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私はあの人と付き合うとるとよ。
あの人を好いとると。
そう言い残して、一人の女が姿を消した。
失踪したのか、死亡したのか――。
圧倒的な「不在」がもたらす感情を炙り出す、
不穏でミステリアスな物語。
誰にでも自分だけの神様がいるのかもしれない。
だとすれば、その神様は私の味方であるはずだ。
東京から佐世保の和菓子店に嫁ぎ、娘を育てながら若女将として生きる、晶。誕生祝いの夜、夫から贈られたエルメスのバングルを手首に巻きながら、好きな人がいる、その人のところへ行くと告げ、いなくなった。残された夫・伸吾の怒りと嘆き、愛人・武藤の不審と自嘲、捨てられたと感じながら成長する娘・結生……。「不在」の12年間を、さまざまな視点から綴る長編小説。
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Posted by ブクログ
昔、後妻に入るなら、「死別」より「離別」の方がいいという一説があった。
「離別」は、お互いに納得してあるいは愛想を尽かして縁を切ったのだけれど、「死別」は想いを残しての別れであり、思い出はどんどん美化されていくから生身の後妻は比べられては不利だということだ。
では、「失踪」された場合は?
失踪から七年経てば「失踪宣告」し、法律上は死亡と見做されるから、再婚は可能になる。
しかし、はっきり別れたわけでも、亡くなったわけでもない。どこかで生ている可能性だってあるし、どこかに埋まっている可能性もある。
残された人たちや、その人と関わる人たちは、それを考え続ける事になる。
「いなくなった人」の「存在感」は、一見矛盾しているようだが大きいのである。
夫と4才の娘を残して31才で失踪した、小堺晶(こさかい あき)の気配と記憶は、染み付いて取れない影のようで、なんだか恐ろしいものに感じる。
失踪直後の、幼稚園児の結生(ゆき)の様子を夫の伸伍(しんご)がつぶさに語る。4歳児の心の中では何が起きているのだろうと無限に考えられる。結生自身も、常に「なぜ母はいなくなったのか」と考えながら成長したのだろう。
それも吹っ切れたか、穏やかな終焉と新しい一歩が見えたかなと思えた次の最終章。
突如、それまで出てこなかった名前に・・・
見知らぬ誰かの、分岐点の選択一つで多くの他人の人生が変わってしまったのだ。
やはり、あの口紅をつけてはいけなかったのだろうか?
「しずかなパレード」とは、もしかしたら葬送とか葬列をイメージしているのかな。
Posted by ブクログ
佐世保の和菓子店に嫁ぎ、娘を育てながら若女将として生活が続いていくはずが、誕生日を祝った夜に夫からエルメスのバングルを贈って貰いながら…
晶はお礼ではなく罵声を浴びせて家を飛び出す。
そこから以降、晶の不在が続くなか夫は怒りながら愛人の武藤を疑い、嫌悪しながらも日々の生活は続いていく。
娘も不穏さを感じつつ、母に捨てられたと思いながら父親が再婚する頃には母を意識することもないくらいに成長していく。
一人の人間が姿を消すのがこんなにも突然で呆気ないものかと思うと恐さを感じる。
ずっと晶が不在のまま時は流れていくのは自然というより必然であるのが恐いのかもしれない。
ずっと色のない世界のようでいて、ただカンフーマンだけが変に明るいのが不穏だった。
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