あらすじ
初めてだった。男から、そんな目で見つめられたのは――。家族を置いて家を出た母が死んだ。葬式で母の恋人と出会った「私」は、男の視線につき動かされ、彼の家へ通い始める。男が作ったベーコンを食べたとき、強い衝動に襲われ……表題作ほか、人の心の奥にひそむ濃密な愛と官能を、食べることに絡めて描いた短編集。単行本未収録の「トナカイサラミ」を含む、胸にせまる10の物語。
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Posted by ブクログ
荒野さんはとってもかくかくした文章を書く。何というか女性特有のまろみをもった文章ではない。それなのに、ふとした言葉や一文に優しさやかわいらしさが潜んでいる。だから読んでいてとても心地いい。食べ物と大人と子供と愛のカタチといろんな要素が合わさって、まざりあってこの本はできあがっている。その食べ物を作った者、食べた物、気持ちも一緒に飲み込んでいる。消化(昇華)させるために。水餃子やトナカイサラミやベーコンは、どうやって昇華していったのかな。血と肉になるだけじゃなく、人生を続けさせ包み込み許すのが食事なのかも。
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はっきりとした感情が書かれず、ゆらゆらしているのにしっかり胸に突き刺さる、寂しく苦しい恋愛の短編集。
救いがあるような無いような、なんとも言えない切なさが残った。
井上荒野さんの作品は何冊か読んでいるけれど、この読後感がたまらない。
静かに燃えている感じ。
料理のタイトルが並ぶ短編集。
普通ではない歪な恋愛を描いているのに、知らない世界なのにどこか共感してしまう不思議。
江國香織に似ている気がする。
どれも面白かった。
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井上荒野を初めて読んだ。
ほかの作品も読みたい。
食べ物にまつわる話で、どれも美味しそう。
アイリッシュシチューを初めて知った。食べてみたい。
恋愛がうまくいっていない話が多くて、辛かった。
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井上荒野先生の著作が読みたくて読んだ小説。食べ物の名前がついた短編小説10作が掲載されていた。「アイリッシュ・シチュー」と「「大人のカツサンド」、「目玉焼き、トーストにのっけて」が怖い話だった。「クリスマスのミートパイ」の主人公に1番共感した。「父の水餃子」は悲しい話だった。「煮こごり」が1番面白かった。難しい言葉は使われていなかったが、登場人物の心情の解釈が難しい小説だった。井上先生の小説を次に読むなら、「切羽へ」と「あちらにいる鬼」が読みたい。
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微妙な関係の男女が一緒に食べる話。
好きなの?全然興味ないの?嫌いなの?好きだけど…どうとも取れる二人のやりとりで進んでいき、なんともなく終わる。どうとも取れるから、登場人物たちの心を探りながら読むのが楽しい。言葉の端々にちりばめられた意味ありげなそれらをどう捉えるのか?
ナレーナーも音楽も無く観る側を誘導しないドキュメンタリーの様に、読む側の心理で様々な方向に進んで行く。自分の知らない部分に気がついてしまう小説なのかも?!
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食べ物に絡めた男女の短編集。
食欲と性欲が入り乱れてる感がめっちゃ良かった。
個人的にはアイリッシュシチューが凄く好きでした。
手がかじかむ寒さと台所の暖かさ、
冷えた心と家族の温もりを感じられるストーリーでした。
井上荒野さん、凄い人だな…笑
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本×食べ物、この類大好き♡
小川糸さんのペンギンの台所でオススメされていた本。
短編集だけど、それぞれが読み応えがありました。読者に考えさせるような文章で、年を重ねればまた違う味になるのかな。
ままならない愛情を描く話が多い中、ゆで卵のキーマカレーにはほっこりしました。
ごちそうさまでした。
Posted by ブクログ
恋愛や家族に食べ物を絡めた9つの短編集です。取り上げられた食べ物は、ほうとう、ミートパイ、アイリッシュ・シチュー、カツサンド、煮こごり、ゆで卵のキーマカレー、水餃子、目玉焼き、そして表題作のベーコンです。なんだかタイトルを見るだけで、お腹が減ってきます。とても日常的な食べ物も、ちょっと珍しい食べ物もあります。この日常と非日常の塩梅が作品全般の魅力です。たとえば、ごく普通の家庭のなかで、唐突に妻が浮気するなど、ドキッとするようなスパイスが含まれています。
どの作品もハッピーエンドと呼べる筋書きはありません。淡々としながらも、痛々しさ、あきらめといったマイナスの要素を感じる味付けです。
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若い読者は、ぜひ10年後、20年後に読み返してみてください。様々な人生経験を経て読むと、また違う印象を文脈から受け止める事ができる作品集です。
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ぎこちなく生きている印象のひとびとを描いた短編集。
不倫など道ならぬ恋のネタ多し。
どんなにいびつでもその中で生きている人にとって、それは日常であるよな、という全体の印象。
きちんと生きているのである、道理に反していても、普通と違っても。
毎週日曜日にやってくる不倫相手との心地よい時間が、不倫相手の妻が子供を産んだことで壊れていくまでを描いた巻頭の『ほうとう』。
二人の娘と住んでいた家を出だ不倫相手と同居を開始することになった主人公の『ゆで卵のキーマカレー』がよかった。
この2編は構造がわかりやすい分切なさや寂しさ、滑稽さがわかりやすい。収録された10編の中ではストーリーとメッセージが明確。
ぼんやりとした中からメッセージを掬い取る系の話は読んでいるときはいいけれどあまり心に残らないなという読後感。
文章の質が高く人物描写が秀逸だから読みやすいし飽きない。
ただ若干国語の教科書的な部分があり、形が整いすぎていて作品との距離を感じた。
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食べ物とそれにまつわる人たちの短編集。
読み進めていくとだんだんとお腹いっぱいになる。一話読み終える頃には胸もいっぱい。
でも満たされた気はしない。むしろ胸にぽっかりと穴が空いてしまったような空虚感すら抱く。
これ以上はもう要らない、そう思うのに何故か読んでしまう。そんな矛盾を孕んだ何とも言えない気分になるお話たちの詰め合わせ。
個人的には「煮こごり」と「父の水餃子」が好き。
Posted by ブクログ
初めての作家さんです。
特にひっかかりもなく、するする心に入ってきて
またするすると出ていく。
そんな軽めの文章を書く方だなと最初は思ったけれど、
後からじわじわくる。
なかなか味のある短編集でした。
それぞれの話に登場する料理が印象的。
「クリスマスのミートパイ」
男の人ってこんな生き物だろうな。
女のほうがいつだって現実的だ。
奥さんっていうのは夫の恋人になってみたり
お母さんになってみたり、忙しい。
「アイリッシュ・シチュー」
何かふとしたことをきっかけに、
喩えようのない不安に襲われる。
いつもと変わらないはずの日常に感じる違和感。
そんな経験一度はあると思う。
仕事中の夫に電話をかけてみるが理解してもらえず、
不安な気持ちはますます募るばかり。
そんなとき、営業中の会社員の青年がたまたま
家の前に…。
この奥さんの気持ち、わからないでもない。
何か得体のしれない不安に押しつぶされそうなときは
無条件で支えてもらいたいものなんじゃないかな。
「大人のカツサンド」
こどもは鋭い。
大人が思っている以上に。
わかっててもわからないふりくらい、
やってのける。
「ベーコン」
表題作。いちばん好き。
沖さんが、亡くなった母の恋人という
特殊な存在だったからか。
それとも、単に母の葬式で初めて会ったときから
何らかの好意を抱いていたのか。
きっかけはともかく、主人公は沖さんを
男の人として意識しているのだろう。
そうでなければ、婚約者がいるのに何度も会いに行ったり、
ましてや自分以外の人に知られたくないなんて
一瞬だったとしても考えないと思う。
濃い肉の味、ね。
どうにでも受け取れる表現がいい。
Posted by ブクログ
ベーコン、ほうとう、煮こごり、水餃子などの食べ物をモチーフに、10歳の少女から60過ぎの老人までそれぞれの、多くは不倫関係にある男女の、人生の断片を描いた短編集。
日曜にだけやってくる男を待つ女(ほうとう)、会社で倒れた後、体調は戻ったのに出社できなくなった男(クリスマスのミートパイ)、謎の老人の死を巡り右往左往する女たち(煮こごり)…。
「煮こごり」の中に『針の先ほどの空白のようなもの。それが何なのかは謎だった。自分がこうまで焦がれるのはそのせいとも思えたし、あるいは焦がれるということは、相手の中にそのような空白を図らずも見つけてしまうということなのかもしれない』という件りがあるけれど、不倫を取り巻く人間模様の、空白感、空虚さ、曖昧さ、不確定さ、あるいは大人の割り切り、みたいなものが全編を漂う。
普通の主婦が見知らぬ青年と関係してしまう「アイリッシュ・シチュー」の艶かしさったら何とも言えないけれど、しかしこうも不倫の話が続くと最後は少々ぐったりではありました。。。
静かな短編集
淡々と語られる、静かな短編集でした。
特に感動があるとか、盛り上がるとかは無いけど、暮らしとか人生をこうやって切り取るような小説ってのもあるよなぁ~という感じです。
好きな人は好きかもだけど、私にはまぁ、暇潰しに読む程度という印象でした(о´ー`о)
Posted by ブクログ
様々な登場人物と、そこに登場する手作りの食べ物がまとまった小説。爽やかな内容を想定していたけど、読んでみるとセックスや不倫の描写が多かったし、複雑な家庭環境の登場人物も多かったのが意外だった。
読んでいて心が晴れるようなストーリーではないけれど、むしろ幸せの形を考えさせられる、そんな物語。
Posted by ブクログ
12月に読んだせいか、クリスマスのミートパイは
食べたい!って思った一品。
ほうとうもお話の中では冬ではなかったけど、
この時期食べたら温まるんだろうなぁと。
どれもちょっと問題のある家庭?のお話。
Posted by ブクログ
食べものにまつわる短篇集。
どのおはなしもけっこうあっといわせる展開だったり、「え!?」という読後感だったり、ここで終わるのか・・!と頭を抱えたり、井上荒野さんの短編は本当飽きない。「アイリッシュ・シチュー」とかけっこう衝撃的。面白かったです。
Posted by ブクログ
短編集です。
どのお話も、結末が納得できないというか、理解できないまま終わっていくような印象でしたが、
解説を読むことでそれがなんでなんかがわかりました!
主人公がみんな嘘をついてるというか、「ふりをしている」ってことがわかったおかげで、結構納得できた。
こうゆう風に書いとるけど、本音はこうやったんや!みたいな、読み終わってからの発見!みたいな。
とにかくこの小説に出てくる子供がほんとに大人だなあと思った
。子供らしさを携えつつ、考えてることはいっちょまえな感じ!子供ってすごいね
そんで最終的になにが言いたいかっていうと、
ベーコン食いたい
Posted by ブクログ
食事と他人との関わり特に愛や性愛に関する関係を書き綴った短編集。
井上荒野にはいつもやられる。この間読んだ映画化される「つやのよる」もそうだったが、ああこういうことあるよなとか人にいえないけどこういった経験あるよなといった何気ない表現なんだけどぐっとくる文章を井上荒野さんは書くので、ついつい買ってしまいます。すごく酔いやすいんだけど、読後感は軽くはない。お上手です。
Posted by ブクログ
なんとも考えてしまう小説。
あと一つ、決定的な言葉があれば・・・・・
あと一文、決定的な文章があれば・・・・・
結末はたやすく想像できるのに、それが無いため果てしなく
広がる想像。全ての話がまだまだ続くかの様に終わっていきました。
そして、こんな展開にいつの間にか病みつきになってました(笑)
こんな短編集もおもしろい。
Posted by ブクログ
厚切りの、肉汁のしたたる、端の焦げてちりちりしたベーコンが食べたい。
これは別に食べ物の話ではないけど。
嘘と、秘密と、ふりをして生きている人たち(主に男女)の、食事と官能の短編集。
Posted by ブクログ
冷静に考えるとどのお話も普通じゃない状況なのだけど.でも,いやに淡々と流れていく感じが不思議.食べ物が各ストーリーのタイトルになってるし,それらを食べたり作ったりする場面も出てくるのだけど,なぜかあまりおいしそうに感じられませんでした.