井上荒野のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ公私共にずっと夫と過ごしており、夫が嫌いなまり。
突然夫が亡くなった料理家の実日子。
まりが実日子の料理教室に行くことから話ははじまる。
ひどく食欲を掻き立てられる一冊だった。
食べたい料理がたくさん。
イメージが浮かぶような料理なのに、少し手が込んでいるから誰かが作ったこの料理を食べたい気持ち。
夫が存在しているけど、自分の中ではいないものとして考えているまりと、夫はいなくなってしまったけど、自分の生活の中で夫を感じる機会の多い実日子が対象的に描かれている中、エンディングでは二人の立場がクロスするというのが面白かった。
解説にある「きれいな大人の女性の前に立った、無粋な女の子のような気持ち」がしっくりきた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ突然同僚が貸してくれたのですが、そういえば井上荒野さんの作品は読んだことがなかったなと思って、ありがたく読んでみました。
なんだか不思議なお話でした。SFとかファンタジーという意味ではなくて。なのに、すごく地に足の着いたというか、ちゃんと人生を感じられる小説でした。
たぶん不思議な感じがしたのは、ストーリーに対する主要人物三人の年齢のせい。東京のとある町でお惣菜屋さんを営む江子と従業員の麻津子、郁子ともに60歳前後のいわゆるおばさんである。それなのに、江子は「きゃはは」と笑い、麻津子はダーリンとうまくいくことを望み、郁子は「いやーん」と色っぽい声をだしたりする。3人とも年齢が年齢だけにこれまでの人生ままならずにここまできている。江子は意気投合して一緒にお惣菜屋を始めた友人と自分の夫ができててしまい、離婚され、今も夫から精神的に自立できず、たまに二人を訪れたりする。なんだか、痛すぎて「あちゃー」と思うのだけど、人生そんなことになったりもするのかも、なんて思ったりして心の底から江子を「痛い人」とは思えない。麻津子のダーリンはかつて麻津子と婚約しながらも他の女と結婚、そして離婚したような男である。そんなやつを今でも麻津子は待っているようでこれまた「あちゃー」となる。個人的には江子より麻津子が痛いかなぁ。そして、郁子の事情は一番辛い。息子を二歳で亡くしており、そのことで夫を憎みつつ、本当には憎んではいなかったと思うけれど、その夫も前年に亡くしている。人生ままならないもの。本当にそうだとしても特に郁子の場合そう思えるまでどれくらいの時間が必要だっただろうと思いをはせてしまう。
そんなこんなで歳を重ねてきた三人が一緒に働く総菜屋はなんだかんだうまくいっていて、何より美味しそうな料理の数々に、なんだかホッとする。色々な食材と次々に出てくるお惣菜に、地に足の着いた生活を感じるのである。
いい歳した三人のおばさんが米屋の配達の若い進くんを気に入って、なんやかんやと彼を誘ったり、どこまでいっても「あちゃー」なんだけど、やはり憎めない。読んでいてい途中で三人の年齢がわからなくなるようなあれこれがある小説で、不思議な感じがしつつも、なんだか元気がもらえた気がします。
「人生はままならないもの」。
三人三様の中高年の孤独をただの淋しいものとしてだけでなく、噛みしめ受け容れながら、元気にお惣菜屋をやりくりする三人に、こんな人がたくさんいたらいいなと純粋に思いました。三人が元気なのは、美味しいものを美味しいと食べることができるからなのだと思います。恥ずかしながらここに出てくるお惣菜の数々、作ったこともなければ食べたこともないものもたくさんありました。ひとつの食材を前にしたときに三人からポンポン出てくるお料理のアイデアに、これまでの人生きちんと食事をしてきた人たちだとわかります。バタバタの毎日で、凝ったものは作れないけれど、それでも何とか「食」が生活の土台となるようきちんと気を配ろうと思いました。 -
Posted by ブクログ
映画「朽ちない桜」つながりで、この作品に。
短編集の中で、気に入ったのはふたつ。
・泣く猫 柚月裕子
17年音信不通であった母が死んで、真紀は母の住処に訪れる。母の同僚サオリが弔問に訪れる。
母が大切にしていた猫・マキは母のために泣いたという。
P.76
(中略) あっけらかんとした人生じゃなかったと思うよい サオリは俯いたまま、自分のことのように語る。
「男に夢中になると、ほかが見えなくなっちゃう。男と別れたあと、自分がしでかしたことを後悔する。そんときは、もう男なんかいらないって思うけど、好きなやつができ ると、また突っ走る。そして別れて悔いての繰り返し、心底、自分で自分がいやになる。 だから、悪い酒を呑む。そりゃあ身体もダメになるよね」 サオリは顔をあげると、真紀を見た。
「別にあんたに、母親を許せ、なんて 言ってるんじゃないよ。ただ、猫が泣くんだから、あんたが泣いてもおかしくないって言いたいだけ」 じゃあ、そう言って、サオリは部屋を出て行った。
真紀はしばらく、その場から動けずにいた。 やり場のない怒りと、悔しさが胸に渦巻いている。それはサオリに向けられたものではない。自分に対してだった。
テーブルの下で泣く猫を怒鳴った理由は、自分でもわかっていた。あんな母親のため に、泣きたい自分がいることに、気づきたくなかったからだ。 耳の奥で、忘れかけていた母の声がした。ひとつの布団に一緒に入り、後ろから抱き しめられたときの声だ。
「お前は優しいね。ほんとにいい子。」
その声を吹っ切るように頭を振ると、部屋に戻って窓を開けた。忍っぱい風が、頬にあたる。
下を見ると、空き地にマキがいた。前で顔を洗っている。真紀の視線に気づくと、 二階の窓を見上げながら、ひと声ないた。 マキが、ビルの隙間に姿を消す。
真紀は猫が消えた先を、見つめた。 マキが本当に泣いたのかはわからない。だが、真記の頬は濡れていた。
(後略)
猫は人の感情がわかるという。犬もそうだと思うが( 私は今は、とりあえず 犬派)。
・「黒い白猫」 東山彰良
異世界の話のようだ。強烈。 -
Posted by ブクログ
読み終わってもなんだか毎晩ふと思い出しては考えてしまうので久々に感想を少し。
25年前にイタリア人女性と不倫して出て行ってしまった夫が帰ってきたことから始まるお話。
結婚する前だったり、新婚の頃だったりしたらきっと奥さんである歌子さんの気持ちや行動は理解できなかったと思う。
陳腐な表現だけど、情で繋がっている夫婦の絆のようなものを感じた。これは同じ家族でも娘には絶対理解ができないことじゃないかと思う。夫婦だからこその不思議な繋がり。
私もきっと最後の歌子さんと同じ行動をすると思う。その自分を突き動かす理由がなんなのか分からなくても。
それぞれの今後がどうなったかは描かれていないけど、これから夫婦生活を送って行く中で、自分自身が思う結末はきっと違ってくるんだろうな。
また時間をおいて読みたくなる一冊。