井上荒野のレビュー一覧
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作家の父を持つというのはどういうことかがよくわかる本だった。
荒野さんの小説はだいたい読んだことがあるが、光晴さんの本は
読んだことがなかった。今度読んでみようと思った。
娘の目から父がどのような人物であったか、娘に対してどのように
接していたのか、接し方に戸惑っていたのか、そういうものが
暖かな目線で書かれていて非常に面白かった。
父のいんちきな話を家族全員疑いもしない家風とか、そういう
家族という普通のようでいてどの家庭も普通でない感じが
とても上手に説明されていた。父であるけれど、時たま
父ではなく一個人の男という気配を無防備にさらけ出して
しまう父に対しての娘の戸 -
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ネタバレ初めての作家さんです。
特にひっかかりもなく、するする心に入ってきて
またするすると出ていく。
そんな軽めの文章を書く方だなと最初は思ったけれど、
後からじわじわくる。
なかなか味のある短編集でした。
それぞれの話に登場する料理が印象的。
「クリスマスのミートパイ」
男の人ってこんな生き物だろうな。
女のほうがいつだって現実的だ。
奥さんっていうのは夫の恋人になってみたり
お母さんになってみたり、忙しい。
「アイリッシュ・シチュー」
何かふとしたことをきっかけに、
喩えようのない不安に襲われる。
いつもと変わらないはずの日常に感じる違和感。
そんな経験一度はあると思う。
仕事中の夫に電話を -
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ふぅ。重たい(笑)
すっきりしないし、気分が悪いし、
雪の中に閉じ込められた気分になる。
というのも、いちいちシンクロしてしまうからだ。
椿も杏も迅人も翼もなんなら新渡戸さんの心情が、
読んでいるうちにすっと浸透してくる。
文章となって書かれていない、自分の想像の中だけの
気持ちであるにも関わらず、確信を持って流れ込んでくる。
人間の身勝手さ、そのことを十分理解できるほど
無駄に神経が細やかで、無駄に頭がよくて。
それゆえに、罪悪感は倍増する。
しかしそれでも手放せない何かのために、
知らないふりをし続ける奇妙な人間関係。
すっかりじとっとした世界に引きずられた作品。
いちばん好きな作品にな -
Posted by ブクログ
一気読みするほど、夢中で読んだ。
フィットネスクラブに出入りするスタッフや会員がそれぞれ主人公となる、連作短編集。
金原氏の解説の中で、“物騒”だとか“脂っこい”だとかのキーワードが並べられているが、
ほんとにそう。
どの話も、後味が悪くて、切ない。
でも読みたくなるのは、そこに尽くされている言葉の力が次へ次へと引きずっていくからだ。
「サモワールの薔薇とオニオングラタン」の1行目。
“朝起きると体がみっしりと重かった。”の表現。
「クラプトンと骨壺」の結末。
何回か、焼き肉屋が出てくるけど、なんかほんとに焼き肉食べてるみたいな気分。
でも最後のストーリーで、あら、さわやか -
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ベーコン、ほうとう、煮こごり、水餃子などの食べ物をモチーフに、10歳の少女から60過ぎの老人までそれぞれの、多くは不倫関係にある男女の、人生の断片を描いた短編集。
日曜にだけやってくる男を待つ女(ほうとう)、会社で倒れた後、体調は戻ったのに出社できなくなった男(クリスマスのミートパイ)、謎の老人の死を巡り右往左往する女たち(煮こごり)…。
「煮こごり」の中に『針の先ほどの空白のようなもの。それが何なのかは謎だった。自分がこうまで焦がれるのはそのせいとも思えたし、あるいは焦がれるということは、相手の中にそのような空白を図らずも見つけてしまうということなのかもしれない』という件りがあるけれど、不倫