窪美澄のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
窪美澄さんの5つの短編集
「雨のなまえ」
「記録的短時間大雨情報」
「雷放電」
「ゆきひら」
「あたたかい雨の降水過程」
窪美澄さんらしい丁寧な描写で、人間の奥深い心理が描かれていた。
男女の性描写も多いが、その艶かしさだけでなく、背徳的であったり、おざなりで気怠さも感じさせる巧みな描写が際立っていた。
どの物語も共通して、表面的には見えない複雑で鬱積した心にフォーカスされているのに、読んでいると不思議と引き込まれてしまう。
「雨のなまえ」から始まる4作品は、どれもラストの余韻まで衝撃的だった。物語に表と裏がある構成は、ラストまで気が抜けず、主人公達の心の奥底に迷い込んだような心境になる。
唯一、最後の「あたたかい雨の降水過程」だけ救いがあったのは、この順番での掲載も含めて読み手への配慮なんだろう。
巻末の篠田節子さんの解説がとても分かりやすい。
言葉をお借りすると、窪美澄さんは倫理的な規範や理念を、小説を通じて読者に押し付けたりしない。ただそこにある生き物としての人間の欲望やエネルギー、様々な矛盾を含んだ人の有り様を真っ向から描くことのできる数少ない作家の一人なのだろう。
人生経験を積んだ大人に、特にオススメしたい短編集だった。
-
Posted by ブクログ
弱い者が更に弱い者達をたたく…ってこういう連鎖なんだろうな。
学校でも疎外され家にも居場所がなくて、良くないとわかってるけど受け入れてくれるグループに入って、抜け出せなくなったり。
いくら努力しても出生や国籍、親の環境とか変えられないなか、もがいて苦しんで、少しでも上にあがろうとするけど。
寂しくて情けなくて、どこか知らない別の場所にいきたい。別の新しい人生が始まるはず、って願うけど。
どんな人生でも己で選んで、その生き方に責任をもって、胸を張って愛せって。己で切り開くしかないのは、子供には辛い人生だよね。
最後、立ち向かうシーンで終わるのも、リアルでいいと思う。これからどう生きていくかは、ヒュウのみが知るところ。
私達は何ができるだろう。
まずは知るところからなんだろうな。 -
Posted by ブクログ
Audibleで歩きながら聞き始めてうっかりはまってしまった。
こんなに気になる物語はなかった。。私の小さな町にも技能実習生や、工事現場や水商売系で働く外国人がいて、その子どもたちもいる。で、やっぱり色眼鏡で見てきてしまっていた私自身もいる。
なせなら微笑ましい人やなぜか卑屈な人や傲慢すぎる人や慣れないことを慣れないままにしてしまい頼るばかりの人など様々な人がいるから。
なんか嫌だな、と思うこともいっぱいあったのけど、結局「知る」をしていなかったと改めて突きつけられた気がする。それは国籍やなんかは関係ないと思う。同じように見て見ぬ振りをすることも。それを思うと桐乃はかなりいい子だと思う。ヒュウは卑屈なままで・・・それでも一生懸命存在価値を求めている。
それより、二人の母親が自分本位すぎてイライラした。。それと、教師も・・・。もっと大切なことを早く対処しないと。物語の最後にもっともらしくなるけど、遅い!って思ってしまった。
お祖父さんの「つらいことがあるのなら闘え。それができないのなら耐えろ」の言葉は辛いがこうして生きてきたんだと思う重い言葉でもある。
こんなに難民、いじめ、ネグレクトなど、炙り出される社会問題を描く窪さんの作品に初めて出会った気がする。
最後2人は「自分の人生は自分だけのものだ」にたどり着く。これからが困難はまだまだ有るけどスタートだ。虹がかかる給水塔をイメージしてそっと祈る。
-
Posted by ブクログ
誰でも心が病むことはありますよね。
でも病んでいる時は、自分だけがそうなんじゃないかと思ってどんどん深みにハマりますよね。
この本を読んでいて、見た目だけでは分からない、悩みでいっぱいで辛い人が自分以外にもきっとたくさんいるんだよな、と思えて少し安心しました。
そして、こんな素晴らしいクリニックとこんな優しい喫茶店があれば、本当に1人じゃないと思えるかもしれないと思いました。
自分でも悩んだことがあるような悩みも出てきたりして、読んでいて苦しいところもありましたが、みんな立ち直って元気になっていく姿をみてホッとしました。
そして、涙が溢れそうになったお話もありました。
とっても良い読書時間になりました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ弟が面白かったと言っていたので読んでみたが、読んでみて驚いた。え、こういう作品が好きなんや。
窪美澄さんの作品の中では以前読んだ『晴天の迷いクジラ』の方が個人的にはこの本よりも好みだった。
それでもこの作品も、登場人物のきれいではない感情が細かく描かれていて、最後までモヤモヤする作品で、とても面白かった。
この作品を読んで、感情の難しさを強く感じた。自分が好きな相手とうまくいくとは限らず、むしろ好きであればあるほど、自分の気持ちを抑えたり、素直に行動できなくなってしまうことがあることを実感した。
登場人物たちの感情は決してきれいなものばかりではなくて、嫉妬や迷いなど、複雑で現実的な感情が多く描かれていた。その分、とても読み応えがあり、リアルな人間関係を見ているように感じた。
また、恋愛はきれいごとではないな、と強く感じた。小説でありノンフィクションでありながら、都合よくまとめられることなく、現実に近い形で描かれていた点が良かったと思う。読み終わった後のモヤモヤこそ、現実に近いと感じた。恋愛や人間関係においては、すべてが納得のいく形で解決することは少なく、どこかで諦めや妥協が必要になるのだと思う。
そういった意味で、この物語の結末は、現実の中ではむしろ整理された、救いのある終わり方だったのではないかと感じた。
-
Posted by ブクログ
4人のそれぞれの視点から見れば抱えてる気持ちも理解できる、けどどれも共感はしない。
もっと若い頃に読んでいたら恋することに苦しくなっていたのかな。
魅力的な宮澤さんに溺れる気持ちが今だと懐かしく感じる。
届きそうで届かない人に焦がれて、相手も届かない人に焦がれて、の繰り返し。
4人の摩擦がどこに向かうのか切なくもどんどん傷が深くなり、ひとりになった時ようやく気づくことがある。
たびたび登場する富士山も、美しく描かれがちだけど樹海の死のイメージや地元の億劫な記憶の象徴として描かれていて印象的だった。
そして海斗はすごくいいヤツ。
不器用なんだけど、優しい心を持った幸せになってほしいいいヤツ。
-
Posted by ブクログ
「天鵞絨のパライゾ」が1番好きだったなぁ。
好きになっても、いちばん好きな状態のまま、気持ちは続かないよね。誰かを好きだった気持ちってちょっとずつ減っていく。・・・だったら、最初から好きにならなければいいのに
と言った私に対して
そういうふうに巻き込まれてしまうことがあるでしょう。自分ではどうしようもないことに。
と返答したユーシェンの言葉。
自分でもあがらえないほどの強い気持ちや想いで締め付けられて、切なさと苦しさの狭間で揺れること、ある。
それを、『巻き込まれてしまう』と表現している言葉がなんだか腑に落ちるというか、心にスっと残った。 -
Posted by ブクログ
最近立て続けに人間の見たくないものや恥ずかしい部分などの隠しておきたいでもそれが本性みたいなものがたくさん描写されるような書籍を読んできたのでなんだかとっても心が温まる作品でした。本作はざっくり分けると2部構成の第1部はある女性が結婚して妻として、母としてのお話が描かれ、第2部ではその子供(長男)の視線で描かれていく。その二人だけではなく、家族一人一人が成長する過程ももちろんであるが、『家族』がどう変化し、成長していくかについて描かれていく。中には悲しい出来事もあるけれど、登場人物一人一人がとっても優しくて温かい。こんなに柔らかくて温かい話を読んだのは久しぶりで、子供達だけじゃなく、周りの大人たちの成長を追っていくのがとても楽しい作品だった。
また白石一文さんのあとがきも良い。
私たちの人生というのは簡単に言えば、人間関係の数珠つなぎである。 自分は他人とかかわることによって初めて「自分」となる。だとすると、私たちの人生を善きものにするも苦難の塊にするも、結局はいかに人間関係をうまく取り結んでいくかにかかっている。そして、この人間関係を豊かで学び多きものにするというのが、実は、とてつもなくむずかしいのである。
小説というのは人間の複雑さを私たちに教え、自分なりの人間観、人生観を練り上げていくうえで欠かせない貴重な〝ものの見方〟を伝授してくれるツールなのだ。 -
Posted by ブクログ
最後の数行、そして題名
これは作者の決意表明ともいえると思った
4人の登場人物それぞれがニルヴァーナには
たどり着けず
というよりはたどり着いてはいけないようなことをしているのだ
全ては「因果」なのだ
元少年Aは一瞬たりともこれから普通の人生が歩めると思ったこと
莢は犯罪者を愛して一緒に逃げようとしたこと
今日子は、この小説を書いたこと
そうしたらなっちゃんの因果はなんなんだろう
光の存在を莢に重ねたこと?
一瞬でも元少年Aに対してプラスの感情を持ってしまったこと?
なっちゃんがニルヴァーナにさよならしなければいけない理由って何なんだろう…
元少年Aがいくら幼少期に深い傷を負っていたとしても罪を犯してあちら側に行った時点で、何も同情の余地はないと思うけどな
元少年Aは国からこれからの人生のために手厚いサポートを受けているのに対して、被害者家族はある日突然大切なひとを失ったのにほとんどサポートかないように語られていた
少年犯罪の更生についても考えさせられた