窪美澄のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
まず、タイトルが素晴らしい。
罪悪感や執着、初恋、過去といった、心に抱えた余計なものを手放し、まだ届かないけれど「希望という名の星」に向かって進もうとする強い意志が感じられる。
まさに、この作品のイメージそのものだと思った。
なかでも特に心に響いたのが『湿りの海』
心にぽっかり空いた穴を埋める何かを、人はどうしても求めてしまう。
過去を取り戻すことも、一度受け入れてしまった決定を覆すこともできない。
それでもなお、あの懐かしさの「代わり」を求めてしまう切ない心情が痛いほど伝わってきた。
主人公とは性別も違うのにすっかり感情移入してしまい、読んでいる間は、まるで周囲の音が消えたかのように引き込まれてしまった。
虚構だと頭の片隅でわかっていても、そのまま身を委ねたくなるほどの深い喪失感があった。
続く『星の隨に』では、子ども目線の純粋な愛情がまっすぐに伝わってきた。
表紙で本を読んでいる男の子は、きっとこの作品の主人公なのだろう。
ちょっと心と体が疲れちゃった大人たちに翻弄される物語なのだが、彼らを過剰に糾弾する展開にはならない。
登場人物の誰も突き放さず、みんなに優しい目線を送っている作者の温かい筆致が伝わってきた。
読後の余韻がいつまでも心地よく残る、まさに納得の直木賞受賞作品だった。 -
無料版購入済み
閉塞感も漂います
パンデミックでずっとマスクをしていた頃が舞台で、なおかつ主人公が抱えている生きづらさも割と息が詰まりそうです。内省的な主人公の考えがずっと作中に漂っています。
新たな出会いで何かが変わっていくんでしょうか。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ高校時代の5人グループの中心にいた菜乃子の30代後半での自死。憔悴する配偶者の達也だけでなく、生き方に迷いのあった残る3人にもそれぞれに影響を与えていく。
自責の念で生き続ける達也、宗教をめぐる健太の生き方など、苦しみを引き受けながら人生を進む姿に胸を打たれるが、最後は、菜乃子の成長物語に。
自分のことを思っている人と寄り添うことで、あるべき生き方に気づくこと。また、菜乃子の死が倫子の小説を生み、それで救われる命があったこと。
菜乃子からは安堵と感謝の言葉が語られる。一方で、後悔の気持ちは振り払われているかのよう。
これがいい話となってしまうと「自死は残された人の気持を考えればあってはならない」と考えてきた私の信念が揺さぶられてしまいそうだが、人の気持ちは「べき論」で語るほど浅薄なものではないし、揺さぶられるのも小説なのかな。
それでも、これは菜乃子なりの葛藤を乗り越えたうえでの結論なのだと思いたい。残された達也の気持ちを考えればこそ。