井上荒野のレビュー一覧
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東京から佐世保の和菓子店に嫁ぎ、娘を育てながら若女将として生きる、晶。誕生祝いの夜、夫から贈られたエルメスのバングルを手首に巻きながら、好きな人がいる、その人のところへ行くと告げ、いなくなった。残された夫・伸吾の怒りと嘆き、愛人・武藤の不審と自嘲、捨てられたと感じながら成長する娘・結生‥‥。
最近若手作家さんを読み続けていたからか、不穏な空気が漂っていたのに終止落ち着いた雰囲気で読み終えた。舞台が当地・長崎だったのもあるだろう。冒頭でパレードを引退したカンフーマンが登場し、単なる失踪事件ではないだろうと想像していたので、結末はとても意外だった。果たして晶はどうしているのかと、ミステリー仕立てで引っ張っていきながら、結婚で長く続く夫婦関係を捩(もじ)っているかのような会話や描写がたくさん盛り込まれていた。主人公・晶に与えられたラストは安易で受け入れ難い気もする。結生が自分は捨てられた娘だという疑念を払拭するためには良かったけれど。 -
Posted by ブクログ
ネタバレなんとなく瀬戸内寂聴が関わっていることが仄めかされてるのだけ知って読み始める。
白木という小説家の男と妻の笙子、愛人の長内みはるを軸に広がっていく物語。
女性二人の視点から展開されていくストーリーはおよそ50年というとても長期にわたる時間軸をまとめていながら、その実ですごくゆったりとした時間が流れているように感じた。人生の大半はただの時間に過ぎないってきっとこういう事なのだろうな。
長内みはるも笙子も、白木を介した複雑な関係性がゆえに繋がってるような繋がってないような絶妙な距離感。
果たしてタイトルの鬼とはなんのことだったのか。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ料理をテーマにしたアンソロジー。
柚木麻子さん『エルゴと不倫鮨』…安定した著者の「反権力(=男性)」「女たちの結束」鉄板ネタ。安定した漫才を見ているよう。
伊吹有喜さん『夏も近づく』…一番飯が美味そうだった。柚木さんの後に「義姉から性的虐待を受ける少年」が登場するので、並びとして良い。
井上荒野さん『好好軒の犬』…文学的。悪い犬じゃないんだよ、かわいそうな犬なんだよ が無意識的な嫌味、斜めな見方。おもしろかった。
坂井希久子さん『色にいでにけり』…金平糖の着色や和菓子の着色。江戸時代の話。粋。
中村航さん『味のわからない男』…こういう芸能人、いそう。リアル。
深緑野分さん『福神漬』…表現がうまい。そして後の作品『どっしりふわふわ』にもなんとなくつながっていくのだが、主人公の「私」が男なのか女なのか判然としないまま終わる。それもうまいな、と。
柴田よしきさん『どっしりふわふわ』…前半部分、悩める50手前の女主人公に、感情移入。パンの描写もうまい。だがオチはいまいち、だと思う。同性愛者である必然性が、まったく無い。単純に同性愛者を「オチのネタ」として使うのは、驚きを起こすには技術としてアリ、だが、テクニカルすぎて興ざめ。
☆気になった表現
私が小説なんて書くようになったら、妻である部分は少なからず損なわれるはずだ。
時に飢えるほどの貧乏暮らしだったという少年時代を持つ光一郎は、今は自分が稼いだお金でたべたいものを食べられる、という現実と時々うまく折り合えなくなる。
『好好軒の犬』井上荒野
見事だった本棚はがらんどうとなり、お腹を空かせて恨めしそうに私を見た。
『福神漬』深緑野分