窪美澄のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「やめるときも、すこやかなるときも」
結婚の誓いの言葉であることは最初は知らなかった。知ったあと、このタイトルの重み、そして結婚ということの重みが感じられる。
相手が病んでも、健やかであっても、一生添い遂げる覚悟があるのか?
盲目的になることではない。桜子のなかにも壱晴のなかにも、複雑で暗い部分がある。付き合うと決めたのは、各々の目的があり、必ずしも純愛ではない。激しい熱愛も持たなくて、会うたびに付き合い方を模索しているような恋愛模様。心の傷のかさぶたが剥がれるときは、試練が来るときである。
「やめるときも、すこやかなるときも」とは、結婚というものには、性格と習慣の調整もあれば我慢もあ -
Posted by ブクログ
ネタバレ窪美澄氏の著作を読むたびに性愛の小説が上手だなあ…と感じる。直木賞作家に向かってなんてことを言うんだという話だけど
理性ではわかっている、でも心が情動が泊まらない、止められないという人間が本当に愛おしい。窪氏の小説にはそういう人たちがよく出てくる
私は理性的な人間が好きだし自分もそうありたいと覆うが同時に感情も大切だと思うし感情こそが人間だと思っているので人間臭い登場人物がたくさん見られる作品は好きだ
直接的なタイトルもすごくいい。私はフェミニストだという自覚があるがこういう恋愛をする女性の話も大好き
たぶん嫌いな人も受け入れられないひともいると思う。主人公のように大人で自立もしている女性が一 -
Posted by ブクログ
ネタバレ梅雨のようなじっとりとした空気が物語全体に漂っていたが、繊細でリアルな描写のおかげでかなり読みやすい恋愛小説だった。性描写も多々あるが、私としては綺麗でいやらしさがなくて良いと感じた。
私はどちらかと言えば宮澤や仁美ではなく、日奈や海斗に近い生活をしているので、職は違えど共感できる部分が多くあり感情移入してしまった。休日はショッピングモールに行き、特別欲しくもないものを買ってストレスを発散する。恋愛も身近な人と。生活水準が同じくらいの人でないと関係を続けて行くのは難しいし、日奈たちもそういう感じなんだろう。
恋愛模様と生死がいつも隣り合わせで、恋愛の浮ついた様子があまり描かれていなかったの -
Posted by ブクログ
かつて、この国では庶民の殆どは貧しかった。
貧富の差が激しくなってきたのはいつごろからだろうか。
父が亡くなり、母はまだ10代の娘二人を置いて家を出ていった。
体の弱い妹はパン屋のアルバイトをしているけれど、そんなにお金にならない。結局は姉の働きで生活している。
ある日、妹がおじいさんに声をかけられて団地警備員になる。
二人で、団地に住んでいるお年寄りを見回るのだ。
やがて妹の二人の友人も団地警備員に加わる。
友人もそれぞれに訳ありだ。
一人は在日韓国人で、もう一人は吃音者。
おじいさんの存在が、彼らが今後生きていく上で大きな力になるだろうと思う。 -
Posted by ブクログ
(2024年2月8日の感想。テスト期間真っ只中、駅の待合室にて。)
英語圏文学演習のレポートのために急遽買って読んだ本。
「性」から離れて「生」からも離れる若者。国が用意するお見合いシステム。「アカガミ」に「志願」する「勇気ある者」。使われる言葉は胡散臭いのにそれに全然気づけなかった。どこか他人事ではない気がして、たかがフィクションだと一蹴できなくて。
私は万年片思い女なので家族以外の人と手を繋いだことすらない、喪女予備軍。「性」からは確実に離れていると感じる。気持ち悪い。人間も動物なんだなって強制的に感じて、とにかく気持ち悪い。私だって親のそういう行為の末に生まれたわけだけど、時々ゾッとす -
Posted by ブクログ
ネタバレ木原音瀬先生のお話を目当てに購入したので、お目当ての話だけ読んでもいいかと思って最初から順番に読み始めましたが、全部読んでしまいました。
全部読んだあとに思ったことは、やっぱり木原音瀬先生は癖が強い。笑 男性が妊娠できる世界という設定はおもしろかったし、男性も苦しんでほしいと思ってしまいます。
お気に入りは白い結婚の「ダーリンは女装家」、「いつか、二人で。」
今年は黒い結婚寄りの、暗めのお話を読むことが多かったので、白い結婚で心が洗われました。ハッピーエンドもいいですね。
ダーリン〜
15歳の時に大好きだった人と結婚するなんて素敵。男であり女でもある旦那さん、いいですね。認知症になったお母 -
-
Posted by ブクログ
ネタバレ登場人物ごとに視点を変えながら続く連作の短編。
テーマはおそらく、性とか生とかそんな感じ。
高校生の斉藤君が半ば若気の至りで人妻のあんずと関係を持ってしまい、それがバレて街中にばら撒かれてしまうと言った流れ。
最終章の母親目線はとても素敵なことが書かれていて良かったんだけどそれ以外は基本胸糞悪い。
不倫の様子を隠し撮りし、バラまく旦那や隠し撮りを知りつつ行為に及び、アメリカに逃げるあんずも、友達の顔をして裏でばら撒きに加担する友人も全てが気持ち悪い。
一度のミスやゴシップを逃すまいと囃し立てる世間の気持ち悪さがよく描かれた作品。 -
Posted by ブクログ
ネタバレずっと前に、読んだはずの窪美澄作品を再読中。
覚えてるようなそうでないような…
父を山に棄てにいく
死にたがったのに死ねなかった父親。仕事を続けられず娘のヒモのようになってしまった父親。そんな父親の言った『君の言い方は人を傷つける。』その忠告通り、私は何度も失敗した。そして人生で2度男を捨てる決断をする、父親と夫。反面教師にしたいのにできず過ちを繰り返す自分自身を見ているようで辛くなる。
インフルエンザの左岸から
アルコール、ギャンブル、借金、自殺未遂で何度も警察から呼び出しを受け最終的にソーシャルワーカーのお陰で介護施設に入れてもらえることになった。亡くなっても面倒が押し寄せ、それなのに放 -
Posted by ブクログ
窪美澄さんの小説はたくさん読んできたけれど、同性愛が主題の小説は初めて読んだと思う(他に存在するのかはわからないけど)
高校1年の海(かい)の章からスタートし、ラストは成人した海の章で完結する。その間に、海の継母である美佐子、海が恋した同級生の忍、海と忍の友人である璃子、海の実父である緑亮の章があって、それぞれが抱えてきたものや心情などが綴られている。
若い男の子2人の同性愛の物語ではあるけれど、今流行りのBLとは少し雰囲気が違って(BLの世界にあまり詳しくはないけれど)どちらかというと、葛藤や苦しみ、人としての醜い部分もある感情、などに焦点を当てている物語。
海は幼いころからセクシャル・マ