きな喪失感とともに生きて償う。母親が少年Aに向けて言った言葉「離れ離れになったとき、あんたには私の苦しみがわかるやろ」のとおりに。
少年Aがした事は勿論許された事ではないけど、少年Aのような、大好きな祖母との生活を母親に無理やり剥がされ、カルト宗教集団の中で生活をして、誰からも理解されない異常性癖を持ってしまった、そんな人間はどうやって生きていったら良いんだろう。迷惑をかけないように死を望んでも国は認めてくれない。「何か原因があるはずだ、それを改善すれば元通りになる」そんなファシズム的な思考で。
大好きな作品だけど良い意味でもう一生読みたくない。読むのが辛すぎる。 -
Posted by ブクログ
奥田英朗の小説が読みたくてググったら出てきたアンソロジー。
日本の文芸界の最先端を駆ける5人の共演は、美しい交響曲のようだった。
「あなたが大好き」奥田英朗
自他友に認める平凡なOL・渡辺彩子、28歳。
結婚を真剣に考えている。
つきあって3年にもなる恋人香坂真二は、勝手に会社を辞めて放浪の旅に出てしまう。
親友に相談すると、さりげなく素敵な男性を紹介される。
誠実で堅実な彼に惹かれていくが、ある出来事をきっかけに自分の本当の気持ちに気がつく。
「銀紙色のアンタレス」窪美澄
夏と海が大好きな高校1年生の真(まこと)は、海沿いの祖母の家に泊まり込む。
そこに幼なじみの同級生・朝日が訪ねてくる。
もう、少女ではない朝日。美しくなった朝日を意識する真だが、思いはすこし複雑だった。
「アポロ11号はまだ空を飛んでいるか」荻原浩
21世紀のホスピスで向き合う老夫婦。
昭和44年アポロ11号の月面着陸生中継をみつめる中学生。
二つの舞台が交錯する時空を超えた愛の物語。
「ドライビング・ミス・アンジー」原田マハ
元会社専務のタクシードライバー善田雄二。
部下の不祥事の責任を取らされて会社を追われる。
妻の死に目にも会えなかったことから、既に嫁いだ一人娘との距離が出来てしまう。
英語が堪能な善田は、京都観光中に自転車にひっかけられて尻餅をついた彼女に声をかける。
そこから始まる小京都旅行。
二人の人生が、少しだけ動き出す。
「シャンプー」中江有里
両親が離婚して母と暮らす中2のミサト。
理容師の父とは月1回、父の「職場」で髪を切ってもらうだけのルール。
母のいきつけの美容室の新人美容師タケルと仲良くなったことで、ミサトはいじめにあってしまう。
タケルとミサトが考え抜いた、仰天のいじめの対策とは。 -
Posted by ブクログ
何となくの不穏さを感じながら読み進めていたら、突き落とされるようなラストに出くわす。
5つの短編のうちの3つがそういう形で、1つが不穏なまま終わり、残る1つだけが少しの救いを感じた。
読み終えたあと心がざわつく。良いとは言えない後味に戸惑う。でも現実にも、こういう理不尽な出来事は時に起こってしまう。そういう、自分の身にも降りかかるかもしれないという恐れを感じるような物語が並ぶ。
様々な形で“雨”が登場する。
出産を控えた妻に恐れを感じ始める男が主人公の表題作では、産まれてくる子どもに雨にまつわる名前を付けようと妻が言い出す場面があり、年下の男に一方的な恋をしてしまう主婦が出てくる「記録的短時間大雨情報」では、ゲリラ豪雨のように、ほんの短時間に激しく恋心を燃やしてしまう様が描かれる。
その他の3つも合わせて、うまくいかない現実や理不尽な出来事、もがいたり、時に逃げ出したり、罪の意識に苛まれたりという人々の日々の物語が綴られている。
1つだけ異質なのは「雷放電」というお話で、幻想的で、ミステリ的な要素もあって、怖面白かった。
つまらない日常を捨てて逃げ出したい。決まりつつある未来に恐れを感じる。過去の過ちから逃れられずこの先罰が当たるような気がしてしまう。
誰もが不意に抱えてしまうかもしれない感情たちは、とても現実的で、身近に感じた。
ラストの「あたたかい雨の降水過程」は希望を感じる物語だったから、理不尽だらけの短編集でも、読後感は悪くなかった。
そういう意味で、物語を並べる順番ってけっこう大事なのだと分かった。 -
Posted by ブクログ
続きが気になって一気に読んだ。
東日本大震災の年に妊娠している真菜。
母親との確執があり、父親のいない子を妊娠し自暴自棄になっている。
75歳で現役のマタニティスイミングの講師である晶子はそんな真菜を気にかける。
地震、そして原発事故がふたりを結びつける。
真菜の抱えているトラウマのようなものは、わかる気がするし、晶子の存在がうざったいことも理解できる。でも結局は晶子に救われたんだなと思う。
晶子のお節介がなかったら、真菜はつぶれていたと思う。
子どもを生んだ今、読むからこそ響く言葉もたくさんあったし、共感できる部分もとても多かった。
真菜が出産したことによって、悩みながらもどんどん逞しく強くなっていく姿は美しかった。
完璧な母親になんてなれないし、誰しも初めてのことで不安に押し潰されることも多い。
自分が母親との関係をうまく築けなかったっていう負い目も真菜にはあると思う。
でも真菜はきっといい母親になるんじゃないかなって思う。
そして晶子の世代も子育てには苦労したと思う。今みたいに父親が積極的に育児参加するわけでもないし。それが当たり前って思ってる世代だとは思うけど、想像しただけで大変だと思う。
頼れるものは頼りきらないと育児なんてできないよなあと身をもって実感する。
母の視点、娘の視点、どっちにも感情移入できるし、それらが重なって編み出されるストーリーは本当に素晴らしかった! -
Posted by ブクログ
小さな商店街の中で育った3人。文房具屋の娘のみひろに、酒屋の兄弟・圭祐と裕太。
みひろの母は男が出来て家を出ながらまた舞い戻ってきた経過を持ち、兄弟の父は浮気性で妻に隠れて他所に通った過去を持つ。
夫婦の契りを結びながら、ひとりの人に添い遂げることが出来ない人の性を、間近に見ながら育った3人の三角関係。
圭祐と同棲しながら裕太に思いを残すみひろの中で迸る明け透けで赤裸々な女の生理が生々しい。
みひろに思いを残しながら他の女性と交わる裕太もよくある男の生態なら、みひろの欲望を取り違えて不妊治療に励む圭祐も切ない。
ひとりの人に決めて結婚しながら他の異性に気が行くのはよくあることで、人間ってどうしようもない動物だとは思うけど、そうした男女の情欲を描いて、それぞれの狂おしい心持ちは自分に当て嵌まるようでもあり、どうしようもない妄想が弾ける中、彼らがどうなっていくんだろうと頁を捲った。
感情の奔流の物語であったが、終章の話の落ち着け方に好感。 -
Posted by ブクログ
血が繋がってるからいつかはわかりあえるとか、我が子は可愛いから愛せるとか無責任なことばかり言う人への嫌悪感。その善意が、無邪気さが人を苦しめることもある。素直にそれを受け入れられない自分を責めてしまう人がいる。窪美澄はそんな者を救う。無理なものは無理でええんやで、と。だから尊い。
窪美澄を読むと初めはグサリと突き刺さり穴が開いたり傷口が開いてしまう。しかし結果的に風通しが良くなり、楽になってる自分がいる。「アニバーサリー」を読んだ後はまさしくそういうかんじだった。
傷を治すのではなく、傷痕をコンプレックスと思わないようになる。自分の一部なんだと認めることができるようになる。それこそが生きていく上で最も大事なことなんだと気付かせてくれる。過去は傷と違って無かったことにできないのだから。