窪美澄のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
少しずつ噛み合っていなくて、どこかうまくいかない、様々な恋の形を描いた6編の短編集。
「風は西から」
はとこのご飯で立ち直る高校生のひと夏の青春。唯一爽やかな物語。
「パスピエ」
足が綺麗な中野さんが転がり込んできた板倉が、告げられたまさかのラストを迎える。彼のこの先が心配。
「赤くて冷たいゼリーのように」
自分を普通でないと隠して生きてきた高校清掃員が、いじめにあっている少年に出会う。かつて好きだった友人に重ね、心を通わせるが‥。抑え込んできた思いと、身動きの取れない苦しさ、もどかしさが、赤いゼリーの鮮やかで残酷なイメージに重なる。
「雪が踊っている」
不本意な別れを強いられた元彼との再会。声をかけてくる元彼に戸惑い、一方で互いの子供たちが仲良くなってゆく。だがここでの再会は途切れた過去の続きではない。白く儚い雪のイメージが美しい。
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Posted by ブクログ
ネタバレいろいろな愛のかたちが描かれた短編集。
同姓愛や、淡い恋…過去に思いを馳せたり、戻ってこない恋を慈しんだり。
窪先生の恋に対する“どうしようもない想い”を詰め込んだ物語たちは、今回も私も胸に刺さりまくった。
『海鳴り遠くに』
夫と死別し、ひとり夫の海沿いの別荘に住む恵美。そこで出会ったのは、隣に一時的に越してきた絹香。恵美は絹香と出会うことで、再び女性を愛するという自分の性を自覚するも、困惑を隠せずにいて…
ドラマチックなラストに胸がときめいた作品。
『風は西から』
母子家庭で育った陸。そんな彼の日常に突然現れたはとこの桃子。陸は元カノを親友にとられたり、桃子との突然の出会いで困惑するも、少しずつ桃子に心情を吐露していくことで少年らしい爽やかな成長を遂げていく。
『パスピエ』
いつもの居酒屋さんで出会ったのは、足がとてもキレイな中野さん。風変わりな彼女とひょんなことから付き合うことになった板倉だが、彼女にはとてつもない秘密があった…複雑なラストに胸がザワザワした。
『赤くて冷たいゼリーのように』
私立高校の清掃員をしている宏。そこでいじられていた男子高校生結を救ってから、ふたりは街中で遭遇し交流を重ねていく。そして結と交流するなかで、宏は亡き幼なじみを思い出し胸を焦がしていく。ラストに待ち受けるふたりの別れは切なかったなぁ…
『天鵞絨のパライゾ』
短い交際期間を経て結婚した私とY。しかしすれ違い続けたふたりは離婚することに…その後私は堕落し、友だちのユーシェンに助けられながら、何とか元気を取り戻していく。この世界を、周りの人たちを愛しいと思えた作品。
『雪が踊っている』
息子の友だちの親がかつての元彼だった。元彼とは、彼の親から結婚の許しが得られず破局することになった経緯があり、複雑な心境を抱える弥生。そんな彼女の思いとは裏腹に親交を深める子どもたち。過去の恋傷を引きづりながら、必死に今の自分と向き合い続ける弥生の姿に共感しっぱなしだった。雪のキレイさと儚さが相まって、美しい話だった。
特に好きな作品は、冒頭2作品。
ひとそれぞれ愛のかたちは違っていて、嬉しかったり苦しかったり、決していいことばかりではないけれど、やはり誰かを愛していたいなぁと今回も窪先生に教えてもらった。
次はどんな愛のかたちを描いてくれるのか、今からとても楽しみだ。
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Posted by ブクログ
恋愛小説集。
人を好きになるのって辛いなーキツイなーって思わされる話が多かったです。でも、読んでいて嫌な気持ちになる訳ではなく。過去の恋愛で感じたやるせなさとか悔しさとかそういう気持ちが昇華されるようなそんな読後感でした。
特に「天鵞絨のパライゾ」は、登場人物の一人が主人公に「そういうふうに巻き込まれてしまうことがあるでしょう。自分ではどうしようもないことに」というセリフに救われた気持ちになりました。好きになってもどうしようもなく上手くいかない恋愛はあって、それは自分が悪い訳ではないんだよと言われたような気持ちになりました。
他にも、両親の離婚後積極的に家事を分担する高校生の主人公が付き合っている女子からの言葉で心のバランスを崩しかけたとき、はとこが家にやって来る「風は西から」と、定年退職後学校の清掃の仕事をする主人公の男性が学生時代に好きだった同級生の男子と似た少年と出会う「赤くて冷たいゼリーのように」が好きでした。
どの話も、主人公は失恋後明るく前向きに…という訳にはいかず、割とベソベソ泣いて未練タラタラなのですが、それでも頑張って生きていこうとする姿がとても眩しく感じました。 -
Posted by ブクログ
重松清の世界を窪美澄が描いたら、という印象の短編集。新興住宅地の子育て主婦やステップファミリーの一員になってしまった女子高生など、一見すると裕福で満たされたように見える家族のしんどさが描かれている。
毒もある。それぞれの孤独も沁みだしている。
今すぐ死にたいような悩みではないが、一生緩解することのない病にかかってしまったようなしんどさ。
それでも本作の登場人物たちの結末は希望を感じさせる。
セレブママとしてブログを更新しながら周囲の評価に怯える主婦。
仕事が忙しく子育てに参加できず、妻や義理の両親からうとまれる夫。
自分の娘の発達障害を疑い、自己嫌悪に陥る主婦。
出産を経て変貌した妻に違和感を覚え、若い女に傾いてしまう男。
父の再婚により突然やってきた義母に戸惑う、高一女子。 -
Posted by ブクログ
もうね、珠玉の短編集(6編)どれも沁みる。どれも胸に迫る。
中でも最後の発達障害の紡(めっちゃ純粋で可愛い)を育ててるパート勤務の女性の過去結婚も考えてた男性との子どもたちを通しての再会と別れを描いた「雪が踊っている」
まるで自分が追体験したかのような心持ちになった。
マイノリティの恋愛も、高校生の夏休みにご飯を作りにきてくれる従姉妹のお姉さんの作る焼きそばもタコスもめっちゃ美味しそう。この男子高校生の陸の心情もめっちゃわかる。(彼女が親友とつきあい出した)
あと、”パスピエ”これ”世にも奇妙な物語”になりそう。
あの妖精みたいな猫みたいな中野さんが(ストーカーが怖いからと板倉くんの部屋に住み着いた)足の綺麗な小柄な中野さんが居酒屋の大将の奥さんで30歳だったなんてね。
しかも何回もこうやって家出を繰り返してるらしい。
板倉くんの束の間の夢のような生活だったね。
ちなみに’””パスピエ”はドビュッシーの曲らしい。 -
Posted by ブクログ
登場人物それぞれが悩みを抱え、生きることに痛みや苦しみを感じながら、それでも小さな希望を探し生きていく物語。
人それぞれ事情があってどうしようも立ち行かなくなり、過ちを犯してしまうこともある。みんな決して綺麗じゃない。清廉潔白な人などいない。
犯した過ちだけを切り取って見てしまえば、人は嫌悪し、断罪してしまうかもしれない。しかしこの作品では、そうせざるを得なかった状況や心情が丁寧に描かれていて、読みながら「自分だったらどうしただろうか」と何度も考えさせられた。
人は簡単に救われないし、きれいに立ち直れるわけでもない。それでも周りは関係を断ち切ろうとせず、側にいようとする。小さな世界の中で助け合って生きていく姿に、読後はどこか温かな気持ちが残った。
やらかしちゃった卓巳君の写真を見ながらみっちゃんが言った、「ばかな恋愛したことない人なんか、この世にいるんすかねー」という言葉が、この物語を象徴しているようで、妙に心に残っている。