窪美澄のレビュー一覧

  • やめるときも、すこやかなるときも

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    「やめるときも、すこやかなるときも」

    結婚の誓いの言葉であることは最初は知らなかった。知ったあと、このタイトルの重み、そして結婚ということの重みが感じられる。

    相手が病んでも、健やかであっても、一生添い遂げる覚悟があるのか?

    盲目的になることではない。桜子のなかにも壱晴のなかにも、複雑で暗い部分がある。付き合うと決めたのは、各々の目的があり、必ずしも純愛ではない。激しい熱愛も持たなくて、会うたびに付き合い方を模索しているような恋愛模様。心の傷のかさぶたが剥がれるときは、試練が来るときである。

    「やめるときも、すこやかなるときも」とは、結婚というものには、性格と習慣の調整もあれば我慢もあ

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    2024年12月29日
  • 私は女になりたい

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    ネタバレ

    窪美澄氏の著作を読むたびに性愛の小説が上手だなあ…と感じる。直木賞作家に向かってなんてことを言うんだという話だけど
    理性ではわかっている、でも心が情動が泊まらない、止められないという人間が本当に愛おしい。窪氏の小説にはそういう人たちがよく出てくる
    私は理性的な人間が好きだし自分もそうありたいと覆うが同時に感情も大切だと思うし感情こそが人間だと思っているので人間臭い登場人物がたくさん見られる作品は好きだ
    直接的なタイトルもすごくいい。私はフェミニストだという自覚があるがこういう恋愛をする女性の話も大好き
    たぶん嫌いな人も受け入れられないひともいると思う。主人公のように大人で自立もしている女性が一

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    2024年12月29日
  • じっと手を見る

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    ネタバレ

    梅雨のようなじっとりとした空気が物語全体に漂っていたが、繊細でリアルな描写のおかげでかなり読みやすい恋愛小説だった。性描写も多々あるが、私としては綺麗でいやらしさがなくて良いと感じた。

    私はどちらかと言えば宮澤や仁美ではなく、日奈や海斗に近い生活をしているので、職は違えど共感できる部分が多くあり感情移入してしまった。休日はショッピングモールに行き、特別欲しくもないものを買ってストレスを発散する。恋愛も身近な人と。生活水準が同じくらいの人でないと関係を続けて行くのは難しいし、日奈たちもそういう感じなんだろう。

    恋愛模様と生死がいつも隣り合わせで、恋愛の浮ついた様子があまり描かれていなかったの

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    2024年12月27日
  • 二周目の恋

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    二周目の恋ということで、ほろ苦い大人の恋物語を想像したけど、全ての短編がそういうわけではなかった。「海鳴り遠くに」の描写が綺麗だった。

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    2024年12月15日
  • タイム・オブ・デス、デート・オブ・バース

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    かつて、この国では庶民の殆どは貧しかった。
    貧富の差が激しくなってきたのはいつごろからだろうか。

    父が亡くなり、母はまだ10代の娘二人を置いて家を出ていった。
    体の弱い妹はパン屋のアルバイトをしているけれど、そんなにお金にならない。結局は姉の働きで生活している。
    ある日、妹がおじいさんに声をかけられて団地警備員になる。
    二人で、団地に住んでいるお年寄りを見回るのだ。
    やがて妹の二人の友人も団地警備員に加わる。
    友人もそれぞれに訳ありだ。
    一人は在日韓国人で、もう一人は吃音者。

    おじいさんの存在が、彼らが今後生きていく上で大きな力になるだろうと思う。

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    2024年12月10日
  • 二周目の恋

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    小説のアンソロジーというものを初めて読んだけど、新鮮な感覚だった。当たり前だけど一作一作作者が違うから作風も文体も全然違っていて1冊のなかで色々なテイストを楽しめてよかった。
    特に一穂ミチさんと窪美澄さんの話が好き。

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    2024年12月08日
  • タイム・オブ・デス、デート・オブ・バース

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    久々に読んだ窪美澄さんの本。
    団地で姉妹だけで暮らしていた中、団地警備員としていろんな家に関わっていく。それはぜんじろうさんも3人にしても、その家の人のためじゃなく、自分のためであることを各々意識しながらやっているのがいいなと思った。
    未来はキラキラしていそうで、現実にまみれていることを感じた。

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    2024年12月05日
  • いるいないみらい

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    20-30代女性にぐさぐさ刺さる短編集。

    これは自分が思ってることでは?
    を見事に物語に文章に落とし込んでくれている。

    妊娠への焦りがあるうちは読むとキツイかもしれない。

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    2024年12月03日
  • アカガミ

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    (2024年2月8日の感想。テスト期間真っ只中、駅の待合室にて。)
    英語圏文学演習のレポートのために急遽買って読んだ本。
    「性」から離れて「生」からも離れる若者。国が用意するお見合いシステム。「アカガミ」に「志願」する「勇気ある者」。使われる言葉は胡散臭いのにそれに全然気づけなかった。どこか他人事ではない気がして、たかがフィクションだと一蹴できなくて。

    私は万年片思い女なので家族以外の人と手を繋いだことすらない、喪女予備軍。「性」からは確実に離れていると感じる。気持ち悪い。人間も動物なんだなって強制的に感じて、とにかく気持ち悪い。私だって親のそういう行為の末に生まれたわけだけど、時々ゾッとす

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    2024年11月26日
  • ふがいない僕は空を見た(新潮文庫)

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    情景・心情描写のうまさが印象的。著者の使う言葉からその景色がはっきりと頭の中でイメージされる。作中では性的思考・行動のどうしようもない部分で失敗や苦悩、ヤングケアラーなどの問題が語られる。

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    2024年11月26日
  • 雨のなまえ

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    ちょっとだけ勇気を出して自分の気持ちに素直になる。頑張ってないわけじゃない。けど全てを真面目にこなしていくのも限界がある。
    それぞれの立場が抱える困難と希望は現実には中々上手くはいかない。
    そんな短編集でした。
    なんだかあまり明るい結末ではないお話が多かったですが、上手くいかなくてもどこかスッキリしている主人公に少し救われる気持ちになりました。
    失敗しても情けなくても叱られても人はまた生きていける。そんな気持ちになりました。

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    2024年11月17日
  • ふがいない僕は空を見た(新潮文庫)

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    人間の「性」について、
    決められたゴールもなく、
    解決策もなく、
    ただその流れに身を任せて登場人物が
    行動していく様を書いた物語。

    読む者がこの小説に何を思うのか、
    何を重ねるのか、各々自由で、
    正解なんてないことを教えてくれる。

    ただ、みんな自分や家族、
    何かを守っているようにも見えた。
    時にはプライドや誇りも感じさせ、
    時には欲望や貪欲な欲の部分を放出させる。
    (序盤は欲笑)
    「人間の生き様」を筆者の独特な表現で
    書き綴っていて面白かった。

    他の作品も読んでみたい。

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    2024年11月17日
  • 黒い結婚 白い結婚

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    ネタバレ

    木原音瀬先生のお話を目当てに購入したので、お目当ての話だけ読んでもいいかと思って最初から順番に読み始めましたが、全部読んでしまいました。
    全部読んだあとに思ったことは、やっぱり木原音瀬先生は癖が強い。笑 男性が妊娠できる世界という設定はおもしろかったし、男性も苦しんでほしいと思ってしまいます。

    お気に入りは白い結婚の「ダーリンは女装家」、「いつか、二人で。」
    今年は黒い結婚寄りの、暗めのお話を読むことが多かったので、白い結婚で心が洗われました。ハッピーエンドもいいですね。

    ダーリン〜
    15歳の時に大好きだった人と結婚するなんて素敵。男であり女でもある旦那さん、いいですね。認知症になったお母

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    2024年11月13日
  • トリニティ(新潮文庫)

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    序盤はやや冗長に感じましたが、登場人物それぞれが選び、それを振り返り、必死になってゆく中盤以降はテンポよく楽しむことができました。
    思ってもみない方向から打ち付けられる展開や心理描写はほとんどありませんが、順当に面白かったです。
    登紀子さんが、新しい夫婦の形を実践しているつもりだった、と気が付いてしまうところが印象に残っています。

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    2024年11月03日
  • ご本、出しときますね?

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    西加奈子さん、朝井リョウさん、加藤千恵さん、羽田圭介さんなど、多数の著名な作家さんとのトークがとにかく面白い。
    みなさん言葉選びが秀逸で何気ない話でも深さが出て思わず笑ってしまう。
    親交の深い若林さんだからこそ聞ける攻めた質問も多数あって興味深かった。
    いろんな作家さんの人間性が垣間見れる。
    マイルールやオススメの一冊などを紹介してくれていて、読みたい本も見つけらた。

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    2024年11月03日
  • ふがいない僕は空を見た(新潮文庫)

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    ネタバレ

    登場人物ごとに視点を変えながら続く連作の短編。

    テーマはおそらく、性とか生とかそんな感じ。

    高校生の斉藤君が半ば若気の至りで人妻のあんずと関係を持ってしまい、それがバレて街中にばら撒かれてしまうと言った流れ。
    最終章の母親目線はとても素敵なことが書かれていて良かったんだけどそれ以外は基本胸糞悪い。
    不倫の様子を隠し撮りし、バラまく旦那や隠し撮りを知りつつ行為に及び、アメリカに逃げるあんずも、友達の顔をして裏でばら撒きに加担する友人も全てが気持ち悪い。

    一度のミスやゴシップを逃すまいと囃し立てる世間の気持ち悪さがよく描かれた作品。

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    2024年10月28日
  • ははのれんあい

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    平凡な家庭を築き幸せな日々を送るはずだった由紀子。
    普通の奥さんが子供3人を抱えたくましく生きながら「家族は時々形を変えることがある、だけど家族はずっと家族」と語る強さがすごいと思った。
    智晴くん、お兄ちゃんとして、母を支えるナイトとして、けなげさに涙出そうだった。
    智久の再婚相手のカンヤラット、娘のシリラット、さくらと由紀子の双子の寛人、結人が集まって食事するのがすごい。

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    2024年10月24日
  • ふがいない僕は空を見た(新潮文庫)

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    文章が読みやすく、あっという間に読み終わりました。
    それぞれの人が抱えてる問題が苦しいながらも前に進んでいく様子が描かれていました。
    問題を抱えながらも生きていくことの大切さを伝えているのかなと思いました。

    最終的にはどう解決したのかハッキリされていないところが私はモヤモヤしますが、あとは読者の想像の中で描かれていくということでしょうかね〜

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    2024年10月22日
  • すみなれたからだで

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    ネタバレ

    ずっと前に、読んだはずの窪美澄作品を再読中。
    覚えてるようなそうでないような…
    父を山に棄てにいく
    死にたがったのに死ねなかった父親。仕事を続けられず娘のヒモのようになってしまった父親。そんな父親の言った『君の言い方は人を傷つける。』その忠告通り、私は何度も失敗した。そして人生で2度男を捨てる決断をする、父親と夫。反面教師にしたいのにできず過ちを繰り返す自分自身を見ているようで辛くなる。
    インフルエンザの左岸から
    アルコール、ギャンブル、借金、自殺未遂で何度も警察から呼び出しを受け最終的にソーシャルワーカーのお陰で介護施設に入れてもらえることになった。亡くなっても面倒が押し寄せ、それなのに放

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    2024年10月18日
  • ぼくは青くて透明で

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    窪美澄さんの小説はたくさん読んできたけれど、同性愛が主題の小説は初めて読んだと思う(他に存在するのかはわからないけど)
    高校1年の海(かい)の章からスタートし、ラストは成人した海の章で完結する。その間に、海の継母である美佐子、海が恋した同級生の忍、海と忍の友人である璃子、海の実父である緑亮の章があって、それぞれが抱えてきたものや心情などが綴られている。

    若い男の子2人の同性愛の物語ではあるけれど、今流行りのBLとは少し雰囲気が違って(BLの世界にあまり詳しくはないけれど)どちらかというと、葛藤や苦しみ、人としての醜い部分もある感情、などに焦点を当てている物語。
    海は幼いころからセクシャル・マ

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    2024年10月16日