あらすじ
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「姦通」していた男女が熊に殺された—。
閑静な別荘地で起きた事件は、愛に傷ついた管理人の男女と、6組の夫婦に何をもたらしたのか。
愛の行方の複雑さを描く傑作長編!
「愛の行方」を書きながら、そもそも「愛」ってなんなのだろうとずっと考えていました。
自分にとって大切な小説になりました。 井上荒野
「このふたりは姦通していた」何度読んでも笑ってしまう。まるで私宛の手紙みたいだ。
—小林七帆
伽倻子と七帆はひと続きなのか? 結局俺は、伽倻子を愛したときから、ずっと同じことをしているだけなのか?
—小松原慎一
そりゃあそうよね。男と女のことなんて、全部間違いみたいなものよね。
—柊レイカ
ふたりはとんでもなくうまくいっている、幸せな夫婦なのだから、相手の挙動の変化には敏感なのだ。みどりはアトリエに忍び込むことになった。そして知った。
—神戸みどり
テントの外には熊が、人食い熊がいるのだ。だが純一は、再び愛の体に没頭する。そう、愛に没頭するのだ。
—野々山純一
装丁 大久保伸子
装画 杉本さなえ
感情タグBEST3
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「姦通していた男女」が熊に殺された。その別荘地に住む人々の反応や変化を描く。
「熊」がだんだんと、何か性的な象徴のように思えてくる人、いっそ熊に殺されたらいいのにと思う人、むしろ自分が殺されたかったと思う人。
そして、男と女は皆すれ違っている(昭和の歌謡曲みたいな言い方ですが)
・妻は仕事したい、夫は邪魔したい
・夫はしたい、妻はしたくない
・おしどり夫婦の、それぞれが胸に秘めた思い
・仲良しアピール夫婦の、お互いに対する憎悪
・老夫婦の密かな覗き趣味
それなら、この人たちはどうして一緒に居続けるのだろう。さっさと見切りをつけることを選ぶ人たちだっているのに。
しかし、絶望しながらも、離れてしまう孤独には耐えられなくて、あるかないかも分からない希望に縋ったりもするのだろう。
“あそこで選択を間違えたのかもしれない”後からそう思ったりもする。
そういった内面描写のディテールが見事だと思う。
クレーマーの扇田夫妻はまた別物で、二人とも幼稚である。この二人がお互いに相手の本性に気付き、憎しみを募らせていくのか、折り合いをつけていくのか、まだ分からない段階にある。
別荘管理人の、小松原慎一と小林七帆の過去や事情も、だんだんと明かされていく。
一見普通に暮らしているように見える人たちでも、こうやって内面が描かれると、みんなヤバい人に見えてくる。
誰がいちばん胸糞ですか?
私は友郎かなあ・・・キモい
管理人の小松原にはやや危うい面もあるけれど、料理はできるし気遣いもできるし、人間的にもまだ成長できるような気がします。
アダムとイブの楽園追放を彷彿とさせる表紙の男女は、追放されてもなお、心の中に獣を飼っている。
人間は神と似た姿を持つけれど、中身はケダモノ。そう言われている気もする。
ただ、永遠に生きる神々とは違って、人間は命をつないで行くため、という名目でケダモノになるのです。
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カップルが、自分の気持ちも相手の気持ちも一切疑わずに向き合っていられるのは、相思相愛をお互いに確信した瞬間だけなのかもしれないと思わされてしまう。
長く関係を維持するには、自分の気持ちも相手の気持ちも信じたふりをし続けるしかないとしたら、そもそも何のためにその関係を維持する必要があるんだろう。
そんなやるせない気持ちにさせられる一冊だった。
Posted by ブクログ
別荘地っていう場所にこそ愛の嫌な面が詰まってるっていうのが良い。途中でYouTuberが歌う替え歌が出てくるんだけれどそれがチープなのも良い。ロングは伸びてなくてショートだけ回ってるんだろうなって気配とか。
Posted by ブクログ
面白くてすぐに読んでしまった。
物語は別荘地に暮らす人たちと管理人のお話。
最初は熊に男女2人が殺されるというセンセーショナルなスタートでどうなるのかと思いきや、別荘地の定住者と管理人たちの日常について書かれていて
日常の続きの先に一体何があるのかな?とどんどん読み進めていたらすぐに終わってしまった。
個人的には作家夫婦の行末が気になりました。
管理人たちのやりとりも歯痒さも感じるけどこの時間が一番楽しい時なんじゃないかと思って羨ましいなと思った。
Posted by ブクログ
これを読むと異性のことなんて永遠にわかりあえないような気がする。長野県のとある別荘地。永住を決めた夫婦たちと管理人が住む。彼らはうまくいっているようでしっくりきていない。ある日別荘地に熊が出没した事件をきっかけにそんな微妙な心の機微が浮き彫りになる。皆一皮剥けば猛獣ども。というより曲者どもで共感は難しい。いっそ全員離婚してしまえ、と叫びたくなるがこの清々しくなさが作者っぽい。ただ軸となる管理人の男女の話は結構好き。若い二人の繊細な距離感が好ましく思えた。ラストもほんの少しの明るさが後味を良くしている。
Posted by ブクログ
姦通していた男女が熊に殺される事件が起きた閑静な別荘地を舞台に、その管理人の20代男女とそこに住む6組の夫婦を取り上げ、夫婦・カップルの愛の行方、すれ違いを描く小説。
登場人物たちの仄暗い心の声がだだ漏れになっているような内容で、夫婦・カップルの一筋縄ではいかなさを感じた。
管理人の男女の視点のエピソードが多く、6組の夫婦視点の話はちょっと薄かった印象なので、もっとそれぞれの夫婦を掘り下げて見てみたいとも思った。
Posted by ブクログ
*「姦通」していた男女が熊に殺された—。 閑静な別荘地で起きた事件は、愛に傷ついた管理人の男女と、6組の夫婦に何をもたらしたのか。 愛の行方の複雑さを描く傑作長編!*
このヒタヒタと静かに迫り来る不穏さ!さすがです。
正しく幸せで美しく眩い幸福感だけで成り立っているわけではない、円熟した大人の愛。
己の狡さや暗さも十分に自覚した上で、空虚さと歪さと仮面の笑顔を重ねる日常。
その絶妙な描写が本当にお上手です。
これは、若い方にはまだちょっとわからないかな…笑
何か大きな展開があるわけではありませんが、じわじわくる独特の読後感がクセになりそうです。
装丁も題名も秀逸です。
Posted by ブクログ
男も女も
ふたりでいるのにどうしてこんなに
欲張りでわがままで孤独なのだろう。
結婚しながら不倫して
笑い合いながらいがみ合い
離れたいのに離れられず
挙げ句の果てには
森で密会中に熊に襲われたり…
ひとりではなく
ふたりだからこその寂しさやせつなさ
男と女の気持ちのすれ違い
そんな目に見えにくい些細なものを
まざまざと見せつけられる。
「猛獣ども」というタイトルが
まさにそのものではっとさせられる。
Posted by ブクログ
別荘地で熊に襲われ男女が死亡した。その2人は姦通していた。小さな田舎で起きたその事件をもとに様々な人たちの人情がむき出しになるのだけど、それがいい感じに厭な感じで面白かった。
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密会中に熊の襲撃で亡くなった隣町の住人の死で、俄かに浮き上がる別荘地の定住者達の日々の暮らし。特に何か特別な事もない、老夫婦から新婚の夫婦まで、それぞれに澱みを抱えている。そして、住人らにうまく使われる小心者の管理人と本社から来たデキる女子社員の2人の関係も少しずつ発展していく。各夫婦や管理人の機微をここまで描き分けられる荒野氏に感謝。できるならもっと読んでいたかった。
Posted by ブクログ
本のタイトルが腑に落ちた。
別荘地の管理人や夫婦の人間模様というと簡単だけど、いろいろな事情と歴史の澱が蠢いていて興味深い。
結末は管理人たちの近未来は明るそうだったが、数十年先は住人たちと似たり寄ったりなんだと。
Posted by ブクログ
面白かった。
ダブル不倫中に死んでしまった男女を巡って、
6組の夫婦のそれぞれの心情が見えてくる
井上さんの、はっきりしないモヤモヤした雰囲気。
ちょっと切なかった。
歳を重ねたらまた読み味が変わりそう。
Posted by ブクログ
生きることの生々しさとやるせなさ。
迷子になったかのような心を持て余しながら、それでも生き続けるしかない。
いつかは誰にでも訪れる最期の日まで、希望、疑惑、蔑み、愛着、いろんな混沌を抱えたままで。
Posted by ブクログ
熊に襲われ死んだ男女が話の中心かと思いきや…。
別荘地に移住して幸せに暮らしている人達に見えるのに、みんな上手くいってなくて…なかなか面白かった。
Posted by ブクログ
中々斬新な作品だった。
『姦通』していた男女の死から始まり、現場の近隣住民達それぞれの目線を通して物語が進む。
何故今時『姦通』という言い回しだったんだろうと思っていたが、後々理由がうっすらわかってくるのが見事だった。
それにしても家の中と外、夫婦や恋人の内心というものはこれほど違うのかと薄寒くなった。
Posted by ブクログ
姦通していた男女が熊に殺された。オープニングはセンセーショナルだが、登場人物の描写はさらっとしていて、夫婦のすれ違いもまあこんなもんだよね、であった。管理人男女もお互いどこに惹かれたのか気持ちの変化がよくわからず、最後まで誰にも感情移入できなかった。さらっと読んで終わってしまった。
Posted by ブクログ
高原の閑静な別荘地で「姦通」していた男女が熊に殺された。別荘地の管理人と6組の定住者に事件がもたらした波紋。一筋縄では行かない愛の姿をたっぷりの毒を含んで描く長編。
住み込みの男性管理人と不祥事で飛ばされた女性管理人の関係、6組の夫婦の関係が各章で描かれる。妻と夫それぞれの主観による物語が対比され、一見仲良く見える夫婦の間に横たわる深い溝がこれでもかと描かれる。どこにも普通の夫婦なんていない。最後まで不穏な空気に包まれ、男と女の関係は一筋縄ではいかないなと思う。
互いの胸の内がわからない方が幸せだとしみじみ思う。
Posted by ブクログ
夫婦のそれぞれの気持ちが、わかる部分もあったり、なんだこの人って思ってしまう部分もあったりでした。レイカさんの「男と女のことなんて全部間違いみたいなもの」っていう言葉が心に残る。ほんとにそうかも。
Posted by ブクログ
人が関心を抱くのは熊ではない。襲われた人間である。不倫の男女が熊に殺害された別荘地。其処の住民夫婦らが、これまで内に秘めてきた歪で醜い愛の容をリレー形式で暴露。熊をきっかけに話がここまで広がるとは…
Posted by ブクログ
この小説がしょうもないと言うより、人間ってどうしようもないなと言う所が本当によく描けていて、読んで深く納得しましたが、かと言って読んで学ぶ所は何もなかったから、読んでも読まなくてもどっちでも良かった。
Posted by ブクログ
読んで感想を書いたつもりだったが、上がっていなかったので備忘録として書き留めておこうと思う。
殺された男女は実はクマに殺されたのではなかったという結末になるのではないかと最後まで読み進めたが、その事実は変わらなかった。
別荘地の管理人や別荘地に住む人々の外面と内面が細かく表現されていて、人間観察の観点からは面白く読めた。
物語としては感動はないが、悪い意味でなく淡々と綴られている印象だった。
Posted by ブクログ
井上荒野さん、の本、初めて読んだ。
しおりひもがついてる本。
「猛獣ども」というタイトルや表紙絵、書評を見て、どんな話なんだろう、と興味が湧いた。
警戒?するほどでもなく、読みやすく、あっさり読み終えてしまった、、、、
「猛獣ども」というタイトルが想起させるものとはかけ離れてて?、読み終えてみると、淡々としていて、どちらかというと、退屈??、とさえ思える。
自分が何を期待してたのかもよくわからないけど、なぜかなんだか肩透かしと感じてしまった作品でした、、、
Posted by ブクログ
猛獣ども
著者:井上荒野
発行:2024年8月8日
春陽堂
初出:「WEB新小説」(春陽堂書店)連載
ある別荘地が舞台。リタイアして永住している人、結婚1年ちょっとで永住している人などがいる。そういう人たちと2人の管理人が中心で、通っているだけの別荘族は話には登場しない。別荘地の下には月見町という町があって、住民はそこに買い物や外食に行き、管理人の一人もそこのアパートに住む。
ある時、別荘地で男女が熊に襲われて死んだ。第一発見者はリタイア後に永住している住民。管理人は、管理事務所と兼用の建物に住み込みで働いている小松原慎一と、前任者が辞めて新しく東京から転勤になって来たばかりの小林七帆。小松原は別荘地の管理をしている不動産会社の社員ではなく、住み込み管理人として雇われている。東京の出版社で働いていたが、女性と別れて東京を出たくなってこちらに移住。小林は不動産会社の社員で、上司と不倫をしてここへ飛ばされてきた。
13章立ての小説だが、小松原の視点と小林の視点で書かれた地の文が7章あり、残りの6章は住民夫婦の視点で書かれた地の文。つまり、全部で14人の視点で書かれた長編小説ということになる。ただ、主人公は小松原のように思える。
熊に襲われた男女は、別荘地の住民ではないとすぐに噂が流れる。誰から聞いたのか?と管理人が問うても、○○さんが言っていた、と人から聞いた話だった。そうしていると、管理室に怪文書がポスティングされていた。
熊に殺された人々=
二十代くらいの男性と、二十代くらいの女性
月見町在住。この二人は姦通していた。
誰がこれを書いて投げ入れたのか?どうして姦通しているなどという事情を知っているのか?というミステリー作品のような展開に見せかけつつ、全然ミステリーにはならない。13章の話の中で、別荘地の住民夫婦のそれぞれの事情が語られていく中で、これを書いた人物や「姦通」に関しての事情が分かってくる。
住民それぞれについても、他の人が見ているのと実は心の中身が全然違ったり、他の人が噂しているのとは違っていい状態だったり。いろんな事情が見えてくる。中には、最近、癌が見つかって家族と急に隔たりができたように感じるシニアもいたりする。
そして、管理人2人は、それぞれ相手と別れた身同士。どうなっていくのか。あまり平凡な恋愛小説にはならない。しかし、劇的な展開もない。大人の、男女経験もそれなりに豊富な、機微に溢れつつも、幼い男女の心持ち。男女の駆け引きを見せつける小説でないところが、大人の小説でなかなかよい。さすがは井上荒野。
タイトルの「猛獣ども」は、この別荘地に来て、熊事件をからかうような歌を池のほとりで歌い、動画を作成してYouTubeで公開した2人組による、その動画タイトルでもある。もちろん、別荘地の男女それぞれにも当てはめている。
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小松原慎一:別荘地の住み込み管理人、180センチ
小林七帆:東京の不動産会社から転勤してきた管理人、上司と不倫し飛ばされた
伽椰子:慎一が別れた女(相手から別れ話が出た)
美雪:慎一が若い頃に結婚した妻で、伽椰子のことで別れた
日向友郎:七帆と不倫していた、7歳年上の上司だった
勇:七帆の高校時代の同級生、初体験相手、庭師、移住を検討中、結局やめる
扇田充琉:新参ものでクレーマー、妊娠が判明
扇田圭:夫、別荘地隣町の造り酒屋で広報、結婚1年3ヶ月
東雲萌子:小説家
井口文平:夫、売れていない作家
小副川孝太郎:元製薬会社の営業、リタイア後に定住、クマ事件の直前ぐらいに膵臓癌が見つかる(余命1年)、クマに殺された2人の関係を暴く怪文書を作成
小早川小百合:妻、夫と散歩中にクマ被害者の逢い引き(立ったままセックス)を見かけて覗くのが趣味に
*2人は蜜月期間が長かった、娘や息子は60歳近い、孫の最年長は30歳
神戸(ごうど)みどり:クマに襲われた被害者を発見、元高校教師、染色
神戸武生:夫、元高校教師(同僚)、油絵、妻の誕生日に肖像画を描いて贈る
透:教え子
果林:教え子
翔太:教え子、真央の夫
真央:教え子、翔太の妻
金沢道尚:クマで死んだ男の方、月見町に在住
柊レイコ:70前後、夫の提案により別荘地で鍼灸院経営、夫が鍼灸院も家庭のことも何もしないので限界を感じていた、わざと万引きした
柊恭一:夫、夫婦仲は悪い、娘夫婦と孫がパリにいる
木下:患者の一人
野々山純一:ペンションオーナー「むささび荘」→「愛と山」、犬レノンの飼い主、医療施設用家具の営業マンだった
野々山愛:妻、夫の定年で移住、別荘族としては古株
風太:息子、東京の大学生
五味:月見町でトルコ料理店kokkaiを経営、妻が不倫してクマに襲われ死亡
美絽:出会い系で五味と知り合う、kokkaiでバイトすることに、すぐに辞める
暁子:七帆の東京時代の同僚、LINE仲間
美来:同上、LINE仲間