井上荒野のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
妻の姉と浮気がやめられず、姉妹両方愛しているし愛されていると思っているどうしようもないダメ男の話なのだが、物語としてなぜか美しくまとまっている。
一目惚れした同僚と結婚し、幸せな夫婦生活を送っていた杏は、両親の死をきっかけに夫の迅人とともに長野へ移住する。
両親の経営していたペンション・だりや荘を継いだふたりは、病弱で美しい杏の姉・椿と三人で穏やかな生活をはじめる。
だが迅人は椿と不倫関係にあって、杏は長野に来る前からふたりのことを気づいているが知らないふりをしている。杏は迅人を愛しているのである。
椿はふたりの関係が露呈することを恐れているものの、不思議と杏への申し訳無さのようなものを感じられない。
杏、椿、迅人それぞれの視点で夏から冬にかけて三人の関係が変化していく様子が描かれる。
椿の恋人である新渡戸や、ペンションでアルバイトをはじめた旅人の翼などが絡んでくるが、基本的に三人の関係性が中心となっている。
杏は姉も夫も大切だからふたりの関係を黙殺し、迅人はふたりを愛することが自分の役目だと信じている。そして椿は迅人への思いに傾きだんだんと壊れていく。
スローな展開と緩慢な語り口なのだが不思議とだるさがない。
物語の起承転結はあるものの、結局なにも解決していないというところがもやっとするか、風情に思えるかで読後感が変わるだろう。
個人的には迅人痛い目に遭えと思っていた。 -
Posted by ブクログ
【本の内容】
東京近郊のフィットネスクラブに集まる、一癖も二癖もある男と女…。
平気で女を乗りかえる若い男。
その男の美しい肉体を思い浮かべ自慰に耽る女。
水泳コーチの妻は失踪し、団地の主婦は、昔の恋人の名前をつい呟いてしまう。
脱サラした古本屋は、妄想癖のある受付嬢の虜となる―。
誰もが世界からはぐれ、行先もわからずさまよっている。
不穏な恋の罠に翻弄される男女を描く連作短編集。
[ 目次 ]
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
恋愛や家族に食べ物を絡めた9つの短編集です。取り上げられた食べ物は、ほうとう、ミートパイ、アイリッシュ・シチュー、カツサンド、煮こごり、ゆで卵のキーマカレー、水餃子、目玉焼き、そして表題作のベーコンです。なんだかタイトルを見るだけで、お腹が減ってきます。とても日常的な食べ物も、ちょっと珍しい食べ物もあります。この日常と非日常の塩梅が作品全般の魅力です。たとえば、ごく普通の家庭のなかで、唐突に妻が浮気するなど、ドキッとするようなスパイスが含まれています。
どの作品もハッピーエンドと呼べる筋書きはありません。淡々としながらも、痛々しさ、あきらめといったマイナスの要素を感じる味付けです。 -
Posted by ブクログ
有名な画家の父の突然の死から5年。60歳になっても不思議な魅力を持つ美しいママと大学生の娘は、亡き父の小さな個人美術館で暮らしていた。ある日、父の愛人であった女性が現れて…
ほいほい読み進められるし、読後感もさっぱり。
破天荒、でもにくめないママと、しっかり者の娘を中心に繰り広げられる、「ハートフル・コメディ」ってかんじ。
「大事な人を亡くした後、ある程度の年齢を重ねた女性はどう生きていくか、女の子はどう大人になり、大きな心の穴を埋めるのか、自分に返ってくる問題でもあり、読んだ後も考えました」
とある作家さんは述べたけれど…
私は年齢的なこともあるのか、あんまりいろんなことは考えさせられなかった。ほんとさっぱり・ほっこりした! -
Posted by ブクログ
ぎこちなく生きている印象のひとびとを描いた短編集。
不倫など道ならぬ恋のネタ多し。
どんなにいびつでもその中で生きている人にとって、それは日常であるよな、という全体の印象。
きちんと生きているのである、道理に反していても、普通と違っても。
毎週日曜日にやってくる不倫相手との心地よい時間が、不倫相手の妻が子供を産んだことで壊れていくまでを描いた巻頭の『ほうとう』。
二人の娘と住んでいた家を出だ不倫相手と同居を開始することになった主人公の『ゆで卵のキーマカレー』がよかった。
この2編は構造がわかりやすい分切なさや寂しさ、滑稽さがわかりやすい。収録された10編の中ではストーリーとメッセージが明確。
ぼんやりとした中からメッセージを掬い取る系の話は読んでいるときはいいけれどあまり心に残らないなという読後感。
文章の質が高く人物描写が秀逸だから読みやすいし飽きない。
ただ若干国語の教科書的な部分があり、形が整いすぎていて作品との距離を感じた。 -
Posted by ブクログ
この本好き。
「切羽へ」の影響で、井上荒野は全部読んだけど、これが一番好きだなー。
だりや荘はペンション。はかなげでおとなしい姉と、気の回る明るい妹、そして妹の優しい夫とで営んでいる。
当然、それだけじゃない。
不倫も性愛もなんでこの人はこんなに透明に書けるんでしょうか。「筋だけとったら昼ドラ」 と言った知人の意見に賛成です。
誰が繊細で誰が無神経か。何が善くて何が誤りか。
登場人物の内面を見つめる過程で、自分の美しいところ、汚いところを少し見つけた気がします。
救いがあるとか新しい道を見つけるとかではなく、そういう話。
2009年12月09日 13:46