井上荒野のレビュー一覧
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「あなたはあなたが連れてきた。嵐の日だった」。そんな一文ではじまります。この文中の「あなた」は「あなた」と思いきや、「あなた」と「あなた」は別のひと。主な登場人物は「あなた」と「あなた」と「私」の3人で、最初から最後まで「私」の一人称で語られるという、この発想の面白さ。
「私」は高校生のときに事故で両親を亡くし、その葬儀の日に「あなた」と出会う。「あなた」は、途方に暮れる通りすがりの「私」を放っておけなかったのか、それとも恋に落ちたのか。高校を卒業後すぐに「私」は「あなた」と結婚。それから数年が経ち、「あなた」は突然自分の双子の弟を連れてくる。それが冒頭のもうひとりの「あなた」。夫である「あ -
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(*01)
廃墟文学というジャンルはあるのだろうか。病院、映画館、廃坑などのモチーフがあって、離島というからそこでかろうじて生きている船や港や学校やマンションや、いくつかの棲みかまでが、いままさに廃れようとしているようにも感じられる。
主人公はこの廃墟であるが、プロンプターの様な女の視点や話題がこの廃墟に入ってくる。廃墟を体現した石和(イサワ)というのが廃墟からストレンジャー(*02)として出てくる。
それだけの物語であるが、絵の夫、性の老婆、痴話の同僚などのすったもんだが、この廃墟の場を回している。
(*02)
この道化は、幽霊の様に朧気で飄々でもある。この半存在がいくらかは物語をそれらし