窪美澄のレビュー一覧
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『夜に星を放つ』で直木賞を受賞(2022)した窪美澄さん。本作(2018)も直木賞候補作だったのですね。本作を"恋愛小説"と狭義に解釈すると、評価は下がるかもしれませんが、個人的には肯定的に受け止めました。
語り手が、登場人物ごとに一人称視点でリレー式に変わる7話の連作短編集です。そもそも人は多面的で、同じ言動へも受け止め方が多様ですね。視点が変わり、読み進めるごとに曖昧な印象の輪郭が鮮明になったり、批判が共感になったりその逆も…。
ただ、どの登場人物にも共通点が感じられます。それぞれ生きづらさを抱え、居場所を探し、人の温もりを求めている点です。表面的には安易な方 -
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6つの短編。うまくいかない家族の毎日を描いています。
セレブママとしてブログを発信しながらも、周囲の評価を気にして怯える主婦。
子育てで、自分なりにできることをやっているつもりなのに、妻や義両親からうとまれる夫。
娘の発達障害を疑い、自己嫌悪に陥る主婦。
出産を経て変貌した妻に違和感を覚え、若い女に傾いてしまう夫。
父の再婚で突然やってきた義母と義妹。家族になることに戸惑う娘。
前編の連作。彼女の家族に刺激を受けながら、自分の歪んだ家族を受け入れて向き合おうとする息子。
夫婦や家族はうまくいくことのほうが少ないと思います。幸せそうに見えても綻びはあって、理想どおり、不満もなく暮らしている人 -
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窪さんは女性を書くのが上手い。いつもなら窪さんの書く女性が好きだと読み始めてすぐに思えるのだけど、自信のない専業主婦の絵里子の日常から始まるこの物語を、この主人公を、好きになれるか不安になった。
主人公絵里子、そしてその友達詩織の年齢が50歳。同じ50歳でも全く違う生き方をしている2人の描写が対照的で、自分が50歳になったときどうなるんだろうか…とぐるぐる考えてしまい話が頭に入らなくなってしまった。きっとそれはわたし自身も絵里子のようになってしまう未来があるんじゃないかと思ってしまったから。結婚していないし主婦でもないけど、生き方の姿勢が後ろ向きになってしまうんじゃないかと思ってしまったから。 -
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「好きな季節は」と訊かれたら、僕なら晴れた冬の日と答えるだろう。
風の穏やかな理想的な冬晴れの午後、自宅から歩いて20分ほどの公園の、丘の上にある展望台からの眺めが目的で出かけてみる。この時間なら夕陽を受けた街並みの風景を望むことができるだろう。大いに期待して丘を登り、いざ眺望をと、その瞬間から、すでに西に傾きかけた日差しが雲に遮られてしまった。展望台から見渡すコントラストが失われた街並みの眺めは期待外れで、ため息が出た。西寄りの空に浮かんだ、比較的大きなひと塊りの雲は、日没までそのまま居座り、よりにもよってその日の午後の最後の光を隠し続けた。
「結局、僕はそうなんだ」すでにどこかの時点で諦め -
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「やめるときも、すこやかなるときも」
結婚の誓いの言葉であることは最初は知らなかった。知ったあと、このタイトルの重み、そして結婚ということの重みが感じられる。
相手が病んでも、健やかであっても、一生添い遂げる覚悟があるのか?
盲目的になることではない。桜子のなかにも壱晴のなかにも、複雑で暗い部分がある。付き合うと決めたのは、各々の目的があり、必ずしも純愛ではない。激しい熱愛も持たなくて、会うたびに付き合い方を模索しているような恋愛模様。心の傷のかさぶたが剥がれるときは、試練が来るときである。
「やめるときも、すこやかなるときも」とは、結婚というものには、性格と習慣の調整もあれば我慢もあ -
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ネタバレ窪美澄氏の著作を読むたびに性愛の小説が上手だなあ…と感じる。直木賞作家に向かってなんてことを言うんだという話だけど
理性ではわかっている、でも心が情動が泊まらない、止められないという人間が本当に愛おしい。窪氏の小説にはそういう人たちがよく出てくる
私は理性的な人間が好きだし自分もそうありたいと覆うが同時に感情も大切だと思うし感情こそが人間だと思っているので人間臭い登場人物がたくさん見られる作品は好きだ
直接的なタイトルもすごくいい。私はフェミニストだという自覚があるがこういう恋愛をする女性の話も大好き
たぶん嫌いな人も受け入れられないひともいると思う。主人公のように大人で自立もしている女性が一 -
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ネタバレ梅雨のようなじっとりとした空気が物語全体に漂っていたが、繊細でリアルな描写のおかげでかなり読みやすい恋愛小説だった。性描写も多々あるが、私としては綺麗でいやらしさがなくて良いと感じた。
私はどちらかと言えば宮澤や仁美ではなく、日奈や海斗に近い生活をしているので、職は違えど共感できる部分が多くあり感情移入してしまった。休日はショッピングモールに行き、特別欲しくもないものを買ってストレスを発散する。恋愛も身近な人と。生活水準が同じくらいの人でないと関係を続けて行くのは難しいし、日奈たちもそういう感じなんだろう。
恋愛模様と生死がいつも隣り合わせで、恋愛の浮ついた様子があまり描かれていなかったの -
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かつて、この国では庶民の殆どは貧しかった。
貧富の差が激しくなってきたのはいつごろからだろうか。
父が亡くなり、母はまだ10代の娘二人を置いて家を出ていった。
体の弱い妹はパン屋のアルバイトをしているけれど、そんなにお金にならない。結局は姉の働きで生活している。
ある日、妹がおじいさんに声をかけられて団地警備員になる。
二人で、団地に住んでいるお年寄りを見回るのだ。
やがて妹の二人の友人も団地警備員に加わる。
友人もそれぞれに訳ありだ。
一人は在日韓国人で、もう一人は吃音者。
おじいさんの存在が、彼らが今後生きていく上で大きな力になるだろうと思う。