井上荒野のレビュー一覧
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石田夏穂さんの『いざゆけ、接待登山』のエッセイが好きだ。
まさか登山にまで仕事の話を持ち出すとは思わなかったし、接待ゴルフは知っていたが登山!?と驚愕した。私は割と1日ずっと歩いても疲れない方だが、登山となると話は別。最後に山に登ったのはいつだったか記憶にない。
自分との戦いである登山という行為をするのに、それに加え相手を思いやる(しかも取引先)なんて絶対無理だ。石田さん、期待を裏切らない書きっぷりだった。
唯川恵さんの『標高4910メートルの餅バター』も良かった。『淳子のてっぺん』で泣いた記憶があるが、この小説を書くためにご自身も登山(しかも相当高い山)に挑まれていたとは。作家って過酷な職業なんだな(あくまで人によると思うが)。苦労を味わうことができて良かったと思えるなんて、一体どういうことだと思うけれどなんとなく分かる気がした。 -
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ネタバレ*60代後半の江子、麻津子、郁子は、都内のちいさな商店街で「ここ家」という、お惣菜屋を営んでいる。
最愛の男性を亡くし悲しみを抱えつつもにぎやかな江子、結婚して5年目の麻津子は夫が最近よそよそしいと心配ばかり、息子も夫も早くに亡くした郁子はようやくひとり暮らしを楽しめるようになり――
「ここ家」の立ち退き問題、江子の求婚――いろいろありながらも、前を向いて歩く彼女たちのたまらなく愛おしい物語*
前作は読まなくても問題なし、の向きも多いのですが、やはり続けて読むと物語の豊かさが倍増します。
前作は少し切ない大人の機微を味わえましたが、今作はそれを踏まえつつも未来ある明るい展開が印象的。
60代でもまだまだ!と勇気をもらえる物語。 -
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山好きな著名人が山について書く、というのではなく、山にゆかりのあった著名人という感じだろうか。山に対して良いイメージが持てない人も、山と言っても狩猟をしている人だったり、思い思いの山での暮らしを感じられて良かった。
特にスズキナオさんの高取山の話が良かった。舞台となる山の近くに住んでいながら、恥ずかしながら茶屋文化は知らなかった。
山に登る人たちと、それを受け入れる人たちの出会いがとても良くて、温かい気持ちになれた。
アルプスの山小屋なんかもそうだと思うけど、この話ではさらにお互いの距離が近くて、ちょっと出会ってみたいなぁと思った。
山に魅入られる。
その人の意思でというより、まるで山がその人をコントロールして沼らせているような、受動的でどこか他責的な響き。
でもその感覚はすごく良くわかる。
人を惹きつける(もはや、引きつける?)エネルギーがすごい。
そしてそのエネルギーに取り込まれてしまったら、最後なのだ。 -
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ガチむずかった。解説をもとに読み解くと、まずテーマは「平穏に見える日常のすぐ裏側にある底知れぬ深淵」との事。つまり、登場人物たちはみな普通の生活を送る中で些細な「違和感」「出来事」を機に見てはならない真実へと引き寄せられていくことになるのです。タイトルのそこへ行くなというのは、読者の心内の作中の人物への警告であり、それ以上踏み込めば、後戻りできないぞという訴えだと思います。
特に血塗れサスペンス展開になるわけではなく、淡々と居心地の悪くなるような展開が広げられます。そこがまた日常の中に潜む、後戻りできない危険をリアルに表現させています。 -
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登山はしない(できない)が、山の本は大好物である。
が、山ヤや冒険家で文章を書ける人は稀。というわけでこの本は楽しみにしていた。
が、読み始めて「登山の話ちゃうやんけ」
角幡唯介さん石川直樹さん以外は単なる文筆家や著名人なので、十中八九“高尾山しか登ったことないけど、それすらしんどくて嫌になった”というエピソードが出てくる始末。
考えてみると「山にまつわるエッセイ」なので、過酷な登山の話が出てくるとは限らず(どころかその可能性は極めて低く)、何ならテーマが山というだけなので登る必要すらないのである。
というわけで早とちりもありつつも、エッセイとしては面白かったです。最近読んだ松永K三蔵さん、『我が友スミス』が面白かった石田夏穂さんの文章が読めてよかった。
一方、穂村さん、角幡さん、唯川さんはその話聞いたことあるわ…てなった。
ただ唯川さんは前に読んだ時に私でもエベレストが見えるところまで行ける可能性がある!?と思ったことを思い出して、でも素人がこんな接待登山の環境を用意するのはムリといよいよ諦めました。